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セイロンティー誕生から150年 「キリン 午後の紅茶」とスリランカのつながり。

2020年12月03日

2017年2月に発行した弊紙「スパイスアップ・スリランカ」第2号に掲載した磯淵猛氏のコラムの再掲です。

現在、弊誌第2号の在庫はありませんが、磯淵さんには多くのファンがいらっしゃいますので、当サイトでご紹介させていただくことにいたしました。

成功と普及、セイロン島での研究

紅茶と聞くと一般的に、スリランカティーと言うより、セイロンティーと言う方が日本人には馴染み深い。そのセイロンティーが誕生して、今年(2017年)で150年目になる。

その基盤を築いた人物の一人である、スコットランド人の「ジェームス・テーラー」は16歳でセイロン島に渡り、32歳の時に栽培に成功してから、57歳で生涯を終えるまで、紅茶作りに専念した。

インドのアッサムでは17年もかかった茶の栽培は至難なことと思われていたが、かれは数年で成功させ、その功績が称えられ後に「セイロン紅茶の父」と呼ばれ称賛を受けた。

「キリン 午後の紅茶」本格紅茶を日本へ

セイロンティーは日本人にとってとても飲みやすく、紅茶らしい安心感がある。渋みは優しくて程よく、香りはドライフラワーのバラやカモミールにも似ている。紅茶の色合いは透明感のある鮮やかな赤色で、軟水に恵まれた日本の水によく合った理想的な紅茶と言えるだろう。

この紅茶を抽出し、日本初となるペットボトル入りの本格紅茶として世に広めたのが「キリン 午後の紅茶」だ。その中でも代表的な「ストレートティー」「ミルクティー」「レモンティー」の3種類の午後の紅茶は、それぞれ違った地区の茶葉を使用している。

なかでも有名なのが、紅茶園を開拓したパイオニアたちが、故郷のイギリスを真似て造った街「ヌワラエリア」だ。この街は標高1,800mにあり、様々なイギリス様式の建物が並ぶ街の風景はとても美しく、現地の人たちからリトルイングランドと呼ばれ親しまれている。

標高が高いことから朝夕の気温は10度前後と低く、日中は抜けるような青空が見られるが霧も多くて、夜には暖炉が必要なほど冷え込むこともしばしばある。

こういった環境で育ったヌワラエリアの茶葉を使用※1した「レモンティー」は、フルーティーで爽やかな風味と、レモンのすがすがしさがマッチした、香味が一体化した味わいがある。

この場所からやや標高が下がった、南西部のディンブラの茶葉を使用しているのが「ストレートティー」で、お馴染みの透明感のある鮮やかな赤色と豊かな香り、紅茶の個性としてはフルボディーといわれる味の三拍子が揃ったバランスが整った紅茶だ。

そして最後に「ミルクティー」はジェームス・テーラーが最初に茶園を開いたキャンディ地区の茶葉※2を使用し、コクがあり、渋みはまろやかでミルクティーのクリームブラウン色を作り出した、イギリスのティーウィズミルクを思わせる味わいになる。

このように様々な一面を持つスリランカのセイロンティー。なかでもすごいのは、どこの茶園も山岳地の急な斜面に茶木が植えられていて、そこに茶摘さんたちが入り、ほとんどの茶葉を手摘みしていることだ。

出来上がりの紅茶は黒色をしているが、この小さなかけらまで人の手が触れている。紅茶を淹れる主婦をティーマザーと呼ぶが、子供から飲むことのできる紅茶は正に母親の優しさのようだ。

※1 15%以上使用
※2 80%使用

磯淵 猛(いそぶち たけし)プロフィール

(株)ティー・イソブチカンパニー代表取締役社長
「キリン午後の紅茶」商品開発アドバイザー

1951年愛媛県生まれ。青山学院大学卒業。商社勤務を経て1979年に紅茶専門店「ディンブラ」を開業。紅茶の輸入卸販売、オリジナルメニューの開発、技術指導、経営アドバイスなども行い、紅茶研究家、エッセイストとして活躍。近著に「基礎から学ぶ紅茶のすべて」(誠文堂新光社)他多数。

 

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