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スリランカでヒッチハイクをした話。

2025年9月28日

 日本のみなさんあゆぼわん。

 Spice Upでインターンとして活動している若です。

 先日スリランカで人生初のヒッチハイクをしてみたので備忘録としてこのWEBメディアを活用させていただきます。

 初執筆にあたり、何か面白い経験をと考えた結果、「スリランカでヒッチハイク」と「スリランカでスニーカーを買って配る活動」しか思いつかなかったため、前者に取り組むことにしました。

Ch1 計画

 滞在先の都市コロンボから、車で2時間半の南部州の州都Galle(ゴール)をゴールに設定し、人生初ヒッチをすることにした。インターン学生内で話が盛り上がり、6人を2人3グループに分け、翌朝一斉スタートで競うことになった。

 ヒッチハイクに必要なものは何か。それはタダで乗せてもらう図太いテイカー気質、そして大きければ大きい程望ましい、行き先を記したプラカードの2つである。幸い、前者はすでに身につけていたため、早速後者の制作に取りかかった。

 まず、先ほど誰かがその辺で買ってきたテイクアウトのハンバーガーの袋を広げ、箱ティッシュの厚紙で補強する。そこに「G・A・L・L・E」という、5文字のアルファベットを記す。

 傑作が完成。

 ヒッチハイクはプラカードが9割、とはよく言ったものである。成功の図を描きながら、その日はベッドに潜り込んだ。

Ch2 出発

 翌朝9時半。やる気とは裏腹の寝坊。6人のぐーちょきぱの結果、若チーム(男子2名)、山田チーム(女子2名)、19歳チーム(女子2名)の3つに分かれた。

 土曜日の朝11時、3チーム一斉にスタート、戦いのクラクションが鳴る。

 いざ、大通りに出てプラカードを掲げる。開始15分、止まってくれた車は4台、みな行き先を聞いてお金を要求してくる。どうやら、ヒッチハイクの文化はあまりないらしく、趣旨自体を理解してもらえない場合もあった。ただ、疲れた様子のドライバーも、2ケツのバイク乗りも、多くの人が笑顔を見せたり、親指を立てたりしながら通り過ぎてくれた。

 開始35分、一台の旧式ベンツが合図をしながら反対の歩道脇に止まった。ドライバーと話をしたら、笑いながら言った。「乗ってけ、金はいらん」。「近くの家に寄ってから、Galleにある実家に行く。」と。我々は嬉々として乗り込んだ。

 50歳前後だろうか、柄のシャツに青の麦わら帽子。イフティと名乗る、このお金持ちそうなおじさんに、我々は1日を振り回されることになる。

 彼は宝石関係の会社に勤めており、日本にも支店があり何度も来日したことがあると言った。また、自称松田聖子の友達である。車コレクターで20台の車を持っていて、旅行やビジネスで世界を飛び回っていると豪語していた。実際、調べてみるとまずまずの大企業であるようだ。松田聖子の友人であるのも頷ける。

 15分ほど走ると、路地の中にある彼の奥様の実家に到着した。我々はお邪魔することになり、4歳の子どもや祖母が集うファミリーに挨拶すると、奥様に生姜の香る美味しい紅茶を入れてもらった。家の2階には「博物館からもらった」という真偽不明の骨董品が並び、それらを自慢そうに見せてくれた。

 車の前で記念撮影をして、奥様を乗せ、ついにGalleに向け出発。どうやら3チーム中1番乗りで車を捕まえた我々は、この出会いへの感謝とともに、勝利を確信していた。

Ch3 暗雲

 車内は良い雰囲気だった。

 今、道で会ったスリランカ人夫妻と、楽しく話しながらドライブをしている。

 上品なたたずまいの奥様は、「ヨコハマ」という日本の曲を知っていると言った。調べてみると、いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」という曲らしい。我々は「あ~」と盛り上げのための小さな知ったかをかましながら、1968年の昭和歌謡を流す。突如空が暗くなり、スコールの降り出したコロンボを、ところどころ塗装の剥がれた古いベンツが駆けていく。

 大粒の雨音にうとうとしながら、ふとGoogleマップを見ると、南下するはずの車はコロンボの北部を走っていた。このあと高速にでも乗るのだろう、と思ったが、この違和感は当たっていた。

 20分ほど走って、イフティは郊外の高層ビルの立体駐車場に車を泊めた。促されるままに20階にある大きな部屋に入る。なんとオフィスビルのような建物の中に、部屋を借りて仕事の拠点としているらしい。イフティは腹減っているか、と尋ね、ゆで卵とカレーチャーハンを作ってくれた。

 実はこの時点ですでに14時が迫っていた。日帰り旅行のつもりであった我々に焦りが募る。癖の強いスパイスチャーハンをなんとかかき込むと、今すぐGalleに行きたいとイフティ夫妻に伝えた。すると彼は落ちついた表情で言った。「実はこれから仕事のアポが1件ある。なので17時に出発する。早く行きたかったら高速バスを使って欲しい」

 ……。

 Welcome to Sri Lanka…。現地シンハラ語で「光り輝く島」、日本語で「言っていることが急に変わる国」との意味がある。高揚感が一気に冷め、がっかりした気持ちと、ヒッチハイク成功への諦念が湧いてくる。

 ただ、この人はたくさんのもてなしをくれ、今も真剣に高速バスターミナルへの行き方を教えてくれている。発言の一貫性はないが、親切という一貫性は全く崩れる様子がない。スリランカ人という、目があったらほぼ必ずニコッと微笑み返してくれるインド洋の民族。3週間のスリランカ滞在で、外回り営業が最初なかなか上手くいかなくても、外に出るのがおっくうにならなかったのは、町中の彼らの笑顔と親切があったからこそかもしれない。

Ch4 ゴール

 結局、案内された800ルピーの高速バスを利用し、Galleにたどり着いた。

 あの問題発言を受け、結局我々はイフティ夫妻に感謝と少しのもやもやを残しながら20階を後にした。バスの中は快適で、目的地へ確実に近づく久しぶりの幸福を感じながら気付けば目を閉じてしまっていた。

 Galleで降りると、唯一ヒッチハイクを成功させた19歳チームが先に到着していた。心なしか、表情に自信が宿っているだろうか。しかし23歳の負け惜しみだが、成功より失敗の方が得るものが多い。

 苦戦した山田チームが合流したのは結局17時半頃だった。しばらく街を観光し、20時前、夜ご飯を食べて帰ろうとしていた時だった。突然イフティから電話が鳴った。

「へーい若よ、無事に到着したか?私は実はまだコロンボにいる。明日こそはGalleに行く」。

おわり

※敬称略。

※スリランカでのヒッチハイクはリスクが伴います。細心の注意を持って、行動してください。

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