スリランカのスタートアップ②電気自動車の「Vega Innovations(ベガ・イノベーションズ)」〜コロナ禍に立ち上がったスリランカ企業②
スリランカのスタートアップを紹介する第2弾。
そして、コロナ禍に立ち上がったスリランカ企業を紹介する第2弾。
今回はEVのベガ・イノベーションズ(Vega Innovations)をご紹介します。
スリランカでは日本の中古車はとても人気があり、街中でトヨタ、日産、ホンダ、スズキなどの日本車を多く見かけます。
幼稚園バスや温泉旅館のバスなどもよく見かけます。
日本に住んでいるスリランカ人の中で、自動車輸出に関わっている人、関わっていた人の割合は非常に高く、日本の中古車のニーズの高さを感じます。
そんな中、スリランカで完全に設計・製造された初の自動車であり、南アジア初のEVスーパーカー(電動スーパーカー)「Vega EVX」がVega Innovationsにより開発されました。
今回はVega Innovationsの概要と、同社のコロナ禍での取り組みについてご紹介していきます。
目次
スリランカのスタートアップ「Vega Innovations」
旅行業界向けのソフトウェア「Travelbox」を開発・運用を主要事業としている「CodeGen International」。
そのCodeGen Internationalの自動車事業を担う子会社が「Vega Innovations」です。
CodeGen InternationalはAIを基軸に旅行事業、自動車事業、農業事業、教育事業、輸送事業を展開するスリランカ人が創業した会社です。
Vega Innovationsは高性能で、コスト効率の良い、サスティナブルな技術をEVマーケットで形にするべく、Harsha Subasinghe氏(CodeGen Internationalの創業者・CEO)とBeshan Kulapala氏により、2013年12月に設立されたスタートアップです。
Subasinghe氏はロンドン大学シティ校でAIとソフトウェアエージェントの博士課程を修了しています。
ロンドン大学シティ校のロー・スクールはマーガレット・サッチャー、トニー・ブレア、マハトマ・ガンディーの出身校であり、同校のジャーナリズム・スクールはイギリス最大の規模を誇り、数多くのジャーナリスト、ニュースキャスター、報道記者、編集者などを輩出している名門校です。
Subasinghe氏は2000年にCodeGen Internationalを創業し、スタッフ500人を超え、スリランカ、イギリス、アメリカ、カナダに拠点があります。
Kulapala氏はアリゾナ州立大学の電気工学の博士課程及び経営学の修士課程(MBA)を修了し、インテルでエンジニアとして15年間働いていました。
そして、2013年12月の創業から6年の年月をかけて「Vega EVX」を開発しました。
EVスポーツカー「Vega EVX」
Vega EVX最大の特徴は、搭載されている電子機器やソフトウェア、モーターコントローラーなどの全てが自社で設計・開発していることです。
世界5大モーターショーの一つであるジュネーブモーターショーで3月にお披露目されるはずでしたが、新型コロナウイルスの影響により中止になってしまいました。
※ジュネーブモーターショーは通称で、正式名称はサロン・アンテルナショナル・ド・ロト。スイスのジュネーブで毎年春に開催されています。
その代わりに「Virtual Press Day」という配信サイトでプレゼンを行っています。
その動画がこちらです。
プレゼンターは創業者でディレクターのKulapala氏です。
このような状況の中、Vega Innovationsは自分たちのエンジニアリング技術を活かし、新たなプロジェクトへの試みを始めました。
コロナ禍の対応1「低コストの人工呼吸器の開発」
重症患者の増加に伴い、世界中で人工呼吸器の必要性が叫ばられるなか、Vega Innovationsのエンジニアチームはわずか10日で人工呼吸を設計しました。
一般的な人工呼吸器は一台およそ3万ドル以上しますが、1台650ドル未満での製造が可能とのことです。
Vega Innovationsの開発によって:
- 低価格で提供が可能
- 迅速な生産が可能
- 完全国内生産なので万が一の時の対応が可能
現在はDr. Chandana Karunarathna(Ministry of Health)監修の下、実用化に向けての実験を行っています。
コロナ禍での対応2「新しい形の消毒室の製造」
SLINTEC(スリランカ ナノテクノロジー研究所)発案のオゾン水を使用した新しい消毒室がVega Innovationsによってスリランカで初めて製造されました。
一般的な消毒室と違い、優れているとされる点がいくつかあります。
- 化学品や消毒液ではなくオゾン水を吹きかけることにより、人体にも環境にも優しい
- 全身の消毒にわずか20秒しかかからないため、オフィス入り口や公共の場の設置に適している
- 電力と送水管さえあれば完全自動なので低コストでの稼動が可能
現在はMinisty of Healthに2台、マラダーナ警察署に1台設置されています。
現地でのモーターショーの参加は叶いませんでしたが、歴史的偉業を成し遂げたVega Innovationsは、高度な技術と資格を持ち合わせた科学者とエンジニアの集まったチームとして名を馳せたに違いありません。これからもどのようにスリランカの自動車産業を引っ張っていってくれるのかが注目です。
>>>参照サイト
Low-cost Medical Ventilator Manufactured by Vega Innovations to Support COVID-19 Outbreak
Unique disinfection chamber which uses ozonized water
Vega Innovations unveils flagship electric supercar
スリランカの工学、知識、技術者のパッションが詰まったEVスーパーカー「Vega EVX」
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