“スリランカにおける現代ファッションを徹底調査”
年間を通して高温多湿の南国、自然豊かで「インド洋の真珠」とも呼ばれるスリランカ。日本とは全く異なる気候に住むスリランカの人々が普段どのような服を着ているのか、どのような服を好むのか知っていますか?
欧米諸国の人々のファッションはInstagramやTikTokなどのSNSを通じて比較的よく知られています。一方、スリランカというあまり聞きなれない国の様子というのは想像がつきにくいものです。彼らは一体どのようなファッション文化を持っているのでしょうか?
〜はじめに〜
実際にスリランカ最大都市であるコロンボの街を歩いてみると、そこで暮らす人々の様子が見えてきます。シャツにタイトなパンツやワンピースといったシンプルなスタイルをよく見かける一方で、民族衣装を身につけている人々もいます。サリーを着る女性やサロン(ロングスカートのようなもの)を履く男性は少なくありません。そこで、彼らのファッション文化の実態を詳しく知りたいと考え、まずはターゲットを若者に絞って調査をすることにしました。
今回、スリランカ最大の大型ショッピングモールである「One Galle Face Mall」に訪れ、50人に3つの質問をしてみました。
※男性のサロンは部屋でリラックスするとき、つまりラフな格好として身につけることが多いのに対して、女性のサリーは公的な職場(学校や市役所など)やお祝い事の時に身につけることが多い。
※インタビューはショッピングモールに訪れていたスリランカ人20〜30代、男女無差別に50人を対象として行った。
目次
Q1. What style do you like?(あなたはどのようなスタイルが好きですか?)
Can I ask you a few questions about fashion culture? What style do you like? For example street style.. formal style..
◎Casual style ▶︎「日常的に身につけるのに適したリラックスできる服装、デニムやTシャツ、スニーカーやサンダルなどを格式張らず自由に着こなす。」
◎Mode style ▶︎「素材、ディティールにこだわった最先端のアイテムを身につけ、モノトーンを基調としたシンプルな色使いでシックに着こなす。」
◎Street style ▶︎「ヒップホップやスケートボードといった若者のカルチャーの影響を受けており、ルーズなシルエットのアイテムを着こなす。」
◎Formal style ▶︎グレーや紺、黒といった落ち着いた色を基調に、露出を控えてジャケットやパンツ、時にはタイトなワンピースやスカートを着こなす。
◎Dressy style ▶︎「テーラードジャケットやロングスカート、ヒールなどのアイテムで体のシルエットを綺麗に見せ、華やかに着こなす。」
◎Traditional style ▶︎「民族衣装であるサリーやサロンを日常的に着こなす。」
ショッピングモールに訪れた人々に声をかけ、上記画像を見せながら「好きな服のスタイル(系統)」を選んでいただきました。
その結果は、以下の通りです。
< 結果1 >
1位:Casual style 40%
2位:Mode style 22%
3位:Street style 16%
4位:Formal style 10%
5位:Dressy style 8%
6位:Traditional style 4%
◉ 過ごしやすい服装を好む傾向
最も多かったのはカジュアルスタイルで、全体の三分の一以上を占めています。続いてが全体の22%を占めたモードスタイルでした。ストリートスタイルも同程度に多く全体の16%を占めていいました。このことから、スリランカの人々は動きやすく自然な服装、モノトーンでシンプルにまとめた服装、あえてオーバーサイズを選びラフに崩した服装などが好まれていることが分かりました。
また、モードと回答した人の中には、モード系とは離れた服装をしていた印象を受ける人もいました。スリランカにおいての「モード系ファッション」の定義が日本のそれとは少し異なるのでしょうか。それとも単純に、モードな服装をしている人に惹かれるということを示しているのか。どちらにせよ「モード」というファッションの最先端であるスタイリングに興味を持つ若者が少なくないようです。
Q2. What sources do you refer to?(あなたはどんな媒体を参考にしていますか)
When you choose or buy clothes, what sources do you refer to? For example, magazines, Pinterest, facebook, and Instagram, etc. Is there anything else other than friends?
スリランカの若者はファッションの情報をどこから得ているのでしょうか。服選びやスタイリングを組む際に参考にしている媒体を聞いてみました。
< 結果 2>
1位:Instagram 56%
2位:shop 14%
3位:Pinterest 12%
4位:Facebook 12%
5位:magazine 6%
◉ 主流はインスタ、Facebookも人気。
現在日本において、SNSはファッションの情報を収集するのに欠かせないツールとなっています。スリランカにおいても同様で、Instagramはもちろんのこと、PinterestやFace bookなどのSNSを参考に服を選んだりスタイリングを組んだりしていることが分かりました。
一方で、同じSNSの中でも主流なアプリケーションには違いが見られました。日本において服に敏感な人の一部にX(Twitter)を閲覧している人がいます。一方でスリランカではXは主流ではなく、代わりにFacebookが支持されているようでした。
◉ 敏感な人は雑誌を読む
参考にする媒体として雑誌を選んだ方々は、一つ目の質問(どのようなスタイルが好きですか?)において的確な答えを示していました。他の媒体を回答した人の多くがドレッシーやモードスタイルの定義に首を傾ける中、雑誌を選んだ方は明確に自分が好むスタイルについて話してくださいました。
スリランカでは大きな本屋さんやセレクトショップ、スーパーマーケットに行くと雑誌を見かけることがあります。特にブライダル雑誌や富裕層向けのライフスタイル雑誌が目につきますが、比較的若い人が読むために刊行されている雑誌もあるようです。
『Pulse』・・・ 2015年にウェブサイトでスタートをし、2017年に初回号の雑誌が刊行された。スリランカの文化を古風から現代的なものまで取り上げている。ジャンルも多岐に渡り、ライフスタイルからエンタメ、食事、旅行など幅広い。若い世代だけでなく幅広い年齢層をターゲットとしている。
Instagram:https://www.instagram.com/pulse.lk/profilecard/?igsh=MXRlemxzaGkzeTVpNw==
『chocolate』・・・ 2006年、Michelle Gunesekaraさんによって、若い人へ向けて初めて刊行された雑誌。ジャンルは問わず、教育からファッション、音楽、スポーツ、アートといった様々な分野について取り上げている。もちろん、フェイスブックやインスタグラムを始めとするソーシャルメディアのプラットフォームでも情報発信を行なっている。
Instagram:https://www.instagram.com/chokolaatemag/profilecard/?igsh=MW92ZW1hZ3Q3ZG13Yg==
Q3. Is there a market for second-hand clothing in Sri Lanka?(スリランカに古着屋さんはありますか?)
I am Japanese. In Japan there are many second-hand clothing stores. Is there a market for second-hand clothing in Sri Lanka?
古着の市場は世界各国多種多様。古着で溢れている国、古着が高騰している国と様々であるのが実情ですが、スリランカにおいては古着市場はどのようになっているのでしょうか。
< 結果 3>
1位:知らない 84%
2位:知っている 16%
ほとんどのスリランカ人が古着屋を「知らない」と答えました。一方で「知っている」と答えた方々の数人は、口を揃えて「ハイエンドの古着は多少あると思う。」とおっしゃっていました。
◉ 古着屋さんは本当にあるのか?
「知っている」と答えてくださった人に古着を置いている店の名前を教えていただきました。
Odel, cool planet, mimosa , Shay int などが挙げられました。
新品の服が並んでいる印象を持っていた聞き覚えのあるショップ名が出てきたため、「本当に古着があるのか?」ということを実際に足を運んで店員さんに聞いてみました。
すると、、、「古着は置いていない」とのこと。
では古着屋は無いのでしょうか?
後日追加で調査したところ、“オンライン古着ショップがある”という情報を入手しました。
Instagram:https://www.instagram.com/refind.lk?igsh=MTJ3eWhseGlzdDdndg==
“あなたと人々を結びつける”という意味が込められた「REFIND」
ファッションの循環的な消費を目指しており、スリランカで最初の独占的なリサイクルマーケットプレイスとして、クローゼットの不要になった服とそれを求める人々を繋ぐ役割を果たしているようです。
他にもこのように古着を販売しているプラットホームはあるのでしょう。しかし多くの人が「古着屋さんを知らない」と答えたことから、古着市場があまり大きくないこと分かりました。
◉ What do you do with clothes you no longer wear?(着なくなった服をどうしているのか?)
古着屋さんの所在調査に行き詰まりを感じたため、視点を変えて調査をしてみました。
Do you throw them away? Do you sell them? Where do the clothes you no longer wear go next?
“着なくなった服はどこへ行くのか“
このことについて調べれば、“服の流れ“が少し見えてくるのではないかと考え再び大型ショッピングモール「One Galle Face Mall」に訪れ、聞き込み調査をしました。
すると、皆さん声を揃えて「人に譲る」と答えました。
では、誰に譲るのでしょうか?
「兄弟や従兄弟など親戚の人」「友人」「貧しい人」などが挙げられました。
不要になった服は、日本においては「捨てる」「売る」ことが多いです。しかしスリランカの人々は「捨てる」とだけ答える方は一人もおらず、ほとんどの人が誰かに無償で譲っているようです。
最後に
南国であるスリランカの若者は、過ごしやすいカジュアルな服装を好む傾向がありつつも、モードな服装を好みファッションへの興味が高い若者も多いことがわかりました。“古着屋”というものは存在はするもののほとんど認知されておらず、雑誌についても同様のことが言えます。また、彼らは服を捨てるということをあまりしません。自分が必要無くなった服は人に譲渡することが多く、彼らのものを大切にする精神も見えてきたと思います。今回、撮影やアンケート、聞き取り調査において本当に多くのスリランカ人とお話しさせてもらいました。彼らは、快くアンケートに答えてくださったり、中には恥ずかしがっている人もいましたがほとんどの人は喜んで撮影に協力してくださいました。
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