Spice Up 観光情報サイト スリランカ観光・情報サイト

Rice & Carry スリランカのサステナブル

2025年7月02日

潮風が吹き抜けるスリランカ東海岸のコマリ。カラフルな米袋をミシンで縫い合わせる女性たちの笑い声が小さな工房に響いています。ここで生まれるのが Rice & Carry のアップサイクル・バッグです。Rice & Carry は、捨てられた素材を新しい商品に生まれ変わらせ、女性が働ける場をつくっています。この記事では、その取り組みを数字と現場の声で分かりやすくお伝えします。

Rice & Carry とは?

Rice & Carry は、スリランカ東海岸に拠点を置く企業 Lanka Upcyclesが展開する 3 ブランドの一つです。

Rice & Carry

米袋・スパイス袋・サリー・漁網などの廃材をアップサイクルしたバッグ&雑貨ライン。

Click Clack

手織り機で織った生地を使い、ビーチタオルやホームテキスタイルを製造。女性織り工や家族経営の工房を支援。

Waste Less Arugam Bay(WLAB)

アルガムベイ一帯でプラスチックごみを回収し、粉砕・再生プラスチック製品を作る環境プロジェクト。

3 ブランドが連動し、ごみ回収 → 素材再生 → 高付加価値商品 という循環モデルを構築しています。Rice & Carry はその“出口”として、アップサイクル製品を世界に届ける役割を担っています。

ブランドは 2012 年、ドイツ出身のHenryさんとオーストリア出身のSusiさん夫妻が作った一つのバッグから始まりました。現在は年間 6 万枚の米袋と 12 万本のペットボトルを再生し、40 名を超える女性に雇用を提供。企業全体で WFTO(世界フェアトレード機構)の Guaranteed Member 認証を取得しています。

公式サイトはこちらです。▶︎https://www.lankaupcycles.com

誕生の背景

観光地アルガムベイ周辺では観光客の増加に伴いプラスチックごみが急増していました。一方、多くの男性が中東へ出稼ぎに出るため、農村の女性には家事とわずかな庭仕事しか仕事がありませんでした。Rice & Carry は「廃材に価値を与え、地元に仕事を創る」という革新的な発想からスタートしました。

製造プロセス

廃袋やペットボトルは市場やホテル、ビーチクリーン活動から集められます。工房では徹底的に洗浄と除菌を行い、柄を生かして裁断します。縫製は在宅ワーカーを含む女性職人が担当し、最終検品と梱包まで WFTO 基準で実施しています。

プロダクトライン

Rice & Carry の製品は、素材ごとに大きく 4 つのコレクションに分かれています。

RICE BAGS

定番のマーケットバッグやビーチバッグは、25kg 用の米袋を防水ライニングごと再利用しています。カラフルな米袋プリントをそのまま生かした大容量バッグは、雨に強くサーファーにも人気です。

SPICE SACKS

カレー用スパイスを詰めて流通していた小ぶりの袋をアップサイクルし、ポーチやランチバッグに仕立てています。スパイス商標のロゴがワンポイントになり、軽量で持ち歩きやすいのが特徴です。

SARIS

役目を終えたサリーを洗浄・裁断して作る折りたたみエコバッグやバンダナが並びます。絹やコットン混の光沢ある生地が多く、同じ柄が二つとない一点物。たたむと手のひらサイズになり、旅のおみやげに最適です。

FISHING ROPE

漁網やロープをほどいて糸状にし、かぎ針編みでバッグやバスケットに再生。海辺の廃漁具を直接回収して編むため、海洋プラスチック問題へのメッセージ性が強いコレクションです。

4 つの素材はいずれも廃棄される運命にあったもの。それぞれの色柄や質感を活かしながら、トートバッグ・ポーチ・アクセサリーへと生まれ変わっています。

こちらのカタログで全て確認することができます。

社会と環境へのインパクト

Rice & Carry が再生する 60,000 枚の袋と 120,000 本のペットボトルは、年間約 18 トンのプラスチックごみを焼却や埋立から救っています。雇用面でも 40 名を超える女性が最低賃金を上回る収入を得ており、在宅勤務の仕組みが家事や育児との両立を後押ししています。

現場の声──3人の女性職人

Data さん(2018 年参加/最終検品担当)
「作品のクオリティチェックが私の仕事です。国がきれいになっていくのを見ると嬉しいですし、家族への金銭的サポートにもなっています。最近はスーシー夫妻に教わりながらパソコン操作を学んでいます。旅行者が『いい国だね』と言ってくれる瞬間が最高です。夫はドバイに出稼ぎ中ですが、私一人でも家族を支えられると感じています。」

Kumari さん(2020 年参加/漁網ニット職人)
「漁師さんが捨てていた網がバッグになり、海がきれいになったと感じています。一つひとつ丁寧に作業し、お客さまが喜ぶ姿が励みです。カバン作りだけでなく、ほかの作品のアイデアも浮かぶようになりました。日本のみなさん、ぜひ“買って”応援してください。それが私たちの家族を支える一歩になります!」

Sareh さん(2025 年 4 月参加/検品・パッキング担当)
「コロンボの喧噪から離れ、兄を頼ってコマリに来ました。タミル語が主流なので最初は大変でしたが、今は学びの毎日です。お客さまの反応を聞くのが何より嬉しいです。スーシー夫妻には“ゴミに価値を与える視点”を教えていただきました。廃材に価値を与える同じ活動をする仲間がもっと増えてほしいと思っています。」

体験ガイド 買える・訪ねられる場所

東海岸アルガムベイ(本店)

  • Rice & Carry Shop – Arugam Bay

    営業時間:9:30 am – 10:00 pm

    直営店で、4 コレクションすべてと限定カラーが最も充実しています。見学やワークショップの予約相談もここが窓口になるため、旅程に余裕があればまず立ち寄りたいメインストアです。

コロンボ市内(2025 年 6 月現地調査)

  • Barefoot(Col 03, Galle Road)
    米袋トートやポーチが最も豊富にそろっています。2 階のティー&フレグランス売り場にあります。
  • PR / Paradise Road(Col 07, Horton Place)
    漁網と米袋の特大トートが計 5 点陳列されていました。高価格帯ですが、在庫は揃っています。

リゾート・郊外

Jetwingグループでの取り扱いが増えています。詳しくはこちらをご覧ください。

▶︎ https://www.lankaupcycles.com/retailerinsrilanka

オンライン

日本からはオンライン決済に対応していないため、購入を希望する場合は各サイトのコンタクトフォームから直接問い合わせて、送料や決済方法を確認してください。

公式サイトのコンタクトフォームはこちら ▶︎  https://www.lankaupcycles.com/contactus

体験型ワークショップ

またコマリの工房は予約制で見学が可能で、旅行者向けにアップサイクルバッグを自作できるワークショップも用意されています。体験を希望する場合は、公式サイトのコンタクトフォームから問い合わせるか、アルガムベイのショップスタッフに直接声をかけるのが一番手軽です。たとえば筆者はアルガムベイのショップのお姉さんにお願いしたところ、翌朝には快く工房見学をさせていただきました。

まとめ

Rice & Carry は「廃材も資源になる」「買い物が誰かの自立を後押しする」というシンプルな真実を示しています。あなたの次のバッグ選びが、スリランカの海と女性たちの未来を少しだけ変えるかもしれません。

今日の選択が明日の海と家族の笑顔を守る――旅のルートにコマリ工房を加えて、アップサイクルの現場をのぞいてみてはいかがでしょうか。

出典

  1. Lanka Upcycles公式サイト
  2. Rice & Carry About Us ページ ほか

# 関連キーワード