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-会計・税務コラム- GOC(グッド・オールド・コロンボ)化現象 (番外編 2)

2022年7月08日

もっとツッコめ

同時に存在する政策AとBのつじつまが合わない状態を「政策の矛盾」というのなら、大統領が自分の任期中に政策を180度ひっくり返す行為は「矛も盾もない厚顔無恥」と称されてしかるべきです。

5月31日付の首相官邸発表により、即日施行でVAT(付加価値税)の税率が8%から12%へ引き上げられました。現在の大統領は2019年10月に当選した後に、その試金石となる全国総選挙で勝利をあげるために、VATの大幅減率(15%から8%)をはじめとする大減税を行い、その結果、税収は37.3%減少し、源泉税徴収対象者の数は81.8%も減ってしまいました。大統領一族の支配を強化するための憲法改正を行うためにどうしても必要だった国会議席数の3分の2、これを確保したいがために打った人気取りの大減税政策の化けの皮はすぐに剥がれ、現在の前代未聞の経済崩壊につながりました。

今回、即日施行となった増税策は、VATの他にもTelecommunication Levy(電気通信税)が対象で、11.25%から15%へ引き上げられました。しかしこれらはスリランカ内国歳入局のホームページに即日掲載されたわりに、「国会への法案提出が、内閣で閣議決定された。」というだけの状態で、つまり正式な国会での可決はこれからよ、ということで、結局、為政者が率先して「例外」を行くこの国の病的なところは、まだ治っていません。マスメディアももっとこういうところをツッコまないと。

流動的ではあるものの

一方、国会で正式に可決し、2022年4月8日に発表された、Surcharge Tax(サーチャージ税)とよばれる新しい富裕税は、「2020-21年度の個人および法人の課税所得(子会社からの配当所得を除く)が20億ルピー超である場合、その全額に対して25%を遡及的に課税する」というものでした。なお、法人の所属するグループ会社の連結課税所得が20億ルピー超である場合にもその法人の課税所得に対して25%が課税されます。これらは1課税年度に限った課税ではあるものの、発表の12日後の4月20日を50%の納付期限、7月20日を残りの納付期限に設定するなど、かなり思い切った税制です。

また、「首相官邸発表」で「閣議決定止まり」、かつスリランカ内国歳入局のホームページにはいまだ掲載されていない、それでも決定事項のように報道されている税制変更(抜粋)は以下のとおりです。

2022年10月1日から施行予定の税制変更(抜粋)

◇ 個人所得税免税枠の引き下げ (年収300万ルピーから年収180万ルピーへ)
◇ 個人所得税率の引き上げ
◇ 個人所得税の源泉徴収(APIT)の義務化
◇ 国内各種取引にかかる源泉税(WHT)徴収の復活
◇ 法人税率の引き上げ(24%から30%へ)
◇ VAT登録免除枠の引き下げ(3億ルピーから1.2億ルピーへ)

 法律はただひとつ、でも

かねてよりスリランカでは、「大統領官邸発表」、「閣議決定」、「国会での可決」、そして前述したように臆病な大統領が隠れミノにして使っている「首相官邸発表」など、重要なルール変更が新聞やネット上でもっともらしく発表されるのですが、あてにならないものも多く、例えばさる2020年1月の大統領官邸発表は、新規外国直接投資の無期限凍結(スリランカ投資委員会BOIが承認する企業を除く)を行うというにわかには信じられないもので、その内容はスリランカ会社登記局(Registrar of Company)のホームページにも掲載されました。その後、詳しい情報収集が行えない状況のまま同年2月7日からの施行説まで流布しましたが、その後あれれ・・・その発表はいつのまにか風化し、上記登記局のウェブサイトからも消えてしまいました。

2022年6月末時点で「閣議決定」が行われた第21次憲法改正が、国会で可決されれば、前回の第20次憲法改正によっておびただしい権限を手に入れた大統領が、再び儀式的な立場に戻ると言われています。しかし軍の統率権は依然として大統領が保持しますし、数年前には儀式的な立場の大統領が当時の憲法を無視して首相の罷免を行った(その後、最高裁で違憲と判断されて撤回)例などもあり、今後も「例外」がまかりとおる可能性は十分にあります。そういう時は、すぐに法律に立ち返ってひとりひとりが自分の頭で考えてみる、そのお手伝いを我々現地コンサルタントがさせていただいております。

(次号につづく)

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