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クルネーガラの「スプートニク」へ。22のエコシステムに学ぶ、子どもたちの未来と持続可能な暮らし

2026年9月18日

インド洋に浮かぶ島国、スリランカ。20年以上にわたり、日本との交流を支え続けているNGOがあります。それがSPUTNIK International(スプートニク・インターナショナル、以下スプートニク)です。2026年8月、筆者はスリランカのクルネーガラ近郊にあるスプートニクの施設を実際に取材・訪問してきました。

※過去に当サイトで掲載されたスプートニクの概要や設立ストーリーについては、「スリランカで21年間活動しているNGO『スプートニク インターナショナル』とは?」や、「秋沢淳子さん、エシャンタ・アーリヤダーサさんにインタビュー!」でも詳しく紹介していますので、あわせてチェックしてみてください。

スプートニクってどんなところ?

スプートニクは、教育支援や国際文化交流を行っている国際NGOです。「スプートニク(Sputnik)」という言葉はロシア語で「旅の同伴者」という意味を持ち、“国や文化の壁を越えて同じ気持ちを持つ仲間たちが手を取り合って一緒に歩んでいく”という思いが込められています。

今回お話を伺ったのは、スプートニクスリランカ法人理事長のエシャンタ・アーリヤダーサさんと、日本法人創設理事の秋沢淳子さんのお二人。取材の中でお二人が特にお話しになっていたのは、「ぜひ実際に、気軽に現地へ遊びに来てほしい!」ということでした。

国や地域が違えば、言葉や文化の違いという壁は必ず存在します。でも、お互いの文化を知らないままだと、すれ違いや揉め事が起きてしまうこともあります。だからこそ、人と人が直接顔を合わせ、教育や文化交流を通して互いを理解し合うこと。それが回り回って「世界の平和」へとつながっていく。これがスプートニクの大切にしている想いです。

「何か特別なボランティア活動をしなきゃ」と身構える必要はありません。

  • 農業や自然保護に関心がある人
  • 将来、日本語の先生になりたい人
  • バレーボールやサッカーなどスポーツを子どもたちに教えてみたい人
  • ただ現地の人と楽しくおしゃべりしてみたい人

子どもから大人まで、誰もが文化交流の当事者であり、仲間になれる場所です。中でも、日本語学校に通うスリランカの若者たちにとって、「スリランカに滞在している間に、人生で初めて日本人と直接話す」という体験は大きな意味を持ちます。この経験によって、将来日本へ行くときの心理的なハードルがぐっと下がるそうです。ちょっとした会話や笑顔の交換こそが、いつしか国境を越えたつながりへと育っていきます。

エシャンタさんと、秋沢淳子さん

自立と未来を支える「Sputnik Girls Home」

まず案内していただいたのは、2007年に開所した女の子たちの生活施設「スプートニク・ガールズホーム」です。

施設での暮らしと子どもたちの日常

ここには、5歳から19歳までの女の子たち約20名が一緒に暮らしています。中には姉妹で一緒に生活している子たちも。家庭のさまざまな事情や厳しい環境を踏まえ、地元の役所(行政機関)が判断して、遠方からも子どもたちを受け入れています。

施設での生活は規則正しく、子どもたちの将来を見据えた工夫にあふれています。例えば、洗濯は自分の分は自分で手洗いするのがルール。なぜなら、将来施設を卒業して大人になったとき、家の中に必ず洗濯機があるとは限らないからです。「どんな環境でも自分の力で生活できるように」という自立支援が、日々の習慣の中に組み込まれています。

また、清潔な環境づくりが徹底されており、害虫対策や衛生管理(グリストラップの設置など)が行き届いているため、施設内はとても清潔に保たれています。スリランカの国(政府機関)からも、他の施設の手本となる「モデル施設」として高く評価され、賞を受賞しているほどです。

施設の女の子たちが手を引っ張って、施設内をあちこち案内してくれました。

さまざまな背景と「18歳の自立」に向き合う

スリランカでは18歳になると法律上「大人」扱いとなり、施設から社会へ出なければなりません。しかし、ここに来る子どもたちの多くは、過去に十分な勉強の機会が得られず、同年代より教育が遅れてしまっているケースもあります。そのため、施設では専門のスタッフや教員が寄り添い、一人ひとりが将来職を得られるように全力でバックアップしています。中には、特別な配慮が必要な子どももおり、個別のケアが提供されています。また、社会には複雑な側面もあります。親の出稼ぎや家庭環境など、子どもたち自身では解決できない厳しい事情に直面することもあります。施設を卒業したあと、素敵なパートナーと結婚して「子どもが生まれたよ!」とケーキを持って笑顔で遊びに来てくれるうれしい瞬間もあれば、社会に出てからお金や生活に悩む厳しい局面にぶつかる卒業生もいます。エシャンタさんは、すべての子どもの人生を保障しきることの難しさを感じながらも、できることを一つひとつ積み重ねていきたいと語ってくれました。

現在スリランカ全土では、ガールズホーム・ボーイズホーム自体は減少傾向にあり、それは社会全体にとって望ましい変化と言えます。その一方でスプートニクは、今まさに支援を必要としている目の前の子どもたち一人ひとりに寄り添い、丁寧な自立支援を継続しています。

22のエコシステムを巡る施設ツアーへ

スプートニクのガールズホームを訪れて驚くのは、教育や福祉だけでなく、自然保護活動やSDGs(持続可能な開発目標)に、力を入れているという点です。

施設内で人々が生活することによる環境負荷を減らすため、独自で発案・設立した環境教育モデルGreen Energy Training and Education Centre (GE-TEC)という取り組みを展開しており、敷地内を巡る「施設ツアー」でその取り組みを見学することができます。

特に力を入れているのが、国連が掲げるSDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に根ざした活動です。活動拠点となっている自然豊かなキャンパスには、教育・福祉・環境に関する各施設が集約されています。国内外からのボランティアや教育機関、地域住民を広く受け入れ、対話や体験を通じた持続可能な社会づくりが進められています。

また、広大な敷地内には自然と調和した「22のエコシステム」が構築されており、今回はエシャンタさんの日本語による解説のもと、その具体的な仕組みを見学させていただきました。

  • 「22のエコシステム」とは
  1. ガールズホームと図書館
  2. 排水溝
  3. 雨水貯水タンク
  4. 井戸
  5. 太陽光発電
  6. 畜舎
  7. リソース・センター
  8. バイオガス・ユニット
  9. 液体肥料ユニット
  10. 油脂除去槽
  11. 生物多様性保全区域
  12. 水門
  13. 薬用植物ガーデン
  14. 肥料製造所
  15. ミミズ堆肥
  16. 養蜂
  17. 有機栽培
  18. ミミズ液体肥料
  19. フィッシュ・トニック
  20. 有機染料染色センター
  21. 国際宿舎
  22. 自然散策路

この22のシステムは独立しているのではなく、お互いに結びついて循環しています。例えば、牛の糞からバイオガスと液体肥料が生まれ、その肥料で有機野菜が育ち、子どもたちの栄養豊かなごはんになり、生ゴミはミミズやコンポストで再び土に還る……という循環サイクルです。ツアーでは、ただ施設を見るだけでなく「どの取り組みがどのSDGs目標に対応しているか」を体感的に学ぶことができます。

エシャンタさんのこの環境教育・エネルギーモデルに関する研究や実践は、国際的にも高く評価されており、「マーガレット・ミード記念国際賞」をはじめ、ドイツ大使館からの「グリーン・エナジー・チャンピオン賞」、そして2025年には「スリランカ大統領環境特別賞」を受賞しています。まさに施設自体が「地球と人にやさしい未来の生き方のモデルルーム」のようになっています。

「食」を通じた地域の助け合い「ダーネ」の文化

スリランカには、仏教の教えに基づいた「ダーネ(Daana)」と呼ばれる奉仕・支援の文化が根付いています。これは、僧侶や社会的な支援を必要とする人々、施設の子どもたちに食事を提供する習慣です。
ガールズホームにおいても、このダーネの仕組みが継続的な運営基盤として導入されています。例えば、1万円の寄付によって、施設で生活する子どもたち全員の1日分(朝食・昼食・夕食)の食事費用が賄われます。
地域住民や日本国内の支援している方は、誕生日や各種記念日などの人生の節目に合わせてダーネを実施しています。こうした外部からの食糧・資金支援は、子どもたちの栄養面および日々の生活安定を支える重要な役割を果たしています。

「夢への最初の一歩」を育む、日本語学校の試み

次に見学させていただいたのは、「スプートニク国際教育学院(日本語学校)」です。ここには日本に関心を持ち、日本語を学ぶ多くの生徒たちが通っています。

現在、スタッフは30名を超えており、そのうち25名が女性スタッフ。スプートニクでは、生徒への教育はもちろんですが、「女性スタッフの雇用と生活を大切にすること」をとても重視しています。女性が働き、収入を得ることは、その背後にある家庭や子どもたちの暮らしを直接支えることにつながるからです。単なる語学学校にとどまらず、地域女性の自立と家庭の安定を支える大切なプラットフォームになっているのが印象的でした。

スプートニクを訪ねてみたい方へ

スプートニクでは、日本からの個人・団体による訪問やボランティアの受け入れに対応しています。日本の学校機関によるスタディーツアーの受け入れ実績も多く、現地での滞在や学習を安全に進めるための体制が維持されています。

宿泊・訪問環境も充実

ガールズホームの隣には、遠方からのボランティアや訪問者が泊まれる「国際宿舎」が併設されています。お部屋にはエアコンや冷蔵庫も完備されており、安全で快適に滞在しながら、敷地内で子どもたちや生徒たちと交流することができます。

問い合わせ方法

まずは公式Webサイト(http://sputnik-international.jp/)のお問い合わせフォームから気軽に連絡してみてください。「日本語や文化を教えてみたい」「子どもたちとスポーツをしたり、遊んだりしたい」「施設のSDGsの取り組みを見学したい」など、自分の興味や特技にあわせた関わり方が可能です。

さいごに

今回、実際に現地を訪れて感じたのは、スプートニクという場所が単なる支援施設ではなく、「人と人が出会い、互いを尊重し、共に成長していく場所」ということです。設立から20年以上、この場所は地域の雇用創出や環境教育のモデル構築にもつながっているようでした。

日本語教育や子どもたちの支援といった人づくりから、22のエコシステムを通じた環境保全まで。地域社会と世界をつなぐスプートニクの活動は、持続可能な世界を形作っていくモデルとなっています。

言葉や文化の違いを恐れず、一歩踏み出して現地の人々と笑顔を交わしてみること。世界平和という大きな目標も、実はそんな「一人ひとりの出会い」から始まっています。

この記事を読んで少しでも興味をもった方は、まずはスプートニクの公式Webサイトを覗いてみてください。そして機会があれば、スリランカ訪問の際にぜひ足を運んでみてください。

2026.08 クルネーガラにて

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