圧巻の彫刻に覆われた石造りのヒンドゥー教寺院「スリ・ポンナンバラワンスワラム寺院」
コロンボの歴史地区ことコタヘナに、巨大な石造りのヒンドゥー教寺院「スリ・ポンナンバラワンスワラム寺院(Sri Ponnambalawaneswarar Kovil)」があります。
インドの世界遺産に登録されている「エローラ石窟寺院」や「アジャンター石窟寺院」を彷彿とさせるような、洞窟寺院のような造りになっています。
コロンボでいくつもあるヒンドゥー教寺院の中でも、最もユニークで見応えのある寺院です。
私は何度か訪れていますが、以前は寺院の内部は撮影禁止と掲示されていたため、ネット上では紹介してきませんでした。
内部で写真をとっているファミリーもいたので、門番さんたちに撮影しても良いか尋ねたら、「OK! OK! No problem!」とのことなので、本記事ではスマホで撮影した数枚の写真を使っています。
帰ってきて、家で寺院についた本記事を書きながら、本寺院を紹介した記事を読むと、その多くに「堂内は撮影禁止」と書かれています。
神職の方々が祈りをささげる神様たちの写真は撮影を控え、信徒の皆さんが祈るささげる中央の台には登りませんでしたが、紹介するべきか悩みました。
ここの圧巻は堂内なのです。ヒンドゥー教やコロンボ歴史地区に興味を持っていただくきっかけになればと思い、記事にしました。
ヒンドゥー寺院は、午前中と夕方のみ開いていますので、訪れる際は午後の日中には行かないように気を付けてください。
名家「ポンナムバラム=クーマラスワミ家」による寺院
スリ・ポンナンバラワンスワラム寺院は、イギリス領セイロン政府の高官ゲート・ムダリヤールを務めたアルナチャラム・ポンナムバラムが設立し、法律家・政治家として財を成した息子のポンナムバラム・ラマナタンが大きく拡張させた寺院です。
ポンナムバラム親子は、イギリス領セイロン政府高官ムダリヤール、イギリス王室のナイト爵位授与者を多く輩出した、ポンナムバラム=クーマラスワミ家に属します。
寺院設立者のアルナチャラム・ポンナムバラムは、インドのタミル・ナードゥ州の歴史的な地区「トンダイマンダラム(トンダイ・ナードゥ)」のマハー・ムダリヤールで、15世紀にジャフナ半島に移住した人たちの末裔だとされています。
アルナチャラム・ポンナムバラムはジャフナのコロンボ7とも言われる富裕層が多く暮らした町マーニッバーイ(Manipay)出身です。
父親の死後、コロンボでゲート・ムダリヤールを務めたアルムガンピッライ・クーマラスワミの養子となります。アルムガンピッライ・クーマラスワミはジャフナ半島のポイント・ペドロ近郊のGarudavil出身です。
アルナチャラム・ポンナムバラムもゲート・ムダリヤールを務めます。晩年に行った南インド巡礼をきっかけに宗教心が高まり、スリ・ポンナンバラワンスワラム寺院を設立しています。
息子のポンナムバラム・ラマナタンは、歴史に名を残す活躍。父が建てたスリ・ポンナンバラワンスワラム寺院を1907年から1912年にかけて現在の石造りの寺院として再建します。
ポンナムバラム・ラマナタンの活動を要約すると、以下の通りです。
・セイロン国民協会を設立し会長に就任。
・セイロン事務総長に就任。
・セイロン人初のイギリス国王の顧問弁護士に就任。
・国家再生協会(National Reform Association)を設立。
・立法評議会に選出。
・ナイト爵位を授与。
・パラメシュワラカレッジを設立。
・ラマナタンカレッジを設立。
・ヒンドゥー教育委員会の設立を支援し、会長に就任。
・英字新聞セイロネーゼを創刊。
・タミル連合クリケット・アスレチッククラブの会長。
寺院の場所と構成
スリ・ポンナンバラワンスワラム寺院は、コロンボの北側、コタヘナのコッチカデにあります。
バス通りでもあるAC31側にも入口がありますが、正門は反対側のJampettah Lane側です。
ゲートをくぐって階段を上がっていくと、シヴァのヴァーハナ(乗り物)であるナンディン(乳白色の牡牛)の像があります。
そのまままっすぐいくと、本堂があります。
本堂は花崗岩で作られた堅牢な造りで、四角い形をしていて、内部をぐるっと回ることができます。
中に入ると、正面に高くなった部分が見えます。以前訪れたときはその上に多くの信徒が集まり、太鼓と笛ば響き、鐘が鳴らされ、祈りが捧げられていました。
この周囲をぐるっと回ることができます。
内部に図が掲示されてあり、これがこの寺院の構成を記載したものだと思います。(タミル語で書かれていて、私には読めません。)
彫刻
この寺院で目をひくのは、真っ暗な本堂の石壁や石柱壁に施された彫刻です。
白鳥、孔雀、牛、ライオン、神々が多数刻まれています。
列ごとに石柱の上に掘られた像が異なります。
列の角のライオンは下を出していました。
内と外の祠
本堂内には神々が祀られた祠がいくつもあり、プージャーの時間には順番に祈りが捧げられていきます。
祠は本堂の外の南側に並んでいます。
外の祠に並んで、ヴィヴェーカーナンダ像が設置されています。
裏門の牛舎
裏門には履物を預けるところがあり、門番さんがいます。その奥に牛舎があります。
正門の方には門番や履物を預けるところはありませんが、裏門では履物を預けて帰りにチップを支払う必要があります。
大通りに面しているのものあるでしょうが、聖アンソニー教会とスリ・ポンナンバラワンスワラム寺院を見学する外国人観光客は、裏門を使うからかもしれません。
チップが面倒な人は正門から入って、正門に戻るのがいいでしょう。
「牛!牛!」といって、裏に連れていかれると、そこに牛舎があり、餌などがあります。
草を渡されて、「牛に食べさせな!」と。
チップが欲しい流れに決まっていますが、この日は5000ルピー札しか持っておらず、チップは払えません。
「Oh, no change!」と言って、ノーチップでも大丈夫でしたが、もし牛に興味がある方は、チップを用意してあげてください。
寺院が開いているのは朝5時~12時、夕方16時半~20時です。
参考)
Wikipedia:Ponnambalam–Coomaraswamy family
Wikipedia:A. Ponnambalam
Wikipedia:Tondaimandalam
Wikipedia:Manipay
Wikipedia:A. Coomaraswamy
Wikipedia:Sri Lankan Vellalar
Wikipedia:Ponnambalam Ramanathan
「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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