ヒッカドゥワ郊外のムーンストーンの採掘地ミーティヤゴダ
世界で採れるムーンストーンの中でもスリランカ産のムーンストーンは良質とされ、スリランカ産の青色のシラーが美しいムーンストーンは「ロイヤルブルームーンストーン」と呼ばれています。
スリランカでムーンストーンの採掘地として知られているのが、ヒッカドゥワ郊外にあるミーティヤゴダです。
ミーティヤゴダでは宝石の採掘や加工の過程が見学できるミュージアムやジュエリーショップがあり、ヒッカドゥワの観光オプションとして楽しむことができます。
本記事では、ミーティヤゴダについて紹介します。
ムーンストーンとは?
ムーンストーンは、長石類の宝石で、和名は月長石と言います。
6月の誕生石で、硬度は6です。
その名の通り月を象徴する宝石で、ヒンドゥー教の神話では、ムーンストーンは月の光が凝固したものだとされていたそうです。
ムーンストーンは、カボションカット(丸い山形に研磨)することで得られる青白な光沢を月の光に見立て、ムーンストーンと呼ばれるようになったとされています。
ムーンストーンには、曹長石(アルバイト)と正長石(オーソクレース)の2種類の長石の層があり、光がこの層に当たることで反射するシラー効果があります。
この層が厚いムーンストーンのシラー効果は白色になってしまいます。
層が厚くないものは、青色のシラー効果を持ち、白色の表に美しく光ります。
この青色のシラー効果を持つムーンストーンを「ブルームーンストーン」と呼びます。
本来はスリランカ産の青色のシラー効果を持つものをブルームーンストーンと呼んでいたそうですが、他の産地で採れたものもブルームーンストーンと呼ばれるようになったことから、スリランカ産のブルームーンストーンを、「ロイヤルブルームーンストーン」と呼ぶそうです。
宝石に関する書籍にもスリランカ産のムーンストーンに関する記述が見られました。
諏訪恭一著『価値がわかる 宝石図鑑』には、以下のように記載されています。
特にスリランカ産のブルーがかったミルキーな帯状の光を放つものは、ブルームーンストーンと呼ばれ、大切にされています。
宮坂敦子著『ジュエリーの基本ブック―ジュエリーを知る宝石に強くなる』には以下のように記載されていました。
とくに輝きが美しいスリランカ産のものはロイヤルブルームーンストーンと呼ばれ、大変人気があります。
白色と青色が混じり合った月光のような青色閃光を放つシラー効果を持つものは、鑑別書に「アデュラレッセンス効果」あるいは「ムーンストーン効果」と記載されます。
アデュラレッセンスは、スイスのムーンストーンの採掘地「アデュラー山(現在のゴッタルド峠)」に由来しています。
ちなみに、シラー効果の「シラー」とは、ドイツ語で「きらめき」を表すSchillerが由来だとされています。
日本では富山県南砺市人喰谷、長野県大町市木崎湖でムーンストーンが採掘されます。
ルビーの産地として名高いミャンマーのモゴック鉱山でもムーンストーンは採掘されています。
参考)
アヒマディ博士のジュエリー講座 Vol.33長石からできた宝石の大家族(1)
GIA:ムーンストーン
宝石専門チャネルGSTV:ムーンストーン(月長石)の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説について
パワーストーンアクセサリー専門店Natural Style:ムーンストーン
天然石パワーストーン意味辞典:ムーンストーン
ウィキペディア:月長石
ウィキペディア:人喰谷
ウィキペディア:木崎湖
マホガニーなDaily:鉱物採集10年企画:再訪 富山県南砺市人喰谷でムーンストーン探し2019年8月(鉱物採集第247回)
ウィキペディア:カボション・カット
ミーティヤゴダとは?
良質なムーンストーンが採れると言われるスリランカにおいて、ムーンストーンの採掘地として知られているのがミーティヤゴダです。
1906年に見つかったムーンストーン採掘地
ラトゥナプラは紀元前から世界に知られた宝石採掘地ですが、ミーティヤゴダの採掘地としての歴史は1906年に始まります。
1906年にゴールからやってきたイスラム商人がミーティヤゴダでカオリン(きめの細かい白色の粘土)を採取し、その後、ムーンストーンを大量に発見します。
彼らはムーンストーンの原石をカットして磨き、サファイアなどのスリランカの伝統的な宝石と一緒にショールームに飾り、販売を始めます。
その後、ヨーロッパから南西海岸に旅行が多く訪れるようになると、観光地として知られるようになります。
ところが、1987年にミーティヤゴダの鉱床は枯渇し、生産は激減したと以下のサイトに記載されています。
参考)
月長石(Moonstone)
ヒッカドゥワから北7〜10キロの位置
ミーティヤゴダ(Meetiyagoda)は、ヒッカドゥワから北に7〜10キロほどの場所にあります。
ゴールロードのカハワジャンクションにはカハワのバス停とカワハ駅があります。
ヒッカドゥワから行く場合も、コロンボから行く場合も、カハワジャンクションからカハワ・バタポラ・ロードで坂を登っていくのが一般的なアクセス方法です。
この道のりだとヒッカドゥワから10キロです。
間の細い道を通ると7キロですが、道が混むわけでもありませんので、主要な道で行くのが良さそうに思います。
カハワジャンクションにトゥクトゥクが客待ちをしていることもありますが、いないこともあるのでヒッカドゥワから交通手段を用意して行った方が楽でしょう。
ミーティヤゴダに隣接したドマンウィラに主鉱山があります。
ミーティヤゴダのお店
グーグルマップで見ると、Beruwalage Gems & Jewelleryの評判が高いです。
Moonstone No.1も評判が良いです。
一方で、私が訪れた Natural Moonstone Mine & Gem Palaceはかなり評判が悪いです 笑
私は初めてヒッカドゥワに行った時(2017年12月)コロンボから鉄道で行き、2回目のヒッカドゥワはコロンボからバスで行き(2018年1月)、カハワジャンクションで降りて、そこに止まっていたトゥクトゥクに「ミーティヤゴダ」とだけ伝えたら、こちらに連れてこられました。
やはりちゃんと調べて行った方がいいということを改めて感じました。
評判の悪いところがどんなところなのか知るのも面白いかも?と思ってくださった方は、これ以降、読み進めてください。
本記事の写真は2018年1月に訪れた際のものです。
Natural Moonstone Mine & Gem Palaceは、観光客向けに宝石採掘の様子が分かるようになっています。
「観光客向けの偽物だ!」という口コミも書かれていますが、観光客向けでない本物の採掘場は、観光客を相手にしている暇はありませんし、常に場所が変わってしまいますので、その批判はどうかなと思います。
キャンディには宝石ミュージアムを併設したジュエリーショップが多く、他の町にも大型店ではミュージアムを併設しているところがあります。
そういった都会の建物内にあるミュージアムに比べれば、かつては採掘が盛んに行われていたミーティヤゴダに建物の外にも施設があって、宝石採掘について知ることができるので「偽物だ!」と言うものでもないかと思います。
ただ、採掘地にあるので、採掘されている現場を期待していた場合は期待ハズレですよね。
ミーティヤゴダの採掘場を訪れた方のブログがありましたので、参考にしてみてください。
参考)
石野田 奈津代 誕生石を探して世界一周:ついに本物のムーンストーン採掘現場に
敷地に入るとまず、坂を登っていきます。

そして、立坑に案内されました。

ラトゥナプラの採掘場を見学した時は立坑はゴムの木で組まれていましたが、ミーティヤゴダではヤシの木で組まれています。

イギリスは海岸側にココヤシ農園、内陸側にゴム農園、山岳地帯に茶農園を作りましたが、内陸にあるラトゥナプラはゴムの木があり、海に近いミーティヤゴダではヤシの木が手に入りやすいからなのでしょう。
本物の採掘地だと思って訪れた場合の怒りが込み上げるポイントが早速ありました。

下は工房エリアにつながっています。
見学し終わると、坂を降りて、お店に向かうことになります。
立坑の後は、地下水を貯めた溜池で籠を使って原石を選り分ける作業を見せてくれます。


そして、お店へ移動、坂を降ります。
周囲はシナモンなどのスパイス農園になっています。

「スパイスを買えるよ!」と案内してくれているおじちゃん。


宝石採掘を見にきているので、シナモンは素通りしました。
ここも採掘場を見にきた人からすると、怒りポイントかもしれません。
工房に到着!

ムーンストーン以外のものも、たしかに置かれています。

これは青っぽいムーンストーンでしょうか?

これは白っぽいムーンストーン?

ガーネット?

アメジスト?

トパーズ?トルマリン?

磨きの工程。
この工房エリアの奥にジュエリーショップがありました。
ジュエリーショップ内部は写真を撮っていません。
グーグルマップの口コミには強引に売り込んでくるのがウザい!と何人かが書き込んでいますが、私が訪れた時はショップでは特に何も案内されませんでした。
他にも特に売り込まれることはなく、案内してくれたおじちゃんからチップを求められることもありませんでした。
ミュージアムを併設しているジュエリーショップでも、ミュージアムは無料ですし、何も買わずに出て行っても何も言われませんので、やはりここはミーティヤゴダにある宝石博物館とスパイス農園を併設したジュエリーショップなのだと思います。
ミーティヤゴダの町は歩かず、この後は待機していたトゥクトゥクで津波の被害地であるペラリヤに行ってしまいましたので、いずれミーティヤゴダを訪れた際にまた情報を追記、アップデートしたいと思います。
ミーティヤゴダ、ペラリヤ、シーニガマを訪れてからヒッカドゥワに向かいました。
カハワジャンクション→ミーティヤゴダ→ペラリヤでトゥクトゥクは500ルピーでした。
参考)
Lanka Excursions Holidays – Kandy:Meetiyagoda Moonstone Mine in Sri Lanka
Infolanka.lkMoonstone Mine Sri Lanka
英辞郎on the WEB:カオリン
Wikipedia:Shaft sinking
コトバンク:立坑
Wikipedia:Mogok
Central Gem Laboratory:CGL通信 vol26 「ミャンマー、モゴック鉱山視察報告」
GIA:モゴック遠征シリーズ第1回:ルビーの渓谷
SignPost:世界に出回るルビーのほとんどを産出する町・モゴックが、外国人観光客に解禁。今が行きどき!
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SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTD Managing Director
SPICE UP TRAVELS (PVT) LTD Managing Director
「旅と町歩き」を仕事にしようとスリランカに移住。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年4月、法政大学社会学部社会学科を卒業後、六本木の人材系ネットベンチャーに新卒入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長を経てネットベンチャーを退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当しながら、新宿ゴールデン街で訪日外国人向けバーテンダー。
2016年7月、スリランカに初めて渡航し、法人設立の準備を開始。
2017年1月、SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTDを登記。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年2月、スリランカ観光情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」オープン。
2020年8月、ニュースレターの配信を開始。
2020年10月、WAOJEコロンボ支部立ち上げ初代支部長に就任。
2023年2月、スリランカ日本人会理事・広報部長に就任。
2025年6月、SPICE UP TRAVELS (PVT) LTDを登記。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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