高校生が聞く「ルッキズムをやっつけたい」前川裕奈さんのお話
ルッキズムと戦い、セルフラブについて発信しているkelluna.代表の前川裕奈さんにお話を伺いました。
前川裕奈さんプロフィール
慶應義塾大学法学部卒。三井不動産に勤務後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科にて国際関係学の修士号を取得。 独立行政法人JICA、外務省専門調査員を経て、2019年8月にフィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業。著書に『そのカワイイは誰のため? ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』イカロス出版(2023年6月)がある。
スリランカでの起業について
スリランカで起業しようとしたときに、周りから何か言われませんでしたか?
スリランカでは女性が19歳で結婚して子供を生むことは珍しくありません。そのため、「30代独身は、起業している場合ではないのでは?(笑)」なんて言われたことはあります。一方で、男性社会のスリランカでは、女性の社会進出に対する問題意識が一定数は共有されているので、女性の起業という挑戦を好意的に受け入れてもらえることもよくありました。
kelluna.の女性スタッフさんたちとは、どのように知り合ったのですか?
最初の一人は、布屋さんで偶然出会いました。お互いお店のお客さんでした。「スリランカでアパレル関係の起業しようと思っている」という話をお店のオーナーにしたら、「他の常連で、力になれそうな人がいる。ちょうど今来ている」と紹介してくれました。彼女の名前はセナリといい、沢山の話し合いを経て、最終的にセナリと二人三脚で事業を進めることになりました。その後、従業員を募集しようと、新聞広告など活用しましたが、考え方が合う人になかなか出会えませんでした。そこで、セナリの知り合いや、ご近所のシングルマザーが多い学校の教員に話を広めてもらいながら、今のメンバーに出会うことができ、従業員が一気に13人になりました。
kelluna.のウェアはデザインが鮮やかですが、どのようなコンセプトなのでしょうか?
デザインは日本にはあまりないもので、スリランカの陽気さを表現できるものにしています。かつての私は痩せるために運動していました。今は楽しいから運動をしていますが、そのように変われたきっかけの一つが自己愛溢れるスリランカ人女性たちとの出会いでした。スリランカで知ったセルフラブの大切さを日本人女性に伝えていくのがkelluna.のコンセプトです。
古い価値観との向き合い方
突然ですが、日本にもまだ蔓延る亭主関白などの古い考え方はどうしたら変わっていくと思いますか?
少しずつ変わっていると思いますが、世代や国・地域を超えたコミュニケーションが活発になることで、変化のスピードは早めるのではないかと思います。周りが同じ考えの人たちばかりでは、なかなか変化していきません。違う立場の人や、異文化の人たちと触れ合うことで、違和感を持っているのは自分たちではないことに気付けることもあるでしょう。
女性が産後に復帰しづらい状況は変えていけるのでしょうか?
日本ではまだまだ男性が育児や家事をすることを特別視している状況があります。もしくは、男性が育児や家事に参加したくても、しづらい環境がまだ根付いていたり。一方で、女性が育児や家事をするのは「当たり前」とされています。例えば、小さな子どもがいる男性が飲み会に行くことについては何も言われない一方で、小さな子どもがいる女性が飲み会に行くと、「子供がかわいそう」、「家事をしなくていいのか?」など耳にすることもまだまだあります。会社の制度はもちろんですが、社会全体で男性が育児に参加したり、女性が仕事に復帰しやすい環境を作っていくことは必須だと思います。
古い価値観を強いるような人たちってまだ実際にいるのでしょうか?
私は社会問題などについて日頃から本やSNSなどで発信しているからか、大分周りからは減ってきたなと感じます。「ゆうなの前で失言したら怒られちゃうからな(笑)」なんて言われることはありますが。ただ、時々そういう「勘違いおじさん」に遭遇した際、友人などに話すと「まだまだいるよねー」といった反応なので、絶滅は全くしてないんだな、と思います。
そんな「勘違いおじさん」への対処方法を教えてください。
不適切なことを言われたときに、なんとなくとっさに笑ってしまうことや愛想笑いしてしまうことがあるかもしれませんが、私はそもそも笑わないようにしてます。こちらが笑ってしまうと、不適切な発言をこちらが喜んでいる、不適切な発言が面白かったのではないかと発言者を勘違いさせてしまう恐れがあります。いやいや、全然おもしろくないぞ、と。
嫌だと思った自分の気持ちを伝えてもいいものでしょうか。それを言われた側が気分を害するのではないかと気になります。
もちろん人や場面にもよりますが、気持ちを伝えることで受け入れてくれる人、気付いてくれる人もいます。本当に無意識に、悪気なく言っている人もいます。自分ではなく一緒にいる人が嫌なことを言われた場合にも、「今の発言ちょっと違和感あったかも」などと声を上げることも必要なときもあるでしょう。不適切な発言を受け流すのではなく、不適切なものは不適切であるとはっきりと伝えないと、そのような発言を減らしていくことはできません。ただ、キャラクター的にもそれができない、それをしたら場が凍る、みたいなこともわかります。そういう時は「今のどう思った?」など他人に振るのもありかもしれません。もしくは、その場で言わずに、あとから機会があればそっと伝える、など。「伝え方」は大事ですよね。言葉だったりシチュエーションだったり。ただ、こちらの気持ちを伝えたにも関わらず理解してもらえない人、感情的に反論してくるような人には、自分たちを守ることを優先して避けることも必要です。
取材日:2024年6月11日
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