建築学生が行く!スリランカの教会巡り【コロンボ2・5・7・10・13地区編】
あやねです。今回はコロンボの教会巡り第2弾として7つの教会を紹介します。
目次
St. Anthony’s Shrine. Kochchikade
宗派:ローマカトリック教会
この教会が2019年に連続爆破テロ事件で標的になってしまったことは記憶に新しいです。この連続爆破テロ事件は、コロンボをはじめとする国内の教会や高級ホテルの合わせて6か所で発生したテロ事件を指します。その日はキリスト教の復活祭すなわちイースターだったこともあり、教会とホテルには多くの人が集まっており、259名が犠牲となった痛ましい事件です。未だに軍の警備員が何人もいたり、教会内の撮影は禁止されていたりなど厳戒な態勢でした。教会内には、事件時に飛び散った血痕がそのまま残されている、爆風の中残されたキリスト像が安置されており、事件のむごさを強く感じました。
所在地
参照:St. Anthony’s Shrine Kochchikade, Colombo, Sri Lanka
Queen of Peace’s Church – Maligawatte
宗派:ローマカトリック教会
この教会が立つ場所はもともと草木が生い茂る湿地帯で人が居住するのには適しているとは言えない場所でした。このような場所を開発し、人々でにぎわう街を創ろうと立ち上がったのは、当時の地方政府大臣のラナシンゲ・プレマダサ大臣でした。彼の計画は、この地域に宅地を開発し、アーティストや歌手、俳優、女優、政府関係者など様々な分野の人々を住まわせることでした。次第に人口が増えていき、住民の精神的な拠り所となる場所を建設することに重きを置くようになっていきました。したがって、仏教やヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教の礼拝所を建設する土地の区画を割り当てました。当時の大司教であったニコラス・マーカス・フェルナンド氏の指揮の下、バートラム・ダブレラ神父は、ミルロイ・ペレラ博士の工学的な専門知識とアイリーン・アグネス・アレス夫人の金銭的援助を受けながら、現在の教区教会の建設を引き受けました。
この教会の最大の建築的特徴と言えば、なんといっても八角形であるということでしょう。正面玄関部分を除くすべての面が透明なガラスで覆われており、主祭壇が周囲の自然と融合し美しい景観を作り出しています。また、身廊や側廊という区切りが無いことで、人々が「集まる」という意味合いが空間の中で色濃く出て、教会が人々にとって憩いの場であり、拠り所であるということが垣間見れます。
建築様式ととしては、仏教とスリランカの様式が混ざり合ったものになっています。輸入された建築技術ではなく、スリランカ独自の建築技術を用いることで、スリランカの風土に合った、独自の教会の雰囲気を出すことができ、他の教会とは違った独特の味わいのある建築になっています。
所在地
参照:Glimmering Silver Year’s Story Of the Parish of Maligawatte – News Features | Daily Mirror
Infant Jesus Shrine and Holy Rosary Church – Colombo
宗派:カトリック
この教会は切妻屋根にトラスという比較的近代的な構造をしているなという印象を受けました。カラフルなステンドグラスや尖頭アーチのデザインが多用されている所に伝統的な西洋建築の様式が感じられますが、比較的新しい造りだと言えると思います。
この教会でも一部改修工事が行われていました。高いところに足場を組んでヘルメットも命綱もなしに壁にペンキを塗る姿はやはりワイルドでした。
私が一人で教会内をうろついているとおじさんに声をかけられました。おじさんは「君は日本人か?それともタイ人か?」と私に尋ねてきました。東洋人の顔は、たいてい中国人に見間違われることが多いですが、タイ人と言われたことにはさすがに驚いて首をぶんぶん横に振っておきました(笑)私はどうやらアジア人の中でも汎用性のある顔をしているのかもしれません。(教会巡り~コロンボ編1~の中のエピソードも参照ください笑)
この教会の側廊には多くの聖人の人形が並んでおり、あまりのリアルさに一瞬ぎょっとしてしまいましたが、教会内でこれほど多くの像が一気に並んでいることは珍しいと思うので訪れた際にはぜひ見てみてください!
所在地
Church of Our Lady of Fatima
宗派:カトリック
建築的にとてもユニークなデザインを有していることから、普段のミサに加えて結婚式での利用でも人気のある教会です。
外観はそれほど珍しいかたちではありませんが、中に入ると今までに見たことのない構造が広がっていました。教会の中央部分には八角形のドームがあり、そのドームを囲むように四方向に屋根が下がっており、4辺の間にも外側に垂れ下がるように屋根が下りており、全体として花の花弁が広がっているような特殊な構造を形成している。祭壇は中央奥にあり、最も神聖な場所が奥に位置するのは多くの教会と似ているが、会衆が集う場所がこれほど開放的で求心的である教会建築は珍しいなと感じました。
この教会では、優しい信者のおじいさんが話しかけてくださり、案内してくださいました。教会を巡ることは、建築のすばらしさを再発見できるだけでなく、そこにいる人々の営みを肌で感じることが出来るのもディープな楽しみ方だなと思います。
所在地
5. All Saints’ Church – Borella
宗派:ローマカトリック教会
1886年6月28日に当時のボンジャン司祭によって教会の礎が築かれました。この教会はスリランカの中で唯一モザイクアートのガラス細工が施されています。建築様式は主にゴシック様式で、天井の美しい曲線のヴォールトが非常に印象的です。余談ですが、日本の世界遺産にもなっている長崎県にある大浦天主堂もこのような美しいヴォールトの天井になっていました。
また身廊の両脇に多くの聖人の像が飾られているのが大きな特徴と言えるでしょう。キリスト教は基本的に偶像崇拝はしないので、これほど聖人を称え、像が飾られている空間は少し不思議な感じがしました。この記事の3つ目に紹介したInfant Jesus Shrine and Holy Rosary Church – Colomboにも沢山の聖人の像がありましたが、スリランカがヒンドゥー教の文化も根強い国であることから、ヒンドゥー教の偶像崇拝や多神教の文化が少し反映されているのかなとも感じました。比較的装飾が多く華やかで豪華な教会でした。
所在地
参照:Spectrum | Sundayobserver.lk – Sri Lanka
6. The Cathedral of Christ the Living Saviour (生ける救世主キリスト大聖堂)
宗派:英国国教会
この大聖堂は約50年の歴史を持ち、多くの信者に大切にされてきました。様々なバックグラウンドを持つ人々を尊重しており、シンハラ語、タミル語、英語での聖体拝領の時間が設けられています。英語の礼拝の時間についてはライブストリーミングも行われており、時代の変化と共に信仰の在り方も多様化していると言えるでしょう。
毎週地域の人々に400人以上の人々にお弁当を振舞うボランティア活動も行っており、積極的に地域のコミュニティと繋がっていこうとする活動的な教会の一つです。
この教会も特殊な形をしており、建物の中心に祭壇があり、それを取り巻くように会衆のための座席が配置されていて、非常に開放的で求心的な聖堂になっています。カトリック教会のような豪華な装飾はありませんが、自然光を活かした明るく大きな空間は、人々が集い、互いに関わり合い支え合う場という教会の本質を表す建築だと感じました。
偶然にも聖書を学ぶ信者のための集会の時間になったので、信者の方に誘われて一緒に聖書を読みました。内容は難しく、ほとんど理解できませんでしたが、全く文化の違う私を快くその場に招いてくださった信者の方々の優しさに触れることが出来、貴重な経験となりました。
所在地
参照:Cathedral of Christ the Living Saviour, Colombo 07
7. St. Theresa’s Church
宗派:ローマカトリック教会
この教会はドミニコ会によって設立されました。ドミニコ会がスリランカを離れることになってしまったとき、教会を当時の司祭に引き渡し、司祭は聖テレジア教会の最初の教区司祭に任命されました。現在ミサはシンハラ語、タミル語、英語の3言語で行われており、様々なバックグラウンドを持つ人々に適した教会であると言えます。
教会内の4つの巨大な壁画は、1960年代初頭にスリランカのアーティスト、リチャード・ドン・ガブリエルによって描かれたもので、繊細なタッチと鮮やかな色遣いで教会内を彩っています。
教会内の空間は、尖頭アーチが印象的で、身廊と側廊の間の開口部や祭壇などに用いられており、ゴシック建築様式を取り入れたデザインになっています。天井は側廊の上部までは尖頭アーチの延長線上でヴォールトを形成していますが、身廊の上部は平たい天井になっており、その点に関してはゴシック建築とは異なる様式と混合しているなと感じました。白を基調とした教会で、清潔感のあるすっきりとした美しい教会でした。
所在地
参照:sttc.lk – St. Theresa’s Church
おわりに
いかがでしたでしょうか?
私自身見たことのない建築様式の教会も多くあり、見るだけでも非常に勉強になりました!イギリスやオランダ植民地時代の西洋建築をそのままスリランカに持ってきたような教会からスリランカで独自に進化していった教会建築もあり、非常に見ごたえがありました。どの教会にも共通すると感じたのは、訪れる人がまた来たいと感じる温かい空間の演出と訪れた人を抱擁するような「集う」場所としての設計がなされていることだと感じました。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
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