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スリランカ南部の港町「ハンバントタ」の歴史と資本関係

2020年6月21日

スリランカ南部の港町「ハンバントタ」は中国の一帯一路の真珠の首飾り戦略、債務の罠に関連してたびたびニュースで取り上げられる、コロンボ港、トリンコマリー港に次ぐ、スリランカ第3の国際貿易港を持つ町です。

中国がハンバントタ港の99年間の運営権の取得したことは、インド洋のシーレーンの戦略的要衝に中国が租借地を得たと大きく報道されました。

また、ハンバントタから北に15kmの距離にある、中国政府の融資で作られた第2の国際空港「マッタラ・ラージャパクサ 国際空港」は、インド政府が出資し、運営権を取得し、中国への牽制ではないかとも言われ、これも国際ニュースを賑わせました。

そんな、ハンバントタ港とマッタラ・ラージャパクサ国際空港とコロンボ郊外を結ぶ高速道路の延長工事が2020年2月に終了し、コロンボからへのアクセスが大幅に改善されました。

ハンバントタは今後ますます注目されていくことになるでしょう。

本記事では、古来から現在に至るまで様々な人々が往来する港湾貿易拠点としての役割を果たしてきたハンバントタを、「2004年の津波被害」、「海外資本との関係」、「インフラ施設の情報」、「観光地としての魅力」と様々な切り口からご紹介していきます。

ハンバントタとは

ハンバントタはコロンボから約250km離れたスリランカ南部に位置する港町です。

かつてスリランカ東部から南部に広がっていたルフナ王国に属し、ハンバントタの西にある天然の港「アンバラントタ」の周辺の町として栄えました。(ルフナという名称は王国がなくなった現在でもルフナ茶などブランド名として広く浸透しています。)

タイや中国、インドネシアなどからサンパン(Sampan)船が多く寄港する土地柄から、港や停泊地という意味を持つtotaを合わせてSampantotaと呼ばれるようになり、そこから時を経て現在のハンバントタ(Hambantota)という名称になったと言われています。

ハンバントタの特徴の一つが、シンハラ人の次に多いのがスリランカ・マレー(マレー人)という点です。
それはインドネシア方面から人々が来ていたことによる影響だと思われます。

また、「地球の歩き方」にはハンバントタとは「イスラムの港」という意味であると書かれています。
3番目に多い民族はスリランカ・ムーア(イスラム教徒)ですので、この説もありそうです。

いずれにしろ、ハンバントタは東側(インドネシア、タイ、中国)からも、西側(アラブ諸国)からも昔から交流があったということを表しているように思います。

スマトラ島沖地震による津波被害

2004年12月26日、インドネシア西部のスマトラ島沖北西のインド洋で発生したマグニチュード9.1の地震による津波がスリランカを襲いました。

この巨大津波はスリランカ国内だけで3万人あまりの死者を出し、約8万世帯の家が倒壊し、20万世帯が影響を受けたと言われています。

スリランカは基本的に地震がなく津波とも無縁の生活を送っていたため、いざこのような事態になった際に十分な知識を持っておらず、津波が迫ってきていても対処法がありませんでした。

そのため国内で大量の被災者が出る結果となり、当然港町のハンバントタも甚大な被害を被りました。

また当時内戦の真っ只中でもあったため、ハンバントタは戦闘区域ではなかったもののスリランカ全土が疲弊しきる結果となりました。

津波からの復興と政策

スマトラ島沖地震や内戦によって疲弊しきってしまった国内の経済を復興させようと、スリランカ政府は公共事業を大量発注することで内需の拡大を図りました。

その時にハンバントタにも大きな港湾を作ろうという計画が立てられました。

これはハンバントタが当時の大統領、マヒンダ・ラージャパクサの故郷ということもあり、積極的に開発が推し進められた背景があったという見方があります。

しかしハンバントタは大都市コロンボから約250kmも離れている上、当時は都市部から続く高速道路などのインフラも整っていない地域であり、仮に港湾ができたとしても短期的な有効活用は難しいとの見解が一般的でした。

そのためインドなどの周辺各国に資金調達を依頼しようにも快く貸してくれる国はなく、最終的に中国資本が融資するという形で港湾建設が開始されました。

進む中国資本による土地開発

その後、中国資本によるハンバントタ港建設工事が始まりました。

The New York Timesによると、工事を請け負ったのは中国政府が保有する国有企業の一つの中国港湾工程有限公司で、主に世界各地で海湾工事などを行っています。

大量の中国の融資に頼って2010年11月18日のラージャパクサ元大統領の誕生日に合わせて完成させたものの、上記にも述べたようにその稼働率と利益率は低く、借金のみがかさんでいきました。

2015年にマヒンダ・ラージャパクサ元大統領が政権を降りましたが、その後も中国にどうやって借金を返していくかで政府は揉めました。
数ヶ月にも及ぶ交渉の結果、2017年に中国に約1800万坪分(約15000エーカー)にも及ぶ港湾の99年分の運営権を、軍事目的の利用をしないことを条件に貸与をすることで合意しました。

これによって実質中国はハンバントタ港を支配することになり、習近平が主体で構想している一帯一路における真珠の首飾り戦略をより強固にするものとなりました。

また、冒頭にもありますように2020年2月28日にコロンボとハンバントタを結ぶ高速道路が開通しました。

コロンボとマータラを繋いでいる南部高速道路を延伸してハンバントタまでつながり、コロンボ〜ハンバントタ間の移動時間が2時間半ほど短縮され、所要時間は約7時間から約4時30分となりました。

この96kmの延長工事も2015年から中国主体で取り組まれており、このことからもやはりスリランカにおける中国資本の介入の大きさが良くも悪くも思い知らされます。

これを機にスリランカ南部への観光客が増えることは可能性として大いにありそうです。

使用度が低いインフラ施設

ハンバントタには上記で述べたハンバントタ港や、元大統領の名を冠したマッタラ・ラージャパクサ国際空港などのインフラ施設があります。この2つはそれぞれ車で30分ほどで行き来できる場所にあり、施設間の交通の便は良いと言えます。

しかしこれらは現在非常に低い稼働率になっているという問題を抱えており、コロナショック以前からその存在が疑問視されてきました。

2012年、スリランカ最大のコロンボ港に3667隻の船が寄港したにも関わらず、ハンバントタ港にはわずか34隻が寄港するのみでした。

さらにマッタラ・ラージャパクサ国際空港では当初1日100万人の利用客を見込んで建設されたにも関わらず、実際の1日の平均乗客数は10人以下で、「The world’s enptiest international airport(世界一空っぽな国際空港)」という残念なあだ名も付けられてしまいました。

またThe Economics Timesによると、ラージャパクサ国際空港は中国とインドの両国から出資を得て完成しています。
これはハンバントタ港がほぼ中国資本で構成されている現状を鑑みて、海と空の所有権を中国に取られないようにインド側が戦略的な意味で出資したと述べられています。

実際の稼働率的な問題は別として、国際戦略上ラージャパクサ国際空港は重要な位置を占めているようです。

8月1日よりスリランカ政府は外国人観光客の受け入れを開始すると発表しており、マッタラ・ラージャパクサ国際空港でも飛行機の発着が行われます。

観光地としてのハンバントタ

ハンバントタは観光地としてはメジャーではありませんが、美しい海と周囲に特徴的な観光地があり、スリランカ南部の観光の拠点になり得る立地です。

シャングリラ・ハンバントタ ゴルフリゾート&スパはコロンボに先駆けてオープンしたスリランカ初のシャングリラホテルです。
ハンバントタを代表する5つ星ホテルです。

ハンバントが塩田が有名で、バスターミナルとフィッシュマーケットの間には町の象徴である、塩作りの銅像があります。

ハンバントータ郊外には観光地がいくつもあります。
【ティッサマハーラーマ】ルフナ王国の都であった町(ハンバントタから30km)
【カタラガマ】スリランカを代表する聖地(ハンバントタから45km)
【タンガッラ】高級リゾートが点在する南部を代表するビーチリゾート(ハンバントタから45km)
【ヤーラ国立公園】ヒョウが見られるスリランカを代表する国立公園(ハンバントタから50km)
【ウダワラウェ国立公園】象の群れが見られる国立公園(ハンバントタから60km)

さいごに

ハンバントタが現在も様々な問題を孕んでいることは上記で述べた通りです。
しかし高速道路が開通し、今後飛躍的に便利になると共に、綺麗な海や5つ星ホテルの存在など観光地としても大きな魅力を持っていることも事実です。

ぜひこれを機会に一度訪れてみてはいかがでしょうか。

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参考)

Hambantota: History – Triposo
How China Got Sri Lanka to Cough Up a Port (The New York Times)
Sri Lanka links ports, airports with expressway extension(XINHUANET)
シャングリラ ハンバントタ ゴルフ リゾート & スパ(公式ホームページ)
The Economic times Hambantota Port 
Development of Whom? China’s Development Project of Sri Lanka’s Hambantota Port
99年租借地となっても中国を頼るスリランカ(独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所)

 

 

 

 

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