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建築学生が行く!チラウの宗教建築

2024年6月25日

こんにちは!インターン生のあやねです。

今回は、コロンボから北に約70kmのところにあるチラウに行ってきました。

そこで見た仏教の寺院、ヒンドゥー教の寺院、カトリック教会について紹介します。

はじめに

スリランカを観光しよう!となったとき、挙がる地名にあまり登場しないチラウ。

美しいビーチと自然が楽しめる穴場ともいえるおすすめのスポットです。

ここを訪れるきっかけとなったのは、以前ルパヴァヒニ国営放送の日本語教育番組「After School」でお世話になったスリランカ人の日本語教師の方が私たちインターン生に、ご自宅へのホームステイと先生の勤務するカレッジに訪問するという機会を設けてくれたからです。

ルパヴァヒニ国営放送での収録の様子はこちらから ↓

日本の大学生がスリランカ国営放送に登場!

チラウの街の様子は、コロンボが都心のような場所だとすると、落ち着いた郊外のような場所でした。

今回紹介する宗教建築は、お世話になった先生の旦那さんが案内してくださいました。

先生のご家族は仏教徒だったため、とくに仏教の寺院ではブッダに関する物語まで丁寧に説明してくださりました。

1人で巡ったら、絶対に知ることができなかったお話や体験も交えて紹介します!

チラウの宗教建築3選

Sri Munneswaram Temple(ヒンドゥー教)

この寺院の歴史は非常に古く、少なくとも西暦1000年からあったと言われていて、スリランカに5つあるシヴァ神に捧げる古代寺院の一つです。

寺院が位置するMunneswaramは仏教系のシンハラ人とヒンドゥー教系のタミル人が混ざり合う地域です。シヴァ神に捧げる寺院であることから、シヴァ神の「リンガム」(男根を意味する)を神体として崇められています。

建物としてはスリランカで最大級のヒンドゥー教の寺院です。建物の細部は、アガマと言われるヒンドゥー教の経典に基づいたデザイン及び装飾が施されています。また、シヴァ神殿は東に面しており、周囲に3つの通路がある空間になっています。前方には神聖な池があり、その脇にはボーの木が立っています。

寺院の敷地内に入ると、スリランカではお馴染みの野犬とヒンドゥー教では神聖な動物とされている牛がお出迎え。

家畜としての牛しか見たことのなかった私にとって、野生の牛は新鮮で思ったよりも大きく、ふらふらと近づいてくるのは少し怖かったです。

そんな動物たちを横目に見ながら、靴を脱いで(土足厳禁)中に入ると、、、

白を基調とした広い空間が広がっていました。両サイドには多くの神様の像が見られます。

入口の所に赤と白の粉末が置かれていて、一緒に行ったホストファミリーが額に赤い粉を付けてくれました。これはティクリと言われるもので、男女関係なく付けることができ、悪霊を払い、幸福を願う意味が込められています。

さらに奥に進むと、石造の重厚感のある空間に入っていきます。

石造の空間を進んでいき突き当たったところにシヴァ神を見ることができます。

豪華な装飾が施された銀の扉の奥に祭られているシヴァ神の姿に圧倒されました。

シヴァ神が祭られている聖域の横には、お供え物ができる場所があり、ボーの葉や食べ物が供えられていました。

石造の神殿から出ると、通路沿いにたくさんの神様の像を見ることができます。有名な神様をピックアップして紹介したいと思います。

1枚目の像は、カーリーという戦いのために生まれた殺戮の処女神ドゥルガーをパワーアップさせた恐怖の女神です。大きな特徴は、肌が黒く、腕が左右4本ずつある身体です。生血を飲むことが好きで長い舌をぺろりと出し、夫であるシヴァの身体の上で踊り狂う姿で表されます。

2枚目の像は、ラクシュミという富と幸運を司る神様です。ラクシュミは、ヴィシュヌという正義と法を司り、全宇宙を維持・繁栄させる最高神が化身になったとき常に傍らにいる女神です。

3枚目の像は、サラスヴァティーという学問、文芸、音楽など64の技芸を司る神様です。仏教の弁財天でもあります。

神様を「見る」ことが出来るのは、偶像崇拝であるヒンドゥー教の寺院の魅力であると言えます。派手な原色に彩られた神様は、一見人間のような姿でありながら、頭が動物だったり腕が何本もあったり、ヒンドゥー教に馴染みのない私の目にはどれも刺激的でした。

この寺院には神様だけでなく、神様を載せて運ぶ動物たちの像も見ることができます。

美しいアクセサリーを身にまとった牛や孔雀、鼠、虎が並んでいます。

虎や牛は神様を載せるのに十分な大きさがあるように感じますが、鼠や孔雀は現実的に考えてしまったら「本当に載せられるの? 」と考えてしまいましたが、神様はきっと現世の大きさや重さをも超越した存在だと感じました。

●アクセス

(参考文献:スリ・ムネシュワラム・デヴァスタナム – スリ・ムネシュワラム・デヴァスタナム (munneswaram.com)

Karawita Temple(仏教)

寺院の敷地内に入るとたくさんの野犬がゴロゴロ寝そべっていて、気持ちよさそうに寝ていました。ここにいる野犬は寺院に供えられる食べ物などをこっそりもらうために集まってきて住み着いているそう。したたかに生きているなあと思いつつも、そんな犬たちを払い除けないスリランカ人の心の広さを感じてほっこりしました。

敷地に入り、まずこの寺院の最も偉いお坊さんに会いに行きました。その方の近くに修行僧思われる小学生から中学生くらいの年齢の男の子もいてました。一人の修行僧がまるで涅槃像のように気持ちよさそうに横たわっていて、可愛らしかったです。

仏教の寺院にある特徴的な建築と言えば、写真のような仏舎利塔と呼ばれるものです。この仏舎利塔は王朝によって形が異なるようです。大きなドーム状の建物を囲むように4方向にブッダの像が安置されています。細かな彫刻が施され、ドームから空に向かってまっすぐ伸びる構造が美しい建築です。

次に、先生の旦那さんが仏舎利塔の横にある建物に案内してくれました。こちらにはブッダの像が安置され、ブッダが輪廻転生する様子が壁画として全面に描かれています。

中に入って正面にまず奥にブッダの像とその手前に二つの神様の像が見られます。ここで「偶像崇拝禁止で、ブッタのみを仏とする上座部仏教なのに、なぜ神様の像があるの?しかも複数体!」と驚いて尋ねてみると、偶像崇拝で多神教のヒンドゥー教の文化と混ざり合って生まれた仏教の信仰なんだそう。スリランカは仏教徒が7割を占める国ですが、ヒンドゥー教やキリスト教、イスラム教等多くの宗教が信仰されている国であり、そんな国だからこそ生まれる新たな信仰の在り方だなと感じました。

●アクセス

Ilippedeniya Catholic Church(カトリック)

最後に訪れたのはこのカトリック教会。行ったとき門が閉まっていたので、見れないのかなと残念に思っていたら、案内してくれていた先生の旦那さんが、知り合いのこの教会の関係者に電話で交渉してもらい開けてもらえました!ラッキー!

中に入っていくと、明るく開放的な空間が広がっていました。天井兼屋根の構造はニゴンボの海沿いにある教会と非常に似ており、木造のトラス構造の上にレンガを載せた構造になっています。

ニゴンボの教会の記事はこちら ↓ ↓ ↓

建築学生が行く!スリランカの教会@ニゴンボ

祭壇の前方と側廊のところにあるアーチ構造は非常に間口が広く、採光と通気性に長けているなと感じました。窓も鉄の柵のみで完全に閉じる仕組みではないので一年を通して風が抜ける建築だということが分かります。ただ雨が吹き込んでしまう恐れがあるので、スリランカの雨季には弱いのではないかと考えると、広い意味での災害には脆弱な建築であるとも言えます。

祭壇に続く石の模様のタイルはあまりにも石の模様がリアルだったので、周りの落ち着いた雰囲気と比べると少しチープな印象を受けました。しかし私にとっては、そのチープさが良さでもあると感じていて、本場のカトリック教会の洗練された厳格な雰囲気と異なり、スリランカにカトリックが浸透し、土着の文化と結びついたり、気候やその地域での美意識が反映されたりしていることが垣間見れる点の一つがこの違和感だと私は感じています。

各柱には色鮮やかな聖人やマリア像が飾られていました。

柱の装飾は色のタイルが敷き詰められていて、西洋建築で見られる溝が彫られている柱とは全く異なる珍しいスタイルだなと感じました。金や柔らかな水色、様々な色のタイルから、どことなくチラウの美しい海やそこで感じられる日の光を彷彿とさせるような気がして、この教会がここに大変根付いているものであることを示しているように思えました。

突き当りに見えるのは豪華で美しい祭壇です。

十字架に貼り付けられて亡くなったイエスを優しく抱きかかえるマリアが、背景の壮大な太陽と山の絵画によってより劇的に表現されています。キリスト教における重要なシーンを祭壇にダイナミックに描く大胆なところが魅力だと思います。

この祭壇を囲むように配置されているステンドグラスは、身廊(会衆のための座席がある空間)を囲んでいるステンドグラスのデザインと異なり、全面がステンドグラスではありません。中央のステンドグラス越しではなく、直接日光が入るようになっています。ステンドグラスによって色の付いた光ももちろん美しいですが、日光が優しくイエスやマリアを包み込むような演出ができる仕組みだと思うと趣があります。

さらに祭壇の上部を見上げると、木材とレンガで組まれた構造が上に突出していました。これは西洋の教会建築で見られる、祭壇上部にドームを載せる構造を彷彿とさせます。ドームではなく風通しのよい木材とレンガで類似の構造を作っていいるのはスリランカならではで、大変興味深い部分です。

西洋の教会建築の文化とスリランカの気候や美意識が融合された非常に魅力的な建築でした。

●アクセス

おわりに

改めて建築は、その土地の文化や気候が密接に関わっていると感じました。スリランカの建築は日本には建たないし、同じように日本の建築はスリランカには建たない。そのような土地の独自性こそが魅力そのものだと感じられました。

また外部から伝播してきた文化が次第にその場所に根を下ろしさらに独自性を持つような変容を見れたと思いました。

ホームステイ先のお父さんという素敵なガイドさん付きで楽しめてとても良かったです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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