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南アジア初の日系大学「LNBTI(Lanka Nippon BizTech Institute)」

2023年9月28日

日本語学校巡り第5弾として、南アジア初の日系大学「LNBTI(Lanka Nippon BizTech Institute)」に取材してきました。

LNBTIとは

LNBTIの設立から関わっているディレクターの生倉和幸さん、LNBTIの学長で2023年度の外務大臣表彰の受賞者に選ばれたアーナンダ・クマーラ先生にお話を伺いました。

学校設立の経緯

メタテクノがスリランカに進出したきっかけは2000年問題でした。

スリランカからIT技術者を日本に呼んだ際に大卒者の年齢が気になったそうです。

当時スリランカは内戦中で、大学卒業時に30歳近くなっている状況がありました。

さらに日本企業では3年ほど下積み期間があるため、スリランカで大学を卒業して日本企業に新卒で入社しても、一人前になる頃には33歳ほどになってしまいます。それでは大きな機会損失だと感じたそうです。

一方で、スリランカでは大学の数が少なく、大学に進学したくてもできない人が多くいます。

そこで、ITと日本語を教える大学を設立することにしたとのことです。

2015年12月にLNBTI(LANKA NIPPON BIZTECH INSTITUTE 、スリランカ日本情報科学短期大学 )を設立。

スリランカで大学の認可を得るには、大学として運営を初めてみて、適切に運営されているかを時間をかけて審査するため、かなり大変だったそうです。

大学として名乗れないのに、大学としての実績を出していかないと、大学の認可がおりないわけです。

そして、2022年6月にスリランカ政府から大学の認可がおりて、入学を希望する学生が集まるようになってきたそうです。

クマーラ先生と学生たち

グリニッジ大学の学位コース

大学の認可が下りるまでは、日本の大学に編入するプログラム(日本の大学3年生に編入)を運営し、これまで4期生が卒業。

2021年にはイギリスのグリニッジ大学の学位が取れるプログラムも開始。

グリニッジ大学の学位コースは、 以下の2つがあります。

1)Oレベル試験に合格して入学する5年間コース
2)Aレベル試験にも合格して入学する4年間コース

4年間コースは、LNBTIカリキュラムを3年間受講した後に、グリニッジ大学のカリキュラムを1年間受講します。

5年間コースは、 基礎学力向上プログラムを1年間受けた後に、4年間コースの内容を受講します。

イギリスに行かずともスリランカで学位が取れるため、留学費用(渡航費や滞在費用)がかからず、コストを抑えてイギリスの大学の学位が取れます。

現在の生徒数、生徒の年齢

スリランカの学校システムは初等教育が5年間、前期中等教育が4年間、後期中等教育が2年間、高等教育が2年間、大学が3~4年間です。

LNBTIに入学してくるのは、後期中等教育を終えてOレベル試験を受けた16~17歳、あるいは高等教育を終えてAレベル試験を受けた19~20歳の年齢層の子たちです。

政府が実施するOレベル試験やAレベル試験が年によって遅れたりするため、20代前半の子もいます。

卒業時の日本語レベル

LNBTI独自の学位コース は N2
グリニッジ大学の学位コースはN3を卒業要件としています。

グリニッジ大学の学位コースも、卒業要件はN3といえども、N2を目指すようにしているそうです。

先生の人数、日本人の先生の有無

現在日本語を教えている先生は5名。そのうち1名が日本人の先生。

スリランカ人の先生4名のうち、2~3人は日本に留学したことがある先生。

他にも非常勤の先生が数名いるそうです。

2023年10月に日本人の先生が2名新しく入られるそうです。

留学生に日本語を教えた経験がある方を採用したとのこと。

教室の設備について

大学全体で9部屋用意されているようです。時間割によって部屋を使い分けているそうです。

2023年10月下旬には、150名以上収容できる新しいキャンパスがオープン予定とのこと。

卒業生の進路実績

会津大学やはこだて未来大学などに現在通っている学生がいて、13~14人の学生が日本の大学院に進学、あるいは日本で就職したとのことです。

学生には奨学金を得て日本の大学に進学し、その後、大学院までいくように勧めているようです。

学費について

学費は4年間で110万円ほど。

金額としてはスリランカの他の私立大学と同程度で、日本の理系の私立大学と比較すると、1/4~1/5程度の学費です。

日本にある日本語学校の学費は200万円ほどして、400万円ほどの貯蓄があることを証明する必要があることを考えると、学費としてはリーズナブルです。

学生からはビザの斡旋料はとっていないそうです。

授業内容

今現在はN3の合格が修了条件となっているようですが、その条件をN2まで引き上げる予定だそうです。

授業のスケジュール

このように、中学校や高校のように月曜日から金曜日まで授業の時間割が決まっています。8:00~17:15の間に11~5コマ授業がありますね。

4年間で120単位が必要になっているようです。ITと日本語の勉強時間の比率は、IT:日本語=3:2ぐらいだそうです。(2よりは少ないかもともおっしゃっていました。)

他の日本語学校とは違うLNBTIの特徴

他の日本学校ではCertificateしか出せませんが、LNBTIはスリランカ政府公認の高等教育機関(大学)であり、卒業するとIT系の学士が取得できます。

生徒の集め方

以前は新聞広告を活用していたそうですが、今は高校の先生の紹介が多いそうです。

Oレベル試験、Aレベル試験ともに受験してから結果が出るまで、何カ月もかかることがあります。

そのため、年に4回入学タイミングがあるそうです。(Oレベル試験を受験した時、Oレベル試験の結果が出た時、Aレベル試験を受験した時、Aレベル試験の結果が出たとき)

Oレベル試験は毎年8月に行われて12月に結果が出るものでしたが、2022年8月のテスト結果は本来は12月に出るはずでしたが、大幅に遅れて2023年9月4日に発表されました。

そして、すでに9月も後半ですが、2023年8月に実施されるテストは、未だ実施されていません。

スリランカ政府の試験の実施と結果発表に合わせると、スケジュールが組めないため、今後はセメスターごと(年に2回)にスケジュールを組んでいきたいとのことでした。

スリランカ人の強みと弱み

南アジアでは数字の教育に力を入れているのでITは教えやすいということでした。

弱みとしては応用力が弱いところだそうです。スリランカの教育は受け身で、自分自身で考える能力が身についていないとのことでした。

学生に質問

日本語に興味を興味を持った理由

日本、日本人、日本の文化、アニメ、日本の車やバイクが好きだから、日本はハイテクノロジーだから、と言っていました。中には、日本の映画やドラマを観ている学生もいて、俳優の山﨑賢人さんのことを知っていました。キングダムを観たそうです。日本のアニメではやはり進撃の巨人や鬼滅の刃が有名なようです。スズメの戸締りも観たことがあると話していました。

なぜLNBTIに決めたのか?

高校の先生に勧められたから、という声が一番多かったです。他は年上の友だちが実際に通っていたり、近所の人に勧められたから、という子もいました。

卒業したらやりたいこと

ITエンジニアやアニメクリエーターになりたいということでした。学生自身がITエンジニアになりたい!という思いを持って専門的な知識を学んでいると分かりました。

日本に行ったらやりたいこと

日本食を食べたり、本屋に行って漫画を買いたい、コスプレをしたい、ディズニーランドに行きたいと言っていました。また、J-popのコンサートに行きたい、フットボールの日本のチームの試合を観にいきたい、空港に行って飛行機が飛んでいくのをみたい、という声もありました。確かに日本の空港だと、航空券を持っていなくても空港に入ることができますもんね。

最近のスリランカでの流行り。休日の過ごし方

学生たちは毎日2~3時間日本語の勉強をしているようですが、休みの日は家にいる子が多いみたいです。家でアニメを観たり、ゲームをすると話していました。

参考)
伊勢新聞:クマーラ氏が外務大臣表彰 元鈴鹿大学長補佐、スリランカで授賞式

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