オランダ東インド会社が建設したウォルベンダール教会
コロンボ歴史地区の最高地点と思われるコタヘナの丘の上には、オランダ東インド会社が建設したウォルベンダール教会があり、今も教会として使われています。
ポルトガル時代、オランダ時代、イギリス時代のコロンボの町がどのように作られていったのかを知る手がかりにもなる、非常に興味深い教会です。
本記事では、狼の谷と名付けられた歴史ある教会「ウォルベンダール教会」について紹介します。
丘の上に建つウォルベンダール教会
ウォルベンダール教会(Wolvendaal Church)は英語名で、オランダ語名はWolvendaalsche Kerkと言います。
Wolvenは「狼」、daalscheは「谷」、Kerkは「教会」を意味します。
周辺で見られたジャッカルを狼と勘違いしたことからその名がついたと言われています。
オランダ東インド会社が建設した教会は、ゴール要塞、ジャフナ要塞、マータラ要塞、カルピティヤ要塞にそれぞれ残されていますが、このウォルベンダール教会はコロンボ要塞の外に建てられています。
コロンボ要塞には、現在のゴードンガーデンの位置にKasteel Kerkがありました。
Kasteelは「城・要塞」を意味し、まさにコロンボ要塞内にあった教会でした。
教会の老朽化と、人口増加によりコロンボ要塞の外の丘の上に建てられています。
ポルトガル統治時代は、フォートとペターは一つの大きな要塞になっていましたが、オランダ東インド会社は堀を作って、フォートをより強固な要塞に変更しています。
ペターの城壁の門があったとされるのが、カイマンズゲートです。
カイマンはオランダ語で「ワニ」を意味します。
この城門にも堀を巡らされ、ヌマワニが生息していたことから、その名が着いたとされています。
カイマンズゲートがあるメインストリートを東に行くと、オールドタウンホールがあり、そこからウォルベンダール教会に向かっては坂道になっています。
丘の麓にコロンボの町に入るための城門があり、丘の上に教会が建っているという位置関係になります。
水タンク、時計塔、宗教施設が集まる丘
丘の頂上には時計塔が立ち、その横にはウォータータンクがあります。
私の地元である東京都世田谷区の給水所は区内で最も標高が高い砧2丁目、ついで高い駒沢に作られています。
おそらくコロンボで最も標高が高いのが、この「ヴィヴェーカーナンダの丘」か、貯水池と仏教施設が集まるMaligakandaだと思われます。
コロンボで他に標高が高い場所も、裁判所があるHulftsdorp、コロンボの最古の仏教寺院「ディーパドゥッタマーラーマヤ寺院」が建つコタヘナの丘、スリランカ最古の英国国教会が建つMutwalの丘、と重要施設が建てられています。
時計塔の正面にはモスクがあり、その先にオランダ教会が見えます。
この丘は「ヴィヴェーカーナンダの丘」と呼ばれますが、ヒンドゥー教のカリスマ「ヴィヴェーカーナンダ」がスリランカに来たことを記念するヴィヴェーカーナンダ像、ヴィヴェーカーナンダホール、ヴィヴェーカーナンダカレッジもあることに由来します。
ヴィヴェーカーナンダの丘は、プロテスタント、イスラム教、ヒンドゥー教の施設があり、時計塔があることから、この地域の中心地であったことが伺えます。
スリランカの国道は、町の入口や中心に建つ時計塔を通過することが多いです。
国道1号線と2号線の起点である灯台時計塔がフォートの時計塔で、ペターの時計塔がカーン時計塔、そしてコタヘナの時計塔がこの丘の上にある時計塔なのだと思います。
ギリシャ十字の重厚な教会
ウォルベンダール教会は、ギリシャ十字の形をした、古代ギリシヤ様式のドーリア式で建築された教会です。
ギリシャ十字とは、縦に長いラテン十字とは異なり、十字の長さが同じで、スイス国旗にも使われている十字です。
教会の正面入口には、建設が開始された1749年とオランダ東インド会社の紋章があります。
オランダ時代の正面ゲートはカイマンズゲートにつながるこちら側だったのでしょう。イギリスがセントラルロードを建設した後は、現在のセントラルロード側が主要なゲートになったと思われます。
教会の周囲には多くの墓石が残されています。こちらの墓石には教会の建設開始年よりも古い年号が刻まれています。
コロンボ要塞内の教会にあった墓石は、こちらの教会が完成した後に移されていますので、その墓石のようです。
オランダ総督5名がこの地に眠っているそうです。
教会の外側には彫刻も見られます。
歴史を感じさせる重厚さがあります。
見学は火曜~土曜日
教会内部が見られるのは、以下の曜日です。
火・水・木・土曜日の朝8時半から夕方4時まで。
金曜日の朝8時半から午後1時半まで。
教会といえば日曜日のイメージがあって、私は日曜日に訪れてしまったのですが、むしろ日曜日は祈りをささげているので、観光客の見学は不可でした。
外観だけでも見る価値はありました。
教会内部
1667年製の洗礼盤、17~18世紀製のオランダ総督が使っていた椅子「ケルクストーレス」などがあるそうです。
私は2018年に一度内部を見せてもらった際に、椅子は見た覚えがありますが、それ以外はうる覚えですので、また改めて訪れた際に、本記事をアップデートしたいと思います。
参考)
SUNDAY OBSERVER:Wolvendaal – the oldest Dutch church in Colombo
Wikipedia:Wolvendaalsche Kerk
Wikipedia:Wolvendaal Church
Amazing Lanka:Wolvendaal Church
roarmedia:Seven Little Known Facts of Colombo Fort in the Olden Days
ウィキペディア:ヌマワニ
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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