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アーユルヴェーダ医師にはニセモノがいる?!知られざるアーユルヴェーダ業界の仕組みが明らかに!

2020年10月01日

2016年の開業からコロンボの人気アーユルヴェーダ施設として知られているエクセレンディブ・アーユルヴェーダ(以下、エクセレンディブ)。2020年4月からは、アーユルヴェーダのオンライン講座を開講するなど、本場スリランカで新しいチャレンジを続けています。

スパイスアップとエクセレンディブとの出会いは2017年2月発行の創刊号。最初の取材記事で取り上げたのがエクセレンディブ・アーユルヴェーダでした。今回はオンライン講座を制作したエクセレンディブのチーフドクター、Dr.Chathuri(以下、Dr.チャトリ)と、創業者である渡辺泰眞氏(以下、渡辺)にインタビューします。

そのオンライン講座ですが、これまで一部のアーユルヴェーダ施設ではスリランカに滞在して学ぶ対面式の講座を開講している施設がありましたが、オンラインで体系立ててアーユルヴェーダを学べるコンテンツは他ではなかなか見ることはできません。

インタビューでは、オンライン講座の紹介はもちろん、私たちが普段知ることのできないアーユルヴェーダ業界の仕組みなど、スパイスアップだからこその興味深い話を聞くことができました。

3つに分かれるアーユルヴェーダ施設のドクター

Q:アーユルヴェーダオンラインプログラムの特徴を教えてください。 

渡辺: アーユルヴェーダ医師から直接、日本語翻訳・通訳を介して、オンラインで学ぶことができるのが一番の特徴だと思います。

Q:それは他では見られない特徴ですね。スリランカにおいて、アーユルヴェーダ医師とはどのような存在なのでしょうか。

渡辺:アーユルヴェーダ施設で働いているドクターは大きく3 つに分かれます。大学の医学部で 6 年間勉強し、アーユルヴェーダ医師の国家資格を持つドクター。 DA(Diploma of Ayurveda)と言われ、言わば専門学校卒のドクター。そして、スリランカ土着の伝統医療を行っている’トラディショナルドクター’です。

大学を卒業してアーユルヴェーダ医師の資格を得られるのは、国立のコロンボ大学、もしくはケラニヤ大学医学部の卒業生だけです。このアーユルヴェーダ医師の9割以上が国の運営するアーユルヴェーダの公立病院で働いています。 

DAは以前スリランカ政府が公認していましたが、カリキュラムの不備に伴う卒業生の知識及び技術不足が問題となり、2018 年から資格の発行が中止されています。

トラディショナル・ドクターに明確な資格はありません。そのほとんどは世襲制で知識を伝えており、主に地方都市で活躍しています。

そのため、大学を卒業してスリランカでも正規にアーユルヴェーダ医師として認定されているドクターから知識を学ぶことは非常に貴重な機会です。

Q:ドクターに種類があることは知りませんでした。ということは、私たちがどのような’アーユルヴェーダ医師’から診断を受けるのか、知識を学ぶのか、正しく知る必要がありますね。

渡辺:その通りです。エクセレンディブのDr.チャトリはコロンボ大学医学部アーユルヴェーダ学科を卒業し、いくつかの研修を経てケラニヤ大学大学院パンチャカルマ&カーヤチャキッサ専攻を修了しています。

 Dr.チャトリは、エクセレンディブ専属のアーユルヴェーダ医師です。そのため、オンライン講座のような新しい取り組みに継続的に取り組むことができます。一方で、公立病院所属のアーユルヴェーダ医師は、時間的な問題もありますが、公務員ということもあってなかなかこのようなチャレンジをすることはできません。

その点でも、エクセレンディブのオンライン講座は非常にユニークな学びの機会を提供していると思います。

アーユルヴェーダ医師の多くが公立病院で働く

 Q:多くのアーユルヴェーダ医師が公立病院で働くのはなぜですか?

Dr.チャトリ:公務員である公立病院のドクターになることは一つのステータスであり、安定した仕事です。スリランカでは国公立の学校は無償のため、その知識を国に還元する、という意味合いもあります。そのため、多くのアーユルヴェーダ医師が政府からの「辞令」を受け入れます。

Q:Dr.チャトリはなぜ、アーユルヴェーダ医師になろうと思ったのですか? 

Dr.チャトリ: 大学に進学する際、最初は西洋医学のドクターを目指そうと思っていました。 西洋医学の方が、アーユルヴェーダ医師のポストよりも多いということもありました。 ただ、祖母が代々続くトラディショナル・ドクターの家系でした。トラディショナル・ドクターが今も求められているのは、西洋医学ではカバーしきれていないことがあるからだと思います。インドの伝統医学であるアーユルヴェーダも同様と思い、確立されたカリキュラムで学べる大学でアーユルヴェーダを学ぼうと考えました。 

Q:コロンボ大学を卒業後、なぜ民間施設であるエクセレンディブで働くことにしたのでしょうか?

Dr.チャトリ:大学を卒業後、いくつかの研修を経て、新しい職場を探していました。それが2016年頃です。そのような時に、渡辺と出会い、チャレンジすることにしました。現地の人向けに治療を行うアーユルヴェーダ医師はたくさんいますが、サービスや仕組みを工夫して外国人にもアーユルヴェーダを提供している医師は多くありません。 

コロンボで外国人にも受け入れられるサービスを提供することは簡単ではありませんが、世界中の人にアーユルヴェーダのことを知ってもらうためにも、エクセレンディブで働きたいと思いました。世界中の人とつながるチャンスがあるオンライン講座は、その願いが叶った大切なプログラムのひとつです。

Q:アーユルヴェーダ医師は、スリランカ国内に何人ぐらいいるのでしょうか?

Dr.チャトリ: 正確には分かりませんが、アーユルヴェーダ医学部の卒業生は年間で約200 名(コロンボ大学100名、ケラニア大学100名)。30 歳の時に辞令を受け取ったとして、スリランカの一般的な定年退職の年齢は60 歳ですので6,000 人ぐらいではないでしょうか。 そのうち、約90%の5,500人くらいが国公立病院で働いていると思います。

そうなると、民間施設で働いているアーユルヴェーダは、定年退職したドクターか、現役世代では500人ほどになります。アーユルヴェーダ医師の8割が女性です。

アーユルヴェーダと土着医療

Q:スリランカのアーユルヴェーダは、スリランカの「ヘラウェダカマ」、南インドの「シッダ医学」、北インドから広まった「アーユルヴェーダ」が融合したものと聞くことがありますが、正しいですか?

Dr.チャトリ:多くの方がそのように仰いますが、それは間違っています。ヘラウェダガマ、シッダ医学、アーユルヴェーダはそれぞれが確立された別の医学です。

「アーユルヴェーダ」というのは、あくまでもインドの伝統医学のことを指しています。スリランカの伝統医学が「ヘラウェダガマ」、タミル語圏で発達したのが「シッダ医学」です。

ですので、スリランカにおいてアーユルヴェーダと伝統医学は、別の医学体系です。この点はあまり知られていないので、スリランカのヘラウェダガマ医師(トラディショナル・ドクター)をアーユルヴェーダ医師ということがありますが、正確には間違った紹介になります。

ちなみに余談ですが、コロンボ大学ではアーユルヴェーダを中心に、ケラニヤ大学ではスリランカの伝統医学「ヘラウェダガマ」を中心に学ぶカリキュラムが採用されています。

Q:トラディショナル・ドクターは、ヘラウェダカマとシッダ医学のドクターに分かれているということでしょうか? 

Dr.チャトリ:はい、そうです。ヘラウェダカマは、アーユルヴェーダを除くスリランカの伝統医療の総称として、最近使われ始めた呼称です。 シッダ医学は南インドの伝統医療ですので、シッダ医学のトラディショナル・ドクターがいます。一般的に、スリランカでトラディショナル・ドクターといった場合は、スリランカの伝統医療を行っているドクターのことを指します。 

Q:「代々アーユルヴェーダ医師の家系なので、地元では無償でクリニックをやっている」という話をアーユルヴェーダ医師数人から聞いたことがあります。週末やリタイア後に社会奉仕としてアーユルヴェーダ医師が地方都市で活躍するというのはよくあることなのでしょうか? 

渡辺:アーユルヴェーダ・ドクターが社会奉仕として活動することはよくあります。Dr.チャトリも将来はそのようなことをしたいと言っています。

アーユルヴェーダの8つの診療科

 Q:アーユルヴェーダは体系立った医学とのことですが、西洋医学のように医師によって内科、外科、皮膚科、耳鼻科などの専門があるのでしょうか? 

渡辺:アーユルヴェーダには 8 つの診療科があります。

Dr.チャトリ:医学部での 6 年間では 8つの診療科すべてを勉強します。 私は内科を得意としています。大学院ではパンチャカルマとカーヤチャキッサ(内科学)を専攻して、学びを深めました。 

Q:アーユルヴェーダにも西洋医学でいう外科や外科手術はあるのでしょうか?

Dr.チャトリ:開腹手術のような大がかりなものはありませんが、痔の治療などの外科的処置があります。ただし、現代のおいて外科手術が必要とされるような病気は、どちらかというと西洋医学の領域です。

Q:スリランカの人たちは、アーユルヴェーダと西洋医学をどのように使い分けているので しょうか? 

Dr.チャトリ:病名がはっきりしているものや、緊急性の高い治療には西洋医学が選ばれていると思います。 一方で、アーユルヴェーダは慢性的な疾患や体調不良などを改善する際に選ばれてます。 

日本人に多い慢性疾患や体調不良

Q:Dr.チャトリは多くの日本人を診断していますが、日本人に多い慢性疾患や体調不良にはどんなものがありますか? 

Dr.チャトリ:ストレスを抱えている人が多いですね。 あとは不眠症、肌荒れ、消化不良、骨の痛み、痛風の方を多く診ます。これらの治療は、アーユルヴェーダの得意とするところです。 

Q:これらの体調不良はなぜ起きるのでしょうか? 

Dr.チャトリ:日本人の生活習慣だと思います。 遅くまで起きていたり、豚肉や牛肉などの肉、お酒、インスタントフードなどが原因だと思います。

アーユルヴェーダのオンライン講座について

Q:話は変わりますが。オンライン講座の制作をはじめた経緯を教えてください。 

渡辺: 2年ほど前からスリランカの現地では対面式でアーユルヴェーダ講座を開講していました。講座は好評を得ていましたが、渡航費用や時間の確保が難しく、受講したくてもスリランカに行くことができない、といった声がたくさん聞かれるようになっていました。私も日本人ですし、そのような状況は理解ができます。

そのため、オンライン講座開講の準備を進めていました。その折、コロナウィルスの問題が発生したため、急いで講座の制作をすすめることになりました。 

Q:反響はどうだったでしょうか? 

渡辺:多くの反響がありました。制作の経緯もあり、比較的早い段階でリリースできたこともありますが、やはりコンテンツの内容がもともと求められていたものだったのだろうと思います。

オンラインでアーユルヴェーダ医師から日本語を介して直接学ぶ、他にはない体験がその反響につながったのではないでしょうか。

Q:渡航費や滞在費がかからないという費用面のメリット以外に、オンラインだからこその 価値はどこにありますか?

渡辺: (オンデマンド動画では)時間と場所を選ばずいつでもどこでも継続して学べること。ドクターに日本語で質問したり、相談したりできることは、オンラインならではだと思います。

最新の受講システムを採用しているので、日々アーユルヴェーダに取り組んでいる中で感じた疑問や気になることを、都度ドクターに聞くことができます。

アーユルヴェーダという古来から伝わる知識及び技術を、新しい技術やサービスを通して正しく伝える、これも私たちのオンライン講座の特徴だと思います。

もちろん、スリランカに直接来たからこそ得られるものもありますので、一連の騒動が落ち着いたら、オンラインと現地とを結んだプログラムを作っていく予定です。オンラインで学んでいる方がスリランカに直接来て学びを深め、日本に帰ってからもオンラインで継続的に学ぶ、といったようなイメージです。

Q:難関の医学部の試験に合格して 6 年間学ぶ必要があるアーユルヴェーダですから、継続的に学ぶことは欠かせない要素ですよね。 西洋医学では日々研究がされていますが、アーユルヴェーダでも研究によって新しいことが分かってきていたりするのでしょうか? 

渡辺: アーユルヴェーダは古来に確立された医学システムなので、原典の内容を正しく理解するという点と、現代社会や生活とどのように整合性をとるか、解釈と実践による研究が主体だと思います。Dr.チャトリは先日、新しい研究書を買って読んでいました。

Dr.チャトリ: 最近買ったのは百科事典ほどの分厚い書籍で、サンスクリット語で書かれたアーユルヴェーダの古典をスリランカの言語シンハラ語に訳した新しい本です。 

Q:オンライン講座の特徴や価値がよく分かりました。最後の質問です。オンラインプログラムは1と2がありますが、それぞれの違いを教えてください。 

渡辺: プログラム1はアーユルヴェーダの基礎理論を学ぶもので、プログラム2はオイルや食事など、アーユルヴェーダを実践するために必要なことが学べます。両方を受講することで、アーユルヴェーダの基礎をすべて学ぶことができます。

オンラインで学ぶアーユルヴェーダ

今回インタビューを行ったエクセレンディブ・アーユルヴェーダではアーユルヴェーダをオンラインで学べるプログラムを提供しています。

詳しくは以下のページをご覧ください。

アーユルヴェーダをオンラインで学ぶエクセレンティブ・オンライン

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