ペターの入口に建つパールシー(ゾロアスター教徒)の時計塔

ペターのメインストリートの東端には、ムンバイ出身のパールシー(ゾロアスター教徒)のカーン家が建設した時計塔が建っている。
コロンボフォートからペターの町に入る、当時の町の入口に建てられている。
目次
パールシーとは?
パールシーとは、インドに住むゾロアスター教徒のこと。
イラン人の故地であるファールス州は、騎馬者を意味するパールスが語源で、ペルシアの語源でもあり、パールシーはインドでペルシャ人を意味する。
ゾロアスター教を国教としたサーサーン朝(224年~651年)が滅亡し、936年(716年説もある)にイランからインドのグジャラート州に4隻あるいは5隻の船で退避した集団が、ヒンドゥー教徒の王ジャーディラーナーの保護を得て、周辺に定住することになったと言われている。
現在、ゾロアスター教が多く住むのはイランではなくインドであり、ムンバイにその人口が多い。
代表的なパールシー
クイーンのボーカルのフレディ・マーキュリー、インドのタタ財閥を創設したジャムシェトジー・タタ、ジャワハルラール・ネルーの娘インディラ・ネルー(後のインディラ・ガンディー首相)と結婚し、後の首相ラジーヴ・ガンディーをもうけたフィローズ・ガーンディーなどがいる。
スリランカにおけるパールシー
スリランカへのパールシーの移住は、オランダ領セイロン時代の1700年代後半頃に、貿易のためにスリランカにやってきたと言われている。
1940年代頃には約200人のパールシーが暮らしたものの、1948年のスリランカの独立、1957年のシンハラオンリー政策によって、多国へ移住し、現在もスリランカに住むパールシーは40人ほどと言われている。
コッルピティヤのパーム・グローブ(Plam Grove)にはパールシークラブがあります。
代表的なスリランカのパールシー
ジョンキールズホールディングスの筆頭株主キャプテン家
ウェッラワッタ紡績工場(Wellawatte Spinning and Weaving Mills)を所有し、スリランカ初のがん治療ホスピス設置に尽力したソーリ・キャプテン(Sohli Captain)、児童保護協会に貢献したその妹のペリン・キャプテン(Perin Captain)、企業への投資で知られるソーリの息子であるルシ・キャプテンは多数の大企業の経営陣に名を連ねる。
ソーリ&ルシ親子はジョンキールズホールディングス、CICホールディングスとスリランカを代表する2つのコングロマリットの筆頭株主でもある。
Abansを経営するペストンジェー家
Abansを創業したのは、ムンバイ出身のパールシー女性アバーン・ペストンジェー(Aban Pestonjee)だ。
裁判官や建築家を輩出したチョクシー家
最高裁判所の判事を務めたナリマン・チョクシー(Nariman Choksy)。
その息子であるカイラシャースプ・ナリマン・チョクシー(Kairshasp Nariman Choksy)財務大臣を務めた。
フェローズ・チョクシー(Pheroze Choksy)は、チームジェフリーバワの一人であるイスメス・ラヒームと設計事務所「チョクシー&ラヒーム 住宅とオフィス(Choksy and Raheem Residence and Office)」を立ち上げている。
建築家を輩出したビリモリア家
コロンボ7の独立記念広場(Independence Memorial Hall)、バンダーラナーヤカ家が暮らしたティンタゲル(Tintagel Colombo)、国会議長公邸(現在はスリランカ国防大学)のムムタズ・マハル(Mumtaz Mahal)、キャンディのフリーメイソンロッジ(Kandy Masonic Temple)、コロンボのYMBAビルディング(Young Men’s Buddhist Association building)、コロンボの5th laneにあるパールシーの祈りのホール(Navroz Baug)などを設計したホミ・ビリモリアがいる。
ホミ・ビリモリアはリバプール大学を卒業し、英国王立建築家協会(RIBA)のフェローに選ばれた最初のセイロン人。セイロン初の都市計画家として任命され、1953年から1956年までは公共事業省の主任建築家を務めた。大英帝国勲章メンバー(MBE)受勲、戴冠記念メダル授与、大英帝国勲章オフィサー(OBE, 民間部門)を授与されている。
ビリモリアはセイロン建築家協会(CIA)の創設メンバーであり、後に同協会のフェローにも選出された。
コロンボ染色工場を設立したジラ家
コッルピティヤにコロンボ染色工場(Colombo Dye Works、ND Jilla & Sons)を設立したジラ家。
陸軍医師のホミ・ジラ、海軍士官のカイラシャープ・ジラ、民間航空職員のフレディ・ジラなどがいます。
オイル工場を経営したカーン家
ペターのカーン時計塔を建てたカーン家はコロンボオイル工場(Colombo Oil Mills)を経営していた裕福な一家。
カーン時計塔と噴水
1923年にカーン家の兄弟であるビカジー(Bhikhajee)とマンチャーシャー・フラムジー・カーン(Munchershaw Framjee Khan)が父フラムジー・ビカジー・カーン(Framjee Bhikhajee Khan)を偲んで建設した時計塔。
兄弟は1878年になくなったカーン家の家長であった父の職場の近くに、時計塔と噴水を建てた。
時計塔のプレートには、二人の息子が1923年1月4日、父の45回目の命日にコロンボ市議会を通じてコロンボ市民に捧げたこと(市議会に寄贈)が記述されています。
現在、噴水は機能していないようです。
周辺の建物

時計塔の周辺には歴史を感じる立派なビルが立ち並んでいる。

コロナ前までは本屋が入居していたバンクシャルストリートの角のビルは現在使われていないようだ。

関連記事・参照
roar media:Parsis Of Sri Lanka: Denizens From A Land Far Away
roar media:The Colpetty That Was
roar media:Documenting Sri Lanka’s Ethnic Minorities: The Other 2%
Thuppahi’s Blog:The Parsi’s of Sri Lanka: A Small but Vibrant Community
Sunday Times:On a road less travelled
Sunday Times:The Parsis of Sri Lanka: A small but vibrant community
Sunday Times:Wellawatte Spinning & Weaving Mills – a top notch soccer outfit
ウィキペディア:パールシー
ウィキペディア:ファールス (イラン)
Wikipedia:Homi Billimoria
DISTRICT GRAND LODGE OF SRI LANKA:Kandy Masonic Temple
Wikipedia:Khan Clock Tower
LMD:CAPTAIN OF COMMERCE
WSJ MARKETS:Rusi Sohli Captain
Daily FT:The wealthiest Sri Lankans

SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTD Managing Director
スリランカ日本人会理事 兼 広報部長
WAOJEコロンボ支部理事(初代支部長、2期~4期事務局長、5期企画部長)
「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年4月、法政大学社会学部社会学科を卒業後、人材系ネットベンチャーに新卒入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して人材系ネットベンチャーを退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当しながら、新宿ゴールデン街で訪日外国人向けバーテンダー。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2022年12月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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