スリランカで活動するスプートニクの秋沢淳子さん、エシャンタ・アーリヤダーサさんにインタビュー!
スリランカで21年間活動しているNGOスプートニクインターナショナルの日本法人創設理事の秋沢淳子さん、スリランカ法人理事長のエシャンタ・アーリヤダーサさんにインタビューを行いました。
この記事では、スプートニク設立時のお話や、お二人のスプートニクへの想いなどについてお伺いしました。
(以下、イ:はインタビュアー、秋:は秋沢さん、エ:はエシャンタさん。)
目次
秋沢さんとエシャンタさんの絆によって生まれたスプートニク
イ:スプートニクはエシャンタさんの社会福祉団体を立ち上げたいという想いから生まれたとお聞きしています。
エシャンタさんが大きなチャレンジに向けて歩み出すことができた原動力を教えてください。
エ:18歳で参加したニュージーランド留学の経験が原動力になっていると思います。
私はニュージーランドで肌の色や宗教が異なる同年代の人たちと交流し、世界は広いことを学びました。
そして将来はそのような違いを乗り越えて世界の平和を実現したいと考えるようになりました。
私が30歳で日本を訪問した時にAFS(American Field Service:異文化学習の機会を提供する世界的な教育団体)留学プログラムの同期メンバーと再会し、スリランカに帰国する3日前に社会福祉団体を設立したいとAFS同期の秋沢さんに話しました。
すると秋沢さんは快く協力してくれると言ってくれました。
スリランカに帰国後、活動拠点となる場所を探しました。
「教育関係で使用するなら」と、とても良い条件を提示してくる土地の所有者が見つかりました。
良い条件と言っても、広い敷地のため大金が必要でした。
資金集めのイベントを何度かやりましたが、その金額に到底届きそうにありませんでした。
秋:ぶっちゃけた話いくらなの?と聞いてみると、私の定期預金の金額とほぼ同額。
銀行に眠らせているよりも、世のため、子どもたちのために生きた使い方をされる方がいいのではないかと思い、土地の取得資金としてエシャンタさんに送金しました。
「騙されているんじゃないの?」
「活動は簡単じゃないでしょ。うまくいかずにお金はなくなるよ!」
「うまくいったら、今度は裏切る人もいるから絶対やめた方がいい!」
などと、周囲は反対する人しかいませんでした。
ただ、私は国際交流を通じた異文化理解・お互いを尊重して共存する国際平和を作るというAFSのミッションの一翼を担えるように思えたのです。
あのAFSに選ばれ、ともに留学を経験したエシャンタさんが人を騙したり裏切ることはないと確信がありました。
そして、自分はこの機会を逃したら一生後悔するかもしれないと思ったのです。
エ:大金を託した人はちゃんと使われているのか気になってすぐに現地にくるように思いますが、秋沢さんがスリランカに初めてきたのはその3年後なんですよ。
今でもどうしてあんなに信頼して任せてくれたのかと思いますね。
土地を購入して最初に行ったのは、土地の整備です。
たくさんのコブラが出るような状態から、安心して滞在できるような環境作りをしていきました。
図書館の設立からスタート
エ:最初に建設したのは図書館です。
周辺地域に図書館がなかったため、きっと必要になると思ったのです。
本はAFSの仲間が送ってくれました。
そして、ゴミ問題がありましたので、ゴミの分別を教える活動も始めました。
国際教育交流文化会館の役割
イ:スプートニクさんは来訪者が現地の人との交流や滞在ができる国際教育文化交流会館を世界各地に創ることを目標とされていますが、そのような会館を建てようと思ったのはなぜでしょうか。
秋:スリランカを訪れる人たちが安価で安全で長期間滞在できる場所を作りたいと思ったんです。
私は学生時代にバックパッカーとして旅をして色んな国の人たちと交流して良い貴重な経験になりました。
ただ、どんなに貧乏旅行をしたとしてもお金がかかる上に、安い宿はセキュリティーの問題もあります。
長く安全に滞在できる国際交流の場がアジア中にできたらいいなと思ったのです。
ただ、それは簡単なことではなく、現地側に同じ志を持った仲間がいないと一つの場所を作ることも継続していくこともできません。
スリランカは大成功したケースだと思います。
エ:2000年にスプートニクを設立した翌年の12月に結婚したのですが、交流施設に自分がいないと安心できませんでした。
そこで、結婚初日から国際交流会館の一室に妻と住み、そこで2010年まで住み込みで活動していました。
イ:アジアホールはどのような目的で建てられたのですか。
エ:アジアホールは、250人ほど入れるステージがあるホールです。
この地域には多くの人たちが集まって活動できる場所がありませんでした。
そのような場所として作ったのがアジアホールです。
日本から支援してもらえる資金は、建設に必要な金額には足りませんでしたので、費用を抑えるため自力でアジアホールを建設しました。
4か月間の突貫工事で、それはもう大変でした…。
北西部州初の日本語学校を開校
エ:日本からの資金支援もありましたが、スリランカ側でも継続して資金を得られる仕組みが必要だと思いました。
スプートニクがある北西部州には日本語学校がまだありませんでした。
私は日本語を勉強し、日本との繋がりもあります。
そこで北西部州初の日本語学校として2001年6月に開校したのが「スプートニク国際教育学院」です。
最初の3年間は私一人が講師で週末だけ教えていました。
その後、卒業生に先生になってもらい、芸術クラスも始めました。
日本の高校に留学する学生も出てきました。
そして、2006年にスリランカのAFSと、AFSの奨学金制度を作り、日本のAFSを通して日本の高校に留学生として送り出すことも始めました。
ガールズホーム設立資金を集めた絵本プロジェクト
秋:2006年にAFSの卒業生である英治出版の原田英治さんに協力してもらい、匿名投資組合を日本で組みました。
ガールズホームの建設に必要な費用を明示して投資家を募ってお金を集め、スリランカと日本で一緒になって作った絵本を販売することで、お金を返すというブックファンドです。
ただ日本でお金を集めて渡すのは良くないと思い、スリランカの人たちにも参加してもらうために、わざわざ匿名投資組合を作りました。
資金はしっかり集まったので、匿名投資組合がなくてもガールズホームは建ったと思いますが、あえてそうすることで「自分たちの描いた絵でこのガールズホームは建ったんだ」と自信にもつながり、こういうことができるんだ!という気付きに繋がると思ったのです。
投資家の皆さんは、リターンのお金はいらないといってくださる方も多かったですが、元々投資案件として行ったものですので、絵本で上がった収益分を投資家の皆さんにお返ししました。
モデル施設に認定されたガールズホーム
エ:秋沢さんの提案で養護施設・孤児院を運営することになり調べてみたところ、この地域にボーイズホームはたくさんありましたが、ガールズホームが足りていませんでした。
そこで、2007年にガールズホームを開設しました。
ガールズホームやボーイズホームは「子供を利用してお金を集めている」と言われるところもあるため、最初は妻から反対されました。
ただ、二人の娘を持つ父親として、そのような困難があるからこそ挑戦する意味があると思い、北西部州37番目の養護施設としてガールズホームを開設しました。
有難いことに運営を初めて3年も経たないうちに、スリランカにおけるモデル施設、北西部州で最も質の高い施設として認められたのです。
そこで、スプートニクのガールズホームだけではなく、スリランカ全体の養護施設を良くするためにはどうしたらいいのか研究することにしました。
オーストラリアの奨学金を得て、オーストラリアの大学院で4年間研究し、スリランカに戻って8ヶ月間かけて400以上のスリランカの全ての養護施設に対して調査を行いました。
ガールズホームのリニューアブルエナジー化
エ:オーストリアの大学での博士論文に、有機農法とリニューアブルエナジーをスリランカ全国の児童養護施設に導入することについてまとめました。
そのまとめた理論をドイツで開催されたマーガレット・ミード・メモリアル・アワードで発表したところ、67人の発表者の中から優勝者に選ばれました。
その後、在スリランカのドイツ大使館から「グリーン・チャンピオン・オーダー」に参加しませんか?と連絡をもらいました。
ドイツで発表した理論を具体化する提案を発表したところ、「グリーン・エナジー・チャンピオン」という賞をいただき、賞金の1万ユーロを元に太陽光発電、バイオガス、雨水を有効利用するタンクをガールズホームに導入することができました。
また、奨学金をもらったオーストラリアの大学から5,000豪ドルの賞を先月いただき、11月からバイオガスで作られる有機肥料を販売することでガールズホームの運営資金に当てるプロジェクトを始めるため、現在準備を進めています。
グリーン・エナジー・テクニカル・エデュケーション・センターを作りましたので、各学校の子たちにも有機農法やリニューアルエナジーの活用について教えていきたいと思っています。
絵画コンテスト「White Canvas」
秋:White Canvasは、TBSがCSR活動として主催しているアジアから映像作家を発掘・育成するプロジェクト「DigiCon6」から着想を得て立ち上げた絵画コンテストです。
DigiCon6の活動を通して、映像を作るには絵コンテが必要であり、映像作りには絵の力が不可欠であることに気付いたのです。
そこで、スリランカで活動するエシャンタさん、カンボジア、タイで活動する仲間たちに声をかけて、まだ光が当たっていない画家さんたちを発掘しようと始めたのがWhite Canvasです。
日本側で助成金をもらい、それを各地で活動する仲間に託して運営しています。
ガールズホームのガールズたち
イ:ガールズホームのみんなにはどのような女性に成長してほしいですか。
秋:最初にガールズホームに入った子の一人が、私たちが関わっていることを表に出すことなく、日本大使館が選抜したAFSの奨学生に選ばれて日本に留学しました。
「児童養護施設で育った」というバックグラウンドは社会で不利になることがどうしてもあります。
そんな中、頑張ればチャンスが得られるという事例を彼女が作ってくれたのです。
そして、そんな彼女はスリランカの児童養護施設の子どもたちにとって希望になります。
自分たちが置かれた境遇に悲観することなく、頑張ればできると信じて、大変な世界で独り立ちできるような女性に育っていってほしいと思っています。
エ:子どもたちにご飯をあげて生活さえできればいいという考え方の施設もありますが、スプートニクは1にも2にも3にも教育だと思っています。
ガールズホームにはそれまでほとんど勉強してこなかった子も入ってきますが、しっかりと教育を受けて成長していってほしいと思っています。
コロナウイルスはスプートニクにも影響
イ:コロナ禍は活動に影響は出ましたか?
エ:日本語学校の生徒が半減し、収入も減ってしまいました。
「みんなで一緒に集まって勉強したい」と思っている生徒はコロナを理由にやめてしまいました。
オンラインでも授業は通常の授業料よりも抑えた価格にしているため、経営的には苦しい面があります。
スリランカには学校や孤児院、老人ホームなどに食糧を寄付をする習慣がありますが、コロナによってそのような寄付もなくなってしまいました。
また、ガールズホーム内で感染者が出てしまったこともあり、感染対策を優先してスプートニクへの訪問をお断りしている状況でもあります。
そこで、ガールズホームの食費をサポートいただけるよう「The 365 Day Gift of Food」というプロジェクトを始めました。
1日の食事代をサポートしてくれる人を365人見つけらるというものです。
海外にいる友人たちに声をかけて、現在30人ほどが協力してくれていて、今、一人ずつ増えているところです。
全寮制で介護者を育成する「ケア・ギバー・プロジェクト」
エ:コロナ禍で始めたのが「ケア・ギバー・プロジェクト」です。
秋:全寮制で25人の女性に8ヶ月間の勉強をしてもらいました。
日本から全額奨学金をいただき、新しく建物を建てるための支援金までもいただいています。
現在はケア・ギバー・プロジェクトを修了した子たちの日本側の就職先を探すという活動をしています。
特別養護老人ホームにコンタクトを取りながら、スリランカ人の介護者はどうでしょうか?と聞いて回っています。
ガーナでの活動のはじまり
イ:活動地域にスリランカと日本以外に加えてガーナも入っているのはなぜでしょうか。
秋:スプートニクの活動の様子を見ていた日本に住むガーナ人の友人から「ガーナでも活動できないか?」と相談されたのがきっかけでした。
私は当初、アジアで活動を広げていくことを考えていました。
ただ、活動を続けていく上で何よりも大事なのは信頼できるパートナーが現地にいることです。
アジアという地域にこだわるよりも、強い志を持っている人がいる場所で活動しようと考えるようになりました。
ガーナでは移動図書館プロジェクトをはじめとした4つのプロジェクトを行なっています。
クレヨンプロジェクトは「ぺんてる株式会社」に、そろばんプロジェクトは「トモエ算盤株式会社」に協賛していただいています。
今後のスプートニクの展望について
イ:今後のスプートニクさんの展望について教えてください。
エ:スリランカの児童養護施設は、スリランカ政府のディパートメント・オブ・プロベーション・アンド・チャイルド・ケア・サービシズを通して子どもを受け入れる仕組みになっています。
この政府機関から依頼されて、他の児童養護施設向けに講演をしたり、視察訪問することがあります。
スプートニクのガールズホームが引き続きモデルとなるよう運営しながら、他の施設のレベルアップにも貢献していきたいと思います。
スプートニクの日本語学校の活動も同じようなことが言えます。
スプートニクの日本語学校は、スリランカ国内で日本人が働くことが認可された唯一の学校です。
スプートニクでの取り組みを他の日本語学校にも共有して、スリランカにおける日本語学校の質の向上にも関わっていきたいと思います。
秋:日本語を学んでくれている子たちのために、就労支援を行いたいと思っています。
少子高齢化が進む日本は、アジア各国の若い働き手の協力を得ることが必要不可欠です。
一方で、日本の人たち向けには、アジア各国の人たちと共存するためには、どのようなマインドで日々を過ごしていかないといけないのか?ということを啓蒙することが必要だと思います。
私は世界を均質化するグローバリゼーションではなく、それぞれの国の文化・宗教・価値観を大切にしながらそれらを学び合って、異分子として共存していくカラフルな社会が求められているのではないかと思います。
そのためには、自分のやりたいことだけを追求するのではなく、世の中のためにお金や時間、アイディアを還元していくことが必要だと思っています。
イ:お二人とも、貴重なお話をありがとうございました。
今後の活動も応援しています!
おしらせ(Peace Questについて)
さて、最後にお知らせです。
スプートニクさんはこれまで17年間にわたり、チャリティーコンサート「Peace Quest」を開催されてきました。
こちらのPeace Questが今月の9月23日(木・祝)にオンラインで開催され、これが最後のコンサートとなります。
当日は、スリランカ・ガーナと日本を結んでの団体活動紹介や、社会貢献バンドXQ’sによる演奏などが行われる予定です。
是非ご参加ください。
詳細・お申込みは以下のページをご確認ください。
https://pq2021final.peatix.com/
参考資料)
TBS:DigiCon6 ASIA
White Canvas公式サイト
White Canvasプロジェクトについて【SDGs×ART×ASIA】
Green Energy Champion ’21
スプートニクインターナショナル:ガーナでのプロジェクト紹介
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これまで行ったことのある国は台湾だけで、もっとたくさんの国に行ってみたい!
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