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スリランカ・インド・日本でのコロンボ港東ターミナル開発事業を再開

2021年1月20日

ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は1月13日、スリランカ・インド・日本の3か国によるコロンボ港の東ターミナル開発事業を再開すると発表しました。

コロンボ港東ターミナルは、コロンボ港の5つ目となるターミナルです。

2019年にスリランカ・インド・日本の3カ国でターミナルの開発・運営をする合弁会社を設立することで合意されていましたが、労働者のデモによって、開発が停止していました。

現在の最新ターミナル(4つ目)であるコロンボ国際コンテナターミナルは、開発予定の東ターミナルに隣接しています。

コロンボ国際コンテナターミナルの株式85%を中国企業「招商局港口控股」が保有していますが、労働者デモを中国が煽動したのではないか、という噂も流れました。

インドから開発に当たるのは、インド最大の民営港であるムンドラ港を開発・運営するアダニグループです。
大統領は、コロンボ港の輸送ビジネスの66%はインドからのものであり、インドがコロンボ港の主要顧客だと述べています。

以下、ニュースをより理解するために、コロンボ港の概要、開発・運営に関わる企業について見ていきます。

コロンボ港のターミナル

コロンボ港には現在4つのターミナルがあります。
5つ目のターミナルを開発するというのが今回のニュースです。

1)ジャヤ・コンテナ・ターミナル(JCT):スリランカ港局100%
2)ユニティ・コンテナ・ターミナル (UCT):スリランカ港局100%
3)南アジア・ゲートウェイ・ターミナル (SAGT):ジョン・キールズ(スリランカ企業)が主要株主
4)コロンボ国際コンテナターミナル (CICT):招商局港口控股が85%を所有
5)東コンテナターミナル (ECT):スリランカ港局51%、49%がインドのアダニグループと日本

1〜3つ目のターミナルは、以前からあるコロンボ港にあり、1〜2つ目はスリランカ港務局が100%所有しています。
3つ目はスリランカ企業のジョン・キールズが主要株主です。

コロンボ港の西側を埋め立てて、作られた4つ目のターミナルは中国企業が85%の株式を所有しています。

埋め立てた新しい港の東側にあるので、今回の東ターミナルと呼ばれています。
外務省(出典はアジア開発銀行)の資料を見ると、西側にもターミナルを作る計画があるようです。

コロンボ港の歴史

コロンボの歴史をざっくり見てましょう。

1913年:コロンボ港務委員会(Colombo Port Mission)が設立
1954年:エリザベス女王埠頭(Queen Elizabeth Quay)が完成
1954年:停泊地、輸送倉庫、保管倉庫が完成
1958年:港務会社(Port Corporation)設立
1979年:スリランカ港務局(SLPA:Sri Lanka Ports Authority)設立
1980年:エリザベス女王ターミナル(Queen Elizabeth Terminal)完成
1985年:ジャヤ・コンテナ・ターミナル(JCT)1が完成
1987年:ジャヤ・コンテナ・ターミナル(JCT)2が完成
1988-1989年:JICAがコロンボ港の開発計画の調査を実施
1995年:ジャヤ・コンテナ・ターミナル(JCT)3が完成
1996年:ジャヤ・コンテナ・ターミナル(JCT)4が完成
1996年:港の水深を15mに掘削
1998年:ユニティ・コンテナ・ターミナル (UCT)1が 完成
1999年:南アジア・ゲートウェイ・ターミナル (SAGT)が完成
2002年:ジャヤ・コンテナ・ターミナルズ社が設立
2008年:コロンボ港拡大プロジェクトの開始
2013年:コロンボ国際コンテナターミナル (CICT)が完成
2019年:スリランカ、インド、日本で合弁会社を作り、東コンテナターミナルを開発する覚書締結
2020年:労働者の反対運動で東コンテナターミナルの開発が停止

今回ニュースになっている、東コンテナターミナルは、エリザベス女王埠頭の西側に開発されます。

ジャヤ・コンテナ・ターミナル (JCT)

1985年にターミナル1、1987年にターミナル2、1995年にターミナル3、1996年にターミナル4と北側から順次拡大されたターミナル。
2002年にスリランカ港務局が100%子会社「ジャヤ・コンテナ・ターミナルズ社」を設立して運営。
ジャヤは「勝利」を意味する言葉です。

ユニティ・コンテナ・ターミナル(UCT) 

1998年に完成、2003年から運営を開始。
スリランカ港務局が所有・運営。

南アジア・ゲートウェイ・ターミナル (SAGT)

1999年から運営開始。
スリランカ初の企業が所有・運営に関わるターミナル。
主要株主はスリランカのコングロマリット「ジョン・キールズ」。
台湾のエバーグリーン・インターナショナル、オランダのAPMターミナルス、スリランカ港務局も株主に名を連ねています。

ジョンキールズについては、以下の記事を参照ください。

スリランカの主要物流企業【5選】~東西をつなぐ物流ハブ~

 

エバーグリーン・インターナショナルは、世界12位・台湾1位のコンテナ物流企業「エバーグリーン・マリーン」の子会社です。
エバー航空も同グループです。

APMターミナルス(本社はオランダのハーグ)は、世界第5位のコンテナ物流企業です。
親会社は世界最大の海運会社A.P.モラー・マースク(デンマークのコペンハーゲン本社)です。

コロンボ国際コンテナターミナル (CICT)

2013年に運営を開始し、2014年にフル稼働を開始。
中国の招商局港口控股が85%、スリランカ港務局が15%の株式を所有しています。
招商局港口控股(China Merchants Port Holdings)は、世界7位のコンテナターミナル企業で、本社は香港、香港市場に上場しています。

招商局港口控股はレッドチップと言われる企業です。
レッドチップとは、香港証券取引所に上場している会社の株式銘柄のうち、中国本土の中央政府出資の中央企業もしくは地方政府出資の国有企業が経営参加し、かつ出資金の30%以上を出資し、中国本土以外の地(香港・マカオ・台湾)もしくは外国を登記地としている会社の株式銘柄を指します。
米国市場の優良銘柄を表すブルーチップに由来しています。

東コンテナターミナル (ECT)

スリランカ政府が51%を、残りの49%をインドの新興財閥アダニ・グループと日本が保有することを確認したというのが今回のニュースです。

アダニグループとは?

1988年にゴウタム・アダニが創業した、インド・グジャラート州最大都市のアーメダバードに本社を置くコングロマリット。
インドで民営最大の港であるムンドラ港を開発し、運営しています。
祖業はコモディティの貿易で、旗艦企業のアダニ・エンタープライズの前の社名はアダニ・エクスポーツ。
現在は、エネルギー・資源・物流・農業・不動産・金融・防衛・宇宙など多角的に事業を展開しています。
50カ国、70拠点があります。

世界最大のパーム油企業で、食品加工業で売上高世界5位のウィルマー・インターナショナル(本社はシンガポール)とジョイントベンチャーで、インド最大の食用油ブランドも保有しています。

まとめ

スリランカの特徴として、海運のハブである地政学的なポジションについてよく語られます。

コロンボの歴史・各ターミナルの位置・運営会社について知ると、より理解が深まるニュースだと思います。

以下、関連記事や参照元を紹介しますので、ご覧いただくと、ニュースの輪郭が見えてくると思います。

関連記事

コロンボ港の西コンテナターミナルをインドのアダニとスリランカのジョンキールズが85%を取得か?

スリランカの主要な港〜コロンボ港、ハンバントタ港、トリンコマリー港、ゴール港など〜

スリランカ南部の港町「ハンバントタ」の歴史と資本関係

参照

ヤフーニュース「スリランカ、日本・インドとの港湾開発事業を再開」
economy next「Sri Lanka port terminal: India’s Adani group and partners to hold 49-pct
外務省「コロンボ南港東コンテナターミナル開発計画準備調査」
JETRO「日本とインド、スリランカ合同のコロンボ港開発の覚書締結」
wikipedia「Adani Group」
wikipedia「Gujarat」
山九-物流情報サービス「インドの主要港概要」
wikipedia「「Wilmar International」
Port of Colombo Development Project
Sri Lanka Ports Authority「TERMINALS」
JAYA CONTAINER TERMINALS LTD「About Us」
SAGT「About SAGT」
wikipedia「South Asia Gateway Terminals」
ウィキペディア「長栄海運」
wikipedia「APM Terminals」
ウィキペディア「招商局港口控股」
ウィキペディア「レッドチップ」
日本郵船「FACT BOOK I 2020 」

 

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