Spice Upインターンのまとめ
アユボワーン!ワナカム!(こんにちは)
私は、約3か月間Spice Upでインターンを経験しました。本記事では、このインターンで得た学び、スリランカでの特別な思い出、そして今後の展望について振り返ります。
目次
はじめに-当初の目的
私がSpice Upのインターンに応募した理由は二つあります。
一つ目は、将来の目標に向けた実務経験を積みたいという思いからです。
私は、将来的には海外で働くことを目指しており、「海外で働く」という環境がどのようなものかを体感したいという純粋な興味や、現地での実務経験を積みたいということが大きな動機となりました。また、私は大学で国際協力を専攻しており、特にアフリカの食や農業について学んでいます。途上国における食料問題や小規模農家の現状に関心があり、現地でのインターンを通じてこれまでの学びを実践的に深めたいと考えました。スリランカでは農業が経済の主要な産業であり、小規模農家がその基盤となっているため、現地の農業現場で直接触れ合う中で、課題や可能性を具体的に理解できるのではないかと期待しました。
二つ目は、Spice Upの環境に魅力を感じたからです。
過去のインターン生の体験記を読む中で、Spice Upは自由度が高く、自分のやりたいことを形にできる環境であると感じました。応募後には、神谷さんとの面談があり、その際にさらに確信を深めました。神谷さんは圧倒的な知識量をお持ちで、一つの質問に対して多角的な視点で答えてくださりました。また、アジア諸国やケニアなど、私が以前調査で訪れた国々を含めて広く訪問されており、そこでの経験談を伺いながら、「旅が好きな方なんだ」と感じたことを覚えています。私自身も現地での体験を大切にしているため、神谷さんの旅のお話にワクワクしたことを覚えています。
さらに、食や農業に関心があることをお伝えすると、現地で活動している日本人の方や国際協力に取り組む現地企業について教えていただきました。そのおかげで、インターン参加前からそれらの企業について事前調査を進めることができました。調べを進める中で、早く現地を訪れたいという思いがますます強まりました。
スリランカ渡航前に行ったこと
スリランカについて調査
大学2年次に履修した「エスニシティ論」の授業で、多文化共生をテーマにスリランカのシンハラ人とタミル人の対立についてレポートを執筆しました。内容は、多民族国家における共生と課題を考察するもので、スリランカが1948年の独立以降、社会の基盤がエスニシティにより形成されてきた背景に着目しました。この経験を通じて、スリランカに興味を持つようになり、渡航以前からスリランカに関連する本や論文を読んでいました。
渡航前に読んだ本は以下の通りです。
川島 耕司 『スリランカと民族-シンハラ・ナショナリズムの形成とマイノリティ集団』
杉本 良男・高桑 史子・鈴木 晋介 『スリランカを知るための58章』
栗原 俊輔 『ぼくは6歳、紅茶プランテーションで生まれて』
この他にも、Spice Upのオフィス兼ゲストハウスにはスリランカに関する本が沢山置いてあります。インターン生の皆さんにはぜひ手に取って読むことをおすすめします!
やりたいことリスト作成
スリランカで取材したい会社やレストラン、訪問したい施設なども事前に調査してリストアップしていました。また、一般的な観光地よりも、秘境のような場所に興味があったため、SNSで海外バックパッカーの旅情報を調査し、気になる場所をまとめていました。
スリランカの印象
スリランカへの渡航前にアフリカや東南アジアを訪れた経験があったため、衛生面や環境面、食事面などに特別驚くことはありませんでした。一方で、コロンボの発展ぶりには驚きました。スリランカの都市と農村のコントラストは、ケニアのナイロビと地方農村の状況と似ている印象を受けました。
宗教と文化の多様性
スリランカには仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教が共存し、多様な言語や文化、宗教を持つ国です。この多様性により、一国でさまざまな文化を経験できる点が非常に魅力的だと感じました。
スリランカの食事
スリランカ料理はスパイスを多用した多彩な味わいが特徴で、特にホッパーやロティ、ココナッツサンボル、キリバットなどが美味しかったです。中でもエッグホッパーは私のお気に入りです。辛いものが苦手な方でも、注文時に辛さを控えるようお願いすれば対応してもらえます。また、南国のフルーツは新鮮で非常に美味しく、食事全体の満足度を高めてくれました!!
ゴミ問題
バスに乗っていると、子どもたちが食べ終わったアイスのゴミを窓から捨てる場面を何度か目にしました。隣にいたお母さんも特に注意することなく、そのまま見過ごしている様子でした。ケニアでも、食べた容器や飲み終わったペットボトルをその辺に投げ捨てている人が多いのが現状です。特に農村地域では、ゴミ収集サービスが行き届いていないため、ゴミが焼却されたり水路に捨てられたりして、大気汚染や水質汚染につながっている点が課題であると感じました。
この問題の背景には、ゴミ処理に関する意識の低さや知識の不足があると考えられます。やはり、教育こそがこの問題を解決する鍵になると強く感じました。
スリランカ人の日本の印象
スリランカ人は日本に対して非常に好意的で、日本の経済的発展やアニメ、食文化への関心が高いことがわかりました。また、2004年のスマトラ島沖地震での日本の支援がスリランカ国内でも記憶されており、特に鉄道復旧プロジェクトへの貢献が高く評価されています。「津波」という言葉をこの地震で初めて知ったという人も多く、日本の支援を心から感謝している様子が印象的でした。(トリンコマリーで出会ったスキューバダイビングを経営しているスリランカ人からは、当時の津波の状況や日本の支援への思いも伺うことができました。)
学歴社会と海外留学
スリランカでは学歴社会の傾向が強く、特に高等教育が社会的地位やキャリアにおいて重要視されていることが分かりました。多くの若者が、英語圏であるオーストラリアやカナダへの留学を目指しており、現地で出会った友人たちの中にも、来年からメルボルン(オーストラリア)やトロント(カナダ)に留学を予定している人がいました。また、イギリスの大学院(オックスフォード大学)のオンラインコースで学び、修士号取得を目指して努力している人もいました。彼らの学びに対する意欲や努力を目の当たりにし、自分自身も大いに刺激を受けました。
インターンの実務内容
約3ヶ月間のインターンのうち、2ヶ月半はライティング業務やInstagramの運営を中心に行い、残りの2週間は営業に力を入れました。特に営業の仕事を始めてからは、もともと人と話すことが好きだったため、インターンがより充実したと感じ「仕事って楽しい」と思えるようになりました。具体的にライターと営業で行ったことは以下です。
ライター(取材)としての経験
私は、スリランカカレ―の料理教室に関する記事、バナナファイバーを使った商品を作る「MUSACO」の取組ついての記事、有機農業を行う村の紹介記事、スリランカのコーヒー会社「KIYOTA Coffee Company(KCC)」に関する記事などを執筆しました。
特に印象に残っているのは、「KIYOTA Coffee Company(KCC)」のスリランカ人社員へのインタビューと、契約農家である小規模コーヒー農家への取材です。スリランカは現在「紅茶の国」というイメージが強いですが、かつてはコーヒー生産が盛んな国でした。この歴史的背景の中で、スリランカコーヒーを世界に広めようと奮闘するKCCの創業メンバーたちに、これまでの苦労や挑戦のエピソードを伺いました。また、小規模農家の方々からは、コーヒー生産における課題やフェアトレードの取り組みによる収入増加について話を聞き、多くの学びを得ました。
また、KCCでは新規事業に関するミーティングに参加させていただき、ビジネスがどのように構築されているのかを現場で学ぶ貴重な経験を得ることができました。さらに、同社がコーヒーだけでなくカカオにも取り組んでいることを知り、学校や小規模農民の組合で開催されたカカオワークショップにも参加させていただきました。これらの体験を通じて、地域社会と深く関わるビジネスモデルの重要性を実感しました。
営業としての経験
営業方法には、飛び込み営業とテレフォンアポイントがありますが、私は後者を採用しました。日本人観光客におすすめしたいカフェやレストランに連絡を取り、初日には50件以上のアプローチを行いました。直接オーナーに繋がることは少ないため、まずマネージャーの連絡先を得てから、雑誌掲載の提案をし、日程調整のうえ商談を行うというプロセスで進めました。
テレアポでは、会話のリズムや押しの強さを意識しました。特にスムーズな会話を心がけ、相手が興味を示した場合は具体的な日程を提案して商談につなげました。事前準備も徹底し、カフェやレストランの場合は訪問先の開業年数や価格帯、Googleレビューの口コミなどを調査しました。このような事前調査により、商談の際に話がスムーズに進むとともに、相手に対して「よく調べている」という評価を得ることができます。実際に、「よく調べていて信頼できる」というような言葉をかけていただくこともありました。商談の場(カフェやレストラン)では、限られた時間の中で信頼関係を築くため、料理に興味がある私自身の強みを活かし、オーナーと料理の話題で盛り上がることを意識しました。
営業は「地道な努力の積み重ね」が結果につながる仕事であると実感し、毎日新しい出会いを楽しみながら取り組むことができました!
インターン以外での出会い
インターン期間中、さまざまな素晴らしい出会いがありました。5つの家庭でホームステイをする中で、大好きなスリランカ人ファミリーがたくさん増えました。また、旅先で出会い仲良くなったスリランカ人に、観光客がほとんど訪れないような現地のディープスポットに連れて行ってもらったり、海沿いで長い時間語り合ったり、元気いっぱいの子どもたちとたくさん遊んだりと、思い出が尽きません。本当に素敵な出会いと心に残る思い出にあふれた時間を過ごしました。
さらに、インドネシアを拠点に活動するフランス人フォトグラファーや、TEDトークに出演したイスラエル人瞑想研究者、母国で料理教室を開くオランダ人夫婦、スリランカに移住したスペイン人など、旅を楽しむ多国籍な人々とも交流する機会がありました。
彼らに共通していたのは、「人生を楽しむ姿勢」。その生き方に触発され、私ももっと自分の人生を楽しみたいと強く感じるようになり、海外で働きたいという思いが一層強まりました。
現地で出会ったスリランカ人やスリランカを訪れていた多国籍な方々はみんな素敵な人ばかりで、こんなにもたくさんの素晴らしい人たちと出会えたことに心から感謝しています。
インターンを通じて深まった人生観とこれからの道
インターンを終えた今、改めて自分の人生について深く考える機会を得ました。就職活動の早期化が進む中、大学3年生である現在、卒業後の進路について悩み、模索しています。ですが、このインターンを通して、自分の働き方や生き方への考えが一層明確になったと感じています。
組織と自分の在り方
今回の経験を通じて、私にとって最も重要なのは「どの組織で働くか」ではなく、「自分が何を提供できるか」、そして「自分のやりたいことを優先すること」だと実感しました。
「この会社で働けばステータスが上がる」という考え方にとらわれることは、自分の成長や挑戦の幅を狭め、結果的に陳腐化につながるリスクがあると感じました。私は、組織に使われるのではなく、組織を「自分の目標を達成するための手段」として活用できる人間でありたいと考えています。肩書を取った時に、自分が社会に何を提供できるのか、どう貢献できるのかを問い続ける姿勢を持ち続けたいと思います。
ワクワクする道を選ぶ
私は、常にその時々で自分がワクワクする道を選択することを大切にしてきました。今回のインターンでも、現場で自分の五感を通じて学び、実際に自分の目で見て体験することの大切さを改めて実感しました。
スリランカでの約3か月間はあっという間で、現地でやりたいこと、見たいことがまだ山ほどありました。時間が一瞬で過ぎ去ること、そしてそれが限りあるものだと改めて実感しています。(社会人になるとさらに時間の制約を感じることが多いですよね…)だからこそ、これからも自分の興味を持ったことには積極的に挑戦していきたいと思います。
家族と幸せの価値
「家族を幸せにできない人は、世界を幸せにすることはできない。」
この言葉は、国連IFADの職員の方が語った言葉です。スリランカで5つの家庭にホームステイした経験を通じて、家族を大切にする姿勢の重要性を深く感じました。物質的な豊かさだけが幸せを決定するわけではないことを、現地での生活を通じて実感しました。
彼らは限られた物質的資源の中でも、家族や地域の人々との強い絆を「豊かさ」として大切にしており、そこに本当の幸せがあると感じました。私も、自分の家族と過ごす時間を大切にしながら生きていきたいと思いました。
インターンシップを考えている方へ
Spice Upは自分のやりたいことを実現しやすい場所です。興味のあることを明確にしておくと、代表の神谷さんや関係者から具体的な情報やアドバイスをもらいやすくなります。私自身も農業や食に興味があることを話すことで、有機農業に取り組む現地で活動する日本人を紹介してもらうなど、多くの経験を得ることができました。自分の興味に基づいて積極的に行動することで、より充実したインターンシップが可能になると思います。
おわりに
このインターンを通して得た経験や考えは、これからの私の進路選択において大きな指針となりました。社会人としての時間の制約が増える中でも、自分が本当にやりたいこと、ワクワクすることに挑戦し続け、自分らしい人生を歩んでいきたいと思います。そして、家族を大切にし、周囲と絆を深めながら、社会に貢献できる存在を目指したいです。
余談~マレーシア農業ボランティアの話~
インターン期間中、一度出国する必要があり、その機会を利用してマレーシア・ケダ州のオーガニックファームで10日間ボランティアを行いました。ここでの経験が本当に素晴らしいものだったので少し紹介させてください。
このファームにはWorkaway 制度を通じて、世界各国からボランティアが集まっています。私が滞在していた時は、イギリス、フランス、ウクライナからボランティアが集まっており、彼らに加えて現地のマレーシア人スタッフたちと一緒に生活していました。
ここでの生活はというと、簡易的な水シャワーとトイレ(水を汲んで流す式)があるバンガローで寝泊まりしていました。(水は全て近くの川の水を利用しているので、雨が降った日は水は茶色。)生活は簡素で、川の水を飲み水に使うなど自然と共存するものでしたが、非常に豊かな経験を得ることができました。地域資源を活かして、循環するように設計されたファームの中で稲作や野菜の栽培を行い、その過程に純粋に感動するとともに、圧倒的な大自然の中で自分もまたその一部であることを再認識しました。フリータイムには川で読書したり、村の子どもたちと遊んだり、ジャングルを探検したり、充実した日々を過ごしました。
このファームは、私にとって「第2の故郷」のような存在となり、多くの価値観に触れるとともに、自分自身と向き合う時間を与えてくれました。ここで得た経験は、私が大切にしたいもの(大切にしなければいけないもの)を再確認するきっかけやパワーをくれました!
スリランカの自然、人、夕日が大好きです
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