駐日スリランカ大使サンジーヴ閣下へのインタビュー
2021年1月に着任されて1年が経過した、駐日スリランカ大使ウィシュラマール・サンジーヴ・グナセーカラ閣下にインタビューを行いました。
サンジーヴ大使は、アメリカで経営学修士(MBA)・国際関係学の学士を取得し、アメリカ企業で会計士・CFOを務めた後に起業し、3 か国・8 都市で不動産事業を展開する年商6,000万ドル(約61 億円)の企業に育て上げたビジネスキャリアをお持ちです。
また、アメリカとスリランカで数々の慈善活動にも尽力されています。
慈善活動の例)
・スリランカ退役軍人の住宅資金とし て15 万米ドル以上を調達
・スリランカ北部におけるスポーツ施設の建設費用25 万ドル以上を調達
・スマトラ沖地震の被害者へ25 万ドル 以上を調達
・サンジ ーヴ&マニル グナセーカラ基金を通じた教育支援
・ロサンゼルスでの仏教機関の創設及び会長への就任
・創建700 年の寺院の寂静処の改修
そんなサンジーヴ大使にお話をお伺いしました。
参考)
駐日スリランカ大使館:サンジーヴ・グナセーカラ – 駐日スリランカ大使
目次
ナショナルドレスがお似合いです。
日本でナショナルドレスを着たのは、信任状捧呈式を含めて今日が4回目です。
2022年はスリランカと日本は国交樹立70周年の年です。
それを記念して、本日は南アジア諸国の大使が本田太郎外務大臣政務官に書き初めのイベントに招かれ、先ほど外務省から戻ったところです。
日本での1年間はいかがでしたでしょうか。
とても素晴らしい時間を過ごしました。
コロナ禍であまり他の町には行けていませんが、広島に2回、京都、大阪、神戸、熊本、群馬、名古屋と訪問しました。
熊本は水俣市に建てられた世界平和塔の式典に参加しました。
新潟や北海道などにも行きたいと思っています。
参考)
駐日スリランカ大使館:大使は水俣仏舎利塔落慶大法要に出席し、水俣仏舎利塔へネパールから贈られた仏舎利が納められた際には祝辞を述べました。 今回の大法要は日本山妙法寺が主催し、高倉敦子様を代表とする水俣市の市民グループが37年の歳月をかけて実現しました。
駐日スリランカ大使館:大使は予定通り熊本県内でスリランカ人が経営するレストランを訪問し、九州地域に住むスリランカ人の皆様とお会いし、大使館の活動を報告し、彼らの要望に耳を傾けました。出張領事サービスを2022年前半の実施にて合意しました。
経済界から大使に転身されたのは、ご祖母様の影響もあるのでしょうか?
シリマヴォ・バンダラナイケ政権の時に、母方の祖母はスリランカ初の女性大使としてガーナに駐在していました。
祖母からの影響もあるかもしれませんが、スリランカに恩返ししたいという気持ちが強かったように思います。
私はスリランカで生まれ育ち、奨学金を得てアメリカの大学に入学し、会社を経営してアメリカに37年間住みました。
私がアメリカで成功できた要因や土台となっている考え方はスリランカで身につけたものです。
私のビジネス経験がスリランカのために活かせるかもしれないと思い、駐日スリランカ大使になりました。
日本とスリランカは政治・防衛・地政学といった観点だけではなく、歴史的にも文化的にもつながりのある友好国です。
参考)
THE TIMES OF SRI LANKA:New Foreign Ministry appointments to several top diplomatic missions abroad
日本企業にどんなビジネスチャンスがスリランカにありますか?
再生可能エネルギー、有機農業、EV、アパレルなどです。
昨年11月に丸紅さんをスリランカにご案内し、マンナールの風力発電への投資、貯水池での浮体式太陽光発電、織物製造施設、電気スリーウィーラーと電気自動車充電ネットワーク構築などの可能性を検討いただいています。
昨年末にはJICAさんの支援でスリランカで地上テレビのデジタル化放送が始まりました。
そのため、スリランカではデジタル放送に対応したテレビや周辺機器のニーズがあります。
スリランカのアパレル産業は世界に誇れる産業で、直近の10年間は輸出金額が増加傾向にあり、スリランカの輸出総額の45%ほどを占めます。
アメリカに21億ドル以上、ヨーロッパにも20億ドル以上の輸出をしていますが、日本にはわずか5,900万ドルほどしか輸出されていません。
日本は東南アジアやインドとはEPAを結び関税の撤廃や低減がされていますが、スリランカから輸入する場合は関税が12%かかっていることが大きいでしょう。
現在、スリランカは有機農業に力を入れています。
オーガニックココナッツ、天然ゴムは有望だと考えています。
2年後にはスリランカの農業の30〜40%は有機農業になるでしょう。
参考)
駐日スリランカ大使館:大使は双日株式会社の電力インフラソリューション事業部の皆様と面会し、スリランカのカラニティッサでの再生可能エネルギー新規事業について協議しました。
駐日スリランカ大使館:日本よりJICA南アジア部長坂本様をはじめJICAの皆様がラージャパクサ大統領をご訪問され、スリランカにおける再生可能エネルギーや持続可能な農業、投資について会談を行いました。
CEYLON TODAY:Japan to invest in Mannar Wind Power Project
SRI LANKA EXPORT DEVELOPMENT BOARD:APPAREL EXPORT PERFORMANCE
外務省:我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組
なぜ、在日スリランカ人が増えているのでしょうか?
2015年に1万3,000人ほどだった在日スリランカ人は、現在では3万人ほどになっています。
また、スリランカ生まれで日本国籍を取得しているのは4~5,000人ほどいます。
おそらく、在日スリランカ人は5年後には6万人ほどになるでしょう。
多くの未熟練労働者がスリランカから中東諸国に渡航していますが、スリランカの海外雇用促進&市場多様化省は、熟練労働者の雇用機会を創出しようとしています。
そうした中で力を入れているのが日本・EU・韓国の3つです。
それぞれに担当部門を設置しています。
今年1月に日本の特定技能(SSW:Specified Skilled Worker)の試験がスリランカで開始されました。
介護職やホスピタリティ産業で働く技能と日本語能力を持つスリランカの人材が、毎月500人、つまり年間で6,000人が日本で新たに働くことを目指しています。
日本人と同等以上という特定技能外国人の給与条件は魅力的です。
参考)
出入国在留管理庁:スリランカに関する情報
Sri Lanka Bureau of Foreign Employment:Skilled Manpower
日本語学習者は増えているのでしょうか?
毎年増加しています。
Aレベル試験(高校卒業試験 兼 大学入学試験)の選択科目で日本語を選ぶことができ、受験者数は年々増加しています。
日本語を教えている語学学校も増加しています。
なぜ、千葉・茨城・栃木にスリランカ人は多いのですか?
栃木県、千葉県、茨城県で在日スリランカ人の40%を占めます。
埼玉県や神奈川県にも多く住んでいます。
明確な理由はわかりませんが、中古車や工業機械の輸出事業を行っているスリランカ人が多く、自動車や機械を保管する場所を確保する土地があることと、東京へのアクセスの良さによるものだと思います。
参考)
駐日スリランカ大使館:NUMBER OF SRI LANKANS IN JAPAN IN 2019
スリランカの未来についてどうお考えですか?
スリランカの素晴らしい観光資源を求めて、世界から多くの人々がスリランカに訪れてくれるようになるでしょう。
私は世界50カ国を訪れましたが、スリランカの魅力は自然の美しさと多様な景色です。
世界には素晴らしいホテルは数多くありますが、スリランカのリゾートからは美しいビーチ・どこまでも広がる紅茶畑・多数の固有種が生息する国立公園など美しい自然の景色が見られるのが魅力です。
スリランカは野生象との遭遇率が高く、ヤーラ国立公園は豹の生息密度が高いことで知られ、各地にある国立公園でサファリを楽しむことができます。
海ではクジラやイルカを見ることができます。
2千年の歴史と文化遺産があり、アーユルヴェーダの中心地でもあります。
高速道路が段々と整い、スリランカ国内をスムーズに移動できるようになってきました。
そして、何よりスリランカ人のホスピタリティに、世界の皆さんが喜んでいただけることと思います。
現在、スリランカの20歳以上人口の92%はワクチンを接種2回以上終え、赤ちゃんも含めた全人口では74%が2回以上のワクチン接種を終えています。
日本の皆さんにスリランカにお越しいただきたいと思っています。
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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