日本初のフランチャイズのスリランカカレー店を手掛ける佐々木証さんへのインタビュー
2021年2月11日に四ツ谷に開業した「スパイスカレー食堂 四ツ谷店」
2021年6月1日に横浜に開業した「肉とスパイスカレー食堂LABO アンカーグラウンド 馬車道店」
2021年6月26日に川崎に開業した「ジャパランカ」
2021年7月15日に五反田に開業した「スパイスカレー食堂 五反田店」
2021年8月18日に中野坂上に開業予定の「スパイスカレー食堂 中野坂上店」
と2021年にスリランカカレー店をスピード出店する佐々木 証さん。
スパイスカレー食堂は、フランチャイズ展開を始めていて、フランチャイズの1号店が五反田店です。
スリランカ料理店の多くは単店舗経営。
複数店舗を経営するオーナーさんも何人かいらっしゃいますが、スリランカカレーでフランチャイズ展開を行うのは、佐々木さんの会社が日本初でしょう。
スリランカカレー店の多店舗展開によって、スリランカカレーやスリランカの知名度が日本で高めるかもしれません。
本記事では、そんな注目のスパイスカレー食堂のオーナー・佐々木さんからお伺いしたお話を中心に、スパイスカレー食堂とジャパランカについて紹介します。
目次
佐々木 証さんの略歴
佐々木さんの肩書きは以下の通りです。
有限会社珈琲新鮮館 取締役 副社長
株式会社ANCHOR GROUND 代表取締役 社長
株式会社シェハンインターナショナル 代表取締役 社長
緒里美日本語学院(スリランカ)設立
スパイスカレー食堂LABO(スリランカ)設立
佐々木さんは30歳を前に上京して独立することを志したそうです。
故郷の仙台を離れ、2年で独立したいと伝えて入社したのが現在、佐々木さんが副社長を務める有限会社珈琲新鮮館。
珈琲新鮮館は、1994年に沼田 慎一郎さんがコーヒー豆の販売で創業。
2003年に「珈琲新鮮館 東林間本店」を開店、
2006年に「もつ煮込み専門店 沼田」を開店するなど飲食店の経営を開始しています。
佐々木さんは、もつ煮込み専門店で学びたいと思い、入社されたそうです。
入社2年後に有限会社珈琲新鮮館のグループ内独立店として、横浜・馬車道に「肉バル ANCHOR GROUND」を出店、後に株式会社ANCHOR GROUNDの代表取締役に就任されています。
海外展開では、タイのバンコクに「濃厚鶏そば たけいち」を出店。
フィリピンのダバオにも出店しようとしていたところにコロナ禍になったそうです。
スリランカ人オリミさんとの出会い
飲食業界における人手不足の中、外国人採用を行ってみたところ、優秀だったのがスリランカ人社員だったそうです。
馬車道の肉バル ANCHOR GROUNDで働いていたスリランカ人スタッフのオリミ(日本語名)さんから、「スリランカには日本で働きたい人がたくさんいる」という話を聞き、2020年2月にスリランカに初渡航。
自社でスリランカに送り出し機関と日本語学校を設立し、日本で有料職業紹介事業と特定技能登録支援機関の認定を受け、2020年5月から人材の送り出し・受け入れを始めようとしたものの、コロナ禍で停滞します。
インスタグラムの過去投稿を見ると、肉バルで働くオリミさんの写真が見られます。
スパイスカレー食堂の看板娘のような存在であるオリミさんは、肉バル店の時から活躍されていたのでしょう。
私が四ツ谷店を訪れた際は、オリミさんが接客してくださいました。
シェフのアミラさんとの出会い
2020年9月、キリバスゴダ郊外のマコラに緒里美日本語学院を開設したところ、スリランカ航空の機内食を提供するスリランカ・ケータリングのシェフのアミラさんが日本語を学びたいと来校。
日本の店舗でネパールカレーをメニューとして出し、スパイスカレーの試食を重ねていた佐々木さんは、スリランカで食べたカレーがヘルシーで毎日食べても飽きなかったことから、緒里美日本語学院の建物の2階に「スパイスカレー食堂LABO」を開設し、アミラシェフ監修の下、メニュー開発に取り組みます。
アミラシェフにいくつも作ってもらったカレーの中で、特に美味しいと感じたのが、パリップとブラックカレーだったそうです。
佐々木さんはスリランカ滞在中、連日スリランカ人宅に招かれ食事やお酒を振る舞われ、翌朝ホテルの朝食でスリランカカレーを食べるのがほっとしたそうです。
1日3食カレーを食べても飽きるどころか体が軽くなるのを感じたと言います。
スパイスカレー食堂は朝8時から営業していますが、朝からスリランカカレーを食べていた経験もあり、朝カレーのニーズはあると見て、朝からの開店を始めたそうです。
コロナ禍による業態変更
もつ煮込み専門店、肉バルなどお酒を提供する業態を中心にしていた佐々木さんの会社は、コロナ禍によって業態変更を行います。
2016年に相模大野に開店した「肉屋的濃厚そば 麵屋 沼田」、バンコクに開店した「濃厚鶏そば たけいち」とラーメン店を経営していたことから、ラーメン店経営のノウハウを活かして、2021年1月、新宿3丁目の「もつ煮込み専門店 沼田はなれ」を「中華そば 貝香屋」にリニューアルオープンします。
ラーメン店を開店するために、ラーメン店の居抜き物件を探していたところに、四ツ谷で見つかったのがカレー屋店の居抜き物件だったそうです。
そこで、新しい業態として開発したのがスリランカカレーを提供する「スパイスカレー食堂」だったそうです。
見た目に綺麗なワンプレートを追求
スリランカカレーのワンプレートは見た目に鮮やかです。
そこで、お皿にもこだわり、特注のものを用意しました。
と佐々木さん。
スパイスカレー食堂のカレーは、3種のカレーと4種の副菜がのったワンプレート。
3種のカレーは以下の通り。
・ブラックチキンカレー or ブラックポーク or フィッシュ or 大豆のベジタブルキーマ
・パリップ
・ジャガ芋とインゲンのカレー
4種の副菜は以下の通り。
・人参サンボール
・三つ葉サンボール
・紫キャベツのピクルス
・パパダム
スリランカで町のカレー屋さんに行くと、チキン・ポーク・フィッシュ・ベジタブルから選んで、他の副菜やカレーは同じものであることがありますが、まさにその方式。
スリランカカレー屋さんが日本で難しいのは、他のカレー屋さんと比べて、カレーの種類が多くなり、食材の調達や管理が難しい点にあるという話をスリランカカレー屋のオーナーさんに話を聞いたことがあります。
スパイスカレー食堂はその点、7種をワンプレートに揃えていますが、メニューが固定されているのが運営上、優れていると思います。
1番のオススメはブラックチキンカレーだそうです。
スリランカカレーの中でも、ローストしたスパイスで作るブラックカレーは、日本人が食べ慣れたカレーに近く、受け入れやすいと思います。
スリランカのカレーをベースにしていますが、日本人のお客様が食べやすいように少しアレンジしています。
と佐々木さん。
店内にはスリランカカレーの食べ方が紹介されています。
また、小麦粉不使用で脂も少なく、体に優しいスパイスがたっぷりであるとも書かれていて、カレーを食べる気分を高めてくれます。
テーブルには、「追い辛スパイス」と「香り追いスパイス」も置かれていました。
最初はそのまま食べ、勢い余って、ガンガンと両方のスパイスをかけていったら、かなり辛くなってしまいましたが、辛いもの好きな方にも、マイルドなカレーが好きな方にも対応しているのも、嬉しいですね。
スリランカらしい置物です。
入店しやすさを重視した券売機
ネパール料理屋さんやインド料理屋さんなど各国の専門レストランは外観から異国情緒が溢れ、入店してみると見慣れない料理名が並んだメニューを外国人の店員さんから渡され、他のお客さんはその国の人やカレーのコアなファンがいて、入店しづらいところがあります。
スパイスカレー食堂では、お店の外の券売機で注文券をご購入いただき、入店する前に何を注文するかを決めていただいています。中に入ってみないとどんなメニューがあるのか分からないという状態を作らないようにしています。気になるお客様は「スリランカカレーってなに?」と自分で検索してみた上で、ご注文いただけます。
券売機を使ったオペレーションは、ラーメン店の経営で培ってもいます。
と佐々木さん。
平日朝8から営業・限定150食
スパイスカレー食堂の四ツ谷店は当初、限定100食でスタートしました。
100食販売すればお店を経営できるようになっています。早めに100食売れてしまえば、その分、早くお店を閉めて帰ることができます。
この方式は、スリランカ人スタッフの管理という視点ではとても有効です。
スタッフは注文券の枚数を数えて、あと何枚!!とやっていますよ。
と佐々木さん。
この視点があったか!という驚きのお話です。
現在は限定150食にし、その分、スタッフの給料を上げたそうです。
朝8時から営業していますが、新宿のオフィスに行く前に四ツ谷で途中下車して、カレーを食べてから歩いて出社される方もいらして、朝の時間帯も一定の来店があります。
と佐々木さん。
朝8時から営業しているのは平日のみで、土日祝日は午前11時からの営業です。
スリランカの味により近づけたジャパランカ
2021年2月にオープンしたスパイスカレー食堂に続き、
2021年6月に馬車道の肉バルを「肉とスパイスカレー食堂LABO」に業態変更。
そして、同月に、川崎の「ぬま田食堂」に間借りカレーとして「ジャパランカ」を開店。
元々シェフではないスリランカ人がレストランで調理担当をしているお店も多くありますが、ジャパランカのスリランカ人シェフは、シェフのビザで来日した人です。
カフェやイタリアンレストランなどで長年シェフとして働き、2017年からは都内のスリランカ料理店2軒でシェフを務め、現在はジャパランカで、スパイスカレー食堂よりも、もっとスリランカの味に近づけたメニューを提供しています。
ジャパランカのワンプレートは、選択肢が多くなります。
チキン、ポーク、フィッシュを選び、それぞれ3種盛り・5種盛り・7種盛りから選ぶことができます。
ご飯の量も100グラム・150グラム・250グラムから選ぶことができます。
写真はチキン7種盛りを150グラムのお米にしたものです。
分量的にも色合い的にも、スパイスカレー食堂よりもスリランカ的かもしれません。
沼田食堂のおちょこに入っているのはクミンのお茶。
かなりクミンが効いていました。
定期的にお茶の内容は変わるそうです。
デザートが付いているのも、嬉しいですね。
ジャパンランカは50食限定となっています。
メニューを裏返すと、裏メニューが見られます。
スリランカで里親制度に取り組んでいる「HAPPY FACTORY(ハッピーファクトリー)」との企画で、ジャパランカの売上の一部が寄付されています。
今回、取材のきっかけを得たのは、私がハッピーファクトリーを通じて里親になっていたことから、ハッピーファクトリーの鈴木さんを通して、佐々木さんをご紹介していただきました。
茨城でスリランカ野菜を栽培している「Mama ge kade」さんから、ちょうど野菜が届いていました。
ジャパランカは少し分かりにくい場所(グーグルマップに非表示の路地)にあります。
川崎駅から南東に少し歩いたところにある「チネチッタ通り(銀柳街の向かい)」を入ると、左手にファミリーマートが見えます。
ファミリーマートの角の細い路地を入ったところにあります。
もう一本奥の道「名画通り」は、ショッピングモールの「ラ チッタデッラ」に接しています。
ジャパランカがある細い路地には、「名画通り」の看板が並んでいます。
スパイス・宝石・中古自動車の輸出入会社を設立
佐々木さんは、カレー業態を増やしていく中で、スパイスの安定供給が必要となり、スリランカからスパイスや宝石を輸入し、日本から中古自動車を輸出する株式会社シェハンインターナショナルを設立します。
フランチャイズ展開
スパイスカレー食堂は、四ツ谷店と中野坂上店は直営店ですが、五反田店はフランチャイズ店です。
五反田店のフランチャイジーは東証一部上場企業の元代表取締役社長に運営いただいています。
他にもすでに数社ほどのフランチャイジーの希望をいただいています。
店舗が増えることで、元々スリランカにいくきっかけであった、日本でスリランカ人が働ける場所を増やすことにもつながります。
都内20店舗の出店を目標としています。
また、ジャパランカもフランチャイズにし、都内に展開していく予定です。
と佐々木さん。
今後の展開が楽しみです。
参照)
スパイスカレー食堂 南の島のマゼるカレー 公式サイト
珈琲新鮮館 公式サイト
MD NEXT:第33回スリランカと日本、夢の架け橋を目指した「スパイスカレー食堂」元気に営業中!
食楽web:“朝カレー”が話題の『スパイスカレー食堂』(四ツ谷)で絶品「スリランカカレー」を食べてきた!
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食べログ:肉とスパイスカレー食堂LABO アンカーグラウンド 馬車道店
食べログ:麺屋 沼田
バンコク Kヴィレッジの【濃厚鶏そば 麵屋たけいち】へ行ってきた!
食べログ:貝出汁中華そば くらむ
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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