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『いちばんわかりやすいインド神話』

2022年5月15日

スリランカにはインドの神々が祀られ、キャンディのペラヘラではインドの神々をパレードで祀り、スリランカの聖地カタラガマもインドの神です。

インドの神や神話について理解を深めるとスリランカ観光がより楽しくなります。
そこで、今回は書籍『いちばんわかりやすいインド神話』を紹介します。

本記事では、冒頭に本書の概要を紹介します。
その後、神々のベースとなる背景を紹介し、時代ごとに登場する神々を紹介していきます。
本書に書かれていないことも、追記しています。

本書の概要

著者はウェブサイト「天竺奇譚」を運営されている天竺奇譚さん。

目次は以下の通りです。

◆目次
序章 インド神話とは何か?
第1章 インド神話の世界観 〜破壊と再生を繰り返す壮大なる宇宙創造〜
第2章 インド神話の神々 〜ヴィシュヌ、シヴァの眷属、古き神々…個性豊かな神様たち〜
第3章 神々の事件簿 〜神々や英雄たちが引き起こした数々の大事件〜
第4章 インド神話の文化 〜インド神話に登場する文字や呪術、アイテム、動物たち〜
終章 現代に息づくインド神話 〜インドの祭り、文化、宗教、風習など〜

◆付録
ひと目でわかる関係図・年表!
魔法のアイテム・動物図鑑!

バラモン教→仏教→ヒンドゥー教の流れ

インド亜大陸に先住民はオーストロアジア語族の人々だとされています。
オーストロアジア語族に由来する言葉はガンガー、リンガなどです。

紀元前3500年前にドラヴィダ語族がインド亜大陸に侵入し、インダス文明を作ったとされています。

紀元前1500年前にインド・アーリヤ語族(ウクライナから来たスキタイ族)がインド亜大陸に侵入し、聖典ヴェーダを作り、バラモン教を生み出します。

白い肌のインド・アーリヤ語族は黒い肌のドラヴィダ語族を支配下におくため、ヴァルナ(肌の色)で4つの階層に分けます。

1番上を祭を司どる司祭「バラモン」
2番目が王族・貴族・戦士「クシャトリヤ」
3番目が農業・牧畜・商業を行う「ヴァイシャ」
4番目が上位カーストに仕える「シュードラ」

バラモンを頂点としたのがバラモン教です。
アーリヤ語族の神々は動物の乗って描かれますが、それはアーリヤ語族が騎馬民族だったからかもしれません。

形骸化したバラモン教を批判して仏教が台頭します。
仏教はクシャトリヤからの指示を受けて拡大し、バラモン教の神々を取り込みます。

仏教に圧されたバラモン教は、インド土着の神々を取り込んだヒンドゥー教に変化します。
ヒンドゥー教の圧された仏教もインド土着の神々を取り込み密教となります。

バラモン教からヒンドゥー教に変わる過程で、神々の順位が入れ替わっています。
バラモン教で上位のインドラやブラフマーの地位が下げられ、土着の神を取り込んだヴィシュヌとシヴァが最高神となります。
『ラーマーヤナ』、『マハーバーラタ』でもインドラやブラフマーの関係者は力を失い、力の象徴としてシヴァが登場し、ヴィシュヌが英雄として活躍します。

ヒンドゥー教は仏教をも取り込み、開祖ブッダをヴィシュヌの化身(アバターラ)として、魔神を間違えた教えで地獄に導きます。

一方、仏教はバラモン教、ヒンドゥー教の神々を取り込み、ブッダにその教えを広める説くのは、インドラを取り込んだ帝釈天、ブラフマーを取り込んだ梵天です。

シヴァ神を象徴するリンガや、シヴァ神の髪に流れるガンガーはオーストロアジア語族の言葉が語源であり、古い土着の神を吸収した存在と言えそうです。

一方で、敵の皮を剥いで来たと言われる戦いに強い騎馬民族スキタイ族を想起させる、豹の皮を着て、虎の皮の上に座る強い神という側面もシヴァは持っています。

ドラヴィダ人の黒い肌に由来して、ヒンドゥーの神々は黒い肌を意味する青い肌で表現されます。(ジャガンナートは黒)

聖典がそれぞれの地域や派閥によって書き足されているため、聖典同士で辻褄は合いません。

インド神話の聖典リスト

四大ヴェーダ(本集:サンヒター)

-リグヴェーダ:インドラ最高ソング集+アグニ最高ソング集
-サーマヴェーダ:儀式の方法マニュアル
-ヤジュルヴェーダ:ヴェーダの歌い方
-アタルヴァヴェーダ:非アーリアの呪術や医術などの知識

リグヴェーダが最も重要で、リグヴェーダ、サーマヴェーダ、ヤジュルヴェーダがアーリア人の聖典で、先住民の知識を求めた+1的な存在がアタルヴァヴェーダ。

ヴァルナの最高位がバラモンで、続くクシャトリア、ヴァイシャが再生ヴァルナで、この3ヴァルナに仕えるシュードラと、3+1の構成であるヴァルナと似ているように思います。

ヴェーダの付属書

-ブラフーマナ:ヴェーダ祭式の説明をまとめた祭儀書。
-アーラニヤカ:哲学的な内容の森林書。
-ウパニシャッド:瞑想やヨガの方法をまとめた奥義書。

アーユルヴェーダやヨガでウパニシャッドとよく聞きますが、それは瞑想やヨガの方法をまとめた奥義書だから。

二大叙事詩

-ラーマーヤナ:コーサラ国のラーマ王子が、ランカー島のラヴァナ王を倒す物語。
-マハーバーラタ:バラタ王の子孫のクル族の王位継承争いの物語。

プラーナ文献(第5のヴェーダとも)

-ヴィシュヌ・プラーナ:ヴィシュヌ派の聖典
-シヴァ・プラーナ:シヴァ派の聖典
-バーガヴァタ・プラーナ:マハーバーラタの続編
-デーヴィー・マーハートミャ:女神信仰の聖典。

生活規範・学術論など

-マヌ・スムリティ:マヌ法典。バラモンの規則や法律、結婚制度と身分制度
-アルタ・シャーストラ:政治・経済・国防
-カーマ・スートラ:結婚や性に関するもの
-ナーティヤ・シャーストラ:舞踏書。ダンスのポーズや歌について。

戯曲

-シャクンタラー物語:ゲーテの『ファウスト』に影響を与えたシャクンタラー王女の物語。
-ギータ・ゴーヴィンダ:クリシュナとラーダーの恋物語

バラモン教の神々

天神と魔神

バラモン教では、以下の2つの大きな神のグループがあります。
天神デーワ=ゾロアスター教の魔神ダエーワ
魔神アスラ=ゾロアスター教の天神アフラ・マズダー

古代インドのバラモン教と、古代イランのゾロアスター教では、天神と魔神が入れ替わっています。

バラモン教の主な天神

雷神インドラ:乗り物は白い像「アイラーヴァタ」。
火神アグニ:乗り物は牡牛。インドラの兄弟。
神酒ソーマ:神々の飲み物
月神チャンドラ:神々の盃
友情神ミトラ(ミトラス教の主神、太陽神)
司法神ヴァルナ(後に水神に。西の守護神)
太陽神スーリヤ:
風神ヴァーユ:ハヌマーンの父。北西の守護神
財宝神クベーラ:ヤクシャ族の長。北の守護神
創造神ブラフマー:乗り物は白い鳥「ハンサ」
天空神ディヤウス:ギリシャのゼウスと同じ語源
工匠神ヴィシュヴァカルマン:ランカー島の都市設計を行った。
法と正義の神ヤマ:閻魔
医術神:アシュヴィン双神

バラモン教の脇役的な神

雨神パルジャニヤ:インドラ神の従者。
嵐神ルドラ:インドラ神の従者。後にシヴァと同一視される。
ヴィシュヌ:太陽の輝きを表す神

仏教の天(デーワ)と阿修羅(アスラ)

仏教では、バラモン教やヒンドゥーの神々を取り込んでいます。

-梵天=ブラフマー
-火天=アグニ
-日天=スーリヤ
-月天=チャンドラ
-水天=ヴァルナ
-地天=プリティヴィー
-帝釈天=インドラ
-持国天=インドラの配下
-増長天=インドラの配下
-広目天=インドラの配下
-多聞天(毘沙門天)=クベーラ
-鬼子母神=クベーラの部下の妻
-夜叉=ヤクシャ(クベーラの配下)
-竜王=ナーガ(クベーラの配下)
-羅刹天=ラークシャサ
-弁財天=サラスヴァティー
-吉祥天=ラクシュミー
-大黒天=シヴァ
-伊舎那天=シヴァ
-那羅延天=ヴィシュヌ
-伎芸天=シヴァの髪の生え際から誕生
-歓喜天=ガネージャ
-韋駄天=スカンダ
-阿修羅=アスラ
-迦楼羅=ガルーダ
-閻魔=ヤマ

ヒンドゥー教の神々

世界の創造と破壊を司どる最高神

リグヴェーダでは、原初の世界は水に覆われていたとされています。
この水から宇宙を創造したのがブラフマーです。

トリムールティでは、ブラフマーが世界の創造、ヴィシュヌが世界の維持、シヴァが世界の破壊を司るとされています。

ヴィシュヌ派では、ブラフマーは実はヴィシュヌが作り出したとされています。
シヴァ派では、宇宙の主はシヴァであるとされています。

世界を滅ぼすのは「時間=カーラ」とされ、カーラには「死」「暗黒」という意味もあります。
ヴィシュヌはカーラ、シヴァはマハーカーラとも呼ばれます。

土着の神々に変身する最高神ヴィシュヌ

ヴィシュヌ派における最高神。
各地の土着の神は、実はヴィシュヌが変身した姿(アバターラ)だとし、バラモン教時代は目立たない神でしたが、ヒンドゥー教になると最高神になります。

二大叙事詩でヴィシュヌは主人公(ラーマーヤナのラーマ王子)あるいは、英雄(マハーバーラタのクリシュナ)に変身して活躍しています。

◆ヴィシュヌの10大アバターラ
-第1アバターラ=マツヤ:ノアの箱舟のような魚
-第2アバターラ=クールマ:乳海攪拌でマンダラ山を乗せた巨大亀
-第3アバターラ=ヴァラハー:海に沈んだ大地を持ち上げる猪
-第4アバターラ=ナラシンハ:魔神ヒラニヤカシブを倒した人ライオン
-第5アバターラ=ヴァーマナ:魔神バリを地底界に送った小人
-第6アバターラ=パラシュラーマ:牝牛を少ないクシャトリヤを殲滅した斧を持ったラーマ
-第7アバターラ=コーサラ国の王子ラーマ
-第8アバターラ=ヤーダヴァ族の王子クリシュナ(オリッサではジャガンナート)
-第9アバターラ=シャカ族の王子ブッタ。ヴェーダを軽視した仏教で魔神たちを地獄へ導く
-第10アバターラ=カルキ:世界の終末に現れる白馬に乗った理想的な王カルキ

◆ヴィシュヌ神の姿
-円盤「チャクラ」を持つ:クリリンの気円斬のように切り刻む。
-棍棒を持つ
-蓮の花を持つ
-法螺貝を持つ
-ナーガ王アナンタを背負っている
-乗り物はガルダ

◆ヴィシュヌの妃ラクシュミー
アムリタから生まれた幸運の女神。乗り物はフクロウ。

土着の女神たちと結婚する最高神シヴァ

シヴァの最愛の女性サティーが焼身自殺し、チャクラによってサティーの体はバラバラに切り刻まれ、インド各地に離散し、インド各地の土着の女神は、シヴァの妃であるとされ、ヒンドゥー教の最高神となります。

ヴィシュヌは変身しますが、シヴァは妻が変身します。
シヴァ自身も強い神ですが、変身した妻は強く、カーリーはシヴァが下敷きになって殺戮の踊りを止めます。

◆シヴァの妃
-サティー:シヴァとの結婚を望むも父に反対されて炎に身を投げて絶命
-パールヴァティー:ガンガーの姉妹。サティーの生まれ変わり。
-ドゥルガー:戦いの女神。パールヴァティーの変身。
-カーリー:殺戮の女神。ドゥルガーの変身。
-チャームンダー:死の女神
-ミーナークシー:マドゥライの女神
-シータラー:疫病の女神

◆シヴァの息子
-ガネーシャ:商売と学問の神、象の頭を持つ。
-スカンダ(ムルガン、カタラガマ):軍神。乗り物は孔雀。孔雀はインドの国鳥、スリランカ航空のデザイン。

◆愛の神カーマ
カーマはオウムに乗って、サトウキビの弓と5本の花の矢を持っています。
カーマの矢で射られると恋に落ちます。
魔神ターラカ(星)を倒せるのはシヴァとパールヴァティーの子スカンダだとされるも修行に明け暮れてパールヴァティーに全く興味を示さないので、神々がシヴァにもとにカーマは派遣しますが、シヴァの第三の目で焼かれて灰になります。

◆シヴァの姿
-第三の目
-額の三本線
-三叉槍
-三日月
-髪の毛の女神ガンガー(ガンジス川の流れを受け止めたから)
-灰:体に灰を塗る
-結跏趺坐で座る:瞑想するヨギーの姿
-豹の皮を纏う
-虎の皮に座る
-ナーガを首に巻く
-青い喉:乳海攪拌でナーガ王ヴァースキが吐いた毒ハーラーハラを飲んだため
-踊る姿「ナタラージャ」
-太鼓:ナタラージャの象徴
-リンガ:男根、シヴァの象徴。
-カイラス山:リンガを表している。
-乗り物はナンディ(白いこぶ牛)

その他の女神

◆サラスヴァティー
かつての大河サラスヴァテイーが神格化した女神。
芸術と学問の神。
乗り物は白い鳥「ハンサ」。
リグヴェーダにも登場する。

◆ガンガー
ガンジス川(ガンガー)が神格化した女神。
乗り物はマカラ(ワニ)。

半神

動物が神格化した半神。
擬人化された生き物にも思えます。
神の乗り物「ヴァーハナ」になっているものもあります。
以下は分類名で、代表的なキャラクターがそれぞれいます。
スリランカ神話にナーガとヤクシャが登場します。

◆主な半神
-猿神ヴァナラ:天神の子が多くいる。
-蛇神ナーガ:コブラが神格化した半神。シヴァが体に巻いている。
-鳥神ガルダ:ナーガの天敵。ヴィシュヌのヴァーハナ。
-鬼神ラークシャサ:ラークシャサの王がランカー島のラヴァナ
-精霊ヤクシャ:地上に住む精霊
-天女アプサラス:シーギリヤに描かれているのがアプサラス

主な猿神ヴァナラ

-ヴァーリン:雷神インドラの子で、猿王。
-スグリーヴァ:太陽神スーリヤの子で、猿王。
-ハヌマーン:風神ヴァーユと天女アンジャナーの子。スグリーヴァの将軍。
-ニーラ:火神アグニの子。
-スシェーナ:水神ヴァルナの子。
-ナラ:工匠神ヴィシュヴァカルマンの子。ランカー島に橋をかけた。
-ガンダマーダナ:財宝神クベーラの子。
-シャラバ:雨神パルジャニャの子。
-マインダ、ドゥヴィヴィダ – 医術神アシュヴィン双神の子。

主な蛇神ナーガ

-ヴリトラ:インドラに倒される。
-ヴァースキ:乳海攪拌で縄になって毒を吐く竜王
-アナンタ:地底界の王
-カルコタカ:魔神カリを毒で制してナラ王を救う
-カーリヤ:ヤムナー川を毒で汚してクリシュナに退治される
-カウラヴィヤ:アルジュナと強引に結婚して妻になる。
-ウルーピー:カウラヴィヤの娘
-タクシャカ:アルジュナの孫パリークシット王を毒殺する。

主なガルダ

-ジャターユ:聖仙カシュヤパの子。ラヴァナと戦い死亡。
-サムパーティ:ジャターユの兄。シーターを拐ったのはランカー島のラヴァナであると透視する。

ガルーダはインドネシアとタイの国章であり、ウランバートルの紋章であり、インドネシアのフラッグキャリア「ガルーダ・インターナショナル」もガルダに由来します。

リシ(聖仙)

リシ(聖仙)とは、修行をして徳や神通力を得た者のこと。

以下、2種類に分かれます。
-バラモン出身だと聖仙
-クシャトリア出身だと王仙

主なリシ

アガスティヤ:海水を飲み干す
カシュヤパ:アーユルヴェーダの参考図書『カシュヤパ・サンヒター』の著者。
ヴィシュヴァーミトラ:リグヴェーダの第3巻を作ったとされる。
チヤヴァナ:リグヴェーダに登場する年老いたリシ。
ヴィヤーサ:マハーバーラタの著書とされる。
ダクシャ:シヴァを愛したサティーの父。
ガウタマ:妻をインドラに寝取られた怒りからインドラを性的不能にした。
アンギラス:火の儀式を主催する祭官。
ブリグ:ブリグ族の開祖とされる。

まとめ

本記事では取り上げませんでしたが、本書ではラーマーヤナ、マハーバーラタ、その他の神話のあらすじなどもまとめられています。

インド神話の概要を知りたい方には、良い入門書となりますので、興味がある方は是非読んでみてください!

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