【休業】「美容・健康・アートは循環する」美容総合サロン・NORIKO MATSUSHITA SriLankaの松下典子さんにインタビュー
NORIKO MATSUSHITA SriLankaはコロナ禍で休業しています。
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スリランカで事業を展開する日本人起業家、経営者へのインタビュー第二弾。
今回は「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」のディレクターである松下典子さんにお話をお伺いしました。
「NORIKO MATSUSHITA」は、「内側・外側の両方からのアプローチによって美と健康を提案する」がコンセプトの美容総合サロン。
ベルギー・ブリュッセルに次ぐ2号店として、2020年1月にスリランカ・コロンボに「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」がオープンしました。
ヘアカット、ヘアカラー、トリートメントなどができるサロンを母体に、ヨガやピラティス、キックボクシングや空手などのクラス、「健康」をテーマに日本の発酵食とマクロビやアーユルヴェーダ食を融合させた独自の健康食を扱うカフェMuGeNなど、盛りだくさんの美の総合サロンです。
松下典子さんのプロフィール
東京都内美容学校を卒業後、東京都内の有名サロンを経て、美容学校で講師・サロンマネージャーとして勤務。2010年以降、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、イギリス、オーストラリアで美容師として働きつつ、世界中を旅する。2016年にベルギーのブリュッセルでサロン「NORIKO MATSUSHITA 」を、2020年にスリランカ・コロンボにて「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」をオープン。現在はベルギー、スリランカを中心に、年に2度パリコレクションヘアチームへ参加するなど幅広く活躍中。
スリランカでのサロン運営
■なぜ「NORIKO MATSUSHITA」2号店の場所にスリランカを選ばれたのですか?
昔から自分のサロンをヨーロッパ、日本、南国に各1店舗ずつ持つのが夢だったんです。
ヨーロッパのベルギーにサロンを開業したあと、最初はハワイに視察に行きました。
実際に足を運んで見て、その時には「現実的にハワイでサロンを持つ」ということに、感覚と体感としてなぜかしっくりこなかったんです。
他にもインドネシアのバリや、以前働いていたオーストラリアのパースも検討しましたが、今はまだその土地に行くのは早い!という感じを覚えました。
そんなとき、父が5年以上仕事でスリランカに関わっており、「スリランカは良いところだぞ」と話してくれたことをふと思い出しました。
そして、すぐに視察に行くことにしたんです。
実際に行ってみると、降り立った瞬間にすっかり気に入ってしまったんです!
何より人と土地から溢れ出るパワー、美しい海、アーユルヴェーダの文化、仏教文化など多くの要素が混ざり合う独特の雰囲気。
そして今まさに発展途中で、いい意味で「未完成」の場所。
スリランカで「ここで自分も新しい何かを生み出し、一緒に成長していきたい」と強く思いました。
今思えば、「自分自身が成長できそうな場所と感じられる」という点が、強く引き寄せられて、ワクワクした理由だったのだと思います。
そして、父のビジネスパートナーの(スリランカ人)の娘さんをビジネスパートナーとして迎え、「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」をオープンすることを決めました。
ヨガインストラクター、カフェのシェフなど、スリランカ人スタッフはビジネスパートナーの彼女の紹介でご縁を頂きました。
■サロンを経営するうえでスリランカならではの苦労はありますか?
「スリランカでサロンを立ち上げる」という点ではたくさんの助けがあり意外とスムーズでした。その理由は一番にビジネスパートナーの助けがあったことです。彼女と家族の助けがなければできなかった事です。また、ベルギーで一度立ち上げを経験していたこともあり、手続きなどに関しては経験を生かせたと感じます。
ですが、今まで美容師として働いてきた国とくらべても「サロンを運営する」という点では今までにない苦労をすることも、もちろん沢山あります。
スリランカ人はすごく親切な人が多いんですが、日本で言うところの根性論は一切通用しません。
これは働き方に対する価値観の違いだと思うのですが、「目標に向かってストイックに頑張る」より「日々を楽しんで過ごしたい」という風に考える人が多いように感じます。
例えば私が「今日は○○を目標にしてもう少し粘ってみよう!」というと「それより楽ができる●●にしてもいい?」なんて言われてしまいます(笑)。
すごく人間らしいと感じます。
でも、結局は毎回しっかり話し合えば、頑張ってくれます。
素直な性格もスリランカ人の特徴だと思います。
こういった点がスリランカ人スタッフと働く難しい点でもあり、また面白い点でもあります。
「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」の魅力
■「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」コンセプト「Cir ∞ Creation」「無限なる創造の循環」の由来は何ですか?
このコンセプトは「美と健康、そしてアートは常に循環している」という考え方から来ています。
例えば、「美術館に行ってインスピレーションを受けること」が私にとって、「お客様の髪の毛を切る」、「ネイルアートをする」という技術的なアウトプットに不可欠なんです。
そして、例えば「その髪の美しさってどうやってつくるの?」というと、「健康な食事や睡眠」ですよね。
「健康」というと、例えば私はいま日本の伝統的な「発酵食品」に注目しています。
実際にベルギーで「味噌」や「糀」を作るワークショップも開催しているんですが、糀づくりってアートなんですよ!
米にカビが生えていって、糀になっていく様子がとても神秘的で、様々なインスピレーションを受けるんです。
そしてそれがさらなる「美」へのアウトプットにつながる。
このように「美容と健康とアートは循環する」と考えています。
「人々が行き交い、創造し合い、表現し合い、新しいなにかを産み出し、そしてまた帰ってくる」
そんな場所をみなさんと一緒に作っていきたいと願い、「Cir ∞ Creation」というコンセプトを掲げました。
■NORIKO MATSUSHITA SriLankaの人気サービスは何ですか?
「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」は日本人のお客様だけでなく、スリランカ人や欧米人の方にも来ていただいているのですが、それぞれ違うサービスが人気ですね。
日本人女性のお客様には、メディテーションやヨガが人気です。
日本人男性にはカットなども喜んでいただいております。
現地に住まれている方にはボディーケアを体験いただくことも多いです。
欧米人の方に人気があるのは、スリランカ人講師Sanjayaさんによるパワー系のワークショップです。
例えば、ヨガやキックボクシングやエアロビクス、空手などを体験していただいてます。
スリランカ人のお客様は生活の一部のように朝と夕方のヨガのクラスに定期的に来ていただいている方が多いですね。
カフェでは日本食レストランと有名ホテルで勤務経験のあるスリランカ人シェフが、本格的な日本料理も作っています。
日本人のお客様はもちろん、国籍問わず好評ですね。
カフェの人気メニューはおにぎりセットと、甘酒入りのスムージーなんです!
持ち帰りをご要望のお客様が多いですね。
アレンジを加えていない本格的な日本料理も、甘酒スムージーのようなアレンジメニューも、どちらもスリランカ人のお客様にもとても好評です。
とにかく体にいい!と言う食が求められていると感じます。
■ベルギーのお店とスリランカのお店のサービスの内容は違いますか?
ヨガやピラティスはスリランカ店限定のサービスですね。
ベルギーの人気ワークショップに着付け教室や、着物を来て街歩きをするものがあるんです。
着物は気温の高いスリランカには向いていないのですが、オープニングパーティのときに浴衣を着てみたら、凄く好評だったんです。
スリランカの方たちも、日本の伝統衣装にとても興味を持ってくださっているんですよね。
なので、これから浴衣の着付け体験などをイベント的に企画できたらいいな、と思っています。
また、ベルギーではヘアカットがすごく好評で、ヨーロッパのお客様は「もう他のサロンにいけないよ!いいデザインが長持ちするし、帰る時に髪の毛一本も体につかずに家に帰れるなんて感動した!」と言う声を多く頂いています。
日本人美容師の技術力の高さや日本人のきめ細やかな対応はヨーロッパでも喜ばれているんです。
スリランカのお客様はトリートメントやボディケアを受けられる方が多いです。
価格は決して安くないのですが、良さを実感してリピートしてくださると信じています。
ヨガやカフェはスリランカ人の皆様にもとても好評を頂いております。
新しい働き方を形にするアーティスト登録について
■松下さんの、働くうえで軸となっている思いや考え方は何でしょうか?
「好きな事を軸に生き生き自由に働くことを推進したい」という思いを大切にしています。
この思いを実現するために、「NORIKO MATSUSHITA SriLanka」に「アーティスト登録」という制度を設けました。
登録アーティストとして条件を満たせば(詳細はこちら)、当サロンにて、好きな時に好きなだけ働くことができるというものです。
様々な業種のアーティストが休暇をメインにスリランカにきて、アウトプットとしてアートを表現する場所を提供しています。
宿泊施設も私たちで運営していて、最高の滞在になるようにサポートしています。
(写真は宿泊者が利用できるバスルーム↓)
この取り組みの原動力は私の「生き生き自由に働くことを推進したい」という思いです。
日本に一時帰国した際、飲みに行ったりすると残念に思っていたのが、多くの人が「仕事の愚痴や不平不満を言うこと」。
幸い、自分は好きな事を仕事にできていたから、今までどんなに大変でも、辛くても、前を向いて乗り越えてこれたと思っています。
きっと、「自分が好きなこと」を毎日できる事で、人々は生き生きできるのだと思うのです。
しかし現状として多くの人が「自分の好きなことが何かわからない」という状態にあるように感じます。
「フィンランドの学力が世界のトップクラスなのに、勉強している時間はものすごく少ない。その秘密は『脳を休ませること』にある」と言う記事を読んだことがあります。
やはり、日々の中で自分のことをゆっくり見つめる時間や、好きなことを探ったり試したりする余裕も、必要なのでは?と感じました。
そこで、思いついたのがアーティスト登録制のバカンスワークでした。
スリランカの気候や土地のパワーの中で、ゆっくり自分と向き合って、そこで生まれた感情や表現を思う存分発表できる。
そんな場所があったら自分自身が行ってみたい!と思えるような場所をこのスリランカで作りたかったのです。
これまで大工、ペインター、ダンサーや、チネイザン師、シェフなどのアーティストに来ていただきました。
みなさん個性豊かで本当に面白かったです。
コロナの影響が収まったら来たい、と言って下さるアーティストの方もたくさんいて、今からとても楽しみです。
宿泊にいらした際には、そのタイミングで来ているアーティストとの遭遇もまた楽しんでいただけると思います。
是非リトリート場所として使っていただいたり、宿泊にいらっしゃってください。
■松下さんの今後の展望をお聞きしても良いでしょうか?
3店舗目は京都で開業したいと思っています。
京都といえば、海外から日本に来る方は、絶対と言っていいほど京都を訪れるじゃないですか。
そんな京都に「英語·フランス語対応のサロン」を作ったら素敵だなあと思ったんです。
もちろんコンセプトは「Cir ∞ Creation」「美と健康とアート」です。
それと、スリランカと同じように訪れた際に、「ビビッときた」ということもあります!かなりの直感人間なので、その時に感じた(自分の鳥肌が立つかどうか?)を信じるようにしています。
今は、コロナの影響でなかなか普段通りに動けないので、日本に滞在して着付けのプロである母の力を借りて「オンライン着付けレッスン」を開始できるよう準備中です。
ベルギーで着付けワークショップを受けてくださっている生徒さんなど、「着物の着方を学びたい!」という海外の方(もちろん日本の方も!)が多いので、英語字幕入りの動画を作って配信する予定です。
これからも、世界トップレベルとされる日本の美容技術や、着物文化をもっともっと世界に発信していきたいと思っています。
皆様にお会いできる日を楽しみにしております。
NORIKO MATSUSHITA SriLankaさまはこちらの「日本人のお店応援プロジェクト」にもご参加いただいています。
コロナ収束後、10%上乗せの金額で使える金券を購入いただくというものです。
「スリランカに行ったときぜひ『NORIKO MATSUSHITA SriLanka』を訪れたい!」と思われた方、どうぞ応援よろしくお願いいたします。>>>
神戸市外国語大学・国際関係学科在学中。スリランカにきてスパイスカレーのおいしさを知る。けどやっぱりお寿司が好き。興味があるのは環境問題と人類学。
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