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象の島、スリランカ

2022年2月06日

赤茶けた土埃舞う道の両側には、土産物店が立ち並ぶ。

日差しをよけて、レストランには西洋人の顔が多い。

そして、その目線の先には、地響きを上げるほどの象の群れが。

キャンディロードの喧騒を離れて、ここは「象の孤児院」。

熱帯の強い日差しの下、気持ちよく水浴びをする象たちに、少々の羨望を含みながら人間たちは虚ろに目を向ける。

2009年までスリランカは悲しい時代があった。

当時、スリランカに行く、と言うと決まって、危なくないの、と聞かれた。

実際に、観光地や空港で爆破された残骸を目にしたり、銃を手にする兵士が立つチェックポイントがたくさん設置されていた。

象の孤児院には、人間たちの身勝手な理由で犠牲になった象も少なくなかった。

以前、前足のない子象に会った。

群れの一番後ろから、象遣いに突かれながら、それでも必死に群れを追いかけていた。

耳も切れ切れなその子象は、北部で地雷により傷を負い、親にも見放されて保護されたと聞いた。

前年に50頭ほどだった群れはたった1年で倍近くに増えていて、その迫力に圧倒されるとともに、背景にあるそれとは違う怖さを感じた。

Minneriyaは当時まだ新しい自然公園で、野生の像が多いということを聞いて訪問した。

その前にBundalaという別の自然公園では全然だったので期待薄だったのだが、実際には本当に象だらけ。

私たちの車の前で、象をばらまいているかのように、どこに行っても象、そして象。

この日のカメラには、本が作れるほどの象の写真が、あぁどれも同じに見える。

ムツゴロウさんと呼ばれる作家の畑正憲さんは、昭和57年に出版された著書の中でスリランカを訪れて象遣いに弟子入りして体験した、象との交流を綴っている。

また、その中で象と交わした信頼と愛情を熱く表現している。

私たち日本人にとっても、神と崇めるスリランカの人にとっても、象は愛する存在。

事実、スリランカから帰国した私の旅行鞄からは象シャツ、象カップ、象キーホルダー、ぬいぐるみ等、象のものばかりで、それ以外を探す方が難しいという状態。

スリランカは、太古から訪れたものに3つの幸福を授けると言われてきた場所。

40年近く前の畑正憲さんもそうであっただろうが、随分後にスリランカを訪れた私たちも象と出会えただけで幸福を感じることができた。

それが3つの幸福の一つであるならば、これからも、いつまでもスリランカにその幸福が続いてほしいと願うのである。

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