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-Global Japanの会計・税務コラム-  GOC(グッド・オールド・コロンボ)化現象(前編)

2022年3月29日

西暦2100年版巻頭言より

「すでに38万人の全島民移住プロジェクトが完了したモルディブ共和国のほぼ全土が海面下に沈んだことが衛星画像からも確認された事実は記憶に新しいが(※注1)、その約1,000km先の準都市国家カンドゥラプラ(シンハラ語で「涙まじりの都」)の成長は目覚ましく、金融街だけでなく、アジア最大規模の中華街、大劇場等の芸術施設、ナイトライフ等も充実し、この新しい国際先進都市にやって来る外国人数がここ30年で急増し、それに伴い隣接都市コロンボ(スリランカ)の長期滞在型アーバンリゾートホテルが人気を博し、モルディブに代わる世界有数のリゾートとしての地位を確立している。新都市カンドゥラプラおよびコロンボに滞在しつつスリランカ国内の世界遺産最大5か所を日帰りで周遊できることも大きな魅力となっている。」(2100年版ガイドブック『インド洋圏アジア』巻頭言より一部抜粋 (※注2) )

※注1:  国連の調査では、地球温暖化による海面上昇により、今世紀末までのモルディブや南太平洋の島々の消滅の危機が指摘されている。

※注2:  半分以上は妄想、あしからず。

 

国に紐づくコンシェルジュたち?の叫び

大ホテルや空港、国によっては鉄道駅等にコンシェルジュと呼ばれるプロフェッショナルたちがいます。コンシェルジュとは、フランス語で「アパートの管理人、清掃業務等を行う人」を意味する「Concierge」が由来で、転じて顧客の要望を聞いたり、相談に乗ったりする「総合世話係」のプロという意味合いで使われています。なぜこんな話をするのかというと、わたしたち海外の国に紐づくコンサルタントのひとつの到達点は、それこそ「総合世話係」、その国のコンシェルジュです。国に紐づいている限り、中長期的な視点かつ誰も着目しない切り口でその地の魅力と可能性を唱え続け、はるばるお客さんに来てもらうことが重要なのです。さて今回の冒頭部分は、果たして行き過ぎた妄想プロモーションなのでしょうか?

 

自衛隊の唯一の海外拠点

すこし冷静になって現実のお話を。2021年末、日本政府はアフリカのソマリア沖における海賊対策支援の延長を決定しました。ソマリアの隣国ジブチ共和国には、2012年に建設された自衛隊の唯一の海外基地が存在します。基地の護衛艦が日本へ航行する際には、アラビア海はるか3,000km先のスリランカまで遮るものは何もなく、たびたびコロンボ港にも寄港することになります。寄港時には、コロンボ日本人学校による船内見学が行われることもあります。

改めて海図を広げてみて、このスリランカは日本にとって地政学上の重要な場所だということがわかります。地政学というと小難しいようですが、非常にヒジョーに端的に言えば、「日本軍は、真珠湾攻撃後、マリアナ各島に縦のラインに迎撃基地群を設けることで米軍の西進をはばむことができた。その後、英領セイロン国(現スリランカ)の2,000km沖にある英領ディエゴガルシア島を集中攻略後、南方向から英領インド帝国を弱体化させていくことによって、インドの統治権を死守したい大英帝国との講和条約が早々に実現し、つまり米国との最終決戦を回避することができた。」というようなことを本気で考えることなのです。なぜ日本がスリランカと仲良くしなければならないか、その答えは世界地図上にもあるのです。

 

群雄割拠

コロンボの波打ち際から遥かソマリアあるいは遥かディエゴガルシア島をにらむかように(少しセンチメンタル過ぎるか)、コルピティヤ鉄道駅の雑踏を見下ろす位置にそびえたつ日系資本100%の大ホテルが、この2022年4月に開業します。

すでにこの界隈は、モルディブ系、タイ系、スイス系、シンガポール系のホテル群がその高さを争い合うように、そして客室からの景観をも奪い合うかのように林立し、さらに米国系、インド系の大ホテルもそう遠くない時期に開業するでしょう。そして極めつけは後述する中国主導の新港湾都市「コロンボポートシティ」開発であり、近年ホテル業界においては、このコロンボ界隈での各国の争いが激化しています。

前述した日系資本の新ホテル『Granbell Hotel Colombo』は、そんな争いをよそ目に、インド洋のパノラマを独り占めにしてしまうほどの好立地にて、まったく新しい「滞在型アーバンリゾート」コンセプト、いわば大都市コロンボそのものを楽園として提供してしまおうという理念を掲げています。南部のゴール市の世界遺産に隣接するリゾートホテル『Le Grand Galle』に続くベルーナグループのスリランカ進出第二弾として注目を集めていますが、群雄割拠かつ経済的な逆風吹き荒れるスリランカでの勝機はあるのでしょうか。

 

グッド・オールド・コロンボ

鍵を握るのは、冒頭の妄想都市、いえ2041年完成予定のコロンボポートシティです。コロンボ市内の面積の約10%に相当する広さをもちますが、すでに法律上のコロンボ市に属してはいません。シンガポールやドバイなどと比較すると規模が小さすぎるものの、香港島の北沿岸部のアジア有数の金融街と比して広さでは遜色ありません。CPCEC法 (Colombo Port City Economic Commission Act)という憲法に限りなく近い新法(その衝撃の詳細は次号紹介予定)の下、このポートシティは、コロンボの名を超越した準都市国家(涙まじりの都市名になってしまうかどうかはさておき)に成長することによって、その存在がコロンボ、ひいてはスリランカ自体の果たす役割すらも、予期せぬ方向に変えてしまう可能性があるのです。

この点でも香港が参考になるかもしれません。香港島金融街の夥しい数の超高層ビル群は、海を挟んだ九龍半島からの眺望が定番かつ圧巻であり、九龍側には古き良き香港の雰囲気と猥雑さが残っていることもあり、「滞在ホテルは九龍側に」という香港ファンも多いです。そういう図式を当てはめると、近未来のコロンボは、まったく独自の成長を遂げていくであろう「ポートシティ」側にはない魅力をもつ、古き良きアーバンリゾート「グッド・オールド・コロンボ」として、まるで時代に逆行してしまったかのように生まれ変わるかもしれません、いえ、ぜひそうなるべきだと思います。

 

5感というキラーカード

さざ波の音と鉄道の汽笛を間近に聞きながらワクワクのチェックイン、木のぬくもりあふれる高速エレベーターで昇ったかと思えば、不意に2つの主棟を結ぶ高層回廊で潮風を体いっぱいに受け、開閉自由な高層バルコニーのある各部屋からの大パノラマに息を呑み、夜はコロンボ最長のTEPPAN(鉄板)カウンターにておしゃれなディナー、一気に焼き上げる海と山の幸、スパイスすらも鮮烈に香る時空を楽しむ、そう、ホテル『Granbell Hotel Colombo』の最大の特徴は「5感でもてなす滞在型アーバンリゾート」です。もちろん、一流のコンシェルジュたちがその世界へと導いてくれるでしょう。ここはGOC化(グッド・オールド・コロンボ化)には欠かせないキラーカードをすでに備えているのです。

さて、次号は、ついにIMF(国際通貨基金)による緊急支援を受ける方針を固めたスリランカに与えられるであろう試練の経済再生プログラムが、日系のベル―ナグループをはじめとするスリランカへの外国直接投資、そしてコロンボポートシティの潜在性にどのような影響を与えるのかについて、大胆に予想していきたいと思います。 (次号に続く)

 

 

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