「スリランカに、日本の母の味を」TOKYO ICE・蓮 水希さんインタビュー
スリランカで事業展開する日本人起業家、経営者へのインタビュー第5弾。
今回は世界遺産ゴールフォートを有するゴールにて、日本食レストラン「Tokyo Ice」を経営する蓮 水希さんにお話をお伺いいたしました。
目次
プロフィール
スリランカに「TOKYO ICE」をオープンするまで
■どのような経緯で、スリランカに日本食レストラン「TOKYO ICE」をオープンされたのでしょうか?
はじめてスリランカに降り立ったのは、2015年の12月31日でした。
その日、空港からゴールの町へ向かう道中で初めて来た場所であるにも関わらず「私はここに住んでいたことがある!」と、不思議な気持ちになったことを覚えています。
その後も、街を歩くだけでもいたるところで「この景色、見たことがある」というような感覚になったのです。
その後、現地の知り合いの紹介を通じて、スリランカの貧困層や障がい者施設を支援するチャリティ活動に参加するようになりました。
活動を通して、スリランカへの思いがどんどん強くなっていき、
「スリランカの人たちのために何かしたい」、「日本のものを、お手頃な価格でスリランカの人に楽しんでもらえないだろうか」と考えるようになりました。
そんな時、スリランカで「かき氷屋さん」をするのはどうだろうかと思いつきました。
かき氷は日本らしい食べ物で、一年を通して気温の高いスリランカにぴったりだと思ったのです。
そして、スリランカ・ゴールに「TOKYO ICE」をオープンしました。
小さな店で、メニューはかき氷だけ、値段も抑えて半分チャリティのような感じで始めました。
これが、予想以上に好評だったんです!
「かき氷だけじゃなくて、食事も出してほしい!」というリクエストをたくさん頂き、徐々にごはんものなどメニューを増やしていきました。
■2018年に一度お店を閉められたのことですが、どのような経緯で再オープンとなったのでしょうか?
店を一度閉めたのは、2018年3月、母の危篤で急遽日本に帰国しなければならなくなってしまったからです。
母は幸い一命を取りとめましたが、すぐにはスリランカには戻れません。
すると、スリランカ人のビジネスパートナーから「オーナーなしでお店を開けているのは無理だ!」と連絡がありました。
自分はいつスリランカに戻れるのかわからない。
けれど、ゴールの人たちに喜んでいただいているTOKYO ICEを失いたくない。
様々な葛藤がありましたが、当時は最終的に「自分は日本に残り、スリランカの店を閉める」という決断をしました。
渋谷の109の前で「私はもうスリランカに戻れないんだ。私のお店はもうないんだ」と呆然と立ちすくんだことを今でも覚えています。
そんなとき、スリランカの知人が「人生は一度きり。やりたいことをやりなさい」と、毎日のように電話やメールをくださいました。
私はその言葉で、これまでレストランを通じて出会った人や、スリランカでしか経験できなかったことを思い出しました。
そして「私はスリランカにやり残したことがある」、「もう一度ゴールでお店をやりたい!」と、やり直す決意をしました。
その後、スリランカに戻ってからの物件探し、食材の仕入れなどは本当に大変でした。
私の母は20年間、レストランを経営していました。
今度のお店は「日本のお母さんの味、私が母から教わった家庭の味をスリランカの人たちに提供する」と、心に決めました。
そして2019年3月、スリランカ・ゴールにてTOKYO ICEの再オープンが実現しました。
「日本の母の味」を世界中の人へ
■TOKYO ICEの人気メニューは何ですか?
おもしろいのが、国籍によって人気メニューが全然違うことです。
中国、香港、タイなどアジア系のお客様には餃子とチキンラーメンが圧倒的に人気です。
4日連続で餃子とチキンラーメンを食べてくださった方もいたんですよ!
ロシア人のお客様にはお寿司、天ぷらが人気です。
ゴールにはツアーなどでロシアのお客様が来られることが多いのですが、サクッと揚がった天ぷらはたくさんの方に喜んでいただいております。
他のヨーロッパのお客様はカツカレーを注文される方が多いですね。
スリランカ人のお客様にはTOKYO ICE特製の「チキンフライドライス」が人気です。
大きなチキンカツをのせたボリュームたっぷりのフライドライスです。
特徴は、上に乗ったチキンカツが日本風のパン粉がまぶしてあるサクサクのカツであること。
スリランカで揚げ物というと、フリッターのようなサクサク感がないものが一般的なんです。
そのため、「なじみがあるけど普段食べられない異国の味」という感じでとても人気なんです。
カツにかけるとんかつソースも、とても好評です。
日本人のお客様にも「まさに日本の味!」というお言葉を頂いています。
2019年の「地球の歩き方」に掲載されたことをきっかけに、お越し下さる日本人の方が増えて、「ミルクティーかき氷」が人気です。
ゴールには海外からの観光客の方がたくさん来られるので、「ここでしかない出会い」も楽しみの一つです。
■本格的な日本食を楽しめるTOKYO ICEさんですが、調理はすべて蓮さんが行っているのでしょうか?
現在3人のスリランカ人スタッフとお店を運営していて、7割ほどの料理は彼ら・彼女らにも調理を担当してもらっています。
最初は苦戦しましたが、最近は「早く・おいしく」料理を提供することができるようになってきました。
餃子は、スリランカ人スタッフがすっごく美味しく作ってくれます。
残りの3割の料理、巻き寿司、天ぷらなどの調理は私が行います。
巻き寿司はどうしてもうまく巻けなかったり、天ぷらは温度調整が難しいからなんです。
特に、天ぷらは揚げるときにカリカリした部分を作る「花を咲かせる」という工程ががどうしても難しいんです。
「日本のお母さんの味」を楽しんでもらうために、スタッフの皆さんへの教育は今後も欠かせませんね。
緊急事態時のお店の運営
■2019年の同時爆破テロ、2020年の新型コロナウイルスの流行と2度スリランカで緊急事態を経験されたと思うのですが、どのようにお店を運営されていましたか?
どちらも、スリランカ人のお客様、現地在住の外国人の方にたくさん助けていただきました。
2019年のテロの以前は特に、海外からの観光客のお客様がとても多かったので、テロ発生後は一気にお客様数が減ってしまう恐れがありました。
そのため、「スリランカ人の方や現地在住の外国人の方にも来て頂きたい!」と、地域でクーポンの配布を行いました。
その結果、特に値段が来店のハードルになっていた新たなスリランカ人のお客様に来ていただくことができ、とてもうれしかったことを覚えています。
今年も、新型コロナウイルス流行を受け海外からの観光客のお客様が激減してしましました。
それを受け、売り上げを上げることはそう簡単ではないと思います。
今年の相手はウィルスなんで(笑)
神のみぞ知るこの現実及び未来に対しては直感力と自身の占い鑑定(笑)に頼るしかありません。
お客様とのコミュニケーション
■蓮さんがTOKYO ICEを運営するうえでで大切にしていることはありますか?
たくさんありますが、「お客様とのコミュニケーション」をとても大切にしています。
スリランカには日本に対してあこがれを持っている方が多く、「日本文化に触れたい」というお気持ちでお店に来て下さる方も少なくありません。
日本語を勉強されている方も「日本語でお話したい」と来てくれることもあります。
日本の料理を食べ、店内で私と一緒に写真を撮り、SNSにアップしてくれたり、「こんなお店を作ってくれてありがとう」と手紙を頂いたこともあります。
そんな風にお店の料理や私との会話を楽しんでくれる方たちと出会えて本当にうれしく思っています。
お客様とのコミュニケーションをとても大切にし、心から楽しんでいます。
トリップアドバイザーにはお客様からたくさんの温かいコメントをいただいています。
トリップアドバイザーの口コミはこちらから
これから
■蓮さんの今後の展望をお聞きしてもよろしいでしょうか?
お店のあるゴールは外出禁止令がすでに緩和されているので(2020年4月21日時点)、様子を見ながら徐々に店を開けていきたいですね。
とはいえ、状況が日々変化していますおで、政府の対応を見ながら慎重に判断していきたいです。
2018年の私の緊急帰国、2019年のテロ、そして2020年のコロナと3年連続して、困難に向き合っていますが、緊急事態はまた起こるかもしれないということを念頭においてビジネスをしなくてはいけないないと思っています。
スリランカの不思議な魅力からは、これからも離れることは出来ないと思いますが、私に許されている時間の中で湧き上がるエネルギーに任せて進めていきたいと思います。。
スパイスアップからお知らせ
TOKYO ICEさんは『スリランカの観光・飲食・サービス産業の応援プロジェクトにご参加いただいています。
10%お得にお食事券をご購入いただけます。
世界遺産ゴールにお立ち寄りの際は、是非『TOKYO ICE』に行かれてみてください。
神戸市外国語大学・国際関係学科在学中。スリランカにきてスパイスカレーのおいしさを知る。けどやっぱりお寿司が好き。興味があるのは環境問題と人類学。
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