アートコレクターによる2部屋のみのブティックホテル「シンハギリ(SinhaGiri)」

ヌワラエリヤにはハイセンスなブティックホテルが集中しており、ホテル好き、建築好き、高原リゾート好きには堪らないデスティネーションです。
今回ご紹介するのは、レースコースとグレゴリー湖を見渡す小高い丘にある、19世紀に建てられたバンガローを改装したブティックホテルです。
プレマダーサ大統領の娘と結婚し、日本とスリランカでビジネスに成功した父親を持つ、アートコレクターとして知られたロハン・ジャヤコディ氏が、自身が所有するアートを展示しているため、アート好きにぴったりなホテルです。
目次
ロハン・ジャヤコディ氏とは?
スリランカのフラワーショップのリーディングカンパニーであるShirohanaを創業し、日本でスリランカ料理店のコートロッジ を創業したフバート・ジャヤコディ氏の息子で、アートコレクターとして知られています。
Shirohamaの経営を継ぎ、コロンボ市内の5店舗、ネゴンボ、キャンディの各店舗はアートコレクターらしく、スタイリッシュなショップとなっています。
第3代大統領のラナシンハ・プレマダーサ大統領の娘と結婚し、コロンボの自邸はジェフリーバワによる設計です。
ホテルも所有しており、ジェフリーバワ建築のブティック87(Boutique 87)、カーサ・ヘリコニヤ(Casa Heliconia)、そして、本記事で紹介するシンハギリ(SinhaGiri)を所有しています。
各ホテル、そして部屋ごとにテーマが決まったアートで整えられた独自の世界観を有しています。
各ホテルとも客室はスイートルーム2部屋のみで、ゆったりした空間設計重、プライベートを重視した設計になっています。
運営はスリランカ各地で高級ブティックホテルを経営する会社「マンナール・ハウス・コンセプトツ(Manor House Concepts)」が担当しています。
マンナール・ハウス・コンセプツのオーナーのティム・ジャコブソン(Tim Jacobson)氏は、ジェフリーバワに自邸の設計を依頼したことでも知られており、タンガッラにある自邸は現在、「ザ・ラスト・ハウス(The Last House)」としてブティックホテルとして運営されています。
マーガレット・オリー、ライオネル・ウェントの作品を展示
オーストラリアの画家「マーガレット・オリー(Margaret Olley)」の作品と、スリランカを代表する写真家「ライオネル・ウェント(Lionel Wendt)」の作品を展示した、オリールーム(Olley Room)がホテル内にあります。
オリールームにはサンルームが併設してあり、夕食前には食前酒を楽しむことができます。
マーガレット・オリーとは?
マーガレット・オリーはオーストラリアを代表する画家で、彼女の作品はニューサウスウェールズ州立美術館やツイードリージョナルギャラリー&マーガレットオリーアートセンター(Tweed Regional Gallery & Margaret Olley Art Centre)などで見ることができます。
マーガレット・オリーは、オーストラリアの芸術家で、ジェフリーバワの兄ベヴィス・バワの恋人でもあった「ドナルド・フレンド」とも親交があり、ドナルド・フレンドの作品もニューサウスウェールズ州立美術館で見ることができます。
ライオネル・ウェントとは?
ライオネル・ウェントは弁護士、ピアニスト、写真家であり、キャンディアンダンスを普及させる役割を担ったと言われる「コロンボ43グループ(Colombo ’43 Group」の創設者でもあります。
ウェントはイギリスで法律、音楽を学び、34歳までは弁護士をしながら、凄腕のピアニストとして活躍します。
その後、写真に没頭し、37歳でドイツのカメラメーカー「ライカ(Leica)」が主催する個展を開催します。
1943年、ウェントが42歳のときにコロンボ43グループ(Colombo ’43 Group)を結成し、ヨーロッパのトレンドをスリランカにローカライズし、スリランカのモダンアートの形成に寄与します。
その代表的なものが、キャンディアンダンスの普及です。
ウェントを記念した「ライオネル・ウェント・アート・センター」がコロンボ7にあります。
着物が展示されたミュージックルーム
オーナーの父親で、日本で財を成したフバート・ジャヤコディ氏による影響からか、着物が所狭しと展示された部屋があります。
この部屋は芸術について談話する部屋としてオーナーが設計したそうです。
リビングルーム
このホテルで一番大きな部屋で、ビリヤード台が2つも置かれています。
天井の板が作り出す直線が美しく、壁の鏡と相まって、広い部屋をさらに広く感じさせています。
大きなオブジェや絵が飾られ、一見落ち着かないようで不思議と落ち着くのは一つの美意識で部屋がまとめられているからかもしれません。
備え付けられたパウダールームもとても広いです。
この部屋は中庭とダイニングルームとつながっています。
イングリッシュガーデン
庭からはアジア随一の歴史を誇るヌワラエリヤ のレースコースが眺められます。
泊まった翌朝にはこの庭から夜明けで色づく空が見られました。
朝食やランチは庭のテラス席で暖かい陽の光を感じながら、美味しい食事を頂くことができます。
ブティックホテルの嬉しい点は、ビュッフェではなく、自分たちのために食事を丁寧に作ってくれることだと思います。
庭はもう一つあり、前庭は綺麗に整えられたイングリッシュガーデンとなっています。
階段を降りたところには小さな菜園があり、ホテルで出す食材をここで栽培しています。
菜園は敷地の後ろ側にもあります。
ダイニングルーム
夕食は大きな絵画が飾れた部屋で頂きます。
私が訪れた際は、ギリシア神話のタンタロスの大きな絵が飾られていました。
日が落ちると、窓際とダイニングテーブルにキャンドルが灯され、ムーディーな雰囲気になります。
2つのスイートルームのみの客室
「ボタンの花(Peony)」と「オウム目(Parrot)」と名付けられた2部屋のスイートルームがあります。
各部屋用にハンドペインティングのウォールペーパーが貼られ、ボタンの部屋にはボタンの花が描かれたウォールペーパーが貼られています。
真ん中に大きなベットが置かれ、電気マットも入っています。
朝晩が寒い高原のヌワラエリヤ では嬉しいサービスです。
館内の各部屋に暖炉がありますが、客室内にも専用の暖炉があります。
ベットの左右にはアンティークの小さなデスクが置かれており、独特の世界観にマッチしています。
ホテルの基本情報
【住所】 Haddon Hill Road, Nuwara Eliya
【電話】 +94(0)112333861
【メール】 dilini@manorhouseconcepts.com
【ウェブ】 https://www.sinhagirinuwaraeliya.com
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
歴史・地理・建築・語源が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にてベトナム・ミャンマー・タイ・インドネシア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の設立を開始。
2017年2月、スリランカ専門誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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