建築学生が行く!スリランカの教会巡り【コロンボ3・4地区編】
建築学部で学んでいるインターン生のあやねです。今回はコロンボ中心部にあるキリスト教の教会を紹介します!
本題の教会についてお話しする前に、少しスリランカの建築についてお話したいと思います。
スリランカには「トロピカルモダニズムの巨匠」と呼ばれるジェフリー・バワによる名建築が各地にあります。
インターンに来たばかりの頃、ジェフリー・バワの建築に多く触れようとツアーに参加するなどしていました。ところが、少しずつスリランカでの生活に慣れてきて街を一人で探索するようになって目に留まったのがキリスト教会でした。
日本でキリスト教系のミッションスクールで学生時代を過ごした私にとって教会は馴染みあるものと同時に、仏教徒やヒンドゥー教徒の多い熱帯の島国スリランカでのキリスト教会の在り方を建築的なデザインの観点を、そこにいる信者の方の様子から知りたいと思い、教会を巡ることにしました。
コロンボにたくさんの教会がありますが、本記事ではゴールフェイス、コッルピティヤ、バンバラピティヤにある6つの教会を紹介します!
目次
Christ Church, Galle Face – Church of Ceylon
宗派:英国国教会
この教会は1853年に設立されました。この教会は当初、教会宣教師協会(CMS)大聖堂として名を馳せており、1799年にロンドンで開催されたCMS会議で、当時イギリスの植民地であったスリランカに宣教師を派遣して、スリランカの人々に神の言葉を説くという決断が下されたことにより設立されたものでした。ロンドンのCMSと地元住民からの寄付により、教会の建設が実現しました。最初の日曜礼拝は1853年10月16日に英語とシンハラ語、タミル語の3か国語で行われました。当時宣教師として礼拝をおこなったペティット牧師は、インドのタミル・ナードゥ州で14年間宣教師を務めていたということもあり、流暢なタミル語と英語で礼拝を行いました。そしてC.ジャヤシンハ牧師はシンハラ語の礼拝を行いました。
十数年前まで長期的な民族対立による紛争がありましたが、当時から教会ではそれぞれの民族を尊重した礼拝が行われていたことは非常に興味深いなと感じました。
美しい初期ゴシック建築であり、尖頭アーチの身廊とキングポスト(中央部分の垂直な支柱)を用いた屋根が一連のフライングバットレスで支持されている構造となっています。このような構造のおかげで、天井部分の部材が最小限に抑えられ、非常に開放的な空間を生み出していて、美しいステンドグラスからさす光に包まれるような荘厳な雰囲気を作り出しています。
また床については、モザイク床で連続的に様々な幾何学模様が組み合わさることで美しい模様を生み出しています。
訪問した際には、一部改装中だったので、またスリランカを訪れた際には完成した全体像も見てみたいなと思います!
所在地
参照:Church History – Christ Church Galle Face | Church of Ceylon | Anglican Church | CMS Cathedral
St. Andrew’s Scot Kirk Church
宗派:スコットランド国教会
200年ほど前、イギリスの支配下にあったスリランカには、イギリスから富を求め茶園を経営するイギリス人が多く移住し、その多くはスコットランド人でした。スコットランド人は次第に自分たちのコミュニティを形成するようになり、教会を設立しました。この教会での礼拝は1842年10月21日に始まりました。会員会衆は、スコットランド国教会の一部であるセイロン長老会に属していたため「スコットランド教会」という名前が付けられました。イギリスに先んじてスリランカの宗主国であったオランダのオランダ改革派教会の長老派教会の人々とも良好な関係を構築していました。
現在の教会は当時の所在地から移転したものになっていて、建築家エドワード・スキナー(ARIBA)が設計を、ウォーカー・サンズ&カンパニー(Walker Sons & Co)が施工をしたものであり、美しいステンドグラスの窓、ゴシック様式の柱、魅力的な大理石の床が特徴になっています。
この教会を訪れたとき、ちょうど屋根の改修工事をしていました。屋根の瓦を素手でバケツリレーのように下から屋根まで数人で投げながら運んでいて、日本では見られない原始的な改修の仕方をしていてとても驚きました。このような地道な手作業だとかなり時間がかかるなと思っていたのですが、次の日に教会の前を通ったら、屋根がきっちり完成していてスリランカ人の建設技能恐るべし!と感じました!
教会の開放時間は午前6時30分~午後6時30分、日曜礼拝は毎週日曜日午前9時30分、聖体拝領のお祝いは毎月第1日曜日、教会が運営する寄付品を販売するお店の営業時間は毎週水曜日の午前10時30分~午後1時となっています。興味のある方はぜひ訪れてみてはいかがですか?
所在地
参照:St. Andrew’s Scots Kirk – Colombo, Sri Lanka
The Church of St. Michael and All Angels – Church of Ceylon
宗派:セイロン教会
この教会はイギリス植民地時代の1853年にイギリス人によって設立されました。最初は非常に小さな教会であり、現在の教会の建物はかなり後になって建てられました。この教会の周辺には仏教寺院やモスクなどがあり、様々な礼拝所の共存が見られる場所でもあります。
建築的特徴としては、なんといっても石造の教会であるということです。石を組んで積み上げた内壁や外壁の重厚感から教会の厳かな雰囲気を感じることが出来る。教会内の身廊の天井は、鉄骨構造になっており、アーチ状の梁を半円の部材でブレースのような構造を形成しています。また、聖書に登場する物語が絵が画れている美しいステンドグラスもぜひ見て頂きたいです!
ちょうどこの教会を訪れたときに、中にあるマリア像の塗り替えをしていました。小さな筆でぬりぬりと鮮やかな水色が塗られていき、マリア像がきれいに蘇っていくようでした。日本では教会内であまり色の付いた像は見られないので、スリランカならではの色使いが新鮮で面白かったです。
所在地
参照:St. Michael and All Angels、St. Michael’s Anglican Church: Symbol of religious amity | Sunday Observer
St. Anthony’s Church
宗派:カトリック
白を基調としたすっきりとした印象の教会です。
中に入ると天井はトラス構造になっており少し現代的な雰囲気になっています。祭壇のある空間の四方や側廊と身廊を仕切る壁にあるアーチはいずれもアーチの両端が外向きに湾曲している特徴的なかたちになっており、この教会の内部装飾に統一感を持たせています。
内壁の白と座席や祭壇の少し艶のある落ち着いた茶色のコントラストがとてもきれいです。
祭壇上部は吹き抜けになっており、特徴的なアーチ状のハイサイドライト(高窓)から差し込む柔らかな光が祭壇を優しく包み込んでいます。吹き抜けによって自然光を効果的に取り込むことで、教会内の空間を美しく演出しているなと感じました。
所在地
St. Mary’s Church, Bambalapitiya
宗派:ローマカトリック教会
この教会は1873年に設立され、最初の建物が完成したのは1891年でした。しかし1914年火事によって消失してしまったため、その後再建されました。スリランカでの最も古い教会の一つと言えるでしょう。
白を基調とした教会で、美しいゴシック建築を見ることが出来ます。アーチや柱に施された細かな装飾が目を引きます。身廊を祭壇に向かって歩くと非常に大きなステンドグラスがあります。マリア像などが描かれたもので鮮やかな色使いが美しいです。
祭壇の上部はドーム状の吹き抜けになっており、ドームの切り口は8角形になっており、それぞれの辺に模様の付いたレリーフのような装飾とその上部にステンドグラスが施されたアーチ状の開口部が見られる。非常に開放的で光を沢山取り込める構造になっていると言える。
この教会を訪問したとき、ちょうど夕方のミサが行われる時間で、それを知らなかった私は気が付くとミサが始まってしまい外に出られなくなってしまったので、そのままミサを受けることにしました。高校ぶりに受けるミサは非常に懐かしく感じられ、国は違えど厳かな雰囲気は変わらず、信者同士の温かな時間が流れていました。
ミサの帰りに1人のインド人から声をかけられました。私を見て「服装がフィリピン人で髪型が中国人みたいだったけど顔見たら日本人だって思って声かけちゃった」と言われました(笑)どうやら彼は、日本に仕事で行ったことがあり、日本人の知り合いもいるようでした。それにしても私は一体何人なんだ!と自分でも笑ってしまうくらい好き放題言われて面白かったです(笑)
そんな面白い出会いをしてみたい(?)という方はぜひこの教会を訪れてみてはいかがでしょうか?
所在地
参照:St. Mary’s Church, Bambalapitiya In Srilanka: History,Facts, & Services
St. Paul’s Churh
宗派:英国国教会
スリランカで最も古い教会の1つであり、現在はセイロン聖公会の一部として位置づけられています。当初この教会は、ポルトガル人によってローマカトリックの礼拝所として建てられました。元の教会の付近には井戸があり、奇跡を起こす水との定評があり、病人が教会を訪れて井戸の水を飲むなど水の特別な効能が信じられていたそうです。
今までこの記事で見てきた教会と様式が異なり、イスラム教のモスクを彷彿とさせるようなドームが載っています。内部の天井もヴォールトやトラスなどは見られず、平面で格子状になっており、格子で囲まれた中にそれぞれ模様が入っています。
床にも細かな装飾が見られ、白と黒のシンプルな色使いですが、かわいらしい印象です。
この教会に入ったとき、教会で働く優しいおじさん(どうやら聖職者ではないようでしたが)が声をかけてくれ、教会を案内してくれました。案内をしてくれた最後に記念写真を撮ってくれると言い、祈るポーズをとるように言われ最前列の席で写真を撮りました。何度も同じ角度で写真を撮ってくれたのは、写真に写るのも、写真を撮るのも好きなスリランカ人らしいなと思い、ほほえましかったです。
所在地
参照:St. Paul’s Church, Milagiriya – Alchetron, the free social encyclopedia
おわりに
仏教徒の多い国でキリスト教の教会を訪れ、見学したり、時には信者の方のお話を伺ったりするのは少し勇気が必要でしたが、出会ったどの方もとても優しく、彼らにとって私のように異国の地から興味をもって足を運んできた人に対して、嬉しく思っているようで私まで温かい気持ちになりました!キリスト教が主な宗教の国ではないからこそ、伝来した建築様式がスリランカに適するように姿形を変えていたり、見たことのない色使いをしていたり、新たな発見があって訪問しているときも記事を書いている時間もとても楽しかったです。
宗教施設なのでなかなか入りにくいですし、ぜひ訪れてみてください!とは言いずらいのは残念ですが、少しでもご興味のある方は立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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