200円のお小遣いで生活!?スリランカと日本の大学生の違い
こんにちは。スリランカで記者のインターンをしている、大学4年生の山田です。
今回はコロンボ大学の学生さんや、日本の大学に留学していたスリランカ人のナシャトさんに密着し、日本の大学生との違いをまとめてみました。現地学生へのインタビューを通じて、リアルな日常をお届けします。


楽しげな話し声が響いていました。
目次
コロンボ大学生の一日(タイムライン例)
- 7:30 登校
- 8:00–13:00 午前の授業
- 13:00 学食やカフェで昼食
- 14:00–17:00 午後の授業・実習
- 17:00以降 図書館で勉強、友達と過ごす、クラブ活動
授業スタイルは日本の大学と変わらず、コマを選択し受講します。ただしアルバイト事情は少し日本と異なりようで、「空きコマで1時間アルバイト」とはいかないようです。これは後にご説明します。
授業スタイル
授業の言語は基本的に英語で行われます。キャンパス内では、友人同士の会話にシンハラ語が多く用いられ、シンハラ語話者が多数派である現実が垣間見えます。
入学直後には英語のレベル分けテストが実施され、その結果に応じて受講する英語科目が決まります。特に地方出身の学生は英語の運用に苦労することが多く、最長で6か月間の集中英語プログラムを受講させられる場合も少なくありません。
また講義の規模感は科目によって違います。数学系の科目や化学系の科目は小人数ゼミになりがちな一方で、人事部、現代言語学部、社会学、観光学、マスメディアなどの科目は最大150人で行われている大講義も存在するほど。
コロンボ大学の場合も、Faculty of Arts (文系)は大学の中でも登録者数(在学生数)が多く、学生募集の規模が大きいことがウェブサイトに記載されていました。
また、定期試験はシンハラ語で受験することも可能ですが、授業そのものは英語のみで行われるようです。


人気の学部・専攻
一番人気は医者(医学部)。次いでエンジニア(情報学部)、法学部も志望者が多いです。
「独立開業した医者や一部の成功した弁護士なら年収1000万円も夢じゃないが、一般企業で働くと月給はせいぜい4-5万円ほど」との声もあり、職業による収入格差が非常に大きいのが現実です。
サークル活動とアルバイト
サークル活動
課外活動は非常に盛んです。今回取材したコロンボ大学を例に挙げると、AIESEC(国際インターン系)、LEO、ROTRACT(奉仕・交流系)といった団体に加え、宗教系・政治系サークルも活発で、活動が社会運動に直結することもあるようです。
また、スポーツが強いのも特徴です。水球やラグビーは大学が力を入れる競技で、なんと国立大でもスポーツ推薦があるんだとか!


アルバイト事情
スリランカでは高校在学中のアルバイトは法律で禁止されています。大学入学後は可能ですが、平均日給は500円程度と低賃金。親しいアイス屋さんのアルバイトの方は、13時間働いて貰えるのは2500ルピー(1300円)ほどだと教えてくれました。
そのため親からのお小遣いで生活する生徒もかなり多いようです。実際に学生に聞いてみると、一日400ルピー~1000ルピー(200円~500円)くらいがお小遣いの相場でした。
男子は塾講師・スーパー・カフェなどで働く例がある一方、女子は治安上の懸念から家族に禁止されるケースも少なくないです。
一方で、スリランカの国立大学は学費が無料です。教育費の負担がほとんどないため、経済的に厳しい家庭の子どもたちでも大学進学のチャンスがあります。この制度は「勉強に集中する」という文化を支える一方で、アルバイト文化が日本ほど根付かない背景にもなっているように感じました。
入学試験
大学選びは日本の一般入試とは少し違います。日本における共通テストやセンター試験に相当するような、全国一斉の共通試験のスコアで進学先が決まります。日本の国立大学で実施されるような2次試験は存在せず、30〜50万人が一斉に受験する厳しい競争となっています。ここで上位約8万人が国立大学(学費無料)へ進み、それ以外は私立や海外大学を目指します。そこからさらに上位約5,000人だけがコロンボ大学へ…。
「学費は無料だが、その“無料”に届くまでが難関」。
その後もシビアな関門は続き、高い留年率を誇っているのも実情です。レポート提出と試験が1:9の割合なのにその試験が難関ときたら、納得できますよね。在籍が長くなっても授業料は無料という制度が、粘り強く学ぶ文化を支えている側面もあるようです。
成績評価
出席は80%以上必要で、日本と同じくらい(かそれ以上?)に厳格。またGPA(成績平均値)は就職に直結しませんが、学部の選択は就職に影響します。
例:マネジメント学部(経済学部) → コンサル系就職。それ以外の学部からは難しい。
就職・キャリア
卒業後の進路は公務員、外資系企業、医者・弁護士、海外留学・移住など。特に外資系のエリートサラリーマンや医者、弁護士などになるには「政府の大学」出身でなければなれないと言われ、私立大学卒では不利。面接で落とされてしまうんだそうです。
学生生活の基盤
地方出身者は大学で寮生活を送ります。エアコンなし、6〜7人部屋も珍しくない厳しい環境なため、なんと先生の家に居候する学生もいるんだとか!!その場合は先生の仕事の手伝いをするんだそうですが…日本だと色々問題になりそうですよね。
また学食は安いけど味はイマイチという声も。高校の学食は無料ですがが、大学はあくまで割引価格。そのため、大学付近の外の料理屋に食べに行くのが王道なようです。

奨学金はほとんどなく、親の仕送りで生活する学生が多いです。小中高の13年間は全員無料、さらに国立大に行けば学費はただなので、奨学金自体あまり一般的ではないんだとか。
ただし「親が無職」などの理由がある場合は、わずかな補助(2500円/月程度)が支給されるようです。
学生文化・ライフスタイル
連絡手段はWhatsAppが主力、SNSはInstagramが人気。LINEはほぼ使われていないです。
若者の間でも、音楽はシンハラポップが人気!親の影響で聞いている子も多い印象です。昔にリリースされたシンハラミュージックは歌詞が刺さるそうです。
恋愛は一般的で、キャンパスライフは一見のびやか。その一方で、いじめの問題は深刻だといいます。経済格差や出自を背景にトラブルが生じ、中退や自死に至るケースもあるとの痛ましい話も。
「田舎の出身者が、都市部出身者や金持ちをいじめる」と語った学生もいました。そうすることで、自分の立場の弱さや劣等感を埋め合わせようとしているのだといいます。
またインタビューした学生の一人は、コロンボ大学に合格したにもかかわらず、いじめの危険性を理由に家庭の強い反対で海外大学に進学したと話してくれました。
明るさの裏に、社会的な緊張の影を感じました。
社会との関わり
スリランカの大学生は社会運動に積極的。学生組合の影響力は極めて大きく、政治への反感や法律改正の主張をテレビなどのメディアを通じて発信しています。歴代の政治家にも学生運動出身者が少なくないです(実際、前大統領は学生組合のリーダーでした)。
大統領の逮捕もコロンボ大学の学生組合から始まったようで、コロンボ大学の学生組合が中心となり大規模な抗議のうねりを作ったようです。
宗教行事は生活に根差しているようです。仏教徒の学生であっても、ラマダン期間にムスリムの友人に合わせて断食を体験することがあるんだとか…!政治の話題は日常的に交わされ、タブー視されない。ここに、日本との文化差がはっきり表れています。
年間のリズムでいえば祝日が多く、毎月のポーヤ・デーと各宗教のお休みがあるため月に2日以上祝日がある月が多い。スリランカには夏・冬の分け方が存在しないため(雨季・乾季)、長期休暇は存在しないとのこと。唯一の入学直後の“長期休み”も長くて1週間ほどと短いのも大きな違いです。


まとめ:スリランカの学生たち
スリランカの大学の試験は非常に厳格であり、学生たちは日々熱心に学びに励んでいます。
しかし一方で、複数の学生が口にしていたのは「スリランカでは大学を卒業しても就職先が見つからないことがある」という現実でした。
せっかく大学で高度な知識を身につけても、肝心の受け皿がない。そうなれば、より良い機会を求めて海外へ流出するのは自然な流れといえるでしょう。現在では、法律や医療といった専門職の人材が海外に流れる事例が相次ぎ、社会問題として取り上げられています。
コロンボ大学で見た学生生活からは、学びの厳しさと同時に、社会との近さが強く感じられました。日本の大学生と比べると、「勉強にかける重み」や「政治・社会への距離感」に大きな違いがあり、まさに異文化を体感する取材でした。
スリランカでライターのインターンをしている、名古屋大学4年の山田です!バスの爆音クラクションや町に漂う強烈な排気ガスの匂いにも、少しずつ慣れてきました。帰国したら速攻で耳鼻科に行くつもりです。
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