クリスマス翌朝に発生したスマトラ島沖地震と津波被害
クリスマス翌日の12月26日は多くのキリスト教国ではクリスマス2日目、聖ステファンの日、ボクシングデーなどと呼ばれる祝祭日でお休みです。
2004年12月26日、東日本大震災を超える規模のマグニチュード9.1の巨大地震がスマトラ島沖で発生しました。
クリスマスシーズン・年末の日曜日の朝に、大津波が環インド洋の国々を襲ったのです。
震源地国であるインドネシアに次いで被害が大きかったのがスリランカでした。
本記事では、スリランカでの被害を中心にスマトラ島沖地震について紹介します。
目次
スマトラ島沖地震地震の概要
インドのアンダマン・ニコバル諸島の西沿岸から、インドネシアのスマトラ島、ジャワ島、小スンダ列島、タニンバル諸島の南西沿岸を経由して、パプアニューギニアに近いインドネシアのカイ諸島南東沿岸に至る、約7,000kmものジャワ海溝(スンダ海溝)があります。
ジャワ海溝は北側のユーラシアプレートの下に、南側のインド・オーストラリアプレートが沈み込む地震多発地帯です。
スマトラ島北端のアチェ州はイスラム教学と貿易の一大中心地として栄えたアチェ王国があった地で、宗主国のオランダとの戦争(アチェ戦争)の後は、アチェの分離独立を求めたインドネシア政府との内戦(自由アチェ運動)が続いていました。
そんなアチェ州の州都バンダ・アチェ(ペルシャ語の港bandarに由来)の南南東沖合250km地点が震源地でした。
スリランカは震源地から1,700km離れていますが、2時間後に東海岸に津波が到達し、その20分後に南西海岸にも津波が到達し、3万6千人以上が亡くなる甚大な被害が起きました。
主な被災国
主な被災国の死者と行方不明者の合計は以下の通りです。
インドネシア:24万人以上
スリランカ:3万6千人以上
インド:1万6千人以上
タイ:8千人以上
ヨーロッパ人の被災
12月下旬はヨーロッパが寒い時期かつクリスマス休暇でもあり、南国リゾートで過ごすヨーロピアンが多くいます。
海沿いのビーチリゾートで過ごしていたヨーロッパ人も多く被災しています。
クリスマス2日目、ボクシングデー、聖ステファンの日
12月26日はドイツ、チェコ、オランダでは「クリスマス2日目」で休日です。
アイルランド、オーストリア 、イタリア、デンマーク、フィンランドなどでは、最初のキリスト教の殉教者である聖ステファン(聖スティーブン)を記念する「聖ステファンの日」で休日です。
イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージランドなどでは、「ボクシングデー」と言われる祝日で、バーゲンセールが行われます。ボクシングデーの由来はクリスマスの翌日に教会が貧しい人たちのために寄付を募ったクリスマスプレゼントの箱を開ける日であったことだとされています。
南国の島スリランカの観光業のピークシーズンは12月下旬から年明けにかけたクリスマスバケーションの時期です。ヨーロッパから多くの観光客がビーチリゾートを中心に過ごします。まさにそのビーチリゾートを津波が襲ったのです。
被災が多かった外国人の国籍
スマトラ島沖地震で被災して死亡または行方不明者が多い国は以下の通りです。
■主なヨーロッパ人の被災人数
スウェーデン人(死亡543名、不明17名)
ドイツ人(死亡539名、不明13名)
フィンランド人(死亡179名)
イギリス人(死亡143名、不明6名)
スイス人(死亡106名、不明6名)
ちなみに、日本人は死亡37名、不明7名となっています。
日本人が最も被害を受けたのがタイのプーケット島です。
タイでは28名の日本人が亡くなっています。
残りの11名が亡くなったのがスリランカでした。
スリランカ各地の被害
スマトラ島の現地時間8:00頃に発生した地震は2時間後にスリランカの東海岸に津波が到達したと言われています。
スマトラ島とスリランカの時差は1.5時間あるため、スリランカの東海岸に津波がきたのがスリランカ時間の8:30頃です。
スリランカは地震がほとんどないため、津波への警報体制がなく、避難警告が出ないまま、巨大な津波が襲います。
人々は津波の知識がないため、様子を見に海に近づいたり、もう一度大きな波が来るとは思わず、打ち上げられた魚を採りに行った人々など、多くの犠牲が出たといいます。
さらに悪いことに、2004年12月26日は日曜日だったため、スリランカにある各国大使館に、スリランカ国外から警報が送られるも、その多くが閉まっていました。
東海岸に津波が到達してから約20分後に、南海岸に津波が押し寄せます。
上の写真は南海岸のタンガッラの碑ですが、こちらには9時27分と記載されています。
東海岸はスリランカ内戦の影響もあり、はっきりとした記録が残っていませんが、東海岸の次に津波が到達した南海岸では10mを超える津波が記録されています。
そして、東海岸に津波が到達してから約1時間後に南西海岸に津波が来襲。
午前9時26分にゴールに津波の第1波が来たと記載している記事もありました。
南西海岸は津波の高さは南海岸、東海岸に比べて高くありませんでしたが、スリランカで最も多くの観光客が訪れるビーチリゾートエリアであり、漁業も盛んな地域のため、被害を受けた人数は多数に上っています。
地域別の津波の大きさ
記録が残っている中で、最も高い津波が襲ったのはヤーラの12.5mです。
次いでハンバントタ11m、コッガラ9mと南海岸が続きます。
ヤーラはサファリが楽しめる国立公園があり、スリランカで津波で亡くなった日本人11名のうち8名がヤーラで亡くなられたようです。
ヤーラでは外国人観光客が50名(日本人を含む)が亡くなったと記録されています。
■津波に高さ
ヤーラ:12.5m
ハンバントタ:11m
コッガラ:9m
ポットゥヴィル〜バッティカロア:4.5-9m
ゴール港:6m
トリンコマリー:2.6-5m
ウェリガマ:4.9m
ゴール海岸:4.8m
ベールワラ:4.8m
ヒッカドゥワ:4.7m
アンバランゴダ:4.7m
アンバランゴダ〜モロトゥワ:4-5m
ヒッカドゥワ郊外での列車事故
ヒッカドゥワ駅から北3.6kmに隣駅のテルワッタ(Telwatta)駅があります。
テルワッタ駅があるペラリヤ(Peraliya)村では、列車での死者数では世界最悪と言われる1,700人以上が亡くなったとされる事故が発生します。
コロンボと南西部・南部のゴールやマータラを結ぶ鉄道コースタルラインは海岸線沿いに線路が走っています。
コロンボを出発して南に向かっていた列車は9:30頃にTelwatta駅付近のペラリヤ村で津波の第一波を受けて停車します。
津波の知識がない人々は、第一波で被害を免れたため、列車の屋根の上、列車内部、列車を降りて列車を壁にした内陸側などで待機していたと言われています。そして、列車を飲み込む大きな第二波に襲われ、列車もろとも流され、死者数は900〜1,700名、生存者は150名ほどと報告されています。
現在、ペラリヤ村には「General Tsunami Photo Museum」、「Community Tsunami Education Center & Museum」、「Tsunami Photo Museum (OLD)」と、津波の被害を記録・展示する3つの小さなミュージアムがあるようです。
ペラリヤには本願寺文化興隆財団が建てたバーミヤン式の仏立像「Tsunami Honganji Viharaya」があります。
その仏立像の近くにも小さいなミュージアムがあります。
まとめ
当時の被災地の状況は、現地で支援に動かれた田村 智子さん、野口千歳さん、石川 直人さんの体験が書かれた記事をご覧ください。現地の悲惨な状況が分かる一方で、被災者のために尽力する日本人や現地の方々のことが分かります。
一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター「スマトラ沖大震災・津波後のスリランカの状況」
地球人のためのウェブメディア「生きる力・・・スリランカ津波被災の現場から」
NPO法人アプカス、NPO法人パルシック「現状と課題 被災地に何ができるか?」
また、学校で教わった津波の前兆を覚えていた10歳のイギリス人少女によって救われた人々がいたエピソードがあるようです。災害がいつ身近で起きるかは分かりません。いざという時のために備えることは大切だなと思います。
参照ページ
ウィキペディア「スマトラ島沖地震(2004年)
ウィキペディア「スマトラ島沖地震」
Wikipedia「2004 Indian Ocean earthquake and tsunami」
Wikipedia「2004 Sri Lanka tsunami train wreck」
内閣府「インドネシア・スマトラ島沖大地震及び津波による被害」
一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター「スマトラ沖大震災・津波後のスリランカの状況」
地球人のためのウェブメディア「生きる力・・・スリランカ津波被災の現場から」
スマトラ沖地震に よるスリランカ国 ゴール港の津波被害
スマトラ沖地震津波によるスリランカでの被害 に関する現地調査-河川被害を中心として
NPO法人アプカス「スマトラ沖地震にともなう被災者への支援プログラム(スリランカ東部地域トリッコーウィル、南部地域カラマティア)」
NPO法人アプカス、NPO法人パルシック「現状と課題 被災地に何ができるか?」
JICS「スマトラ沖地震およびインド洋津波被害への支援 スリランカへの支援」
外務省「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害」
インド洋津波10年 日本人死亡の地で式典
ウィキペディア「聖ステファノの日」
ウィキペディア「ボクシング・デー」
JETRO「オランダ祝祭日」
ドイツ連邦共和国大使館・総領事館
JETRO「チェコ祝祭日」
JETRO「オーストリア祝祭日」
アイルランドの休日・祝日カレンダー
フィンランドの祝日・休日
スウェーデンの祝日・休日
ノルウェーの祝日・休日
イタリアの祝日・休日
デンマークの祝日・休日
オーストラリアの祝祭日
ニュージーランドの祝日・休日
カナダの休日と祝祭日
ウィキペディア「本願寺文化興隆財団」
一般財団法人本願寺文化興隆財団「国際文化交流」
関連ページ
https://spiceup.lk/ishikawa-san/
「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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