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古代スリランカの水利施設に関する基礎的研究が掲載された月刊考古学ジャーナル2020年12月号

2020年12月08日

スリランカには数多くの人造の貯水池があります。

自然にできた湖の方が少ないため、自然にできた湖は、わざわざ”Man-made”ではなく、”Natural"であると説明書きがされているほどです。

スリランカのシンハラ王朝は都を築くと、貯水池と灌漑施設を作っています。
スリランカでは、農業用水・生活用水の確保のために、雨季に降った雨を貯める貯水池や灌漑施設が発達し、古代のスリランカは仏教と灌漑技術の先進国とも言われていました。

中国人仏教僧の法顕がスリランカに渡り、中国に仏教徒と灌漑技術を持ち帰り、日本最大の灌漑用のため池である満濃池の改修を行った空海は、中国で学んだスリランカの灌漑技術を使ったとも言われています。

そんなスリランカの貯水灌漑・水利施設に関する基礎研究のレポートが掲載されている考古学ジャーナルをご紹介します。

年間降水量で分ける3つの地域

スリランカは全島が熱帯性モンスーン気候に属しますが、年間降水量で以下の3つの地域に分けられるそうです。

乾燥地域:年間降水量1,750mm以下
中間地域:年間降水量1,750〜2,500mm
湿潤地域:年間降水量2,500mm以上

乾燥地域では年間降水量の7割が雨季に集中しているため、多くの貯水池や水路が造られたとされています。

ソロウワ

今回掲載されているのは、ソロウワというスリランカの暗渠排水施設を研究する鈴木慎也氏によるレポートです。

ソロウワは、巨大な貯水池から決壊の恐れなく排水することを可能とした貯水灌漑システムだそうです。

本レポートには、ソロウワの基本構造の図が掲載されていますが、貯水池の堤防と暗渠水路をつなぐ「ビソー・コトゥワ」と呼ぶようです。

コロンボやゴールにあるフォート(要塞)のことを、シンハラ語ではコトゥワと言います。
コトゥワが意味するものに、イメージがわくように思います。

各貯水池の集水域と長期平均年間降水量

本レポートには、「各貯水池の集水域と長期平均年間降水量」の表が掲載されています。

表に取り上げられている貯水池のうち、観光する人にも馴染みがあるのは、サファリで象の群を楽しむミンネリヤ国立公園にあるミンネリヤ貯水池と、世界遺産ポロンナルワにあるパラクラマ・サムドラ貯水池です。

表で最大の集水域の貯水池になっているのが、アヌラーダプラ郊外のNachchaduwa Wewa。

2番目に広いのが、ウダワラウェ国立公園とマッタラ・ラージャパクサ国際空港の間ぐらいにあるUrusita Wewa。

まとめ

本レポートはページ数は3ページとコンパクトな内容ですが、スリランカの遺跡の研究や調査が現在進行形で進められていることが分かる興味深い内容でした。

世界遺産のシーギリヤ、アヌラーダプラ、ポロンナルワなどについて理解を深めるにも良いでしょう。私が参照にしたページもご覧ください。

参照



スリランカの伝統農業 タンク灌漑
灌漑の国スリランカ
古くて新しいスリランカの灌漑研究
NPO南アジア遺跡探検調査会「遺跡関係用語」
NPO南アジア遺跡探検調査会「スリランカという国」
スリランカ 密林の遺跡
ウィキペディア「法顕」
ウィキペディア「満濃池」

 

 

 

 

 

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