安く泊まれるバワ初のインフィニティープールがある「ヘリタンスアフンガッラ」
ジェフリーバワは、今やアジアンリゾートの顔とも言えるインフィニティープールをスリランカのホテルで初めて導入しました。
そのホテルが本記事で紹介する「ヘリタンス・アフンガッラ(Heritance Ahungalla)」です。
このホテルは、バワ建築の中でも宿泊料金が手頃です。
ヘリタンスは定期的にいくつかのホテルで割引を行いますが、ヘリタンス・アフンガッラはよく割引が行われるホテルです。
特に平日は安い値段が提示されることがあります。
比較的安価に泊まれるバワ建築のアヴァニベントタが後年になってバワによる増築が行われたように、ヘリタンスアフンガッラも後年になって新館ともう一つのプールがバワによって増築されています。
目次
一泊の値段はいくら?
ホテルの公式ページでは、現在(2021年6月2日)、割引価格が提示されています。
デラックスルームが素泊まり1泊7,176円。2人の場合は一人当たり3,588円、3人の場合は一人当たり2,392円です。
プレミアムルームが素泊まり1泊9,668円。2人の場合は一人当たり4,834円、3人の場合は一人当たり3,222円です。
ラグジュアリルームが素泊まり1泊11,163円。最大4人まで宿泊可能です。
スイートルームが素泊まり17,133円。最大3人まで宿泊可能です。
一番安いデラックスルームでも、プライベートバルコニー付きで、海が眺められます。
インフィニティープールとは?
プールの縁が存在しないかのように見せかけたプールのこと。
インフィニティー(infinity)とは「無限」を意味します。
ヴァニッシングエッジプールとも呼ばれます。
ヴァニッシング(vanishing)とは「消える・見えなくなる」と言う意味です。
プールの水面が海や空と重なり、境目が曖昧になり、無限に続くようなプールに見える、あるいは縁が見えないように設計されます。
高級リゾートをアジアを中心に展開してきたアマンリゾートや、シンガポールのマリーナベイサンズのインフィニティープールが代表的な存在として知られており、アジアリゾートの顔とも言えるものとなっています。
世界最初のインフィニティープールはベルサイユ宮殿に作られたとも言われようですが、現代建築で最初に取り入れたとされているのは、アメリカ人建築家のジョン・ロートナーのようです。
「シルバートップ」の愛称で知られるロサンゼルスに建てられたレイナー・バーチル邸に作られたインフィニティープールは、1971年に公開された映画『007ダイヤモンドは永遠に』でも撮影され、映画の後半30分頃にホワイトがいる別荘として登場します。
バワはこのインフィニティープールをスリランカでいち早く取り入れます。
1979〜1981年に建設したトライトンホテル(現 ヘリタンスアフンガッラ)にインフィニティープールを導入します。
デイヴィット・ロブソン著『ジェフリー・バワ全仕事』には、1985年にダッカで行われたバワの講演での発言が引用されています。
「すべてが同じ高さにある。もしも世界が平地だけだったら、地平線にアフリカが見える。」
ヘリタンスアフンガッラのプールの水面と砂浜はプールに入ると、同じ高さになり、海と空とつながるように設計されています。
現代建築初のインフィニティープールがあるレイナー・バーチル邸は、ハリウッドの東にあるシルバーレイクの西側の丘の上に建ち、海辺にはありません。
個人の邸宅ではなくホテルに取り入れたことと、ビーチの高さに合わせたことで、海・水平線・空とプールの水面をつなげたのは、画期的だったのでしょう。
1988年、インフィニティープールを取り入れたアマンリゾート最初のホテル「アマンプリ」が開業します。
次いで開業した「アマンダリ」にもインフィニティープールが取り入れられ、リゾート好きの中でインフィニティープールが知られるようになります。
2001年にアーガー・ハーン建築賞の審査委員長をジェフリーバワが受賞したことで、ジェフリーバワが世界から注目されるようになり、バワの建築は世界から再発見されたのでしょう。
アマンリゾートの創業者エイドリアンゼッカは、アマンリゾートを創業する前に、バワが1972-1975年にバリ島に建設したバトゥジンバール・パヴィリオンズを購入していたことから、バワとゼッカは直接会っていないと言われますが、バワがアマンリゾートの源流と言われるのは、この辺りのエピソードによるものでしょう。
2010年にシンガポールにマリーナベイサンズが開業し、益々インフィニティープールは知られるようになりました。
トライトンホテルとして開業
ホテル事業に進出したエイトケン・スペンスには、バワの従兄弟の親友マイケル・マックが重役を務めていたと、デイヴィット・ロブソン著『ジェフリー・バワ全仕事』に書かれています。
ヘリタンスアーユルヴェーダを発注したセイロンホテルズコーポレーションの会長のセシル・ダ・ソイサはバワの古い友人だったとも上記の本に書かれていましたが、バワの人脈はすごいなと思います。
1979年にマイケル・マックがバワを招聘して、建設が始まり、1981年に「トライトンホテル(Triton Hotel)」としてオープンしています。
その後、エイトケン・スペンスがホテルの自社ブランド「ヘリタンス」を始めたことをきっかけに、現在のヘリタンス・アフンガッラとなっています。
アフンガッラとは、このホテルがある町「アフンガッラ」から取られています。
ヘリタンスアーユルヴェーダと似た細長い敷地
ヘリタンスアーユルヴェーダはゲートがゴールロードになり、細長い敷地を通ってビーチに面した本館にアプローチしますが、ヘリタンスアフンガッラもゴールロードにゲートがあり、細長い敷地を通って本館に到着します。
ヘリタンスアーユルヴェーダは、本館までに宿泊棟やアーユルヴェーダセンターがあるため、ゲートで車を止めて、カートに乗り換えます。
ヘリタンスアフンガッラは、宿泊棟はビーチに並行して南北に設置されていて、本館までにあるのはショップなどのため、ゲートから本館の車寄せまで車のまま向かいます。
風が吹き抜けるレセプションラウンジ
車寄せからまっすぐレセプションに向かうと、そのさきにインフィニティープールが見えます。
こちらはプール側からレセプションラウンジを見たもの。
海からの風がラウンジ、レセプションと通り抜けていきます。
そのため、天気の良い時は大変心地よく、チェックインなどでレセプションで待っている時もゆったりとした気分になれます。
一方で、風雨が強い時は大変です。
上の写真には、カバーがあるのが見えます。
天気が悪い時には、こちらのカバーを下げます。
デイヴィット・ロブソン著『ジェフリー・バワ全仕事』には、ダッカでの講演でのバワの発言がもう一つ引用されています。
「モンスーンの期間中はとてもドラマチックで、南西の海岸全体から吹く風は全部ロビーを吹き抜けるように思えるほどだし、客たちは右往左往し、その請求書さえ水盤の中に叩き込まれてしまう始末だ。」
座った二人が向き合うラブチェア
インフィニティープールの先に置かれているのがラブチェア。
二つある座席に二人が座る、ちょうど向き合う形になるよう設計されています。
同じ椅子が、ルヌガンガのガーデンルーム(バワが仕事をした場所)の窓の手間に置かれています。
増築されたプールと新館
1990年代初頭にバワによって北側にプールと宿泊棟が増築されています。
エレベーターと中庭
隈研吾・山口由美 著『熱帯建築家:ジェフリー・バワの冒険(とんぼの本)』には、レセプションから見える、現在は使われていないエレベーターや中庭に注目して、紹介しています。
エレベーターと中庭の写真を撮り損ねてしまいました。
また客室やレストラン、バーなども未取材です。
宿泊して、じっくりとホテルを味わった上で、追って本記事をアップデートしたいと思います。
参照)
Wikipedia:Infinity pool
Wikipedia:John Lautner
ヘリタンスアフンガッラ公式ページ
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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