光と影のアートで自分らしさを 石野明子さん
光と影のアートで自分らしさを
〜石野明子さん〜
題名:刹那の光-夕暮れをまとう影 撮影:石野明子
”彼にとってはいつもの帰り道。でものびる車輪の影に私の心は奪われてしまう。
インドゥルワ、夕方の田舎道で。
スリランカにいると初めての場所なのに懐かしい場所に来たようなそんな気持ちに
なることがある。嬉しいような、切ないような、過ぎてしまった思い出の場所には
もう戻れないことを思い知る。きっとスリランカの光にはそんな力があると思う。”
ー石野明子さん 「刹那の光-夕暮れをまとう影より」ー
自分らしさとはなんだろうか。日々考えさせられる。
私達は、自分らしさを求めつつも、心のどこかでそれを捨ててしまいたいと思う。
自分らしさを求められる社会、自分の存在する意味を持っていないといけない社会、
自分を掘り下げて、掘り下げて、掘り下げる。心の何処かにありそうなはずなのに、
それは中々現れず、自分を掘り下げていたこの手が戦慄する。
本当の自分はどんなものなのか、ひょっとしたら自分の期待どおりではないのかもしれない。
いっそのこと、皆に納得される偽りの自分を作ってしまおうと…
しかし、石野明子さんは違った。
この輝きつつも武器である『自分らしさ』をスリランカという地で一点の星のように
写真として発信している。石野さんにはどのような思い、感情が隠されて
自分を表現することができているのか。
石野さんとの取材を綴っていきたいと思う。
フォトグラファー 石野明子さん
大学で写真を学び、新聞社の契約フォトグラファーを経て、
2006年からフリーとして活動。2016年にスリランカに移住し、
写真館STUDIO FORTをオープン。
スリランカの魅力を写真で発信し続ける。
著書は、「五感でたのしむ!輝きの島スリランカへ」など。
Q1.石野さんにとっての”写真”とは
石野さんにとっての写真、それは『寝食を忘れてまで夢中になれるもの』。写真を構えて世界を覗いてみると、そこには石野さんだけの世界が映り込む。自分の世界を切り取り、編集作業を行い写真を完成させるまで、石野さんの手が止まることは無いという。我を忘れて没頭できるもの、それが石野さんにとっての写真だ。
そしてもう一つ、石野さんにとってのカメラとは、人と関わるきっかけだそうだ。石野さん自身も、街中でいきなりは誰かに声をかけづらい。なので、「カメラで撮影しても良いですか?」と一声かける事で、その誰かのことを知ることができる。自分の心惹かれるものがあれば、カメラを武器に挑戦してみる。
石野さんにとってのカメラ、それは「自分の五感の一部」だそう。
Q2.いつから写真に興味をもったのか?
それは、石野さんが17歳の頃、祖父が一台のカメラを買い、それを石野さんが譲り受けたのだという。そこから、カメラを持ち歩き、自分の世界や視点を切り取ることに夢中になる。
言葉にならない感情、何故か分からないけれど心に残しておきたいと思うもの、それを、カメラが自分の言葉のかわりに表してくれる。石野さん自身、英語の翻訳家になりたいと将来を描いていたが、此のカメラの世界を知り、ガラリと将来への地図を「カメラ」へと変えたという。
Q3.写真家としてのやりがい、生きがい
それは勿論、「良い写真」が撮れた時だった。周りの人が「この写真、良いね」そう呟いてくれた瞬間。石野さんにとって、とても励みになるそう。
写真とは一人では完成せず、見ている人が受け止めてくれた時に一つのアートとなる。
皆さんに届いたと分かった時、写真家としての生きがい、やりがいを感じると語った。
Q4.写真へのこだわりとは?
ー 人をもう一歩惹きつける写真を撮るために ー
石野さんが大切にしているのは、「自分の伝えたいことが伝わるかどうか」。そのためにはアングル、背景のぼやかし方、様々な工夫が施されていた。その中でも「光」、これが石野さんの写真を表すものとなる。
光とは何か、写真の歴史を辿ると、光は重要なものだと気付かされる。そんな「光」は写真に必要不可欠であり、石野さんは写真のことを、「光と影のアート」と表す。石野さんは写真を撮る時、自分はどんな「光」に惹かれているのか、これを大事にしている。
ちなみに、スリランカという言葉の「スリ」、それは「光輝く」という意味が表されているそうだ。
題名:刹那の光-木陰のクラシックカー 撮影:石野明子
Q5.スリランカという地で写真を撮り続ける理由
スリランカというこの地、日本人のフォトグラファーはとても少ない。そのような地で石野さんが写真を撮り続けるのはスリランカならではの良さがあるからだった。
石野さんが日本で活動していた頃、写真との葛藤がそこにはあった。写真の力は身につきつつもそこには人と比べてしまう「自分」がいたのだという。自分の撮る写真はこれで良いのか、自信が持てない、堂々とすることが苦しい、どうして落ち込んでしまうのか、そこには負の感情の連鎖が続いていた。
ある日、スリランカに訪れ、カメラを手にすると何故か自分が取りたい被写体に素直に向かっていく姿を取り戻せたという。そして自分の世界観、自分らしさを取り戻せそうだと思い、スリランカに移住を決心した。
石野さんは、スリランカと日本には大きな違いがあるという。それは、「人との距離感」だった。日本人は、比較的人に迷惑をかけないように、自分で解決をする、それが美学という風潮がある。しかし、スリランカでは人との距離感が極めて近い。スリランカでは自分が困った時、必ず人に助けを求める、たとえ迷惑をかけてしまっても今度は自分が誰かを助けれればそれでいい、それがスリランカでの日常だ。石野さんは、そこに人見知りをしないおおらかさを感じている。
人と人との距離感が近い国、それがスリランカだった。そんな事もあってなのか、スリランカの人々は石野さんがカメラを握るとありのままの姿を映してくれるという。どんな姿をしていても、どんな表情をしていてもありのままの自分でそこに佇む。石野さんを受け止め、会話をして一つの写真というアートを完成させる、そこに、石野さんは写真という楽しさを見出していた。
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ここで、ちょっとした余談を….
Q6.スリランカでの生活で困ったことは?
石野さんのスリランカでの生活で困ったこと、それは「amazon」が無いことだった。石野さんが移住してきた頃、スマホはスリランカで普及していなく、ネットからの情報が無かったという。石野さん自身、子供を連れて買い物をするのにとても苦労したそうだ。
Q7.コロナ禍での活動制限はありましたか?
発端が中国ということもあり、スリランカでは中国や日本での区別がつかなく、石野さんが罵声を受けることがあったという。写真が撮影しづらくなってしまった時期、そのような時でも石野さんは諦めず相手との距離感を図りながらカメラを握っていた。
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題名:刹那の光-委ねる 撮影:石野明子
Q8.自分を愛すること、自分らしさとは?
石野さん自身、写真家という表現活動をしていて、自分らしさを考えることもしばしば。石野さん自身も人と比べてしまう心があるという。他人がどう感じているのか、過剰に読み取ろうとしてしまうそうだ。石野さんはそこが欠点だと思っていた。しかしそれは逆を言えば、相手がどんなことを感じているのか思いやる心。ならばその心で拾える世界、写真で取れる世界があると感じたのだと語った。
自分の心惹かれることに素直になること、これが自分らしさへの第一歩だと感じる。自分が欠点だと思っていること、それはある意味個性でもある。皆が良いと思うものにひたすら寄り添う、それでは自分らしさは生まれない。自分が良いと思うことをひたすら辿り、解像度や純度を高める、これが自分らしさ、自分を愛することだという。
私は石野さんの写真が必要だ、そう言われるのように自分の世界観を常に大事にして周りの目を気にせず自分だけに光を当て、純度を深める。石野さんが強く意識していることであった。
Q9.私達へのアドバイスを….
自分のやりたいことが見つからない人も沢山いると思います。
でもいつか、自分が没頭できるものに出会った時、その気持を大事にしてほしい。
他の人と違う感情や感覚を持ったとしてもそれに正誤はなく、周りの影響を受けず、
自分の好きなことに光を当てること、見つめることを止めないでください。
勿論、挑戦や努力も必要であるけれども、その先には新たな扉が開き、自分と同じ価値観の人に出会う事が
できると思います。
やりたいという感情、怖がらずに進んでほしいです。
10.石野明子さんのホームページ
11.あとがき
石野明子さん、取材にご協力してくださりありがとうございました。
読者の皆さん、石野明子さんへの取材、どうだったでしょうか。
どうか、この記事を読んで新たな一歩が踏み出せることを願って。
by.木漏れ日の空想家
木漏れ日の空想家です。
これから、どのような風に生きていこうか…そんなことを日々考えている高校生です。
ここでは、様々な人々の様々な視点や生き方について取材をしています。
一人でもこの記事が誰かの心に届けば幸いです。
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