ジェフリーバワ設計の公共施設「ベントタ駅」と「ベントタリゾートビレッジ」
ジェフリーバワの建築が最も集中しているのがベントタですが、その玄関口である鉄道の「ベントタ駅」、幹線道路のゴールロードに面した「ベントタリゾートビレッジ」はジェフリーバワによる設計です。
セイロン政府はベントタのリゾート開発プロジェクトを行う際、駅舎の設計と複合施設、そしてホテルの設計をバワに依頼したため、ベントタにはバワ建築が多くあります。
本記事では、ベントタリゾート開発と、ベントタ駅、ベントタリゾートビレッジについて紹介します。
目次
ベントタリゾート開発とは?
1960年代に入り、世界で旅客機の普及が進み出します。
それまでの海外旅行は旅客船が担っていたのです。
1964年、セイロン政府は現在のスリランカの玄関口・カトゥナーヤカ(කටුනායක)国際空港(現:バンダーラナーヤカ国際空港)を建設することに決定し、カナダ政府の支援で工事に着手します。
そして、1966年、セイロン政府はセイロン観光局(Ceylon Tourist Board)を設立し、観光業に力を入れ始めます。
1967年、カトゥナーヤカ国際空港が開港した年に始まったのが、政府によるベントタリゾート開発です。
同年、政府は国営企業「セイロン・ホテルズ・コーポレーション(Ceylon Hotels Corporation)」も設立しています。
ベントタリゾート開発プロジェクトの責任者が、兄ベヴィス・バワの友人である内務大臣ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ(後の大統領)でした。
ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ大臣の名前が刻まれた石碑がベントタリゾートビレッジには置かれているのは、そのためです。
石碑については、本ページ下部のYoutubeの動画でご覧いただけます。
なぜ、ベントタがリゾート開発地に選ばれたのか?

政府の正式見解は見つけられていませんが、コロンボからのアクセスが良いことがまず挙げられるでしょう。
コロンボとベントタは、海岸に沿って走る鉄道と幹線道路のゴールロードでつながっています。
そして、ベントタが持つ条件も開発のポイントになったかもしれません。
ベントタのビーチは遠浅です。
スリランカの南西海岸は5月〜9月にモンスーンの風が吹きます。
しかし、遠浅のため、そこまで大きな波にはなりません。
また、ベントタはココヤシのプランテーションがあったため、トディ(ヤシ酒)が有名です。
海岸にヤシの木がある光景は、旅行で訪れた人たちの南国気分を高めてくれるでしょう。
コロンボがある西部州と、ベントタがある南部州の州境になっているのがベントタ川です。
ベントタ川にはマングローブが生い茂り、スリランカ固有の鳥やワニなど様々な生き物の姿が見られます。
川上に作られたマングローブのアーチを通り抜けたり、野生動物ウォッチングを楽しむ、リバークルーズが可能です。
そして、南隣のインドゥルワ(Induruwa)、さらに南のコスゴダ(Kosgoda)はウミガメが産卵をするビーチとしても知られています。
こうした好アクセスと自然・生物の豊かさが選定のポイントだったのではないでしょうか。
加えて、ベントタ郊外にはバワの兄ベヴィスバワの庭園「ブリーフガーデン」があります。
ベヴィスバワは造園家として知られ、スリランカやヨーロッパ、オーストラリアなどのアーティストやセレブレティーがブリーフガーデンの見学に訪れていました。
そして、ベントタリゾート開発において大きな役割を担ったジェフリーバワの週末の別荘地「ルヌガンガ」もあります。
プロジェクト責任者のジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ大臣の友人であり、海外旅行をするような人たちが訪れるバワ兄弟の自邸・庭園が近くにあったこともベントタが選ばれたことに多少なりとも関係していそうです。
ジェフリーバワはその後、実際に友人をベントタビーチホテル(現:シナモンベントタビーチ)に誘い、ルヌガンガに招待したりしています。
また、ベヴィスバワはベントタリゾート開発に合わせて、自身の庭園「ブリーフガーデン」の一般公開を始めています。
バワ設計のベントタ駅舎

ベントタの駅舎はバワによって設計されました。
屋根や柱が並んでいるところがバワ建築と共通したものを感じさせます。

この丸みを帯びた窓は、鉄道の窓をイメージした形だそうです。

ビーチ側の道とつなぐ陸橋も、真っ白に塗られていてバワ建築のアヴァニベントタやシナモンベントタビーチの階段と似ています。
この階段を降りたところはアヴァニベントタの敷地の前に当たります。

駅前の広場からは、陸橋とアヴァニベントタの新館の屋根が見えます。
ベントタリゾートビレッジのエントランス
セイロン政府はジェフリーバワに、ベントタ駅とゴールロードの間にある池の周辺に、「観光案内所・銀行・郵便局・交番・ショップ・レストラン」が入った複合施設の建設を依頼します。

コロンボから車でゴールロードを南下してベントタに来た場合、噴水と「ベントタリゾート」と書かれた看板が見えるベントタリゾートビレッジのエントランスがまず見えます。

ホテル名が書かれたボードが並んでいます。
その奥には、バワらしい大きな壺が見え、これまたバワらしいロッジアが見えます。

建物の様子、線路沿いのフランジパニの並木道については、本ページ下部のYoutubeの動画をご覧ください。
ショップ「バザールベントタ」

ファブリックや仮面など、スリランカでよく見られるお土産品が販売されています。


レストラン「ゴールデングリルレストラン」

鉄道駅の方まで行くと、シーフード料理などを提供するレストランがあります。

店内の様子。
左手側に池が見えます。

テーブルからはベントタ池が見えます。

レストランの横にもフランジパニの木が植えられています。
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SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTD Managing Director
SPICE UP TRAVELS (PVT) LTD Managing Director
「旅と町歩き」を仕事にしようとスリランカに移住。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年4月、法政大学社会学部社会学科を卒業後、六本木の人材系ネットベンチャーに新卒入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長を経てネットベンチャーを退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当しながら、新宿ゴールデン街で訪日外国人向けバーテンダー。
2016年7月、スリランカに初めて渡航し、法人設立の準備を開始。
2017年1月、SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTDを登記。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年2月、スリランカ観光情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」オープン。
2020年8月、ニュースレターの配信を開始。
2020年10月、WAOJEコロンボ支部立ち上げ初代支部長に就任。
2023年2月、スリランカ日本人会理事・広報部長に就任。
2025年6月、SPICE UP TRAVELS (PVT) LTDを登記。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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