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スリランカ料理レシピ本出版記念&3ブランドのショーケースイベント

2021年12月13日

2021年12月11日(土)・12日(日)と2日間に渡って、日本橋横山町のアートギャラリーで、スリランカ唯一の日系フォトスタジオであるStudio Fortの石野明子さんの新刊本『スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん』の出版記念イベントが開催されました。

スリランカの半貴石の原石を使ったジュエリー「MANIKA」
スリランカの植物で手染めし、スリランカ縫製士が服に仕上げる「LAILHA」
スリランカのデッドストック生地や海洋ゴミから作るフィットネスウェア「kelluna.」

の3ブランドによるショーケースも同時開催されました。

イベントの様子をお届けしたいと思います。

アートギャラリー「Studio SOIL」

開催場所は日本橋横山町の倉庫1棟をアートギャラリーにリノベーションした「Studio SOIL」。

日本橋室町から横山町には旧日光街道が通り、横山町には現金問屋街・繊維問屋街が形成されています。
問屋街のため、日曜日に空いているお店はわずかで、静かな通りでした。

Studio SOILがあるのは、旧日光街道の北側を並行して走る「横山町馬喰町新道」の横山町側。

横山町馬喰町新道は、横山町と馬喰町の町境になっている通りで、最寄り駅は「馬喰町駅」や「馬喰横山駅」、あるいは「東日本橋駅」です。
東日本橋駅は旧日本橋区の東端にある駅であることが由来で、副駅名表示は「問屋街」です。

Studio SOILは、横山町馬喰町新道の北端近くで、神田川に架かる浅草橋からも近いので「浅草橋駅」も徒歩圏です。

Studio SOILは、キッチン付きのA(上の写真の右側)と、2層がつながるB(上の写真の左側)の2つからなり、今回のイベントでは、石野さんの新刊出版&試食会が右側(A)、3ブランドのショーケースを左側(B)で行っていました。

料理デモ&試食会を伴うレシピ本出版イベントを行うにも、ブランドのショーケースを行うにも、繊維問屋街のキッチン付きアートギャラリーは、ピッタリな場所に思えます。

料理デモンストレーション&試食会

Studio Fortさんのインスタグラムアカウントには、スリランカに暮らす人々や景色、そして、美味しそうなフォトスタジオのまかないごはん等が投稿されています。
インスタ アカウント:studiofortlk AKIKO ISHINO / 石野明子

まかないなのに、眩しいぐらいに綺麗な料理が投稿されているのを見ていましたが、その料理たちが書籍化されたのが今回の新刊『スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん』。

試食会上の壁には、石野さんが撮影された写真が展示されていました。

8名限定の試食会は1日3回を2日間行われましたが、予約席は即完売して参加できる余地はありませんでしたので、試食会が始まる前に、中の様子を拝見させていただきました。

新刊『スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん
石野さんのスリランカ旅本『五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ (旅のヒントBOOK)

そして、イカロス出版さんの「旅のヒントBOOK」のスピンオフのレシピ本が並べられています。

イカロス出版さんの旅のヒントBOOKシリーズは49点発刊され、そのうちの一つが石野さんのスリランカ旅本。
そして、スピンオフのレシピ本は4点発刊されていて、そのうちの一つが石野さんのスリランカ料理本。

石野さんが朝日新聞デジタルマガジン「&」の連載記事で紹介されていた、ジーワ(Jeewa)さんに今回のイベント用に特別に用意してもらったスパイスとのこと。

ジーワさんは、青山のファーマーズマーケットのコロンボ版ことグットマーケットに出店されていますが、お昼過ぎには完売してしまう人気店です。

石野さんのジーワさんについて記事はこちら。
朝日新聞デジタルマガジン&:“お母さん”のカレー屋台 スリランカのうまみを召し上がれ

試食会にご参加の方はスパイスセット、ライオンスタウトのお土産、料理デモもあってとても楽しそうです。

なぜ、フォトスタジオがレシピ本を出したのか?

こちらが今回の新刊であるレシピ本です。
77品とはかなりのレシピ数です。

私はレシピ本は10数冊持っていますが、作ってみたくなるかどうかは写真の影響が大きいように思います。
フォトグラファーの石野さんによるレシピ本は料理意欲を掻き立てます。

出版に至った経緯を石野さんに伺いました。

私たちのスタジオの始まりはスリランカの魅力を現地から発信したい、という想いからです。そこには食を含むさまざまな文化も含まれます。
食はたくさんの人が興味を持っていることなので、職場のまかない料理を投稿し始めたところ、ガイドブックを出したイカロスさんからレシピ本出版の打診をいただきました。

本の特徴については、以下のようにお話されていました。

私は食のプロではないので、スパイスのことや食材のルーツ、成分など詳しく語ることはできません。

でも食にまつわるスリランカの人々の文化や想いについては語ることができます。

きっとそんな食にまつわる人々の暮らしの様子を伝えることで、スリランカの魅力がもっと伝わると信じています。

シンハラ語に「いただきます」という言葉はありませんが、お米を炊く時にはブッダに額で手を合わせ祈りを捧げてから火をつけます。それが「いただきます」ときっと同等の想いになっているのだと思います。

ライス&カレーを食べるときは混ぜるスペースをあけて装います。
スペースがない小さなお皿でライス&カレーを出すのはおもてなしの心に欠けるので気をつけるという習慣もあります。

石野さんのインスタグラムのアカウントに、出版の背景と、冷夏による米騒動のことが書かれています。

当時、私も子供でしたがタイ米は、たしかにあまり美味しいと感じず、家でも学校でもニュースでもタイ米は大変不評だった記憶があります。

今や本格的な東南アジア料理・南アジア料理を楽しむ人が増えた日本では、わざわざ現地からの輸入米を買っている人も多いことを考えると、時代は変わるものだなと思います。

スリランカはお米をよく食べる国。
2015年のデータですがスリランカは世界9位、日本は50位。人口が日本の6分の1と思うとすごい消費量ですよね。

それくらいスリランカの人にとってお米は重要な食材です。

私もこの調査データは、学生向けの講義でよく使いますが、そんなにお米をたくさん食べる人たちが、美味しくないお米を食べるわけはなく、その土地の風土や文化にあった美味しい食べ方があるはずです。

それを知るには、スリランカに暮らし、日々スリランカ人スタッフと食を共にしている石野さんが手掛けたレシピ本は、良い手がかりになるはずです。

石野さんの新刊の発売日は12月23日ですが、今からアマゾンで予約することができます!

フィットネスウェアブランド「kelluna.」

続いて、3ブランドのショーケースが行われているBについて。

一番手前はフィットネスウェアブランド「kelluna.」。

事業の目的と手段(プロダクト)がオーナーの前川さんのご経験から生まれいて、ストーリー性の高いプロダクトです。

事業の目的は、スリランカ女性の雇用創出。
実現の手段が、フィットネスウェアの製造販売。

手段と言ってしまうと何でも良かったように聞こえてしまいますが、そうではないようです。

ウェアの原料は捨てられてしまうデッドストック生地や海洋ゴミのリサイクル。
ブランドコンセプトは「self-love(ありのままの自分を愛する)」。

self-loveは、学生の時に”痩せなくちゃ!”と過激なダイエットによって拒食と過食を経験されたことと、アメリカでの大学院留学時に体を鍛える男女のシェアメイトたちとの出会いから生まれたコンセプトのようです。

一つの価値観に沿ったものではなく、それぞれの個性(魅力)=”ありのまま”こそ美しく、それは自己愛から生まれるというのは、幼少期にイギリスやオランダで育ち、アメリカ・ガーナ・インド・スリランカで留学・仕事を経験されてきた前川さんだからこそのコンセプトだと思います。

持って生まれた美しさは、自己愛(精神面の内側)から生まれるとともに、健康的な肉体(身体面の内側)も大切でしょうから、スポーツウェアというプロダクトはコンセプトに合致しています。

そして、前川さん自身が2012年からフルマラソンに出場し、トライアスロンにも出場されていますので、ブランドコンセプトにも、製品開発にも前川さんのバックグランドが反映されているように思います。

ゴミの再活用という原料の視点も、スリランカでの仕事経験からだそうです。

2017年4月、コロンボ郊外のコロンナーワでゴミ山が崩壊し、30人ほどが亡くなり、400世帯以上が被害を受けました。
その現場を視察し、人の命や生活を奪ってしまうゴミ山の問題を目の当たりにしたことが、製品開発に繋がったそうです。

ウェアの記事は2タイプあり、柄物のデットストック生地と、無地のストレッチ生地。

上の写真だと、手前が無地のストレッチ生地のプロダクトで、奥のハンガーにかかっているものがデットストック生地ですが、鏡越しに少し映っている程度で、物撮り・接写するのを完全に忘れておりました。。。

以下の公式サイトで各プロダクトの写真が見られますので、そちらを是非!
kelluna.公式サイト

女性の雇用創出の重要性について着目されたのは、前川さんがインドネシア、ガーナ、インド、スリランカなど発展途上国の女性の置かれた状況を見てこられたからでしょう。

石野さんの連載記事にも前川さんが取り上げられていますので、こちらの記事もぜひ。
スリランカ 光の島へ:〈16〉ガタイがよくて何が悪い?

ジュエリーブランド「MANIKA」

Kellunaの奥にあったのが、ジュエリーブランド「MANIKA」。

スリランカ料理ユニット「HARI HARI」を展開する橋本 有未さん・伊藤 里佳さんが今月から始められたそうです。

伺ったのはイベント2日目(日曜日)の12時半でしたが、1日目にいくつも売れて、この時点でのイベントでの在庫は写真にあるもので全てとのことでした。

MANIKAの特徴は宝石の原石がジュエリーになっていることと、フリーサイズであることです。

ジュエリーに近づいて撮った写真を見ていただくと、その特徴が分かりやすいかと思います。

スリランカでは一般的に高価とされる貴石が重視されますが、多様多様な美しい半貴石がスリランカでは採れます。

その半貴石を一般的なジュエリーのカットを施すのではなく、原石の質感を活かしたジュエリーにされたそうです。

商品は4つあり、一番手前にあるのがBRIGHT(LARGE)。
原石が小さいものがBRIGHT(SMALL)。

2つの原石がリングに付いているのが、FULLMOON。
大きい原石が地球を表し、小さな原石が月を表しているそうです。

その奥にあるリングが細く、波打つような特徴的なシェイプのものがWAVE。

貴石の加工・研磨に求められる技術と、半貴石の加工・研磨に求められる技術は異なり、技術の価値としてはそれぞれにあるものの、一般的に高価とされる貴石の技術が重視され、スリランカでは半貴石の技術を持った職人が少なくなっているという話を聞いたことがあります。

そんな中、せっかく採掘されたのに埋もれてしまっている半貴石を、それほど加工せずにジュエリーとして送り出すMANIKAの製品は、スリランカ側には喜ばれそうです。

スリランカの工房でジュエリーを製作して日本に輸入しているそうです。

MANIKAブランドサイトはこちら。

天然素材の手染めアパレルブランド「LAILHA」

一番奥にあったのが「LAILHA」です。

LAILHAは、スリランカ内戦が終結した2009年に藤原響子さんが始めた「Punchi Lamai」が、10年間の準備期間を経てローンチしたアパレルブランドです。

アーユルヴェーダの天然薬は、素材となる薬効植物をオイルで煮出して作るそうですが、LAILHAでは水で煮出して、手で一着一着丁寧に染めています。

アーユルヴェーダにも使われる植物

大量生産の衣服に使われる化学染料が溶け込んだ染液は飲めませんが、薬効植物から作られた染液のため、薬草を煎じたお茶のようなもの。
薬効植物のエキスが溶け出していますので、健康効果もありそうです。

2人の染師の手で染められるのは1日で2着分まで。

パタギの木と、その染液で染められた生地

天然なのは染液だけではなく繊維そのものも、藤原さんが選び抜いた各国のオーガニック繊維を使用。

環境負荷のある農薬や化学肥料を3年以上使っていない農地で有機栽培されたコットンや亜麻を使ったリネン。
または農薬や化学肥料を使用しなくても育つヘンプ、化学肥料が不要なユーカリの木から作る再生繊維が使われています。

アパレル産業の繊維は大量の水や農薬・化学肥料を使うため、環境負荷が大きいと言われますが、サスティナブルな原料のみを使われています。

染師が手染めした生地を、縫製士が最初から最後まで一人で服に仕上げる生産方式を採用されています。

藤原さんは、スリランカの子育て世代の女性たちの仕事づくりを目的に始められ背景があり、現在働く染師と縫製士は、主にスリランカの子育て世代の女性たち。

縫製士は5人で、縫製工場がポルガハウェラに、染色工房がクルネーガラにあります。

10年と準備期間が長いですが、それはブランドとしてのクオリティーと安定生産の目処が立つまで技術研修とチーム作りを丁寧に行ってきたからのようです。

縫製と染めの指導も行い 現在も品質技術の向上に努めていらっしゃいます。

自社工房ならではの利点を活かし、 一人一人にあわせた着丈の変更や 素材と色を選ぶセミカスタマイズオーダーを受けています。

また、経年変化後の染め重ねで別の色へと変えることも可能。
天然素材であれば、私物の服を染め直す個別オーダーの相談も受けているそうです。

Punchi Lamaiの店舗は奈良にありますが、奈良は靴下産業が盛んなことから、奈良の靴下をPunchi Lamaiの染色工房で染めた靴下も販売されています。

奈良の靴下とのコラボレーション製品

イベント当日は店長である久保友里歌さんもいらしていました。

スリランカでカラフルな布ナプキンを生産している「Momiji natural」とのコラボレーション商品もありました。

Momiji naturalを始めた伊藤理恵さんについても、石野さんが朝日新聞デジタル「&」で記事を投稿されています。

スリランカ 光の島の原石たち:かかってこい人生! 亡き夫との原風景を胸に、布ナプキンで切り開く未来

Punchi Lamaiについては、以下の各サイトをご覧ください。

Punchi Lamai 公式サイト

まとめ:女性の可能性を広げる国スリランカ

今回のブランド・企業は全て日本人女性がオーナーで、現地側のスタッフも女性が主役です。

スリランカは女子旅に適していると言われますが、女性の起業・ブランドの立ち上げにも適した国かもしれません。

スリランカにはスリランカ人女性が始めたブランドがいくつもありますし、他にも日本人女性でスリランカでビジネスされている方は何人もいらっしゃいます。

スリランカ市場は巨大ではないため、日本から大企業の進出はそれほど多くはありません。

一方で、他国にあってスリランカにはまだないビジネスや、スリランカが持つ豊かな資源や人材を生かしたビジネスの可能性、ニッチ市場のシーズは点在しているように思います。

手触り感のあるサスティナブルなビジネスや、現場から育む細やかなサービス、その重要な担い手は女性なのかもしれません。

参照)

Studio Fort コーポレートサイト
イカロス出版:旅のヒントBOOKシリーズ
イカロス出版:旅のヒントBOOK レシピ本シリーズ
kelluna.:「ゴミから作れるタカラモノ」:人、自分、そして地球にも優しくできたらな
70 seeds:「女性だから」の壁を壊す スリランカと日本で助け合うフィットネスウェア
ザ・ヒューマン・ストーリー:前川裕奈 [できるまでやれば、できる]
繊研新聞社:スリランカ女性を雇用して作るフィットネスウェア「ケルナ」 自分のありのままの体を愛してほしい
フジテレビ:2021年2月3日放送 フューチャーランナー kelluna. 代表 前川裕奈さん
エシカリング:Punchi Lamai プンチラマイ美しい島スリランカで生まれる、自然を纏う服
暮らしとおしゃれの編集室:奈良編vol.1 スリランカの手仕事服とフェアトレードの店「lifestylestore PUNCHI LAMAI(プンチラマイ)」
STUDIO SOIL公式サイト
日本橋横山町問屋街WEB
日本橋横山町馬喰町問屋街

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