マウント・ラヴィニア・ビーチの美しい景色と、もう一つの忘れがたい光景。
11月初頭、日本であれば肌寒い日が続くこの季節。私は流れ出る汗をしきりにぬぐいながら、レンタルサイクリング屋で借りた自転車を飛ばし、その日の目的地である「マウント・ラヴィニア・ビーチ」へと向かっていた。
忙しない日常を忘れさせてくれる波音と夕暮れ
コロンボからデヒワラへと続く道を自転車で南下し、さらに路地裏を走ってしばらくすると、黄土色の砂浜と、その奥に広がる橙色を帯びた空が差し込んできた。穏やかな波音を聞き、夕日を眺めてる間に汗も引き、つい先ほどまでの大通りの忙しなさが、一瞬にして遠い彼方に忘却されるような気分になる。

生憎その日の天気は絶好とは言えないものであったが、それでもビーチにはいくつかの若者グループがたむろしていて、その後雨が降り出してもなお海に浸かっている人たちの姿も見えた。
日本でもスリランカでも、都市に長らく身を置いていると、それが常態化して段々と余裕が減っていってしまうのは避けられないことなのかもしれない。だからこそ一層こういったビーチをはじめとした安息の場は、そのような忙しない日常を生きる私たちこそ味わうべきものなのだと感じる。きっと日常に軽やかな余白を生み出してくれる——
とつらつら書きましたが、一つ言えるのは、ここマウント・ラヴィニア・ビーチで見た光景は本当にきれいだということです。視界一面に広がる海と夕焼け、さざ波、黄土色のビーチ、そしてその時間に浸る人々の姿…。僕のiPhone12で撮った写真ではそれを伝えるのに限界があったようです。ぜひ自分のレンズを通して、視て、感じてみてください。

道中で出会った光景、忘れられない言葉
マウント・ラヴィニア・ビーチの光景もさることながら、私の脳裏に未だに焼き付いているもう一つの景色がある。それはビーチへ向かう途中の出来事であった。
ビーチへ行くには途中で大通りから細道へと曲がらないといけないのだが、どうやら私は少し間違えた道を走っていたのだ。そしてその路地裏を自転車で走っていると、ある地点を境に周りの雰囲気が一変した。マンションなど近代的な建物の影は消えた。トタン屋根に窓はついていないような簡素なつくりのものが並ぶ。これまでのスリランカ生活で感じたことない雰囲気で、少しの不安を感じ始める。
そこをさらに少し進むと、突如として大きな空き地でクリケットをしている子供たちや若い兄ちゃんたちの景色が現れた。自分に気付いたそこの人々20人ほどみんなが、私のほうを振り返り、しばし眺める。それはものの数秒であったが、本当に時間が止まったような感じだった。自分の体に緊張が走る。「もしかしたらやばいんじゃないか……。」
しかしそれは杞憂だった。自分の目に飛び込んできたのは、子供たちの元気な声と、溢れんばかりの笑顔。安堵した私は空き地の隅に腰を下ろしてクリケットを眺めていた。そうすると若いお兄ちゃんが一緒にクリケットやるぞと、誘ってくれた。人生初クリケット。ルールは分からないけど、ただ全力で投げて、バットを振る。そんな私の滑稽な一挙手一投足に、周りの子供たちを中心としてみな、歓声を上げて、笑ってくれた。ほどなくすると、近くに連なる家から大人たちもぞろぞろと出てきて、遠くから私たちのクリケットを笑顔で眺めてくれているようだった。この時間と空間は自分にとって本当に心温まるものであった。

その一方で、私がいる間ずっと何か話しかけてくる一人のおじさんがいた。その人は飲食店を持っているらしく、クリケット中にもかかわらず、隙を見て、「この後俺の店に来ないか」といった勧誘を執拗にしてきた。さらには大麻を吸わないかというフレーズまで聞こえた。この国では日常的に大麻を吸うことは禁じられている。その人は決して悪い人ではなく、ただ自分の生活に必死だったのだと思う。そうは言っても私は少し怖くなり、この場所を去ることにした。
最後そこにいた人に別れを告げた後に、そのおじさんは手を頭に指しながら一言語りかけてきた。
「こういう貧しい人がいるということを、しっかり頭にとどめておくんだぞ。」
私は日本という恵まれた国の、特に不自由のない家庭で育ち、このような環境はどこか自分とは関係ないものだと思っていました。でもこの言葉を聞き、この風景をみて、それは自分と全く無関係のものではない、という考えが少しづつ芽生えてきたような気もします。世界を見渡せば、もっとはるかに貧しい環境で暮らす人もいて、今直接できることはほとんど何も無いのかもしれません。でもそこで、それは私たちと無関係だと断絶するのでなく、少しでも想像力を巡らせて、思いを馳せるだけでも、何か大きな一歩なんじゃないかと、今回の出来事を通して感じました。
このような形で、今後もスリランカ生活で体験したこと・感じたことを記事として届けていく予定なので、ぜひそちらもよろしくお願いします。
2001年熊本県生まれ。北海道大学法学部の4年生。2023年10月から2024年3月までインターン生として活動。
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