-会計・税務コラム- GOC(グッド・オールド・コロンボ)化現象 (番外編 1)
無常
コロンボの名を超越した準都市国家が、ゴールフェイスグリーンの沖に誕生することを予言したのが前回の内容でしたが、事実は小説よりも奇なり、その波打ち際に突然誕生したのは、まばゆい近未来都市などではなく、国の支配者一族打倒の決起村でした。だれがそんな物語を書けるのでしょう。なお、現在の大統領は、その昔、米国のガソリンスタンドで働いていたということで、古巣のスタンドからは、カムバックホームGOTA、と温かくお呼びがかかっていますので、一刻も早くそれが実現すればよいと思います。
大混乱期にチャラ
2022年3月25日にスリランカ内国歳入局よりなされた突然の通達は、「3月31日までに、VAT (付加価値税)の過去の未納付分を完済することを条件に、付随する遅延ペナルティと遅延利息の支払については、これを免除する。」というものでした。
前回の大統領選直後に実行された2020年1月の大幅減税の前は、VATが適用される企業数と、課税対象となる取引数は現在とは比較にならないくらい多く、その直後から始まったコロナ禍も相まって、未納のVATとその遅延ペナルティ(納税額の10%)および利息(月毎に2%)が積み重なり、この2年間で未払額が1.5倍以上に膨れ上がってしまった企業もあったはずです。そういった中での上記救済措置は、唐突かつしれっと当局のホームページ上に掲載されただけでしたので、情報をキャッチして、公示から期限までのたった7日間に素早く対応できた企業と、それが出来なかった(気づかなかった)企業とでは、その後のキャッシュフローに大きな差が生まれてしまったわけです。ちなみにこの特別措置、経済大混乱の中で、年度末に少しでも多くの現金をかき集めたかった政府の意図があった、かどうかは謎です。
大混乱期の楽園
1年で一番熱い4~5月のコロンボにおける猛暑中の度重なる停電はカラダにこたえます。国全体にあまりに「不○」とか「不○○」の感情があふれかえっているので、個々の精神が負の方向に振りきってしまったまま戻ってこられなるのが危険です。自覚症状が出てからでは遅いので、今のうちにたっぷりと予防をしておかねばということで、ぶらり映画館に涼みにいきました。上映作品は現地人向けの愛憎劇でしたが、後味は意外にとても清々しく、それ自体は、ハイパーインフレのチケット価格にも十分納得の出来だったのですが、その物語設定がすこし変わっていました。次女が主役であるタミル人家族の動向が中心に描かれてれているのですが、みな流ちょうにタミル語を操るも実はそれはシンハラ人俳優たちで(家族の会話の時だけ急にシンハラ語の字幕が出たりする)、へー、こんなこともやるんだ、と感心して観ていました。山岳地帯の名もない駅のぽっぽや(鉄道員)一家の絆、そして森の湖で戯れる男女、ああ、スクリーンの中の世界は、マスクもGOTAもない楽園だな、と感じ入ったのでした。しかし、そこは映画ですから、軍人が任務中に逢引してしまったり、婚前交渉にまつわる裏切りや殺人があったりと、ある意味小気味よく展開していくものの、それが国軍の協力の下で実際の防衛大学校をロケ地にした国営映画局の作品だったので、この大混乱期の非常事態宣言下で軍の警察権が増強した中でも、大衆娯楽には手を抜かないなんて、なかなかこの国もやるではないか、と素直に思いました。
話は戻りまして、政治経済の大混乱期には、法律変更や政令の即日施行がなされる可能性はさらに高まり、実際に、次号で述べるようなVAT等税制の即日変更がすでに行われています。日頃から会計税務および法律の専門家と良い関係を築いておくことで、冒頭に述べたような重要な通達等を受け漏らして、企業の利を失うことのないように気をつけたいものです。 (次号に続く)
執筆者:吉盛 真一郎
慶応義塾大学経済学部卒。日本・香港・スリランカ・インドにて、日系企業の経理・財務・総務業務に約14年従事。スリランカでは、ODAプロジェクトにおける山奥での現場経験や、当時のCSR業務から派生したソーシャルビジネスの起業実績もあり、経営者としてスリランカ法人の管理業務の実績を数多く積んでいる。
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