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バワ後期の傑作ホテル「ジェットウィング ライトハウス」

2025年4月26日

バワが手がけた後期の大規模プロジェクトのひとつであり、現在も最も高く評価されている建築のひとつ「ジェットウィング ライトハウス Jetwing Lighthouse」。
世界遺産ゴール・フォートを訪れるならぜひ宿泊してほしいバワホテルです。

岩山と一体化し緑生い茂るシーギリヤ近くのホテル「ヘリタンスカンダラマ」のインパクトが大きく、メディアでも取り上げられがちですが、最近はジェットウィングライトハウスがCMや写真集のロケ地にもなっています。
・2024年12月7日放送 日テレ「アナザースカイ」加藤シゲアキさん回
・2025年3月末~ サントリーウイスキー「碧 Ao」CM
・2025年6月発売 上白石萌歌さん写真集 など

今回はそんなバワ後期の傑作ホテル「Jetwing Lighthouse」についてご紹介します。

歴史

建設は1995-97年。当初の名称は「ライトハウス・ホテル /Lighthouse Hotel」で、1997年6月7日にオープンしました。

ホテルの依頼主

ライトハウス・ホテルは、元建設業者でバワの友人でもあったハーバート・クーレーが創業した旅行会社「ジェットウィング」によって依頼されました。
クーレーの父が1958年にバワ設計のカルメン・グナセケラ邸の施工業者となって以来、バワのプロジェクトをいくつも施工しています。

ゴールがリゾート化する先駆け

ゴールは1988年に「ゴールの旧市街と要塞」として世界文化遺産に登録され、現在では多くの洗練されたショップ、レストランや高級ホテルも増え続け、コロンボ-ゴール間には高速道路も整備され、人気の観光エリアとなっています。
しかし、ホテルがオープンした1997年当時は、ほとんど観光地化されていませんでした。
ゴールフォートにある他の5つ星ホテルの開業年を見ると、Galle Fort Hotel 1999年、Amangalla 2005年、ということからも「ライトハウス・ホテル」がその先駆けであったことがわかります。

立地

ホテルは、ゴールフォートの北西約3km、岩の岬に建てられており、コロンボから続く幹線道路(ゴールロード)と海に挟まれた立地です。南西モンスーンの風雨を正面から受ける場所にあります。

ホテル構成

1997年の開業当初は60の客室と3つのスイートルーム、2つのレストラン、スイミングプール、そして各種レクリエーション施設を備えていました。
2013年にはバワの弟子でありバワ事務所最後のパートナーとなった、チャンナ・ダスワッテ氏が設計した新たなウィングとスパが、元の建築の北側に雰囲気を損なうことなく増築されています。(増築当初は「Jetwing Lighthouse Club」として独立、2019年の全館リニューアルに伴い統合)
現在、85室の客室、3つのレストラン、屋外プール2つ、そしてスパ施設を備えています。

ホテルのメイン棟エントランスとレセプションは岬の南端に寄り添い、ゴールフォートの方向に眺望を向けています。エントランスやサービス施設は、岩の斜面を囲むように組まれた花崗岩の石積みの擁壁内に収められています。

施設構成

車寄せ・エントランス

基壇の下に広がる大きな車寄せ、花崗岩の石積み擁壁に囲まれたエントランス。

地上階 受付カウンター

色鮮やかなバティックとゆったりしたベンチなど素敵な家具が迎える空間。チェックインは上階のレセプションへ、チェックアウト時にはこちらのカウンターで手続きを行います。

螺旋階段

受付カウンターを抜けると、このホテルの顔ともいえる螺旋階段へ。
メインのレセプション棟にあるこの階段は、地上階の車寄せからメインフロア、さらに上部の水盤のある中庭へと螺旋状に上っていきます。
階段下には自然の岩がそのまま残され、自然をそのまま取り込んで活かすバワの特徴がみられます。

階段の手すりは、バワの友人である芸術家ラキ・セナナヤケによって制作されたものです。17世紀のポルトガル軍とシンハラ軍の戦い「ランドゥニヤの戦い」を再現した、銅と真鍮の繊細な彫刻が渦を巻くように配置されています。ラキは、ライトハウス・ホテルの話が持ち上がる何年も前に、二つの軍勢が対峙するスケッチをバワに贈っていたそうです。バワがこの岩を見た際に、友人のスケッチを思い出し、彼にそのビジョンを形にしてほしいと依頼したとのこと。

ちなみに、ラキ・セナナヤケの作品はヘリタンスカンダラマやコロンボのバワ自邸No.11にあるフクロウの彫刻が有名ですね。

また、ゴールはその豊かな歴史の中で、アラブ商人との交流も盛んでした。階段上部の天井はムーア式を思わせる浅いドーム型で、中央には丸窓(オクルス)が設けられ、精緻な彫刻を照らす光が差し込みます。

レセプション

光の降り注ぐ螺旋階段から一転、明るさがぐっと抑えられたレセプションフロアへ。正面にはインド洋のパノラマ。磨きコンクリートの床に反射する陽光が昼間は照明替わりとなっています。
そのまま正面へ足を進めると、テラスは海を見下ろすように開かれ、波音に包まれます。

中庭

レセプションから客室を目指し右手に進むと、隔てる壁はなく、そのまま廊下と中庭へ。
中庭は一見矩形のシンプルな空間のようで、建物の直線と岩や地形の持つ曲線がお互いを際立たせ、視点や光の変化とともに印象もがらっと変わります。

回廊と客室を隔てた向こう側は岩に波が砕ける壮大なインド洋ですが、この中庭には対照的に穏やかな空間が広がります。バワの愛した深みのある黄金色「サマラ・カラー」の壁は、芝生や空との美しいコントラストを描き出します。
回廊の突き当りで岩と一体となった階段の先にはさらなる空間の広がりを感じ、自然と奥へ。

プール、Lorenzo’s Pizza Bar

中庭を抜けると正面には宿泊棟へと続く階段、左手に広がるのはプール、さらにヤシの木々の先にインド洋を臨みます。プールサイドにはピザ窯のあるバーLorenzo’s Pizza Bar。お酒と一緒においしいピザを楽しめます。

客室

バワ設計のメイン棟Main Wing には Luxury Rooms と3種類の Themed Suites、チャンナ氏設計のスパ棟Spa Wing には Luxury Rooms と2種類の Themed Suites with Plunge Poolがあります。

以下はメイン棟のラグジュアリールームの写真です。

バルコニーへつながる鮮やかなターコイズブルーの扉がアクセントとなり、重厚感のある木目の家具やフローリングと絶妙なバランスを生み出しています。
バスルームの大きな引き戸を開けると寝室と一体空間になります。寝室から見えるのは正面のバスタブのみでシャワーブースとトイレは左右にさらに部屋があり、開け放ったままでも快適です。

その他の客室について、ジェットウィング公式ページの画像です。

レストラン-Cardamon Cafe

ホテルで24時間食事ができる唯一のレストラン。朝食のビュッフェもこちらです。潮風を感じられるテラス席がおすすめ。

最上階 水盤のある中庭

螺旋階段を上り最後にたどり着くのはタイル張りの水盤を囲む回廊。様々な文化の要素を感じるバワらしく美しい空間です。

バー-Coat of Arms Bar

バーの見どころはイナ・デ・シルヴァによる植民地時代の紋章を描いた天井のバティック。
サントリーウイスキー碧のCMでメインで使われているのもこの場所です。
バーから続く広いテラスはゴールフォートを臨みます。

スパ

チャンナ氏設計のスパ。バワの意匠を継承し、静かでリラックスできる空間です。

スパ棟プールサイドレストラン NIHAL’S

スパ棟のプールサイドには白い天井に反射する芝の緑とプールのブルーが印象的なレストラン。アラカルトで楽しめ、ハッピーアワーも毎日開催されています。
※撮影時はPizza Barとしての営業でしたが、現在は同じ場所がスリランカの伝統を生かしながら各国のエッセンスを取り入れた料理を楽しめるレストランNIHAL’Sです。

階段

左:メイン棟とスパ棟エリアをつなぐ外部階段。地形を活かしたデザイン。
右:宿泊棟内の階段。何気ないようで、ドラマを生む空間です。

左:レストランと上階の客室をつなぐ緩やかな勾配の階段。空間だけでなく気持ちまでゆったり豊かなものにさせてくれます。

全体の印象 -五感で楽しむバワの空間-

客室数は85室あるものの、高さは抑えられ水平的な広がりを感じ圧迫感はありません。
形態自体は控えめでありながら地形や自然と一体となった構成は、どの空間も単独では完結せず、隣り合う空間との延長で視線は常に先へ先へと導かれ、奥への期待が生まれるドラマティックな体験を生みます。
平面的にも断面的にも静/動、明/暗のコントラストがありながら、それらが分断されることなくつながりあっているのがこの建築の魅力と言えるでしょう。

2023年5月末の宿泊メモ

到着が予定より遅くなり、夜すっかり暗くなってからのチェックインでした。ライトアップされた螺旋階段に感動しつつ、通されたレセプションの先はモンスーンの夜の海、客室も波の音に包まれるばかりで窓の外は暗く、全容がわからず。螺旋階段がこのホテルのハイライトなのだと思っていましたが、朝起きてその豊かな空間に驚きました。
2泊滞在の2日目はお昼過ぎまでゴールフォートを散策し、午後はゆっくりホテルを堪能しました。まず、ホテルのスタッフに建物に興味があると伝え時間外のバーやレストラン、スパなども含め一通り案内していただき、気になったところを改めて自分でウロウロ。時間とともに落ちる影が変わり、同じ場所を何度見ても飽きません。また、1日目は夜チェックインだったので、夕陽に照らされ光り輝く黄金色の壁を見ることができたのは2泊したからこそ。3日目の早朝もまたじっくり見て回ったのは言うまでもありません。

また、宿泊した際はほかにゲストがほとんどおらず、(2泊の滞在中顔を合わせたのはたった2組ほど)通常はビュッフェの朝食も、メニューから選んでサーブしてもらうスタイルでした。レストランについても、メインダイニング以外は閉まっていました。
朝食付きプランで予約しており、夕食はつけませんでしたが、2日目はプールサイドにあるLorenzo’s Pizza Barで窯焼きのシーフードピザを。2人で1枚でもたっぷりボリュームがあり、何より夕暮れ時プールサイドでのピザとビールは格別でした。食事が重くなりがちなスリランカ旅行、レストランでしっかり食事を堪能するのももちろん素敵ですが、こんな楽しみ方もありだと思います。

*本記事掲載の写真は全て2023年5月滞在時のものです。

おわりに -迷いなく2泊したくなる「名建築」

1泊ではもったいない、時間が許すならばぜひ2泊で

時間とともに表情を変えるバワ建築の空間の奥行をじっくり味わいたい方には、ここは2泊をおすすめしたい名建築。1泊の場合はできるだけ早めにチェックインし、翌日はゆっくりチェックアウトできるといいでしょう。

どの客室を選ぶ?

バワのオリジナルの空間を味わいたい方はメイン棟のラグジュアリールームか3室あるテーマスイートをおすすめします。
ジェットウィング公式サイトの予約ページでは、メイン棟/スパ棟のラグジュアリールームはそれぞれ予約が分かれています。ただし、予約サイトによっては、棟が異なっても同じラグジュアリールームとして表記されていることもあります(値段も同じ)ので注意してください。

情報

【名称】Jetwing Lighthouse
【住所】433 A, DADELLA, Galle, Sri Lanka
【電話】+94 91 2223744 / 予約 +94 114 709 400
【Mail】resv.lighthouse@jetwinghotels.com
【URL】https://www.jetwinghotels.com/jetwinglighthouse/

参考資料