ゴルフ場や民家すれすれを通るケラニ渓谷鉄道
スリランカ鉄道といえば、コロンボ~バドゥッラをつなぐ紅茶鉄道(Main Line)、コロンボ~ベリアッタをつなぐ海岸鉄道(Coastal Line)が観光路線として知られていますが、2023年1月からコロンボ~アウィッサーウェッラをつなぐケラニ渓谷鉄道(Kelani Valley Line)に、観光列車「シーターワカ・オデッセイ(Seethawaka Odyssey)」が運行されるようになりました。
ケラニ渓谷鉄道は、コロンボ市内にある歴史あるゴルフ場「ロイヤルコロンボゴルフクラブ」を通り抜け、民家擦れ擦れを蛇行しながら走り、繊維問屋街のマハラガマなど国道4号線のコロンボ郊外の主要な町を通り抜けて、最後にポルトガル軍と果敢に戦ったシーターワカ王国の首都だったアウィッサーウェッラに到着するユニークな路線です。
コロンボ市内で何度も踏切を通過するのも、この路線の特徴です。
本記事ではケラニ渓谷鉄道について紹介します。
目次
ケラニ渓谷鉄道とは?
ケラニ渓谷鉄道は、コロンボ県西端のコロンボと、コロンボ県東端のアウィッサーウェッラを東西58.4kmを2時間半~3時間ほどで繋ぐ単線です。
コロンボ発の列車が朝に1本(8:30発)、夕方から夜にかけて4本(16:25、16:50、17:30、20:00発)、
アウィッサーウェッラ発の列車が早朝に4本(4:40、5:20、6:25、12:25発)、昼に1本(12:25発)と、運行本数が少ないマイナー路線です。
これに、毎週日曜日のコロンボ発7:15、アウィッサーウェッラ発17:25のシーターワカ・オデッセイが加わっています。
時刻表を見るに、アウィッサーウェッラからコロンボへの通勤客を対象にしているようですが、1日の乗客数はわずか14,600人だそうです。
ケラニ渓谷鉄道派、一部を除いて国道4号線(A4 Road)の近くを走っているため、ヌゲゴダ、マハラガマ、コッタワ、ホマガマ、パドゥッカなどコロンボの郊外都市を走るため、潜在的な需要はあると言われています。
しかし、平均速度が時速26キロと遅く、本数も少ないことから利用者数は低迷し、国道4号線の回廊の乗客数の約10%にとどまるそうです。
単線のため、反対側から来る列車を駅などで停車して待つことが多く、停車時間も長い路線です。
ケラニ渓谷鉄道の歴史(廃線となった2路線)
ケラニ渓谷鉄道は、ケラニ渓谷の農園で栽培されたゴム・茶などをコロンボに運搬するために、イギリスが1902年コロンボ~アウィッサーウェッラ間を開通しています。
1903年にはアウィッサーウェッラからヤティヤントタ(Yatiyanthota)まで延伸されています。アウィッサーウェッラから先のカラワネッラ(Karawanella)駅と ヤティヤントタ駅の間はケラニ川沿いを走り、まさにケラニ渓谷鉄道の名に相応しいように思います。
ヤティヤントタの”トタ”はシンハラ語で河口を意味するが、ケラニ川とウェ川(We Oya)が合流する地点である。ケラニ渓谷農園(Kelani Valley Plantation)が、現在も多くの農園をケラニ川沿いやウェ川沿いの渓谷で経営しているので、かつては鉄道で輸送していたのでしょう。
1912年にはアウィッサーウェッラ~ラトゥナプラ間が開通。サバラガムワ州の州都ラトゥナプラは、古代から宝石の町として知られていますが、周辺には茶・ゴム農園が多くあります。
1919年にはラトゥナプラ~オパナヤカ(Opanayaka)間が開通。
ところが、その後は路線は衰退していきます。
1942年にアウィッサーウェッラ~ヤティヤントタが廃線。
1973年にはホマガマ(Homagam)~オパナヤカ間が廃線に。
その後、少し盛り返します。
1978年にホマガマ~アウィッサーウェッラ間の運行が再開。
1993年から狭軌鉄道(762m)から広軌鉄道(1676m)に移行が行われ、1996年にコロンボ~アウィッサーウェッラ間の広軌化が完了。これはケラニ渓谷鉄道はカーブが多く、狭軌ではスピードがでないことから広軌に変更されたとのこと。
ハンバントタまでの延伸計画
2030年までに、アウィッサーウェッラからオパナヤケ、エンビリピティヤ、スリヤウェワを経てハンバントタに至る延伸計画が進行中です。
この延伸路線ではいくつかの滝が見られることから観光需要も見込んでいるそうです。インスタグラムやグーグルマップを見ていると、スリランカの人たちは滝が見るのが、たしかに好きそうです。
マータラからベリアッタまで延伸された海岸鉄道もハンバントタまで延伸する計画があり、実現するとコロンボとハンバントタは2つの鉄道路線で結ばれることになります。
それは楽しみではありますが、ケラニ渓谷鉄道の名から想起する”渓谷”を通っていたであろうアウィッサーウェッラ~ヤティヤントタ間を是非再開してもらいたいと個人的には思います。
日立製作所・現代自動車が製造した機関車が走る
日立製作所製と現代自動車が製造し、1991年にスリランカに輸入された機関車が客車を引っ張って走っています。
路線と各区間の特徴
ゴルフ場を通過するコロンボ市内
コロンボフォート駅
マラダーナ駅
メインラインと分岐
ベースラインロードと交差
ベースラインロード駅
コッタロード駅
★★ロイヤルコロンボゴルフクラブ(オデッセイ列車が一時停車)
ナラヘンピタ駅
キルッラポネ駅
国道4号線と並走するコロンボ郊外
ヌゲゴダ駅
ペンギリワッテ駅
ウダハムッラ駅
ナウィンナ駅
★マハラガマ駅(繊維問屋街)
パンニピティヤ駅
コッタワ駅
マラパッレ駅
マークンブラ・マルチモーダル・トランスポーテーション・ハブ
緑が増えてくるコロンボ近郊
南部高速鉄道(E01)をくぐる
ホマガマホスピタル駅
ホマガマ駅
パナゴダ駅
ゴダガマ駅
ミーゴダ駅
ワタレカ駅
リヤンワラ駅
旧シーターワカ王国(ゴム農園や茶農園が点在する、コロンボ県の水源地)
プッセリ川支流を渡る
パドゥッカ駅(ムッレーリヤーワの戦いに敗れたポルトガル軍が休んだとされる)
プッセリ川を渡る
アルクワトゥプラ駅
プスウェリ川を渡る
アンガンピティヤ駅(王がアンガンポラを見学した場所とされる)
ウッガッラ駅
ピンナワラ駅
ガンマナ駅
モラケレ駅
ワコヤ川を渡る
★★ワガ駅(オデッセイ列車と接続する観光バス発車駅)
カドゥゴダ駅
アラパナガマ駅
コスガマ駅
アルタムバラマ駅
ミリスワッタ駅
ヒングララ駅
プワクピティヤ駅
プワクピティヤタウン駅
キリワダラ駅
アウィッサーウェッラ駅(シーターワカ宮殿、王のヒンドゥー寺院、王の墓)
関連記事
参考)
Colombo Suburban Railway Project:Kelani Vallay Line Development
ceylon guide:Kelani Valley Line
Daily Mirror ONLINE:Romantic KV railway line to find new lover in Hambantota
Wikipedia:Kelani Valley Line
Wikipedia:Hanwella
Wikipedia:Padukka
Wikipedia:Pusweli Oya
Wikipedia:Udagama Kanda
「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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