スリランカでマクドナルドを展開する女性が創業したコングロマリット「エイバンズ(Abans Group)」〜スリランカの大企業3〜

スリランカでマクドナルド、LGエレクトロニクスなどを展開し、ショッピングセンターも経営するリテール事業に強みを持つコングロマリットのAbansグループは主婦をしていた女性が創業し、コングロマリットまでに成長した企業グループです。
今回はAbansグループについて紹介していきます。
目次
主婦から家電を販売する女性経営者へ

コッルピティヤのショールーム
Abansグループの創業者は3児の母で主婦をしていたエイバン・ペストンジェー(Aban Pestonjee)」。
インドのムンバイ生まれのゾロアスター教徒(いわゆるパールシー)です。
パールシーといえば、インドのタタ財閥、クイーンのボーカリストのフレディ・マーキュリーが有名です。
1960年代、エイバンは家事に追われる大変は生活を送っていました。
ある日、大使館のオークションで家電を集めて簡単な修理をして販売を始めます。
それが評判を呼び、1968年に修理工房も併設した家電ショップをコロンボ4(バンバラピティヤ)に開店します。
イギリス、タイ、中国から家電を輸入するようになり、スリランカにはあまり輸入されていなかった日本(三菱電機)、韓国(ゴールド・スター:後のLGエレクトロニクス)を始め、事業が拡大していきます。
特にLGの商品はスリランカ市場にうまく浸透していきます。
Abansグループの主な沿革

コッルピティヤのショールームのTOTOの販売コーナー
- 1968年、コロンボ4(バンバラピティヤ)にショップをオープン。
- 1978年、スウェーデン本社のヨーロッパ最大の家電メーカー「エレクトロラックス」とタイアップ。
- 1987年、韓国のゴールド・スター(現在のLGエレクトロニクス)とタイアップ。
- 1998年、マクドナルド のフランチャイズ権を獲得。
- 1999年、ゴール・ロードに現在の本社及び旗艦店となるショールームとマクドナルド1号店を。
- 2013年、韓国のスキンケア・化粧品ブランドの「ザ・フェイスショップ」を出店
- 2014年、コロンボ株式市場に上場。
- 2016年、アメリカの靴ブランドのスケッチャーズのショップを出店。
- 2017年、ドイツのファッションブランドのヒューゴ・ボスのショップを出店。
- 2018年、シンガポールのネクスト・ストーリー・グループとコロンボ・シティー・センターをオープン。
主要事業は小売(リテール)

コロンボ・シティー・センターのアップルストア
グループとしての事業内容は大きく6分野に分かれ、小売、サービス、金融、製造、不動産、ホスピタリティーとなっています。
その中でも、創業事業である家電販売を含む小売業が大きな比重を占めています。
エイバンズはスリランカ全土に370軒のショールームを持っています。
マクドナルドの展開

マクドナルド のスリランカ第一号店(コッルピティヤ店)
創業者エイバンズの息子が会社に参画するようになると、息子が力を入れたのがマクドナルドのフランチャイズ権の獲得でした。
交渉の末、1998年にマクドナルド のスリランカでのフランチャイズ権を獲得し、1号店をコロンボ3(コッルピティヤ)のゴール・ロードに開業します。
現在はコロンボ首都圏を中心に12店舗を展開しています。
オートバイ、自動車事業

コロンボ・シティー・センターの現代自動車のショールーム
オートバイ事業を展開するAbans Autoを2011年に設立。
インドのオートバイメーカーのヒーロー・モトコープ、イタリアのオートバイメーカーのベスパとアプリリアの独占的代理店になり、韓国の現代自動車の代理店にもなっています。
また、中国のオートバイメーカーのヤデアとゾンシェンの代理店になっています。
ペリヤゴダ、パナドゥーラ、クルネーガラに修理工場を持ち、カスタマーサービスを行なっています。
エンジニアリング事業

コロンボ・シティー・センターの外観
エンジニアリング事業はAbans Engineeringが行なっています。
三菱電機、ヒュンダイ・エレベーターズ&エスカレーターズ、香港のメサン・グループの販売代理店にもなり、ジョン・キールズ・ホールディングス、アパレルのマス・ホールディングスやブランディックス、ヒルトン・コロンボ、ヘーマス病院、バンク・オブ・セイロン、国会議事堂、バンダラナイケ国際空港、コロンボ・シティー・センターなどにも納入しています。
ショッピングモール「コロンボ・シティー・センター」をオープン

コロンボ・シティー・センター内に新しくオープンしたボーリング場
創業50周年を迎えた2018年9月19日、当時スリランカ最新・最大のショッピングモールであるコロンボ・シティー・センターを開業しています。
シンガポールのネクスト・ストーリー・グループと50:50の出資比率でショッピングセンターを開発。
4階建てのモールで中央が吹き抜けになっており、各階をエスカレーター、エレベーターで移動できる、スリランカ初の世界標準のショッピングセンターとして、オープン時は話題を集めました。
フードコートもシンガポール企業のフード・スタジオが経営しています。
フード・スタジオは2019年にオープンしたワン・ゴール・フェイス・モールのフードコートも経営しています。
ベイラ湖畔という立地も素晴らしく、テラス席もあるフードコートからはベイラ湖、ジェフリーバワ建築のシーマラカヤ寺院、ベイラ湖の先に見えるコロンボのビル群を眺められる景色が楽しめます。
オフィス、レジデンスも併設しています。
その他の事業

コロンボ・シティー・センターの映画館
上記の事業以外には以下のような会社を経営しています。
- 個人ローンや二〜四輪のリースなどを行うAbans Finance
- 清掃などのファシリティー・マネジメントをするAbans Environmental
- 印刷会社のAbans Graphics
- 広告・PRなどのクリエイティブ・エージェンシーのABSGDH International
- ソーラー発電のアフターケアをするAbans Electricals
- 物流会社のAbans LogisticsとCrown City Developers
まとめ

コロンボ・シティー・センターのフードコートから見たシーマラカヤ寺院
今回はAbansグループを紹介しました。
女性一代で家電の販売から初めて、6業界に展開するコングロマリットまでに育て上げたのは、世界的にも珍しいと思います。
Abansグループのように小売に強みを持つ、比較的新しいコングロマリットであるソフトロジックの記事も併せてご覧ください。
参照)
Aban Pestonjee(wikipedia)
Abansグループ公式ページ
Abansグループのアニュアルレポート
ハーバード・ビジネス・スクールのインタビュー動画

「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
歴史・地理・建築・語源が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にてベトナム・ミャンマー・タイ・インドネシア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の設立を開始。
2017年2月、スリランカ専門誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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