「”かつ丼” をスリランカの国民食に!」スリランカ飲食チェーンに挑む日本人社長、岡山浩之さんにインタビュー!

スリランカで事業を展開する日本人起業家、経営者へのインタビュー第三弾。
今回は築地魚一を始め、スリランカで飲食店5店舗を運営する岡山浩之さんにお話を伺いました。
プロフィール
(以下、㋑は聞き手のインタビュアー、◆は語り手の岡山浩之さん)
㋑岡山さん!本日はよろしくお願いします!
◆よろしくお願いします!
㋑普段はスリランカに拠点を置く岡山さんですが、2020年4月現在、東京にいるということで。
◆そうなんですよ。どうしても日本で済まさないといけない仕事があったので日本に一時帰国していたら、コロナの影響でスリランカに入国できなくなってしまいました。
㋑何て大変な状況なんですか!
スリランカの日本食レストラン5店舗(築地魚一、東京食堂2店舗、ICHIBAN、A Minute by Tuk Tuk)は今どうなっているんですか?
◆全てストップさせています。
デリバリーすることもできるかもしれませんが、責任者の私がいなくては管理が難しいからです。
スリランカにいたら、色々と動き回れたかもしれませんね。
社長、飲食バイトを始める
㋑東京では、オンラインでできる仕事をしているって感じでしょうか?
◆それももちろんしていますが。。。実はですね、かなりフィジカルに動いています。日本のチェーン店でアルバイトを始めました。
㋑ん??どういうことですか?
◆そうですよね。
私はスリランカで一店舗経営するというよりは、店舗拡大して日本食をスリランカに根付かせたいんですよ。
だから、時間のある今だからこそチェーン店のオペレーションについて学ぼうと思いました。
やるなら現場で学びたいということで、大手チェーンのバイトスタッフとして働き始めたんです。全店舗営業停止になったんで収入がゼロになったっていうのも大きな理由ですが(笑)
㋑何といった思い切りでしょう。採用面接とか受けたってことですか?
◆受けましたよ。
隠すのも変なのでスリランカでビジネスをしていることもあらかじめ伝えました。
どうしても採用してほしかったので「スリランカは今は大変で、どうなるかわからないのでしばらくは帰らないつもりだ」と長期で働けるアピールをしたりなんかして。まあ本当のことなんで(笑)
㋑最高です。
◆チェーンのすごさって、裏側じゃないですか。
同じ味を誰が作っても安定的に、低価格で提供できるシステムが確立されているということ。
これってすごいことなんですよ。
特に同じ品質に保つことはみんなが想像する以上に難しいんです。
それはバイトで店に立ったってわからないことの方が多い。
ですが、本部から店舗に送られてくる書類や納品されてくる食材の状態なんかを見て裏側に潜んでいる仕組みを想像するんです。
そんなんでできるんだったらみんな成功してますけどね(笑)
またバイトの一番下っ端として働いてみると「こういう教え方だとわからないな」とか、見えてくるものもあります。
スリランカ人が好きな日本食 ”かつ丼”
◆それと、今バイトをしている店は揚げ物や丼ものの店なんです。
スリランカで日本食が根付くとすれば”かつ丼” なのではないかと思っています。
ほとんど日本食レストランがなかった2014年に出店した築地魚一では日本食全般を提供しています。
だけど最近は日本食レストランも増えてきています。
その状況で空いているマーケットを考えた時にもう少し手軽な価格で楽しめる日本食ではないかと考えました。
そして少し手軽な価格のフードコート店舗「東京食堂」を出店した時に丼ものを色々提供したら”チキンかつ丼”が圧倒的に人気だったんです。
㋑スリランカ人がかつ丼を食べてくれるなんて驚きです。
◆そうなんです。
「スパイシーチキンかつ丼」なんかが人気で。東京食堂では注文の5割がかつ丼だったりします。
㋑メニューを絞ると、一商品の精度も上がっていきそうですね!
◆はい!
もともと、日本人は私しかいないので、お店の数が増えれば増えるほど、私の管理が行き届かなくなってしまうのがジレンマだったんです。
だから品質を安定させつつ店舗拡大させていくには、商品を絞っていくことが必須になってくると思っています。
スリランカに日本食文化を根付かせる
㋑なるほど。そもそも店舗拡大にこだわるのはなぜですか?
◆日本で過ごしていると、チェーン店で異国の料理を当たり前に安く食べることができますよね。
もはやオリジナルの日本食と同じくらい親しまれています。
中華だったりイタリアンだったり。
でも、当たり前ですがスリランカでの日本食の立ち位置は違います。
外食文化があまり根付いていない国っていうのもあると思いますが、スリランカ人にとって日本食はなじみもない上に、高級料理なんです。
その日本食を一般のスリランカ人に広く食べてもらうには、少なくとも手の届く価格でかつ品質を安定させる必要があると思っています。
同じく異国料理のピザチェーンは大きく展開できています。
㋑確かにそうですね。
今、スリランカにある日本食レストランと言えば、スリランカ人スタッフだけでまわすというよりも、日本人スタッフの管理の元、安定した味が提供される高級店という印象です。
◆そうなんですよ。
そういうお店はあるべきなんです。ただそれだけだと、日本食がスリランカ人の日常食になることはない気がして。
私はスリランカに日本食文化を根付かせたいんです。
世界的な日本食の広がりは一般的には高級店が話題になって、低価格帯に広がっていっています。
もしくは邦人企業のチェーン店が現地では高級となる価格帯で広がっている国もあります。
ただこのやり方ではスリランカに日本食を根付かせるのは難しいかなと思っています。
もしくはすごく時間がかかる。
なので、あまり前例はないかもしれませんが、私はローカル食に近い価格帯でのチェーン店方式の展開に挑戦したいと思っています。
これは日本での守るべきブランドもない自分だからこそできることですし、やるのは自分でなければいけないなと思っています。
これを実現させて少しでもスリランカの豊かな食文化の発展に貢献できればとも思っています。
またそれを実現すべく日本食材の輸入卸や製造卸も視野に入れています。
知人に誘われたビジネスツアー
㋑もともと岡山さんは日本でチェーンの飲食店を7店舗経営されていたと思うんです。
どうしてスリランカに来られたんですか?
◆仕事先の方にスリランカでのビジネスツアーに誘われたのがきっかけでした。
当時は全くスリランカに興味はなかったんですが、ツアーが終わった時には、スリランカにも店を出したいという思いが湧いていましたね。
㋑直感的にビビットきたわけですね。
◆はい。直感的にもですし、当時のスリランカにはほとんど日本食の店はなくて、先駆者として日本食レストランを展開できるという期待もありました。
きっとシンガポールやタイなどの日本食レストランが多くある国だったら、海外出店はしていなかったと思います。
スリランカへの移住
㋑当初は日本の店舗、スリランカの店舗を並行して運営されていた岡山さんですが、2017年には日本の店舗を譲ったり閉店させて、スリランカに完全に拠点を移しています。かなりの思い切りですね!
◆そうですね。
とはいえ、単純に日本での飲食経営戦争に敗北しただけです。
日本の飲食業界は97年にピークを打ち、飽和状態にあります。
競合も多いですし、今年流行っている店が翌年には閑古鳥という状況も珍しくなく盛衰の激しい業界です。
また、人材不足と長時間労働の問題も常に抱えており、日本での飲食店経営に未来を感じられなくなっていました。
その中でも、伸びている店舗もありますので、これは言い訳にすぎません。
自分がそう考えていたからの結果でしょう。
一方、スリランカは自分の目にはとても魅力的に映りました。
めちゃくちゃ小さなマーケット。
日本食レストランもほとんどない。
誰も15時間も働かない(笑)
それなら、”自分にとって”魅力いっぱいのスリランカで、”日本食の魅力を広める仕事”をしたいと思ったんです。
㋑なるほど。
世界的には日本食といえばSUSHIのイメージですが、もしかしたらいつか、スリランカでの日本食の代名詞が”かつ丼”になる日がやってきそうでワクワクします。
◆ありがとうございます。
そうなるように頑張ります。
私たちがしているのはスリランカでの”新しい”を作り、それを”定番”に変えていくような仕事です。
他の企業がまだ手を出していないからこその、やりがいを感じます。
「先のみえない仕事」の方が楽しいじゃないですか!
㋑本日は本当にありがとうございました!

大学を休学してスリランカでインターン。トゥクトゥクを乗り回し、カレー片手にキリテーをごくごく。好きなことは銭湯と餃子づくり。スリランカたっのしー!
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