森の中に溶け込むバワの傑作ホテル「ヘリタンスカンダラマ」の館内ツアー
スリランカで最も世界に知られたホテルといえば、ジェフリーバワの傑作ホテル「ヘリタンスカンダラマ」でしょう。
日本から著名人がスリランカを訪れたきっかけとして、あるいは旅行雑誌などの特集でもよく取り上げられ、旅行会社さんの定番の案内先でもあります。
今週の記事でも取り上げた
クレアトラベラー2020年秋号
加藤シゲアキ著『できることならスティードで』
でもヘリタンスカンダラマは紹介されています。
ヘリタンスカンダラはホテル自体が美術館と言われるほどに見所がたくさんあります。
言われないと気付かない、でも、それを知るともっとホテルが楽しめる、そんな工夫が散りばめられたホテルを堪能するために、希望の時間に無料でホテルのネイチャリストが説明してくれるホテルツアーはとてもお勧めです。
本記事では、実際に参加したホテルツアーの内容に沿って、ホテルの見所、撮影ポイントを紹介していきます。
目次
- 1 バワが空から見つけた特別な立地
- 2 必然だった自然に溶け込むコンセプト
- 3 シーギリヤロックから着想した廊下
- 4 隠されたスタッフ専用通路
- 5 弟子たちの名前が刻まれたバスルーム
- 6 緑に埋もれるシーギリヤウイング
- 7 新しく追加されたスパ棟
- 8 フクロウのモニュメントとメインレストラン
- 9 バワデスク、バワデザインの椅子
- 10 水漏れを防ぐ蛇のモニュメント
- 11 岩上に造られたもう一つのプール
- 12 メイン棟から見るシーギリヤウイング
- 13 アラカルトレストラン「Kaludiya Fine Dining」
- 14 ラキセナナヤケのホテル全体図
- 15 木のように見せたアンテナ
- 16 ダンブッラウイングから見たシーギリヤウイング
- 17 イナデシルヴァの作品が飾られたホール
- 18 まとめ
- 19 まとめ
バワが空から見つけた特別な立地
ヘリタンスカンダラマは、ホテルを所有するエイトケンスペンス(Aitken Spence)のオーナーがジェフリーバワにホテルの設計を依頼し建てられました。
現在も外国人観光客(主にヨーロッパから)が最も訪れるのは南西海岸ですが、当時は南西海岸に一極集中している状態から徐々に世界遺産になったシーギリヤやダンブッラを訪れる外国人観光客が見られるようになり、シーギリヤ周辺に外国人観光客向けのホテルが必要とされていました。
エイトケンスペンスは当初、シーギリヤロックの麓にホテルを建設する予定でした。
ところがヘリで上空からシーギリヤ周辺を視察したバワは、世界遺産「シーギリヤロック」からも世界遺産「ダンブッラ」からも離れたカンダラマ湖畔の岩山にホテルを建てることを強く主張したと言われています。
そのため、ネイチャリストはこのように言いました。
「このホテルはバワが建設地を決め、ホテルを設計し、インテリアも設計しています。全てがバワの設計であり、特別なホテルなのです。」と。
必然だった自然に溶け込むコンセプト
ヘリタンスカンダラマは、米国グリーンビルディング協議会(USGBC)が、建築や都市の環境の環境性能評価システム「LEED」で世界で最初に認定したホテルであり、アメリカ国外で最初に認定した建築物でもあるという、その環境への配慮が高く評価されているホテルです。
ヘリタンスカンダラマは当初、自然と動物の生態系を壊すとして建設の反対にあっています。
そこでバワは水の流れを変えなように、そして象などの動物の通り道も確保して設計しています。
ヘリタンスカンダラマは、エントランスや廊下、地上階に巨岩があることで知られています。
建設前からそこにあった岩をそのまま残し、自然との共存・自然に溶け込むというホテルのコンセプトを体現するものとして、効果的に使われています。
シーギリヤロックから着想した廊下
レセプションからインフィニティープールやレストランを繋ぐ廊下があります。
ホテルにチェックインする際はこの廊下を通りますが、廊下の左手側は岩が剥き出しの状態でゴツゴツした壁になっています。
対照的に、廊下の右手側は真っ白で装飾のないシンプルな壁になっています。
この壁はシーギリヤロックのミラーウォールからバワが着想したそうです。
ミラーウォールはその名の通り、鏡の役目を果たして岩壁に描かれたシーギリヤレディーを壁に映し出したと言われていますが、廊下を歩くと白い壁に影が映るようになっています。
また、この廊下はカンダラマ湖からのフレッシュな風をホテル館内に届ける役割も担っているそうです。
隠されたスタッフ専用通路
ロビーフロアの廊下の裏には、廊下と並行して走るスタッフ専用通路があります。
チェックイン時の宿泊客の荷物は裏口から見えないように、スタッフがこの通路を使って荷物を部屋まで届けます。
客室の外には木製の扉があります。
扉の中には電気回路やwifiなどが集められています。
客室内で何か不具合があった場合、スタッフは客室に入ることなく修復作業ができ、宿泊客は修復中も変わらず部屋の中でくつろぐことができるように工夫されています。
弟子たちの名前が刻まれたバスルーム
ジェフリーバワのキャリアは初期(ウルリク・プレスナーと協働)、中期(ポーロガスンドラムと協働)、後期(チャンナ・ダスワッテと協働)と3つの時期に分けることができます。
ヘリタンスカンダラマは後期の最初のプロジェクトで、バワの後継者とも言われるチャンナ・ダスワッテはヘリタンスカンダラからバワのチームに参画しています。
チャンナ・ダスワッテを初め、チームジェフリーバワのメンバーたちの名前がバスルームの絵の中に記されています。絵に近づいてよく見ると、各自の名前を記すシンハラ文字になっています。
ヘリタンスカンダラマは2005年に改装されていますが、そのプロジェクトを手掛けたのもチャンナ・ダスワッテです。
緑に埋もれるシーギリヤウイング
ホテルはメイン棟(レストラン、カフェ、プールなど)を真ん中に、北側にシーギリヤ・ウイング(宿泊棟・スパ棟)、南側にダンブッラ・ウイング(宿泊棟・ライブラリ・ホール・プール)という作りになっています。
ヘリタンスカンダラマの外観写真で最もよく見られるのは、緑に覆われたシーギリヤウイングの写真です。
そのシーギリヤウイングの外観が綺麗に撮れる場所を4つ紹介してくれました。
1枚目はシーギリヤウイングの地上階に降りてから外に出て、庭から建物を見上げるように撮影したもの。
2枚目がシーギリヤウイングのエントランス階から撮影したもの。
新しく追加されたスパ棟
シーギリヤウイングの奥には2005年の改装時にチャンナ・ダスワッテの設計で作られたスパ棟があります。
とても洗練されたデザインで、この環境でマッサージを受けられるというのはとても贅沢に思います。
スパ棟の横に柱がありました。
スパ棟の隣にも増築しようとしたそうですが、政府からストップがかかり、実現しなかったそうです。
スリランカを代表するホテルであり、すでにその環境対応が評価されているヘリタンスカンダラマに対して、自然保護を優先してストップをかけるスリランカ政府に好感を持ちました。
スパ棟を一番上まで上がると、メインレストランへつながる屋上庭園となっています。
庭園では様々な植物を見ることができます。
フクロウのモニュメントとメインレストラン
インフィニティープール、カフェ、バーがあるフロアーを見下ろすように、大きなフクロウのモニュメントが階段にあります。
これはラキ・セナナヤケによる作品です。
メインレストランの入口前に置かれています。
このフクロウは表と裏で別々の顔を持っており、階段側を向いているのが飛んでいる時のフクロウで、レストラン側に向いているのが足をついて止まっている時のフクロウです。
階段の近くにはバワがデザインした灰皿が置かれています。
メインレストラン内には、ラキ・セナナヤケによる木のオブジェが置かれています。
レストランの奥にある洞窟では特別な夕食(Cave Dinner)が楽しめます。
事前予約かつ別途料金がかかりますが、松明に火が灯され、特別な時間を過ごすことができます。
バワデスク、バワデザインの椅子
メイン棟の階段の踊り場(フクロウのモニュメントの一つ下の階)には、バワが気に入っていたという場所があります。
机と椅子が置かれており、そこから遠くにはシーギリヤロックとピドゥランガラロックが並んで見えます。
メイン棟にはバワがデザインした椅子がいくつも見られます。
水漏れを防ぐ蛇のモニュメント
ヘリタンスカンダラマの一つの顔が、カンダラマ湖を見渡すことができるインフィニティープールです。
チェックインは、このプールの手間にあるカフェで行います。
そのカフェの壁に蛇のモニュメントがあります。
これはホテルをオープンした際に、モンスーンの時期に山の水が滲み出てきてしまうという問題が発覚し、急遽、ジェフリーバワが設置したものです。
ただ仕切りを置くのではなく、モニュメントを置いたというのがジェフリーバワらしいと思います。
岩上に造られたもう一つのプール
ヘリタンスカンダラマには3つのプールがあります。
メインとなるプールはインフィニティープールですが、そのプールの手前にある岩を登って、もう一つ上の階にいくと、プールのそこが岩になっている2つ目のプールがあります。
より高い位置からカンダラマ湖を見渡すことができます。
メイン棟から見るシーギリヤウイング
岩のプールはダンブッラウイング側にあり、繁忙期にレストランとして使われるダイニングエリアがあります。
その外側からシーギリヤウイングを綺麗に撮影することができます。
アラカルトレストラン「Kaludiya Fine Dining」
メインレストランからもう1つ上の階には、アラカルトレストランがあります。
船内をイメージして設計したそうで、小さな窓があります。
それは、まるで船内から外を見ているような作りになっています。
ラキセナナヤケのホテル全体図
ダンブッラウイングにはライブラリーがあり、そこにラキセナナヤケが描いたヘリタンスカンダラマの全体図があります。
同じ絵はスイートルームにも設置されています。
木のように見せたアンテナ
ダンブッラウイングのライブラリーがある階は屋上庭園になっています。
そこから見上げると、山の上にアンテナが立っているのが見えます。
これはバワがアンテナと分からないように、木に見えるようにデザインしたものです。
言われなければアンテナには気付きませんし、山の上にアンテナがあることは気にも止めないように思いますが、非日常を提供するリゾートでは、たとえホテルの敷地外にあるアンテナでさえ、視界に入らないようにしたバワの配慮はさすがです。
ダンブッラウイングから見たシーギリヤウイング
ホテルの外観を撮影するスポットをネイチャリストが4カ所教えてくれましたが、ダンブッラウイングの屋上庭園からのショットが最後の4つ目でした。
イナデシルヴァの作品が飾られたホール
ダンブッラウイングの奥に行くと、チャンナ・ダスワッテが設計したホールがあります。
そこにはイナ・デ・シルヴァの大きなバティックの作品が入口に飾られています。
上の写真は入口ではなく、中のある作品です。
まとめ
ネイチャリストによるホテルツアーは40分ほどでした。
私が泊まった日は中国の旧正月の前日から当日にかけてで、ホテルがしばらく満室の状態でしたが、ツアーは希望の時間(朝食後の10時)にマンツーマンで対応してくれました。
案内は基本的に英語で行われますが、ゆっくり丁寧に説明してくれますので、英語が多少苦手でも実際に目で見て分かるものも多いですので、参加されることをオススメいたします。
具体的な説明は本記事を参照いただければ、だいたい分かるかと思います。
まとめ
ヘリタンスカンダラマを予約する
ヘリタンスカンダラはBooking.comから予約が可能です。
Booking.comのヘリタンスカンダラマのページはこちらです。
ヘリタンスカンダラマへの旅行をアレンジする
ヘリタンスカンダラマがあるカンダラマへは鉄道は走っておらず、バスはダンブッラまでとなります。
ダンブッラからトゥクトゥクを捕まえる場合は観光客が多いエリアのため、高額の金額を提示される場合があります。
また、ホテルはシーギリヤやダンブッラなどの遺跡エリアから離れており、外に出るたびに車両が必要になります。
ダンブッラは小さい町のため始発のバスがなく、座れないことが多く、次の町に行くのは大変です。
ヘリタンスカンダラマに泊まる多くのは人は、車をチャーター しています。
カーチャーターのご相談は以下のフォームから受け付けております。
またヘリタンスカンダラマに多くの外国人観光客を送っている旅行会社と提携しているため、個人で予約するよりも安くを手配できる場合があります。
個人手配の場合との比較をして、ご検討いただくとよろしいかと思います。
お問い合わせは以下のフォームよりお願いいたします。
参照
米国グリーンビルディング協議会(USGBC)
一般社団法人グリーンビルディングジャパン「LEEDとは?」
USGBC「In the LEED」
Daily News「Heritance Kandalama turns 25
GREEN Technologies「The Kandalama Hotel Dambulla, Sri Lanka」
KAJA DESIGN:建築家とプロデューサーが語る、スリランカと建築。
関連ページ
「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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