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トゥクトゥク詐欺の全貌。その対策と意外に重要なマインドの話【体験談】

2023年10月27日

スリランカ初日。雨が降りしきる昼下がり、半ば強引に車外へと放り出され気付く。私は今トゥクトゥク詐欺に遭ったのだ——と。

今回はスリランカでトゥクトゥク詐欺に遭った筆者が、詐欺への対策法と、異国を旅する上で重要なマインドについて、あますことなく語る。

トゥクトゥク詐欺の全貌

トゥクトゥクに乗車するまで

スリランカに到着して初の外出日。私は日本円をスリランカルピーに換金すべく目的地に向かっていた。慣れない土地でどのように向かえばよいか苦心していた矢先、背後から一人の男に声を掛けられる。

「お前、リュック開いてるぞ!」

その男の言うように確かにリュックは開いていた。わざわざ見知らぬ外国人に声をかけてくれるとはなんて優しいのだろう。また聞くと、この男の兄弟が名古屋にいるという。こんなところで「NAGOYA」というワードを耳にできるとは!

そして要件を告げると、なんとそこまで案内してくれるというではないか。迷ってぐずぐずしている間に、男は後ろにいたトゥクトゥクを呼び寄せた。完全に心を開ききっていた私は乗車してしまう。それが詐欺への入り口だとは微塵も思わずに。そしてそこから私と男とドライバーの3人でのドライブが幕を開けた。

乗車後、高まる不信感

まず目的地の換金所に連れて行ってもらい、そこで円をルピーに無事変換することができた。「世の中にはこんなに心優しい人がいるのだなあ」、そう感じていると男は更なる乗車を促してきた。

「ん?どこに行くんだ?家まで送り届けてくれるのかな?」という無知が故の超絶楽観的思考を経て、再びトゥクトゥクにGet On。

ドライブが始まると男は「スリランカの代表的なビールを飲まないか」と話し、路上のお店に立ち寄ることに。そこで自分と男の分のビールを購入させられ、車内で乾杯。ただでさえ乗り物酔い持ちなのに、それにビールが拍車をかける。その次はヒンドゥー教のお寺(男は仏教の信者だと語っていたのにもかかわらず)に連れられ、寺院をバックに自分の写真をひたすら撮られ続けた。

この時点で私はかなり疲弊しきっていた、と同時に一抹の不安と疑いも生じ始めていた。男に対してしきりに「一体どこに向かっているんだ?」「もうそろそろ降りたい!」と伝えるも、「Don’t Warryね。I’m localね!」と謎の日本語語尾つきの英語でのらりくらりと交わされてしまう。そして地獄のトゥクトゥクツアーは、その後もしばらく続いた(他にはジュエリーショップ、よくわからない橋等に連れていかれた)。

二人の詐欺師に立ち向かうもあっさり降参。

自分の訴えがやっと伝わったのか、ドライバーは道端に車を停めた。「やっと終わった…」と安堵したのも束の間、コロンボ市内のトゥクトゥクの相場は数百ルピーと聞いていたので、私が財布から500ルピーを取り出したその時だった。それまでにこやかだったドライバーの顔が、突如として鬼の形相に変わる。

「そんなんじゃ全く足りねえ!黄色の札(5000ルピー)を出すんだ!!」

—5000?俺の聞き間違いか?いや確かにこいつはそう叫んでやがる—

全く意味が分からず、男に助けを求めるべく隣を見ると、彼は私の財布を見ながら、もっと払えと迫ってきた。そう、この二人はグルであったのだ。「もうルピーはないから払えない!」と伝えるも、男とドライバーは「それなら日本円を寄越せ!」と恫喝してくる。ここで私はあっさり降参してしまい、5000ルピー札2枚と1000円札4枚、日本円にして計約8500円を手渡してしまう。その後も彼らは激しい口調で何かを言っていたがよく覚えていない。

十分な金額が手に入ったと満足したのか、彼らは私を車外に放り出し颯爽とどこかへ消えていった。コロンボの雨に打たれながら、茫然自失のまましばらく突っ立って——徐々に意識を取り戻して気が付いた。自分は今、典型的なトゥクトゥク詐欺に引っかかったのだと。

事前に取るべき3つの対策

ここからは筆者の経験をもとに、やっておけばよかったと思う3つのことをご紹介する。事前の対策が詐欺に巻き込まれるか否かの9割を占めるということを今回ひしひしと痛感した。是非とも参考にしてほしい。

Uberなどの配車アプリを使うこと

スリランカに慣れていないのなら、野良のトゥクトゥクは用いずに、UberやPick Meといった配車アプリを使って移動するようにしよう。操作方法はいずれも、行き先を打ち込んで、移動手段を選ぶのみでとても簡単である。こういったアプリで詐欺をする輩はまずいないので、安心して乗車可能だ。

乗る前に金銭交渉を必ずすること

私はトゥクトゥクに乗る前に、どこに行くのか、一体いくらかかるのかも聞かずに乗り込んでしまった。今振り返るとありえないことだが、そういう不注意も起こりうるのだ。もしあなたが値段を聞いて、答えを濁されたら、それは詐欺である可能性が高い。絶対乗らないようにしよう。

道端で急に日本語で話しかけられたら身構えること

知らない土地で突然日本語で話しかけられたら、嬉しくなって心を開いてしまうのは仕方ないのかもしれない。しかしそういう時こそ要注意だ。スリランカ人がいくら親日だからと言って、道端で急に日本語で話しかけてくることなんて普通はしない。それに加えて、ずっとあなたをつけてきたら、そいつはあなたを詐欺に誘う悪魔だと身構えたほうがいいかもしれない。

私に声をかけてきた男は、兄弟が名古屋にいると言っていたがそれも全くの作り話だったのだろう。ニッチな地名や日本語を繰り広げられても、それだけで信用はしないように。

詐欺に気付いてからも勝負だって話

それでも事前の対策虚しく、あなたは間違えてトゥクトゥク詐欺の地獄のドライブに参加してしまうかもしれない。だがまだ勝負は決していない。劣勢ではあるがここから逆転することは十分可能だ。ここでは各シチュエーションにおいて、抑えてほしいポイントとこれだけは絶対にやってほしいことを紹介する。しっかり心に留めておいてほしい。

詐欺を疑い始めた乗車中

詐欺を疑い始めたときにまず大事なのが、「乗車しているトゥクトゥクのプレートナンバーを覚えておくこと」だ。乗降するタイミングは必ず訪れる。そのナンバーは、後々ツーリストポリスに証拠として突き出す際に重要となる。スマホのメモ等にしっかり記録するようにしよう。チャンスがあれば、彼らの目を盗んだ隙に、彼らの顔が分かる写真も撮りたい。それもナンバーと合わせて重要証拠として提出できる。

また厳しい現実であるが、あなたにはこの後1vs2の激しいバトル(口論)が控えている。この後伝えるポイントをもう一度頭の中で思い出して、最悪の状況に圧倒されないよう、予めシミュレーションしておこう。

金銭を懸けた激しいファイト

さあここが本当の踏ん張りどころだ。彼らはあなたに法外な金額を、激しい口調で要求してくる。奴らはあなたが数回抵抗しただけで、そうやすやすと引き下がることはない。あきらめたらそこで試合終了なのだ。

この記事の内容のほとんど忘れることになっても、これだけは必ず心に留めておいてほしい。

お金を渡すな。絶対に引くな。抵抗し続けろ。電話でポリスを呼べ。

私は抵抗すると怖い目に遭うのではと思い、すぐに降参してしまった。だが彼らは詐欺師ではあれど、マフィアでも何でもない。引き下がることなく最後まで戦い続けるのだ。そして重要なのが電話だ。もしあなたが警察を呼ぼうとすれば、戦況は一瞬にして変化する。警察でなくとも、知り合いのスリランカ人や日本人に連絡するそぶりを見せるだけで効果は抜群だ。

もう一度言う。引き下がらず、抵抗し続けよう。

〇ツーリストポリス(Tourist Police)の電話番号:(011)2421451

車外に放り出された後

ここまで何一つ上手くいかず、法外な金額を取られ車外に放り出されたら。遠目からでもわかる限り、もう一度ナンバーを読み取ろう。そしてすぐさまスマホを手に取り、写真を残すのだ。それが不明瞭だとしても全く何もないよりはるかにましだ。後日、それを持ってツーリストポリスを訪ねよう。

それでも詐欺に屈してしまったときは

以上で詐欺に遭わないための対策について述べたが、これらをもってしても、やはりトゥクトゥク詐欺に遭ってしまうことは当然ながらある。あなたは突如として変貌する彼らの姿に圧倒され、何も言い返すことができず、お金を差し出してしまうかもしれない。一瞬の出来事に呆然とし、写真を撮り逃し、車のナンバーの確認を怠ってしまうかもしれない。事実、事前にガイドブックで予習した私もそうであった。

じゃあそんな状況下で私たちにできることは一体何なのか。それは——

声高らかに、まぬけな自分を、精いっぱい笑い飛ばすこと

いいじゃないか別に。盗まれたとしてもせいぜい1万円。その引き換えに今後一生ネタにできる土産話をあなたは手に入れられたのだ。日本に帰って、大事な友に話そう。家族に話そう。そして皆で笑い飛ばしてやろう。きっとそれは最高な瞬間に昇華される。

…というマインドに達することができたのなら、あなたはもう大丈夫。何も心配はいらない。あとはスリランカの酸いも甘いも目いっぱい楽しんで、忘れることのない旅路を歩んでいくのだ。

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