建築学生が行く!スリランカの教会@ニゴンボ
こんにちは!
インターン生のあやねです。
今回は建築学生である私が、スリランカのカトリック教会について紹介します。
美しい装飾や西洋の教会建築とは異なる様式の建築など、スリランカならではの教会の魅力をお届けします。
目次
はじめに
最大都市であるコロンボから列車で北の方向に約1時間半のとこにあるニゴンボにあるカトリック教会を巡りました。
ニゴンボは「リトル・ローマ」の愛称でも知られている、多くのカトリック教徒が住む街です。
このような街が形成された背景として、ポルトガル統治時代に多くの西洋建築が建てられ、西欧文化が根付いていったことが考えられます。
街の至る所に置かれているマリア像やイエス・キリストの像から、信仰と生活が強く結びついていることが感じられます。
またニゴンボは、美しいビーチと賑やかな港町も有名で、海を中心として活気のある街です。
海のさざ波の音を聞きながら、神に祈る場を覗いてみましょう。
ニゴンボの美しいカトリック教会3選
Our Lady of Good Voyage Church – Duwa
ニゴンボの海岸沿いにたたずむ大きなマリア像が目を引く教会です。
Our Lady of Good Voyage とは、ポルトガルとスペインの船乗りのコミュニティで生まれた聖母マリアの称号です。
歴史的背景として、スリランカはかつてポルトガルの植民地であり、ポルトガルの勢力は特に西海岸から内陸に向かって広がりを見せていました。ニゴンボもポルトガルからの文化的影響を大きく受けた地域の一つです。
漁港が栄えているこの場所で、船乗りの安全と幸福を願って建てられたこの教会は、優しく船乗りを見守っているようにも見えました。
中に入ると、非常に開放的な空間が広がっていました。
一番奥にある祭壇の青く光るマリア像が目を引きます。電飾を付けたり、原色で彩るのはカトリック教会に限らずスリランカの宗教建築でよく見られます。
教会建築と言えば基本的に天井はヴォールトになっていますが、この教会は木造トラス構造であり、天井かつ屋根の部分は木材を組んだ上に瓦を載せているという非常に通気性のある構造になっていました。
熱帯地域ということと、海岸沿いで潮風にさらされるという環境を考慮して生まれた教会ということが分かります。
側面にはイエスが十字架を自ら背負い、処刑され、そして復活するまでの物語のレリーフが飾られていました。
柱について、柱の頂部である柱頭の植物の装飾からコリント式の柱にも見えます。しかし、柱部分に溝彫りが無いことから、トスカナ式を取り入れたものか、あるいはスリランカのバワ建築でも見られるような円柱を組み合わせた柱になっていると思います。
礼拝に来ている地元の人たちに混じって座席に腰かけてしばらく静寂に身を任せていると、さざ波の音が聴こえてきました。
海に生きる人々が、柔らかな潮風と優しい波の音を感じながら祈る美しい空間に感銘を受けました。
St. Mary’s Church
ニゴンボの中心部のグランドストリート沿いにたたずむランドマークともいえるローマ・カトリック教会です。
ちょうど外壁の塗りなおしのときに行ってしまったため、まだらな外観に少し驚きました。
これはいったい白になるのか、水色なのか、ピンクなのかどうなるのか分かりませんが出来上がりが楽しみです(笑)
この教会は新古典主義建築の様式をとっています。
新古典主義は主に古典と言われるギリシャ建築を再評価し、その技巧を復興させようという建築様式です。
この教会の正面のファサードを見てみると、ギリシャ建築に見られる三角形のペディメントが目を引きます。
いくつもの柱の柱頭にはコリント式に見られるような植物の細工が施されています。
このような特徴から、パルテノン神殿を代表とするギリシャ建築に見られるずっしりと構えているような重厚感が感じられます。
中に入ると、美しい絵画に彩られた非常に高い円弧を描いたようなヴォールトの天井が見られます。
天井に描かれているイエスの一生を表す絵画は、現地の画家であるN.S. Godamanne によって描かれたものです。
側廊との間に設けられたアーチ部分を構成するイオニア式に見られる植物の装飾は、金色であることでこの空間をより一層豪華に引き立ててくれています。
側面のステンドグラスから漏れる色とりどりの光も美しいです。
正面を進んでいくと荘厳な祭壇を見ることができます。
そしてこの見事な祭壇を照らしているのは、祭壇上部のドームから差し込む柔らかな光です。
このようなドーム建築はビザンチン建築に由来します。
具体的には、上部に出っ張った部分は正方形にドームを載せる構造となっています。一方、立方体に球を内接させるようにしたときの球体と立方体の接する面となるペンデンティブが見られます。
側廊にもアーチとヴォールトの特徴が見られます。
暖かな光が差し込む側廊は開放感があり、風が吹き抜けていくのが気持ちよかったです。
鮮やかで荘厳な雰囲気の中にも、穏やかな信仰心の感じられる素晴らしい建築でした。
St. Joseph’s Church – Thillanduwa Malwatta
ニゴンボの中心に近い場所にあるカトリック教会です。
サーモンピンクのかわいらしい外観が特徴です。
正面のファサードを見ると、多くの柱と三角形のペディメントがあり、一つ前に紹介した St. Mary’s Church と同じく新古典主義の建築のように思われます。
正面の上部の柱は、建物自体を支える躯体としての柱というよりかは、装飾としての役割であると考えられます。
中に入ると、Our Lady of Good Voyage Church と同じような木造トラスに瓦が載っている天井兼屋根の空間が広がっていました。
白を基調とした壁にカラフルなステンドグラスが映えてとても美しいです。
アーチ状の構造を多く取り入れ、柱はイオニア式のように思われます。
装飾はそれほど多くはないですが、シンプルで洗練されたデザインに魅了されます。
外に出て見ると、非常に開放的な側廊を見ることができます。
この場所は内部の西洋的な建築様式とは異なり、内部空間から外部へのシークエンスが感じられる開放的なデザインは、バワ建築において建物の中にガラス等の仕切りのないむき出しの中庭が登場するように、熱帯地域だからこそできる演出のように感じました。
どの方向からも風が抜けるような構造は、閉鎖的になりがちな宗教建築としては珍しく、スリランカに来たからこそ出会えた素敵な建築でした。
おわりに
仏教徒が多いスリランカで少数派のカトリック教会を巡り、西洋建築と比較しながら見ると大変興味深かったです。
スリランカの気候や文化が如実に表れている部分や西洋建築をそのまま模倣したようなスタイルなど様々な発見がありました。
ぜひ皆さんもニゴンボのカトリック教会に足を運んでみてください!
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