セイロンティー誕生から150年 「キリン 午後の紅茶」とスリランカのつながり。
2017年2月に発行した弊紙「スパイスアップ・スリランカ」第2号に掲載した磯淵猛氏のコラムの再掲です。
現在、弊誌第2号の在庫はありませんが、磯淵さんには多くのファンがいらっしゃいますので、当サイトでご紹介させていただくことにいたしました。
成功と普及、セイロン島での研究
紅茶と聞くと一般的に、スリランカティーと言うより、セイロンティーと言う方が日本人には馴染み深い。そのセイロンティーが誕生して、今年(2017年)で150年目になる。
その基盤を築いた人物の一人である、スコットランド人の「ジェームス・テーラー」は16歳でセイロン島に渡り、32歳の時に栽培に成功してから、57歳で生涯を終えるまで、紅茶作りに専念した。
インドのアッサムでは17年もかかった茶の栽培は至難なことと思われていたが、かれは数年で成功させ、その功績が称えられ後に「セイロン紅茶の父」と呼ばれ称賛を受けた。
「キリン 午後の紅茶」本格紅茶を日本へ
セイロンティーは日本人にとってとても飲みやすく、紅茶らしい安心感がある。渋みは優しくて程よく、香りはドライフラワーのバラやカモミールにも似ている。紅茶の色合いは透明感のある鮮やかな赤色で、軟水に恵まれた日本の水によく合った理想的な紅茶と言えるだろう。
この紅茶を抽出し、日本初となるペットボトル入りの本格紅茶として世に広めたのが「キリン 午後の紅茶」だ。その中でも代表的な「ストレートティー」「ミルクティー」「レモンティー」の3種類の午後の紅茶は、それぞれ違った地区の茶葉を使用している。
なかでも有名なのが、紅茶園を開拓したパイオニアたちが、故郷のイギリスを真似て造った街「ヌワラエリア」だ。この街は標高1,800mにあり、様々なイギリス様式の建物が並ぶ街の風景はとても美しく、現地の人たちからリトルイングランドと呼ばれ親しまれている。
標高が高いことから朝夕の気温は10度前後と低く、日中は抜けるような青空が見られるが霧も多くて、夜には暖炉が必要なほど冷え込むこともしばしばある。
こういった環境で育ったヌワラエリアの茶葉を使用※1した「レモンティー」は、フルーティーで爽やかな風味と、レモンのすがすがしさがマッチした、香味が一体化した味わいがある。
この場所からやや標高が下がった、南西部のディンブラの茶葉を使用しているのが「ストレートティー」で、お馴染みの透明感のある鮮やかな赤色と豊かな香り、紅茶の個性としてはフルボディーといわれる味の三拍子が揃ったバランスが整った紅茶だ。
そして最後に「ミルクティー」はジェームス・テーラーが最初に茶園を開いたキャンディ地区の茶葉※2を使用し、コクがあり、渋みはまろやかでミルクティーのクリームブラウン色を作り出した、イギリスのティーウィズミルクを思わせる味わいになる。
このように様々な一面を持つスリランカのセイロンティー。なかでもすごいのは、どこの茶園も山岳地の急な斜面に茶木が植えられていて、そこに茶摘さんたちが入り、ほとんどの茶葉を手摘みしていることだ。
出来上がりの紅茶は黒色をしているが、この小さなかけらまで人の手が触れている。紅茶を淹れる主婦をティーマザーと呼ぶが、子供から飲むことのできる紅茶は正に母親の優しさのようだ。
※1 15%以上使用
※2 80%使用
磯淵 猛(いそぶち たけし)プロフィール
(株)ティー・イソブチカンパニー代表取締役社長
「キリン午後の紅茶」商品開発アドバイザー
1951年愛媛県生まれ。青山学院大学卒業。商社勤務を経て1979年に紅茶専門店「ディンブラ」を開業。紅茶の輸入卸販売、オリジナルメニューの開発、技術指導、経営アドバイスなども行い、紅茶研究家、エッセイストとして活躍。近著に「基礎から学ぶ紅茶のすべて」(誠文堂新光社)他多数。
>>関連記事
SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTD Managing Director
SPICE UP TRAVELS (PVT) LTD Managing Director
「旅と町歩き」を仕事にしようとスリランカに移住。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年4月、法政大学社会学部社会学科を卒業後、六本木の人材系ネットベンチャーに新卒入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長を経てネットベンチャーを退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当しながら、新宿ゴールデン街で訪日外国人向けバーテンダー。
2016年7月、スリランカに初めて渡航し、法人設立の準備を開始。
2017年1月、SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTDを登記。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年2月、スリランカ観光情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」オープン。
2020年8月、ニュースレターの配信を開始。
2020年10月、WAOJEコロンボ支部立ち上げ初代支部長に就任。
2023年2月、スリランカ日本人会理事・広報部長に就任。
2025年6月、SPICE UP TRAVELS (PVT) LTDを登記。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
# 関連キーワード
新着記事
-
スリランカのサイクロン影響と最新状況|観光・鉄道【12月4日・随時更新...
スリランカを襲ったサイクロンにより発生した洪水・地滑りで、犠牲になられた方々に哀悼の誠を捧げるとともに、御遺族に対し謹んでお悔やみを申し上げます。被害に遭われた方々の早期の御快復をお祈りし、心よりお見舞い申し上げます。 …
2025年12月01日 -
スパイスアップスリランカ【デジタル版】|vol.19 アルガムベイ特集
目次1 スリランカ唯一の日本語情報誌『スパイスアップ・スリランカ』デジタル版を公開!2 2025年10月発行 vol.19「アジア屈指のサーフスポット 東海岸アルガムベイ」特集号2.1 vol.19目次3 vol.19デ…
2025年11月20日 -
ウナワトゥナのブティックホテル「Sergeant House」|ゴール...
スリランカ南海岸・ウナワトゥナのブティックホテル「Sergeant House(サージェント ハウス)」は、19世紀の邸宅を改装したプライベートな隠れ家。風の通るテラス、緑に包まれたプール、そしてわずか5室の上質な客室が…
2025年11月03日
