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買い叩れるスリランカの縫製工場が登場する映画『グリード ファストファッション帝国の真実』

2021年7月13日

2021年6月18日(金)から、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開中の映画『グリード ファストファッション帝国の真実』。

映画タイトルの「グリード(Greed)」はウィズダム英和辞典には、欲深さ・貪欲という意味とともに、金の亡者「a man driven by greed for money」という表現が掲載されています。

この映画は、まさに「金の亡者」と言われたファストファッションのオーナー経営者をモデルにした映画です。

ファストファッション(ハイストリートファッション)の代表格であったイギリスのTOPSHOPのオーナー「フィリップ・グリーン」をモデルにし、ファストファッションにおける労働問題が描き出されています。

映画はスリランカの縫製工場やスリランカの町でも撮影が行われ、スリランカのシーンが何度か出てきます。

スリランカの輸出品として紅茶(セイロンティー)が有名ですが、実はスリランカから最も輸出されているのは衣料品です。

本記事では、映画『グリード ファストファッション帝国の真実』について紹介していきます。

モデルはトップショップのフィリップ・グリーン

主人公リチャード・マクリディ役のモデルは、トップショップ(TOPSHOP)をはじめとするファストファッションブランドを保有していたアルカディアグループのオーナーである「フィリップ・グリーン」。

日本ではファストファッションという言葉が一般的ですが、映画ではハイストリートファッションという言葉使われています。

『知恵蔵』の解説によれば、都市の中心部の大通り(ハイストリート)に大型店を構えて業績を伸ばしてきた製造小売業のことで、スペインのZARA、スウェーデンのH&M、イギリスのTOPSHOP、アイルランドのPRIMARKが代表的な企業とあります。

TOPSHOPのフィリップ・グリーンは、イギリスを代表する大富豪とされ、派手なパーティーやセレブレティーとの交流で知られるようになります。

ファッションリテールアカデミーの創設が評価されて、イギリス王室からナイト爵位を得ます。

ところが、租税回避、セクハラ、パワハラ、人種差別、労働問題などによって信用を落とし、ナイト爵位を剥奪。

2020年にはTOPSHOPを保有するアルカディアグループは経営破綻しています。

フィリップ・グリーンの略歴

以下、フィリップ・グリーンの簡単な略歴です。

2005年、トニー・ブレア首相(当時)と互いに1000万ポンド(約19億3000万円)を出資し、2005年にファッション・リテール・アカデミーを創立。

2006年、ナイト爵位を得る。

2007年、スーパーモデルのケイト・モスとのコラボレーションでコレクション「kate moss for Topshop」を発表。

2010年、デビッド・キャメロン首相(当時)から政府予算を見直すアドバイザーに指名される。

2016年、歌手のビヨンセとスポーツアパレルブランド「アイビーパーク」を設立。

2016年、ナイト爵位が剥奪。

2018年、アイビーパークの持株を手放す。

2020年、アルカディアグループが経営破綻。

マイケル・ウィンターボトム監督

イギリスの映画監督・脚本家。

マイケル・ウィンターボトム監督の代表作とされるのが、以下の難民問題を扱った『イン・ディス・ワールド』、現代の強制収容所とも言われるグァンタナモ米軍基地を扱ったノンフィクション『グアンタナモ、僕達が見た真実』です。

ちなみに、本作『グリード』には、シリア難民が登場します。

イン・ディス・ワールド

2003年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。
パキスタンの難民キャンプで生まれ育ったアフガニスタン人兄弟が主人公。
パキスタンからイギリスまでの6ヵ国6,400キロの旅を通して、難民問題の現実を真正面から見据えた作品。

グアンタナモ、僕達が見た真実

2006年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞。
2001年にアルカーイダのメンバーと間違わられ、グァンタナモ米軍基地に送られて2年以上も拘束されたパキスタン系イギリス人本人たちへのインタビューを基に映画化したノンフィクション。
グァンタナモ米軍基地での強制連行・監禁・拘束について、拷問に等しいとして赤十字国際委員会がリークし、アムネスティ・インターナショナルが人権侵害として告発しています。

スリランカの最大の輸出品目「アパレル」

上のグラフは2019年のスリランカの輸出品目をまとめたグラフです。
衣服・織物が突出しているのが分かります。

書籍『スリランカを知るための58章 (エリアスタディーズ117) (エリア・スタディーズ)によれば、

1977年にスリランカ政府は市場開放政策に踏み切り、貿易・為替の自由化を実施します。

海外資本の直接投資を誘致するための輸出加工区(ETZ:Export Processing Zone)を作り、そこに輸出用工業製品生産を目的とする工業団地を建設します。

この輸出用産品の大半が衣服製品で、原料を輸入して服を仕上げる縫製業が中心とのことです。

映画では、1980年のスリランカの縫製工場が登場し、値段交渉されている場面が見られます。

また、2020年10月にスリランカでは縫製工場で新型コロナウイルスの集団感染が起き、それまで抑え込めていた感染者数が爆発的に増えました。

スリランカの縫製業については、以下のページを参照ください。

『スリランカを知るための58章』(エリアスタディーズ117)杉本良男・高桑史子・鈴木晋介 編著

カメオ出演している著名人たち

映画は、ギリシャのミコノス島に世界の著名人を招いて主人公リチャードの60歳の誕生日パーティーを行うシーンを中心として、回想シーンも挿入して展開します。

パーティーに招く著名人に本人役として多くの俳優・アーティストが参加しています。

これは監督が、イギリスのセレブリティと親交が深いから実現したそうです。

■本人役でのカメオ出演
作家「スティーヴン・フライ」
歌手「ピクシー・ロット」
俳優「ベン・スティラー」
俳優「コリン・ファース」
女優「キーラ・ナイトレイ」
コールドプレイのボーカリスト「クリス・マーティン」
音楽マネージャー「ルイ・ウォルシュ」
ミュージシャン「ジェームス・ブラント」
ローリング・ストーンズの「キース・リチャード」

参照)

6月18日公開!映画『グリード ファストファッション帝国の真実』公式サイト
破産申請をしたあのブランドのオーナーがモデル 映画『グリード』予告編
FASHION PRESS 映画『グリード ファストファッション帝国の真実』ファッションを作っているのは誰?資本主義の闇を暴く
日本経済新聞 ファストファッションの暗部、風刺映画で暴く
ウィキペディア:グリード ファストファッション帝国の真実
WWD 高校中退からイギリス屈指の実業家に トップショップ オーナーのフィリップ・グリーン卿が語るビジネス法
WWD トップショップオーナーのフィリップ・グリーン卿が爵位剥奪
VOGUE フィリップ・グリーンの税金問題が浮上。
FASHION NETWORK トップショップのフィリップ・グリーン卿、犯罪捜査の対象になるおそれ ついに爵位もはく奪か
日本経済新聞 [FT]ビヨンセさん、渦中のスポーツウエア会社買収
Harper BAZAAR イジメやセクハラ、新型コロナ…トップショップ親会社アルカディアがついに破産申請
コトバンク:ハイストリートファッション
ウィキペディア:ファストファッション
ウィキペディア:TOPSHOP
AFP BB NEWS:大富豪がセクハラ口止めか 「英国の#MeTooスキャンダル」勃発
Wikipedia:Greed (2019 film)
Wikipedia:Philip Green
ウィキペディア:マイケル・ウィンターボトム
ウィキペディア:グアンタナモ、僕達が見た真実
ウィキペディア:グアンタナモ湾収容キャンプ

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