世界遺産「ポロンナルワ」の無料エリアの遺跡群
ポロンナルワには有料遺跡エリア以外にも多くの遺跡があります。
有料エリアで最初にパラークラマバーフ1世の宮殿遺跡群が見ますが、無料エリアにはニッサンカマーラ宮殿遺跡群があります。
また、スリランカの紙幣にもなった有名な立像や、ポロンナルワ出身のシリセーナ大統領時代に作られた新しい博物館もあります。
この記事ではポロンナルワの有料エリア以外の遺跡や観光スポットをご紹介します。
夏の宮殿エリア
コブラヘッド寺院(Naipena Viharaya)
有料遺跡エリアの出口を出て、左に曲がると博物館に戻る道(ハザミュナ・ロード)になりますが、その道の右手にある遺跡です。
Naipenaはコブラの頭という意味です。
この遺跡は柱が並び立っていますが、7つの頭を持つ蛇神ナーガの彫刻があることから、Naipenaはコブラヘッド寺院という名前がついています。
ナーガ族の王ナーガラージャ(ラージャは王の意味)の一人であるアナンタは、ヴィシュヌ神が船として使い、アナンタの上に寝ていたと言われています。
そのヴィシュヌ神のへそから蓮の花が伸びてブラフマー神が生まれ、ブラフマーの額からしシヴァ神が生まれと言われています。
その謂れからか、「ヴィシュヌ神殿その4」という別名もあります。
他のポロンナルワ地域のヴィシュヌ神殿とは違い、レンガで作られているのが特徴的です。
シヴァ神殿(Siva Devale)

ハザミュナロードと幹線道路のハバラナロード(Habarana Road)の交差点にある遺跡です。
土台や柱、リンガとヨーニが残っています。

この遺跡の脇にポロンナルワの町の標識があります。
ニッサンカマーラ王の施しのパヴィリオン(Nissanaka Alms Pavilion)

ハバラナロードの反対側、シヴァ神殿と向かい合う位置に、ニッサンカ・マーラ王が貧しい人たちに施しを行っていたとされるパヴィリオンがあります。
土台はレンガと岩で作られており、ポロンナルワの典型的なデザインだそうです。
夏の宮殿(Summer Palace of King Parakkramabahu)
貯水池バラークラマ・サムドラの北側にある、パラークラマバーフ1世が建てたサマーパレス。
湖に突き出た岬に位置します。
ニッサンカマーラ宮殿エリア
博物館の西側は堤防になっています。
堤防の高台に、ニッサンカマーラ王の宮殿(閣議場や沐浴場)があります。
パラークラマ・サムドラ(Parakarama Samudra)

博物館から堤防を登る坂道を行くと、広大なパラークラマ・サムドラを見渡せます。
パラークラマは、ポロンナルワ最盛期の王パラークラマ・バーフ1世の名から、サムドラを海を意味します。
古代〜中世スリランカの灌漑技術は高く、中国に伝わったものを留学中の空海が学び、満濃池を改修したとも言われますが、この日本最大のため池である満濃池の面積は1.4㎢です。
一方で、パラークラマ・サムドラの面積は23㎢と、約16倍もの大きさがあります。
サムドラ(海)と言える大きさであることが分かります。
パラークラマバーフ1世は、溜池770つと運河534本を新しく築き、既存の溜池2,300つと運河3,621本を修復したと伝わっています。
その中でも最大のものが、このパラークラマ・サムドラです。
王は「雨として降る一滴の水と言えども人間に有用なものにされることなしに大洋に流してはならない」と言ったとされています。
高台になっている湖畔の道「堤防道(Bund Road)」からの景色は素晴らしく、南側に行くと湖で沐浴をする地元のファミリーの姿を見かけます。湖が生活に密接していることを感じられます。
貯水池の湖畔にはリゾートホテルが数軒立っていて、湖に沈む美しい夕日が見られます。
実はこの道路は、19世紀後半に工事の失敗によって作れた堤防の上を走っています。
ポロンナルワ王国があった中世の湖は、メインの貯水池の推移を調整するため、4つの貯水池が周囲に作られ、現在よりもさらに大きな貯水池でした。
19世紀の貯水池の改修工事で水がメインの湖ではなく、別の湖に流れてしまったため、別の湖に流れ込まないように堤防を作りました。
堤防で分離して切り離されて残っているのがカラハガラ湖です。
ドン・ステファン・セナナヤケ像(Statue of the first prime minister)

貯水池沿いの道を北側に行くと、独立後のセイロン初代首相ドン・ステファン・セナナヤケの像があります。セナナヤケ首相は治水工事をアヌラーダプラやポロンナルワで行っています。
ニッサンカマーラ王の沐浴場(Royal Baths)

英国のレストハウスを改装したブティックホテルのエコーレイクハウス(ヴィクトリア女王が宿泊したことがある)に隣接してある遺跡。
左手に見えるのが水門です。
ニッサンカマーラの水門

水門の先に見えるのが、ニッサンカマーラの沐浴場です。
貯水タンク

水門の脇の階段を登ると、貯水タンク跡があります。
ニッサンカマーラ王の閣議場(Council Chamber of King Nissanka Malla)

貯水タンク跡を過ぎると、ロイヤル・バスの隣にある遺跡。
パラークラマバーフ1世の閣議場のように、高い土台の上に柱が並んでいます。
大臣たちはその柱に合わせて、座ったとされています。
パラークラマサムドラが見渡せる位置にあります。
※このページの冒頭の写真は、上の写真の反対側から撮影したものです。
仏典堂エリア
湖畔の道バンドロードを南に降ると、新市街に辿り着きます。
まず、最初にあるのが仏典堂遺跡群で、公園のようになっており、その中に有名な立像や図書館跡があります。
2019年に訪れた際は無料で入れましたが、2025年4月に訪れた際は「外国人はチケット持って入場」と入口の看板に書かれていました。ただし、入口に人はおらず、チケットは確認されませんでした。
仏典堂(Pothgul Vihara)

パラークラマバーフ1世によって建てれた仏典を保管した図書館。
Pothgulはシンハラ語で、本の保管場所を意味します。
9つの建物と4つの仏塔が残されています。
仏教僧が住み、王はここで仏典を聴いたのではないかと言われています。
仏典堂立像(Pothgul Vihara Statue)

立像はスリランカの旧10ルピー紙幣に印刷されていたよく知られた像です。
パラークラマバーフ1世が作ったもので、大きな岩に掘り込まれています。
手に持っているのはヤシの葉でできた仏典ではないかと言われています。
これはパラークラマバーフ1世自身の像、あるいはラーマーヤナのラヴァナ王の祖父プラスティヤの像だと言われており、別名にパラークラマバーフ像、プラスティヤ像があります。
パラークラマバーフ1世が作った貯水池はいくつもの貯水池がつなげられて現在の巨大な貯水池になっていますが、最初に王が作ったのは南側の貯水池で、この立像の近くにちょうど貯水池の北側と南側を分けるテパン運河(Theppam Canal)があります。
古代技術博物館(Ancient Technology Museum)

シリセーナ政権時の2019年7月にオープンした博物館。
仏典堂遺跡群からさらに南に行き、堤防道の終着点、ニュータウンロードと交わる地点にあります。
館内にはポロンナルワの町のジオラマ、ポロンナルワの主要な遺跡の模型があります。
先にここに来て、全体像を把握してから遺跡を見学しに行くのも良さそうです。
私は遺跡を見たあとに来ましたが、復習になって良かったです。
ポロンナルワ以外にも、シーギリヤ、アヌラーダプラ、ミヒンタレーなど他の地域の遺跡の模型もあります。
また、狩猟や農業、建築、陶芸、製鉄、織物、航海など各方面の技術が紹介されていて、とても充実しています。
音声ガイド(別途料金)も貸し出してくれます。

一番面白いのが、シーギリヤロックのVRです。VRギアをつけると古のシーギリヤロックを再現した世界を覗き見ることができます。シーギリヤ・レディーでいっぱいのミラーウォール、ライオンの頭があるライオンテラス、宮殿が建っている頂上が見られ、シーギリヤロックを見学したことがある人であれば、これはとてもオススメです。
入場料は外国人の大人は1,000ルピー、音声ガイドはプラス500ルピーです。
蝋人形館(The Wax Museum)

古代技術博物館に併設されている蝋人形館。
歴代の国家元首の蝋人形が展示されています。
まとめ
有料エリアは一度外に出てしまうと再入場できない上に内には食事をする場所はありません。
有料エリアには午前中の早い時間に入場するか、ランチのあとに入場するかのどちらかがおすすめですが、それ以外の時間はぜひ無料エリアで遺跡を楽しんでください。
ポロンナルワ無料エリアの観光マップ
ポロンナルワへの旅行をアレンジする
ポロンナルワは世界文化遺産が集まる文化参画地帯に位置しています。
バンダラナイケ国際空港やコロンボとの間に観光スポットが多くありますので、各地を見て回る場合には車をチャーターするのが便利です。
ポロンナルワへの旅をご検討されている方、ご相談をご希望の方は以下のフォームよりお問い合わせください。
関連ページ
参照
Attractions Sri Lanka「Naipena Viharaya」
ウィキペディア「ナーガラージャ」
ウィキペディア「ヴィシュヌ」
Wikipedia「Shesha」
Lanka Travel Directory「Council Chamber of King Nissankamalla」
Wikipedia「Statue of Parakramabahu I」
Lankapura「Pulasthi Statue」
Lanka Travel Directory「Pothgul Vehera」
Amazing Lanka「Pothgul Vehera」
Pothgul Vehera(Library Monastery」
Serendib「The Ancient Technology Museum and Library」
Ancient Technology Museum公式ページ
Lankapura:Parakrama Samudra
ウィキペディア:満濃池
ウィキペディア:パラークラマ・サムドゥラ
SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTD Managing Director
SPICE UP TRAVELS (PVT) LTD Managing Director
「旅と町歩き」を仕事にしようとスリランカに移住。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年4月、法政大学社会学部社会学科を卒業後、六本木の人材系ネットベンチャーに新卒入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長を経てネットベンチャーを退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当しながら、新宿ゴールデン街で訪日外国人向けバーテンダー。
2016年7月、スリランカに初めて渡航し、法人設立の準備を開始。
2017年1月、SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTDを登記。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年2月、スリランカ観光情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」オープン。
2020年8月、ニュースレターの配信を開始。
2020年10月、WAOJEコロンボ支部立ち上げ初代支部長に就任。
2023年2月、スリランカ日本人会理事・広報部長に就任。
2025年6月、SPICE UP TRAVELS (PVT) LTDを登記。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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