【Global Japanコラム10】食品輸入・表示・安全基準について
浪漫
「あんなのは、エサ変えればすぐにいい和牛になるよ」
日本の希少なブランド牛のひとつ、石垣牛の牧場経営者が、視察に来たヌワラエリヤ(スリランカの高原地帯)の肋骨もあらわな痩せ牛が雑草を食んでいるのを見た瞬間、あっさりとそう言いました。こんな錬金術師のような人が、和牛の味を世界に広めたいと言うのなら、それは身体性に満ちていて、浪漫そのものです。
私たちは日本人。日本の良いものを海外に紹介したい。そういえば日本の良いものってなんだろう。ブームといわれている抹茶かお酒か、 あるいはかつて西洋のジャポニズム成熟に寄与した陶磁器か。。。。と逡巡するなか、日本国内の消費量、出荷量をみればどれもこれも落ち込んでいるものばかり。緑茶(主に煎茶)は約20年前のピーク時にくらべ約40%も国内消費が落ち込み、日本酒は約25年前からじつに約65%落ち込み、国内でブームになった梅酒でさえも約15年前から約35%落ち込み、古くから有田・伊万里・唐津などでの陶磁器の生産が盛んな佐賀県の同出荷額は、約35年前のバブル期に比べ50%以上も落ち込んでしまっています。
これらの商品を、実際の作り手ではない我々が身体性をもって海外で売り込んでいくとしたら、自身がその味やデザインに心底惚れ込んでいるとか、その効能によって人生が変わっただとか、あるいは絶滅危惧産業の再興の使命を背負っているだとか、そういう強い衝動と浪漫、そして根気が必要でしょう。モノやコトや情報があふれている時代に、右から左へ流すだけで儲かりそうなものはもはや見当たりません。でも抹茶は景気いいではないか、とおっしゃるあなた、これはこれで、昨今の世界的なブームの肝を見誤ると、日本は大変なことになりそうなのです。
抹茶の都
「中国抹茶の都」と呼ばれる貴州 銅仁市は、中国全体の碾茶(てんちゃ: 抹茶の原料)の生産量の約4分の1を占める産地として知られています。この銅仁市産の抹茶パウダーは、コロンボ市内の中国食材店でも比較的安価で購入できますので、近年スリランカ人にも大人気のMatcha Latteや、Matcha Floatをこれで作ってみましたが、ちがいがわかるおとこのゴールドブレンドならいざ知らず、なかなかの味になるのです。中国の碾茶(抹茶)生産量は、供給量不足が悩ましい日本の年間生産量約5,000トンを2025年には追い抜いてしまうといわれており、このようななかなかの品質であれば、現在の世界的な抹茶需要とその多様性に十分に対応できるどころか、席捲してしまう可能性が大です。茶道に代表される日本の美学と品質そっちのけで、Matchaは世界に広がりつつあるのです。
食品輸入
ところで、主要国内産業である紅茶を保護すべきスリランカにおいて、抹茶の輸入はできるのでしょうか。国内の主要EコマースであるDalaz.lkも、各々の在庫数は不明であるものの、実に約40種類の抹茶製品が出品されています。
世界銀行のデータバンクであるWorld Integrated Trade Solution (WITS) によると、2023年にスリランカは約2,154トンの緑茶(貿易におけるHSコード 090210および090220に該当する品目)を輸入しており、これは同年同国の茶の総生産量と比較すると、約0,84%の量に相当します。この輸入の実態については、紅茶輸出者協会(Tea Exporters Association)の主催するオークションのメンバーで、卸会社を経営する知人にも確認したのですが、紅茶局(Sri Lanka Tea Board)が認可する、「スリランカ産茶葉30%以上とのブレンドを施した上での再輸出」が前提の輸入である可能性が高いとのことです。
たしかに前出のEコマースに抹茶を出品しているある会社は、主に搭乗便の預け荷物として商品を持ち込み、しかも中身は真の抹茶ではなく粉末茶(Fun Matcha!!)であるといいますから、こういった商品は上記統計に漏れているどころか、税関無申告の違法品である可能性も否定できません。ちなみに、粉末茶でも軽くフィルターで濾して使えば、美しいアートを施したMatcha Latteをつくることができますので、世界のMatcha需要とは、そんな水準なのかも知れません。
食品表示
スリランカの中国食材店の取り扱い品全般に言えることですが、前出の抹茶の都の抹茶パウダーにも、輸入品としての食品表示・ラベル貼付はなされておりませんでした(つまり漢字表記のみ)。スリランカには食品ラベル・広告規則(2022年 Food (Labelling and Advertising) Regulations)があり、輸入品には「製品名、輸入者名と住所、消費期限」を3言語(英語・シンハラ語・タミル語)で表示する義務がありますし、大手スーパーに卸す際には、バーコードの取得も多くの場合求められます。しかしながら、いろんな例外がまかりとおっているのも、スリランカの事実なのです。
食品安全基準
2015年、スリランカ消費者庁(CAA)は、インドから輸入されたMaggieブランドの即席麺から、高濃度のグルタミン酸ナトリウム(MSG)が検出されたとして、スリランカ税関に禁輸の指示を出しました。当時は保健サービス局(DGHS)や工業技術研究所(ITI)、公衆衛生検査官組合(PHI’s Union)なども巻き込み、その判断の是非をめぐり右往左往したものですが、その際に分かったことは、「スリランカにはMSGの使用を規定する法律もガイドラインも存在しない」ということでした。つまり有事案件は、複数ある規制当局のその場その場の裁量にゆだねられてしまうということであり、こういった事例からも、スリランカでの食品輸入販売には、結構な不確定要素が存在することがわかるのです。あ、そんな不安をも吹き飛ばす、日本発スーパーヘルシー即席麺(茶そば、コンニャク麺いいですね)の開発などいかがでしょうか。
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執筆者:吉盛 真一郎
慶応義塾大学経済学部卒。日本・香港・スリランカ・インドにて、日系企業の経理・財務・総務業務に約14年従事。スリランカでは、ODAプロジェクトにおける山奥での現場経験や、当時のCSR業務から派生したソーシャルビジネスの起業実績もあり、経営者としてスリランカ法人の管理業務の実績を数多く積んでいる。
会社案内
スリランカビジネス歴15年の日本人コンサルタントが、現地法人の設立や会計・税務、カンパニーセクレタリーや監査に至るまで各種コンプライアンスについてのご相談・ご要望に日本語でご対応いたします。
会社名 :Global Japan Lanka Consulting (Pvt) Ltd
住所 :No.33, Level12, Parkland Building, Park Street, Colombo02
Eメール :s.yoshimori@g-japan.com
担当 :吉盛まで
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