西麻布での23年間を経て開業した日本初のモダンスリランカ「ロジャーズキッチン」
日本で飲食店を経営するスリランカ人のほとんどがスリランカ料理店を営んでいます。
そんな中、スリランカ料理店ではないお店を経営している「炭焼き屋 西麻布本店」のロジャーさんと、新橋「ラッシーズバー」のウダヤさんはユニークだなと思っていました。(他にもいらっしゃるかもしれませんが、現在私が知っているのはこのお二人。)
私がお店を訪れた2017年頃は、それぞれスリランカという言葉が店頭やメニューに出ることは稀で、曜日限定のランチメニューやランチボックス、サイドメニューで登場する程度。
そんなロジャーさんがコロナ禍をきっかけに開いたお店が、ご自身の名前を冠したスリランカ料理店「ロジャースキッチン」です。
本記事では、モダンスリランカレストラン「ロジャースキッチン」について紹介します。
目次
モダンスリランカとは?
お店のコンセプトである「モダンスリランカ」とは、「モダンインディアン」、「モダンネパール」など伝統料理を現代風に再定義し、他の要素も加えた新しい食を提供する「モダン」なスタイルのお店のことをモダンと言います。
お洒落で、高級路線のお店とも言えると思います。
スリランカで代表的なモダンスリランカ店は、ミニストリーオブクラブ、日本ばしのオーナーであるダルシャン・ムニダーサさんがボリウッド女優のジャクリーン・フェルナンデスさんと始めた「キャーマ・スートラ」でしょう。
日本ではモダンスリランカを掲げるお店は見かけませんでしたが、
2019年11月に銀座にオープンしたモダンインディア「SPICE LAB TOKYO」
2020年7月に豪徳寺にオープンしたモダンネパール「OLD NEPAL」
2020年8月に中目黒にオープンしたモダンネパール「ADI」
2020年10月に蓮根にオープンしたモダンスリランカ「Roger’s Kitchen」
など、南アジアの料理店でモダンを掲げるお店がこの数年できています。
おそらくモダンスリランカを掲げる日本で最初のお店がロジャースキッチンではないかと思います。
オーナーのロジャーさん
ロジャーさんは20歳で留学生として来日。
その後、日本人オーナーとフランス料理店、イタリア料理店、シーフード料理店、焼肉レストランを運営し、20代後半でお店の経営を引き継いだそうです。
23年間経営した「炭焼き屋 西麻布本店」は、日本でもいち早くハラール対応した焼肉店であったため、旅行会社さんがインバウンドのムスリム旅行者さんたちをお店に案内してくれたそうです。
ロジャーさんはシンハラ人でムスリムではありませんが、様々な業態の飲食店を経営する中で、ビジネスチャンスとして捉えたハラール焼肉レストランだったそうです。
西麻布の店内には、マレーシアのマハティール首相のサインが飾ってありました。
西麻布という固定費の高い土地では、調理をする料理人が不要で、こちらでやることは良質なお肉を用意すること、あとはお客様自ら調理してくださる焼肉という業態がマッチしました。
とロジャーさん。
そして、血液をしっかりと抜くハラールの肉処理をすると、肉の臭みがなくなり、タレではなく塩で美味しく焼肉を楽しめるそうです。
そのお店でスリランカらしいメニューは、石焼きスリランカカレー。
他のお店では見られない、かつ、焼肉店らしいメニュー。
23年も続けた西麻布のお店を、新型コロナウイルスの影響から早々に閉店し、全く違う業態で全く異なる客層向けに開店したのがロジャーズキッチンです。
炭焼き屋 西麻布本店はお客さんの9割がインバウンドだったそうですが、今回のロジャースキッチンは日本人をターゲットにされています。
また、西麻布という商業エリアとは打って変わって、板橋区の住宅街という立地。
音楽の生演奏も可能なお店で、結婚式や記念日のパーティーなどもできるような物件という条件で見つかったのが今回のお店だそうです。
ロジャーさんが使う日本語の言葉は、接客業を長年されてきたからこその大変心地良いものです。
スリランカのレストラン業界を代表するオーナーであるダルシャンさんに似たものを感じました。
お二人とも選ぶ日本語の言葉が丁寧で、インバウンドのお客さんをつかみ、オリジナルティーのあるメニュー開発をし、モダンスリランカレストランを手掛ける、ジェネラスなジェントルマン。
シェフ、ウエイトレスもいますが、ロジャーさんもお店に立たれ、ホッパーをカウンターで焼いたり、スイーツの盛り付けをカウンターでされています。
気さくにお話してくれますので、お店に行かれた方は、ロジャースさんと会話されるのもいいでしょう。
お店の様子
蓮根駅から西台駅からも950mで、徒歩12分ほどの首都高速5号池袋線が上を走る幹線道路「長後赤塚線」の手前にお店はあります。
コットゥペペロンチーノというオリジナルなメニューやラムビリヤニも気になりますが、今回は初めてなのでスリランカ彩プレートに決まり。
このメニュー一覧を見て、少し高めの値段設定だと思いましたが、帰るときには全くそうは思いませんでした。
店内にはピアノが置かれています。
結婚式や誕生日パーティーを受け付けているそうですが、その時にピアノが活躍しそうです。
席に案内されました。
すでにいい感じ!
注文をすると、紅茶を出してくれます。
飲み終わると、別の産地の紅茶や別のフレーバーの紅茶を持ってきてくれます。
スリランカの紅茶会社ムレスナの日本の店舗「ムレスナ・ジャパン」では、ティーフローといって、多数の紅茶ブランドの中からどんどんと違う種類の紅茶を入れてくれますが、まるでティーフロー。
最初はキャンディ茶、その後にフレーバーティーをいくつかいただき、気付けば5種類の紅茶をいただいていました。
スリランカ人女性が笑顔で紅茶を持ってきてくれるのですが、スリランカを感じられて良いです。
スリランカ彩プレート
手前から時計回りに、チキンカレー、かぼちゃカレー、ゴーヤ、なすのモージュ、パリップ、ビーツ、ポルサンボーラ、ジャックフルーツカレー。
「唐辛子の分かりやすい辛さで作られるカレーが多いですが、スリランカでは唐辛子ではなく胡椒をメインで使います。そして、ワンプレートに甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味を入れています。お年を召されたお客様もお越しになられますので、体に優しい料理を心掛けています。」
とロジャーさん。
唐辛子は中南米原産ですが、胡椒はスリランカと古来から関係の深いインド南西のマラバール地方が原産です。
北インドやイランなどで作られるスパイスではなく、スリランカで採れるスパイスを主軸に置くのがスリランカ料理とお話しされていたモハン先生とも通づものがあります。
また、医食同源とも言われるアーユルヴェーダでは、一食に6つの味(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)を取り入れることを推奨していると言われますが、まさにそれが具現化されています。
脂っこくなく、辛すぎることもなく、非常に食べやすく優しい味がする美味しいライス&カリーでした。
蓮根で栽培された地元の野菜と、スリランカ野菜を作っている茨城で育った野菜を使って料理しているそうです。
JAF TEAとKingsの紅茶
次々に入れてくださる紅茶はスリランカの紅茶ブランド「JAF TEA」と「Kings」の紅茶です。
弊社でインターンをした紅茶好き学生を連れてスリランカ紅茶局のチェアマンを訪ね、その後、スリランカの有名紅茶ブランドの会社を片っ端から営業した子は、JAF TEAが一番好き!と言っていました。
JAF TEAとKingsを日本に輸入されているのは、スリランカ人が経営するCeylon Family株式会社です。
Ceylon Family株式会社のウェブサイトのトップページは、JAF TEAの画像と動画になっていますので、メイン商品なのだと思います。
ロジャーキッチンのカウンター横のテーブルに各種紅茶が置かれています。
上の写真は帰りにウエイトレスさんが渡してくださった紅茶です。
スリランカ人は気前がいいですので、スリランカを回っていると、至る所でサービスしてくださいます。
こちらのお店はカウンターにロジャーさんがいらっしゃるので、まるでスリランカにいるような気前の良いを対応を受けました。
こちらの紅茶は皆さんにサービスしているかどうかは分かりませんが、フレンドリーに話しかけるスリランカ文化でお店にお伺いすると、ちょっと嬉しいサプライズがあるかもしれません。
マンゴーとバナナのフレーバー
「100度のお湯で3分」と書いてあったので、家でその通り入れてみました。
バナナよりもマンゴーをフレーバーを感じるブラックティーでした。
ジンジャーのフレーバー
袋を開けた瞬間にジンジャーの香りがして、ジンジャーがきいたブラックティーです。
それぞれスリランカでも販売されている紅茶で、良いホテルの部屋にJAF TEAは置かれていることもありますが、改めてゆっくりと日本の家で飲むと美味しいな!と思います。
デザート(ワタラッパンとムース)
現代アートギャラリーの建物に入居するお洒落な四ツ谷のスリランカレストラン「バンダラランカ」は、他のスリランカ料理店とは異なり、価格設定が高めで、紅茶とデザートがセットですが、ロジャーズキッチンも紅茶とデザートがセットです。
今思うと、ディナーにはワインなども提供されているので、バンダラランカもモダン志向なレストランと言えそうです。
すでに書いていますが、ロジャースキッチンの場合は、食後だけではなく、注文後からデザートを食べ終わるまで、順次違う紅茶を出してくださるのが嬉しいポイント。
また、写真の通りデザートは2種類なのも嬉しいところ。
デザートは出来上がったものがキッチンから届くと、カウンター横のショーケースに置かれます。
お客さんの食事の進み具合を確認して、ロジャーさんがショーケースからデザートを取り出し、カウンターでカットして、お皿に盛り付けていました。
盛り付けている様子を撮影されば良かったのですが、つい、構えてもらってしまいました。
エッグホッパー(ビッタラ・アーッパ)
ワンプレートのランチセットで十分お腹いっぱいですが、ロジャーさんがカウンターでアーッパを調理されていたので頂きました。
英語名がエッグ・ホッパーで、シンハラ語ではビッタラ・アーッパと言います。
アーッパはホテルのビッフェのライブキッチンで、注文すると目の前で作ってくれるということがよくありますので、カウンターの見える位置でロジャーさんがアーッパを作られているのが、またスリランカらしくていいな〜と思いました。
スパークリングワイン
緊急事態宣言中のため、提供されていませんが、スパークリングワインのサーバー。
お酒が飲食店で気軽に楽しめるようになったら、また訪れてみたいと思います。
ロジャーさんにお任せするコース料理もあるので、ちょっと贅沢な夕食を味わってみたいなと思っています。
参照)
食べログ:ロジャーズ キッチン
エスニック見ーつけたロジャーズ・キッチン【蓮根】★骨付きラムビリヤニが絶品!モダンスリランカ料理店
Ceylon Familyホームページ
モダンインディアン「SPICE LAB TOKYO」公式サイト
モダンネパール「ADI」公式サイト
ヒトサラMAGAZINE:コース仕立てのネパール料理、その哲学を味わう【OLD NEPAL TOKYO】豪徳寺
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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