外国人初!スリランカ競馬倶楽部の事務局長 兼 CEOに計谷氏が就任。
スリランカの競馬運営組織「ロイヤル・ターフ・クラブ(RTC:Royal Turf Club)の新しい運営委員会が2021年11月1日付で発足し、事務局長(セクレタリー)兼 CEOに計谷良太氏が就任されました。
第6代会長はスポーツ省の法律顧問としてスポーツの法律・政策・条約に関わってきたキールティナンダ氏が就任。
会計担当はクリケット選手として知られるルパシンハ氏が再任。
審判団の会長にはロイヤル・カルカッタ・ターフ・クラブ会長を5年間務め、競馬のテレビ解説者として知られるマダン氏。
シニア有給審判員には騎手としてインド・マカオ・イギリスで幾度も優勝し、インド騎手協会の会長を26年間務めたマーシャル氏。
そんな中で、佐川急便の親会社であるSGホールディングスのスリランカ駐在員である計谷氏の事務局長(セクレタリー)兼 CEOの就任は異色です。
本記事では、計谷氏に伺った就任の経緯・競馬の魅力・今後のスリランカ競馬業界の取り組みについて紹介します。
事務局長 兼 CEO就任の経緯
Q.ご就任の経緯を教えてください。
私は競馬場で馬を見るのが好きで、スリランカにも競馬場があることは事前に知っていました。
スリランカに赴任した2ヶ月後の2020年12月にヌワラエリヤへ旅行に行き、競馬場を訪れましたがレースは開催されていませんでした。
いつレースが行われているのかが知りたく、運営者にお会いしたいと尋ねたところ、運良くお会いすることができました。
スリランカは馬不足・馬主不足でレースの定期開催が難しいと聞き、一競馬ファンとしては日本のように毎週末レースが行われていれば楽しみが増えるので、定期開催を実現してほしいと話しました。
運営者の方は、JRA(日本中央競馬会)が世界最大の売上を誇る巨大組織であることをご存知で、日本の競馬業界に興味があるとのことでしたので、物流を行なっているSGホールディングスグループは顧客ネットワークが広いので、協力できることがあるかもしれないということを伝えました。
その後、2021年1月に競馬委員会に参加してほしいと連絡があり、参加したのがきっかけです。
そして、3月に委員会メンバーに任命され、この11月にセクレタリー 兼 CEOに任命されました。
Q.なぜ、エクスポランカはレースのスポンサーになっているのでしょうか?
スリランカには馬を繁殖させる施設がないため、競走馬は全て輸入しています。
馬を輸入する際の輸送をエクスポランカが担っています。
新型コロナウイルスの影響で2021年は、開催できたのは4回だけでした。
そのうちの3つの主な大会で、エクスポランカ各社がメインスポンサーになりました。
ガナバーズカップにExpolanka Freight (PVT) Ltd、
クイーンズカップにClassic Travel (Pvt) Limited、
メイヤーズカップにExpolanka Holdings Plcが協賛しました。
ロイヤル・ターフ・クラブの役割
Q.ロイヤル・ターフ・クラブの役割を教えてください。
ロイヤル・ターフ・クラブの役割は、まず第一に競馬を安全に開催することです。
そのために、馬・騎手・審判員の登録をしたり、施設管理を行います。
また、レースで不正がないようにドーピング検査をしたり、審判員を揃えるのも重要な役割です。
Q.計谷さんが務めるセクレタリーはどんな役割なのでしょうか?
委員会で話し合って決めたことが運営会社にあげられ決裁されますが、その際の承認・サインをするのがセクレタリーの役割です。
セクレタリーは会長(プレジデント)の解任権限も持っています。
クリケット、ラグビーなどスリランカのスポーツ界の組織運営は、共通してセクレタリーに権限があると聞いています。
取り組む5つのテーマ
Q.計谷さんが今後取り組まれようとしていることは、どんなことでしょうか?
大きく5つのテーマがあります。
1つ目は調教師、厩務員など競馬に関わる仕事を増やしていくことです。
仕事がなければ業界を維持・発展させることはできません。
2つ目は騎手・厩務員学校の設立です。
日本では騎手学校を卒業して初めて騎手免許が取得できるようになっています。
スリランカにも騎手・厩務員を育成する仕組みを作っていきたいと思っています。
3つ目はオールウェザートラックの導入です。
ヌワラエリヤの競馬場は芝生のコースしかありません。
芝生コースは維持・管理費用が高くなってしまいます。
芝生コースに変わるのはダートと呼ばれる土のコースと、オールウェザートラックと呼ばれるゴム製の陸上競技場のようなコースです。
オールウェザートラックはその名の通り、雨など悪天候の際にも足元がぬかるみませんので、導入を検討しています。
4つ目はレース開催日の拡大です。
毎月の開催を目指して、2022年は15回開催することを決定しました。
将来的には日本のように毎週開催できるようにしたいと思っています。
5つ目は女性にも開かれた競馬にしていくことです。
現在は騎手も調教師も男性がほとんどです。
東京オリンピックの馬術競技に出場したスリランカ代表のマティルダ・カールソン選手は女性です。
今後業界の発展には女性の参加が必要だと考えています。
また、競馬観戦にもっと多くの女性に来ていただきたいと思っています。
ガバナーズカップでは、モデルさんによるファッションショーを開催していますので、とても華やかです。
また、ご来場者の中からベストドレッサー賞を選出しています。
近代競馬の発祥地であるイギリスでは、王室が所有する競馬場があり、伝統と格式のあるスポーツです。
社交場であり、オシャレを楽しむ機会でもあります。
リトルイングランドと呼ばれるヌワラエリヤにある競馬場は150年ほどの長い歴史があります。
普段とは違う雰囲気を味わっていただけると思います。
Q.かなり意欲的な計画ですが、積極的に動ける背景には何かあるのでしょうか?
競馬はスポーツ省の管轄ですが、スポーツ省はスリランカにおけるスポーツを発展させようとしています。
スリランカでメジャなースポーツはクリケットやラグビー、サッカーですが、競馬も重要なスポーツの一つです。
それぞれイギリスで発祥したスポーツですが、イギリスでは競馬はとてもメジャーなスポーツです。
ヌワラエリヤの中心地に位置する競馬場は大きなポテンシャルがあります。
競馬の楽しみ方
Q.競馬場・競馬の楽しみ方を教えてください。
まずはレースをご覧いただきたいです。
2022年は15回のレースを予定しています。
5月は開催がありませんが、4月は3回、8月と12月は2回、それ以外の月は1回ずつ開催します。
開催日は土・日・祝日のいずれかです。
朝9時に開始して1日5レースほどを行い、午後2時頃に終了するスケジュールです。
会員制ではなく、観覧料・入場料は無料で、出入りも自由ですので、どなたでもお楽しみいただけます。
年間を通して開催しているレースの中でも、毎年4月に開催するガナバーズカップは、150年ほどの伝統と格式あるレースです。
ご来場の方々は正装をして、お酒を飲みながら会話も楽しんでいます。
当日の夜はグランドホテルでパーティーが開催されますので、その日は宿泊されて、翌日に観光をされてお帰りになると、ゆっくりとお楽しみいただけます。
日本の競馬場は、正装していく場所というイメージはあまりないかもしれませんが、日本でも調教師や運営関係者の方々は正装しています。
Q.馬とも触れ合えるのでしょうか?
ヌワラエリア競馬場内に厩舎があります。
普段、競走馬がどのような生活を送っているのか見学することは可能です。
また、ヌワラエリヤ競馬場ではポニーの体験乗馬が楽しめます。
スリランカの競馬場は日本と違ってパドック(レース出場前に馬が周回する施設)の距離が近く、競走馬を身近で見ることができるのも魅力的です。
Q.海外から競馬を観に来られる方もいますか?
中東やインド、欧米の旅行者の姿をよく見かけます。
日本の旅行者の方にも是非お越しいただきたいです。
ヌワラエリヤへの旅行に、紅茶や高原リゾートに加えて競馬も楽しんでいただけたらと思います。
参照)
the SUNDAY TIMES:The RTC ‘dynamics’, who will gallop for 2022 season
the SUNDAY TIMES:RTC, with a new committee, to hold 15 events in 2022
Daily News:Royal Turf Club Nuwara Eliya planning ahead for horse racing season under new committee
Daily FT:Royal Turf Club Nuwara Eliya planning ahead for horse racing season under new committee
the SUNDAY TIMES:Strong Western Wind blows away Alcazaba and Spirited Touch
Daily FT:Western Wind blows Alcazaba and Spirited Touch away to win the RTC Governor’s Cup
Daily News:Horse Racing Festival in Nuwara Eliya begins on March 20
Daily News:Sri Lanka’s oldest horseracing events
Wikipedia:Nuwara Eliya Racecourse
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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